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OOO ~Original Objective Online~ 改訂版  作者: 1048
第一章 第三部
25/65

★何も言えねぇ

 ここ二週間の僕はギルド内で誰よりも忙しかった。平日は防具の製作、土日は《造船》もしくは気分転換代わりに素材の採取も兼ねた狩りに行っていたのだから。まぁ、そのお陰も有って、全員の防具にシリーズボーナスを発現する事も出来ていた。


 まぁ、ほぼ全ての防具製作に僕が絡んでいると言う事も有り、完成した防具の系統は全て似ている…のだけど、何一つとして同じシリーズボーナスは発現しなかった。


 その中でも特に変わっていたのは、フレイがカゲロウ用に作った庭園(ガーデン)シリーズのシリーズボーナス〈魔反〉、一度の戦闘中に一回しか使えないと言う限定物だけど、自分に対して放たれた魔法を二倍の威力として反射出来る代物(アーツ)らしい。一度だけ、テストを兼ねてヒナタの弱い魔法で試したらしいのだけど、反射されたヒナタは体感的に二倍(想像)以上のダメージをおったそうだ。


 これついては勘違いしがちな事だけど、ダメージが二倍では無くて、威力(・・)が二倍だ。二つ共同じように聞こえるが全く違う。


 例えば、威力が100の魔法を魔法防御力50のキャラが受けるとしよう。その時受けるダメージは単純計算で威力(100)魔法防御力(50)でダメージは50となる。この時、ダメージが二倍ならダメージ(50)×2で100になる。しかし、威力が二倍(・・・・・)の場合は威力(100)×2-魔法防御(50)で150になり、この場合は最終的に受けるダメージに50と言う差が出てしまう。今回は魔法防御力50で計算したけど、この数字が60や70等に上げれば上がるほど、最終的に受けるダメージに無視出来ない差が生まれてしまうのだから。


 なので、前衛守備型(盾キャラ)命のカゲロウにとっては、パーティーのピンチを逆に反撃のチャンスへと代えるかなり美味しい能力だ。


 それと、この期間に僕もソロで行った狩りで天狐族の専用のアーツの実戦(テスト)もしている。


 〈乱〉は対象に幻覚を見せ錯乱させる効果が有った。これを上手く使えば魔物同士で同士討ちをさせる事も可能だ。それで発生する経験値も得られると言う少しお得なアーツ。


 〈朧〉には対象の姿を隠す効果が有る。これだけ聞いたなら、すでに取得している〈ウインドミスト〉と大差が無い気がするのだけど、この対象には〈ウインドミスト〉では指定する事が不可能だったアイテムや装備、地形もが含まれている。それに、この場合の隠す効果と言うのは僕が使用した感じだと、対象を見えなくすると言うよりも、対象を透明にすると言う方が近い感じがした。


 これについても後日、フレイ(この二週間の間に〈朧〉取得し済)と二人で検証もしている。〈朧〉を掛けた状態の透明な刀を振るうフレイを見た僕の脳には、はっきり言って恐怖の二文字しか浮かんでこなかった。見えない刀を振るう事よって魔物から飛び散る血飛沫とか…あれは思い出すだけでも恐い。


 当然、白や黒も透明にする事は可能だ。銃に姿を変える事の出来る白達を対象に〈朧〉を使う事は滅多に無いと思うけど…いや、待てよ。レイドバトル等で知らない誰かを回復させる時に使うのなら有効かも知れないよな。回復能力の有る武器を見せなくても魔法を使ったように見せる事が出来るのは大きな利点かも知れない。





 『そろそろ、このライトニングも完成しますね。次の土日には進水式も出来そうですよ』

 名実共に現場監督のヒナタが、完成間近のライトニングを見て感慨深そうに語る。


 確かに、外見は素人の僕から見ても帆船になっている。だけど、内装はまだ全然じゃないのか?まぁ、内装の製作は船が完成してからでも問題が無いのかも知れないけどな。


 それに、この船…ライトニングは出来上がってみると想像以上に大きいような気がする。明らかに僕がイメージしていた帆船とは違うような気もするけど…《造船》と言うのは、こう言う物なのだろうか?


 『ヒナタ、内装の方はどうするんだ?何か僕に手伝える事は有るか?』

 まぁ、分からなければ聞けば良い。幸いな事に、ここには船の事なら何時間でも語っていられる強者(つわもの)がいるのだから。


 『それは大丈夫ですよ。ただ、シュンさんには一つだけお願いが有りますけど』

 少しだけ申し訳なさそうな表情を見せる名実共に現場監督。


 『お願い?』


 『はい。内装の方は私が平日に合間を見付けて、ほとんどの仕込み終えてます。お陰様で《木工》と《造船》スキルの上がりも良かったんすよ』

 なるほど。ヒナタは、平日の個人活動中もやっぱり船が優先していたようだ。まぁ、ヒナタらしいと言えばらしいよな。そして、その表情を見る限りはスキルの成長にも満足するものが有った事も伝わってくる。まぁ、この規模の船の内装なら、スキルの成長に比例して相応の時間も掛かったんだろうけど。


 『はい。今回、シュンさんにお願いしたいのはリビングダイニングとキッチンの共有スペースの部分です。ここはシュンさんにも相談したかったので、全く手を着けずに残しておいたんですよ』

 多分、その場所を一番利用するであろう僕。自由に選べるなら、それに越した事はない。


 『了解だ。それで、中には入らせて貰っても良いのか?』


 『どうぞ。案内しますね。こちらです』

 僕はヒナタの後ろに続き、船内を案内されていく。どうやら、下から順番に紹介してくれるらしい。


 まずは少し薄暗い印象の有った船倉。だが、ライトニングの船倉は僕のイメージを覆すには充分だった。広い廊下と左右対称に三つずつ用意された扉。扉の間隔を見るに、そこそこの広さは有りそうだ。そして、最後に一際大きくて目立つ廊下の突き当たりに用意された一番奥の扉。


 『まずは、手前の左手側に男部屋の【(ボーイ)】と右手側に女部屋の【(ガール)】。男女別で一部屋ずつ有ります。本当は一人一部屋も考えたのですが、広さの都合上性別でまとめさせて貰いました。男性部屋の奥が雪ちゃんや白ちゃん達専用のファミリアルームの【(ファミリア)】。残りの三部屋がお友達用のゲストルーム…名前はまだ有りませんです。最後に一番奥に見えているのが倉庫ですね。倉庫以外の各部屋には一応人数分(プラス)α(アルファ)のベットや机と簡単な倉庫代わりとしてクローゼットも作って有ります』

 ライトニングの外見は現実に存在した物を完璧に再現された帆船だが、中に入ると完全に小さな豪華客船だな。一部屋ずつ見せて貰ったけど、かなり本格的に作り込んでいる。わざわざ、男部屋と女部屋の雰囲気まで調整して…と言うか、【双魔燈(小さなホーム)】よりも豪勢じゃないのか?


 『ふむ。ワシらの部屋を別で用意してくれているのはワシらにしても嬉しいのじゃ』

 子供部屋のような雰囲気を醸し出すファミリアルーム。小さな木製の滑り台や積み木が常備されているのところが素敵だな。


 その部屋を一目見て気に入り、竜の姿で僕の側を喜びながら飛んでいる白。最近は色々と慣れてきたのか、竜の姿でいる方が多い…いや、違うな。白は最初からこんな感じだったな。その反対に…と言うか、黒の方は相変わらず銃の姿のままだけど。


 『中も想像以上に広い印象だし、旅をしても快適に過ごせそうだな。だけど、倉庫やゲストルームは別にしても、僕とカゲロウの二人だけしかいない男部屋をあんなに広くしても良かったのか?』

 僕とカゲロウの二人しかいないのだから、女部屋並の広さが無くても良いはずだ。


 『えっ~と、それはですね。今後新しく仲間も増えるかも知れませんし、それにシュンさんのお友達、アクアさん達も来るかもと思いまして、少し大きめにですね…』

 心の中に有る少し後ろめたい物が、それが態度にも顕著に現れるヒナタ。痛いところを疲れたからなのか、動揺を隠しきれていない。


 アクアの事はともかく、確かに新しい仲間が増える可能性は大いに有る。あくまでも、可能性だけはだが…最近は、このメンバーに慣れすぎていて考え付かなかったな。


 いや、ちょっと待てよ。ゲストルーム(名前はまだない)も有るよな、それも三部屋も。ヒナタの中ではアクア達は部外者(ゲスト)に含んでいないのか?その場合のお友達用のゲストルームの存在って…何になるんだろう?


 僕の顔をチラチラ盗み見ているヒナタ。


 あぁ、そうか、そう言う事か。名前を付けてない理由が分かったかも知れないな。多分、ゲストルームとは名ばかりで単純にスペース(部屋)が余ったんだな。だから、男部屋のサイズ感にも違和感を感じるんだ…


 〔『主よ、そこは触れずに通すの(スルー)が優しさなのじゃ』〕

 いや、それくらいは言われなくても僕にでも分かるよ。それくらいは…な。


 『そ、それもそうだな。それで、問題のダイニングとキッチンは?』

 この難とも言えない雰囲気を打破する為に僕は話題を変える。正確には本題へと移す。


 『さっき下った階段を上って…こちらがリビングダイニングになります。改めまして、ようこそライトニングへ』

 大きな扉を開き、僕を招き入れてくれるヒナタ。その仕草はまるで一流ホテルのようだった。


 なるほど、この入ってすぐの一際広いスペースがダイニングやキッチンになるらし…


 『広っ!えっ~とだな。ヒナタ、このスペースはレストランでも開く予定が有るのか?』

 ダイニングとキッチン用に用意されたスペースには、ホームのリビング程では無いけど、かなり広いスペースが用意されている。この広さなら二十席…いや、三十席掛けのテーブルは余裕だろうな。さっきはギリギリのところ(優しさ)で突っ込みを控えれたけど、突っ込まずにいるのも、流石に限界だと思う。


 『すいません。本当は作っている途中で気付いてはいたんですよ、本当に本当ですよ。でも、楽しいと言う気持ちが勝りまして、結果的には実物以上に大きくなりましてですね…』

 『すいません』の言葉と共に勢いよく頭を下げるヒナタ。


 ヒナタが急に頭を下げてくるので一瞬驚いたけど、同時に全てに確信を得る事も出来た。やっぱり、僕の仮説は正しかったらしい。


 さっきの各部屋が大きかったのも、ヒナタの挙動がさっきから若干不審なのも、船を大きく造り過ぎてスペースが余り過ぎた後ろめたさからくるものらしい。


 ダイニングスペースの奥にある階段の二階より上()は船長室と操舵室が有ると言っていたけど、この分だと二階より上には本当は何を用意しているか分からないよな。これを今すぐ聞くには流石に怖いけど…出会った時からしっかりしているイメージの強かったヒナタにも案外抜けたところも有るんだな。逆に少し安心したよ。


 いや、抜けているのとは少し違うか。きっと、ヒナタ本人からの自己申告通り、《造船》が楽し過ぎてテンションを抑えれなかっただけだろう。


 『じゃあ、キッチンにはこれだけのスペースをくれ。ここにカウンターバーみたいな感じでキッチン&紅茶カフェを作ろうと思う。改築の方は僕が街の工房で手配してくるから、そっちの方は任せてくれて構わない。それで、余った部分をダイニングにする方向で良いのか?』

 キッチン用にかなり大きめのスペースを適当なサイズで貰ったけど、まだまだ十分にスペースが残っている。ここをリビング()ダイニングにするとなると、少し骨が折れそうだ。


 『はい。その予定にしてます。ホームのリビングみたいに落ち着きのあるスペースにしたいです』

 まだ見ぬ完成後のリビングダイニングを夢見て、目をキラキラと輝かせるヒナタ。そんな表情を見ていると、僕も頑張ろうと言う気持ちになってくる。


 『了解だ。それと、ダイニングで使う家具類…テーブルとイスはどうするんだ?』

 落ち着きのあるスペースを目指す為には、その場所の雰囲気や使う人間の心構えだけでなく、トータルコーディネート…つまり、その他を彩るの小物類にも(こだわ)りは必要だろう。


 『それは、私が作っても良いんですが、キッチンとリビングとダイニング全体のバランスも有りますし、一度トウリョウさんにも相談してみようと思っています。シュンさんお気に入りのホームのリビングに有るテーブル、本当に素敵過ぎでしたし』

 どうやら、ヒナタもホームのリビングに有るテーブルを気に入ってくれているらしい。まぁ、あれは本当に使い易くて見た目も美しいからな。気に入らない理由を見付ける方が難しいだろう。


 『そっか。そっちはヒナタに任せるよ。ついでに、その時にカウンターバー用のイスもトウリョウさんに頼んでおいてくれるか?造船所へ侵入許可は自由にしてもらって構わないからな』

 ヒナタなら、無茶苦茶な侵入許可は出さないだろう。それだけ言い残して僕は造船所をあとにした。





 さてと、どんなカウンターバー風のキッチンにしようか。今回設置する場所は船内なるので、あまり大規模なものは作れないかも知れないけど、船全体の木目(ウッド)調を生かした雰囲気の有る場所にはしたいよな、照明設備も間接照明的な感じにして温かみを持たせたい。


 そんな事を頭に思い浮かべながら、僕は意気揚々と街の工房で設置の申請を出したのだが…


 『えっ!え~~~!?出来ないんですか!?』

 《木工》用の工房にいる、お互い顔見知り以上には知っている職人気質のNPC(通称オヤジさん)(工房に集まる職人プレイヤーが勝手に呼んでいるだけ)に少し困らせるような感じでNOを提示された。


 マジか!?いきなり目標の大規模な修整が必要になったらしい。大地に固定されたエリアに有る建物(新築のホーム含む)内なら、仮にどんな設備を設置しても問題は無いらしいが、動くものに対して…それが例えホーム申請出来る物だとしてもは無理らしい。


 つまり、既存で存在する建物や()以外の場所…今回のように僕達自身で《造船》した船の内部にキッチン等の設備を設置する場合は、いつものようにエリアと品物を指定して一瞬で(ポンと)製作する事は出来ない。


 …と言う事は、自作するしか方法は無いのか?いや、待てよ。その作業の基本となる場所(ほぼ)全てを《木工》スキルで補えるかも知れないけど、肝心要の調理に使用するガスと水道はどうすれば良いんだ?仮にガスは竈で代用(船内の雰囲気ぶち壊し)出来たしたとしても水道は?そんな事が出来るスキルも有るのか?魔法か?魔法を使えって事なのか?いや、それはそれでファンタジーだけど…やっぱり、雰囲気がな。


 僕がその場で『どうしようか?』と頭を抱え込むように悩んでいると…


 『兄ちゃん、そんなにキッチンが欲しいなら、これなんかはどうだ?』

 そう言い残したオヤジさんが工房の奥から何かを取り出してきて、それを僕にどや顔で見せてくる。


 『兄ちゃんがこのキットを買って手作りするなら、船の中にもきを作れないこともないぞ』

 キット?作れなくもない?


 『うん?それはどう言う事ですか?詳しく教えて貰えますか?』


 『兄ちゃんには普段からご贔屓(・・・)にして貰ってるからな。俺が軽く教えてやるよ』

 そこから始まる白のアドバイスよりも長いキットについての説明。


 簡単に要約すればこうだ。工房のオヤジさん曰く、あらかじめカタログで用意されている種類以外のカタログには載っていない自由自在(オリジナル)な設備を作る為に、各設備部品を細分化されたパーツ状態のキットとして買う事も出来るらしい。普段、僕達がNPCに依頼して設置している設備も、元々はこの状態なのだそうだ。それをカタログで用意されている種類の物に組み立てる。まぁ、組み立てると言ってもNPCがそれをやる場合はプログラムで一瞬(ポン)なんだけど。


 しかし、カタログ用意されている種類(略称として一括購入セットと明記されていた)での購入よりも遥かに値段が張るので、ほとんどのプレイヤーには縁が無い事らしい。もしかすると、ある程度工房や神殿で建物等の新築や増改築等にお金(フォルム)を使わないと、この話自体が出てこないのかも知れないな。多分だが、ある種のイベントだと思う。建物の購入に関してだけはトリプルオー内で一番多い自信は有るのだから。その僕の初体験となれば、他のプレイヤーが体験している可能性は低い。


 『じゃあ、このセットを一式とオプションで数点を買わせて貰います』

 オヤジさんから、僕は船内キッチンに必要そうなパーツをまとめて買わせて貰った。その中には僕がキッチン設置に置いて一番の急所だと(ネックに)感じていた、水道に代わる無限貯水槽なるキットも存在していた。


 一瞬、ほんの一瞬でだけホームのキッチンも自分で改築しようかと思ったけど、今の状態でも十分広くて使い易いし、すでに慣れてしまっているので現時点では保留にしている。


 うん!?ちょっと待てよ!?もしかして、キッチン用のパーツが存在するのなら、あっちの方ももしかするのか?


 『あの~、無理だとは思うんですけど、お風呂の専用キットとかは無いですよね?』


 『風呂用か…有るよ。ただし、場所を取る、値段が高い、風呂に入っても効果は全くない、雰囲気だけを味わって自己満足する為だけの三重苦趣味オプションだ。設置自体も難しいからな、普通の人は誰も買わないから、倉庫の中は在庫の山だ。笑っちまうよ』


 『そうですよね。流石に無理だと思って…ま…し…えっ!?有るんですか?』

 端から諦めムードで流すように会話を聞いていたシュンはオヤジさんの言葉への反応が明らかに鈍い。


 『だから、有るよ。さっきから説明してるだろ。聞いてなかったのか?風呂なら、パーツのラインナップはこの辺りだな。NPC(わしら)には扱いきれん品物だらけだ。まったくもって嫌になるよ』

 今までとは打って変わった怪しげな色をしたカタログを取り出すオヤジさん。そのカタログの分厚さときたら、建物やキッチン用の通常のカタログよりも遥かに分厚い。多分、これで殴られたら僕は神殿に直行する事になるだろう。


 それにしても、これは一体どう言う事なんだ?カタログにはかなりの種類のパーツが記載されている。お風呂の種類だけでなく、お湯の効能や温度設定も事細かく分けられている…と言うか、NPC(自分)達で扱いきれないと言っている品物の在庫数がNPC(自分)達でも扱えるキッチンの種類よりも多いのは絶対に変だと思うぞ。


 運営さん、こんなところまで作り込まなくても良いと思うぞ。まぁ、今回はその作り込みに感謝の二文字しか存在しないのだけど。


 カタログに載っていた一個一個のパーツの値段はオヤジさんが言うように小さな土地並に高いし、家庭用のお風呂場とは違い、積極的する為にはある程度の広いスペースも要求される。これで、その効能が自己満足しか存在しないのなら、購入者がいない事にも納得だな。それに、僕が欲しい物を全てを揃えるとホーム全体にかかった金額よりも高額になるだろう。


 だけど…だけどな、ここで買わない(No)と言う選択肢は僕に存在しないんだよ。僕にとっては、諦めていたところにやっと見えた一筋の光明なのだから…


 『えっ~と、そうですね。この露天風呂セット一式を二つとジャグジー・大と打たせ湯のセット。それに、サウナキットを一つずつ下さい。あっ!!これ、この子供用の露天風呂セットとオプションキットも一つずつ追加で…』

 僕は直感で欲しいと思った物を手当たり次第に選んで購入していく。


 『うわぁ~』

 これは、本気でやっちゃったか?あとの事を何も考えず、手当たり次第に欲しい物を選んだ結果、表示された合計の金額をある程度予想し覚悟していたはずの僕も驚いた。普通のプレイヤーなら手を出そうとは思わない代物と言うのは誇張ではないらしい…と言うか、金額的に買えないだろう。


 『う~ん…』

 まぁ、まだギルドとしては二十億フォルム以上も有るし、個人としてもそれに近い金額を持っている。もともと、欲しかった物だから多少(・・)?の出費には後悔もしないけど、【noir】の所持金は多分ゲームバランスを崩してる気もするな。


 【noir】の資金源となっているのは、相変わらず取得者の少ない《鞄製作》スキルとフレイの《刀鍛冶》スキルだ。特に僕の《鞄製作》スキルは鞄事件の影響で【noir】製の鞄が一種のブランドとかステータスになっているらしく、他のプレイヤーが類似品を作っても、あまり売れていないらしい。反対に【noir()】の方は店舗に出すと、すぐに売り切れる(完売)。その為、メニューから製作して店舗に放置している現状でもお金はどんどん増えている。使う予定が全くないのにも関わらずだ。なので、お風呂(今回)の件は、お金を回すと言う(ある)意味では渡りに舟だ。


 うん。皆に追求されて困った時は、これを言い訳に使わせて貰おうか。


 〔『主よ、色々と無駄遣いが過ぎるのじゃ。そんな言葉では言い訳にならないのじゃ』〕


 〔『いや、まぁ…今回は僕も色々と自覚はしたよ。自覚はしたんだけどな、そんな事を全部ひっくるめても露天風呂の魅力には勝てないんだよ。あぁ、そうか、分かったぞ。博識の白も流石に露天風呂の素晴らしさまでは知らないらしいな。ふふっ、入るのを楽しみにしてろ。勿論、黒も一緒に入ろうな』〕

 これ、はっきり言ってヤバイな。僕のにやけ顔が止まらない…まぁ、今から完成が楽しみなのだから仕方が無い事だけど。当然、一番風呂は僕達だ。これは、さっさと船のキッチンを終わらせないとダメだな。


 本来の目的(シュン的には本来の目的になる)とは別の事で、より一層やる気を出すシュンだった。





 僕は急いで造船所に戻り、その勢いでキッチンのキットを脳内に予定していた通りに組み立てる。まぁ、組み立てると言っても、キットアイテムを並べて《合成》するだけらしいんだけど。


 購入時には分からなかった事だが、このキットを組み立てる為には複合スキルの《合成》が必要になっている。つまり、街の工房で発生した組み立てキットに関する一連のイベントは《合成》スキルを取得していた事も発生条件の一つらしい。


 勿論、工房にいたNPCが言ってた『いつも贔屓(・・)にしている』と言う言葉も無関係では無いと思うけどな。そうでなければ、《合成》スキルを取得しているトウリョウさんが、お風呂を組み立てるキット類の事を知らないはずがない。


 『OK。これで完成だよな』

 この船が全体的に木製なので、気分的にキッチンの火力を強く出来なかった事が唯一の心残りだけど、換気扇と排気用のダクトも設置出来たので煙に困る事は無い。


 せっかく海エリアに出るのだから、釣りたての魚も焼いて食べたい。その為には、煙対策に排気用のダクトが無いと困り過ぎる。えっ、グリル?グリルを使えば良い?当然、グリルは設置しているよ。だけどな、魚は七輪を使って炭火で焼きたいに決まってるだろ。


 それに、このキッチン自体は家庭用に僅かに劣るだけで、紅茶を淹れたり切ったり焼いたり(簡単な調理)をするだけなら、十分に機能する代物なのだ。まぁ、火力が命の中華は作れなけど、この場所でわざわざ中華を作る必要も無いだろう。この場所で作るなら洋食の方が雰囲気的にも合っているのだから。


 『さてと、まずは軽くテスト代わりに紅茶でも淹れてみるか』

 出来たばかりのキッチンのテストも兼ねると言う名目で大好きな紅茶を淹れる僕。


 当然、出来たばかりのキッチンには食器類や調理器具の類いは無い…のだけど、僕は普段から外出時専用のティーセットを常に鞄の中に忍ばせている。つまり、お湯もしくは水からお湯(・・・・・)を沸かす事の出来る場所さえ有れば、いつでも紅茶が飲めると言う事だ。いずれは、お湯も持ち歩けるようにしたいところだ。まぁ、これは僕の密かながら盛大な野望の一つだけど。今のところは白と黒以外には秘密になっている。


 『白と黒も飲むだろ?』

 白に対しては確信を持って。黒に対しては疑問を持って。


 『主よ、それは勿論頂くのじゃ。おや?今日は黒も欲しいそうじゃ。主よ、紅茶を都合三つとワシはお茶菓子を所望するのじゃ』

 二匹が同時に竜の姿に変身してカウンターバーに降り立った。黒の竜の姿を見るのは、これで二度目か。以前も思ったけど、小さいといっても威厳を醸し出す竜が二匹も目の前にいるのは壮観だな。


 『黒、正面から見るのは初めてだな。はい、これが黒の分の紅茶だ。白と一緒で少し甘めにしてあるぞ。もし、好みが違ったら教えてくれ。次は合わせるからな。それと、少し熱いから気を付けて飲めよ』

 白と同様に黒も気に入ってくれたら良いんだけどな。


 手元で、少し冷ま(フーフー)してから黒に手渡す。なにしろ、白は何度も飲んでいるので慣れているが、黒にとっては初体験なのだ。紅茶が熱過ぎて、紅茶が嫌われる事だけは避けたいからな。つまり、猫舌対策。猫舌?あれ?竜にも猫舌って有るのか?


 『…ありがと…う~、美味(びみ)

 こう言う時が素直に嬉しいよな。


 僕は黒達を横目に紅茶を飲みながら、しみじみと感じていた。


 『主よ、今日は茶菓子は無いのかの。ワシは茶菓子を所望しておると言ったのじゃ。勿論、美味しいやつじゃ』


 『残念。今日は急だったからな。何も用意してない』

 嬉しそうな黒とは対照的に、凄く残念そうな顔をしている少し図々しい白。


 まぁ、そうだな。次は茶菓子も用意しておくか、是非とも黒に食べて貰いたい。それはさておき、手作りキッチンのテストも問題は無さそうだな。


 残りのダイニング部分はヒナタに任せておこう。こっちはこっちで完成が楽しみだ。ヒナタにキッチンの完成をメールで伝えて僕はホームに戻った。いよいよ、次は悲願の露天風呂の番だからな。気合いを入れずにはいられないよ。





 『場所的には…うん、この辺りのスペースが良いかな?どう思う?』

 ホームのリビングから広大な空き地と化している裏庭に出てすぐの場所で露天風呂の候補地を決める。


 『主よ、ワシらはその露天風呂なる物がよく分からないのじゃ。ワシらの好きな水浴びや工房に有る簡易シャワーとは違うのかの?』

 僕の頭の上に、さも当然と言った感じで居座る白が答えた。


 もう一方の相棒()はホルスターの中で気持ち良さそうにお昼寝(シエスタ)中だ。


 ちなみに、ホームに簡易シャワーが備え付けて有る理由は《鍛冶》や《木工》、外で行う採掘等の汚れを落とす為に工房完成時から備え付けられている。フレイは汚れ等お構い無しで何時間も工房に(こも)る事が多いので、工房から出てきた時は本当に女の子なのだろうかと疑うような汚れを見に(まと)っている。そのままのか姿でリビングに入られるのは何か嫌だからな。


 『全く別物だな。水浴びやシャワーに比べると露天風呂は天国…いや、あれはもう聖地(サンクチュアリ)だ』

 一体、僕は何を口走っているんだろう。


 やっぱり、テンションの上がり過ぎは怖い。もしかすると、《造船》の時のヒナタもこんな感じだったのかも知れないな。


 〔『うん!?主よ、人じゃ。来客なのじゃ』〕


 『シュン、お湯の問題は解決したんか?』

 其なりに慣れ親しんだホームで、これまた慣れ親しんだ感じで僕の背後から登場する来客。


 『あっ!!トウリョウさん、少しぶりですか。お湯の方は何とか見通しが立ちましたよ』

 誰よりも早く来客の気配に気付き、すでに銃の形状でホルスターに収まっている白。普段から、こうだったら素敵なんだけどな。


 〔『主よ、ワシは普段から素敵なのじゃ』〕

 う~ん、それについては微妙に肯定出来ないんだよな。


 『ほんまか!?そりゃ良かったやないか』

 トウリョウさんは他人から見れば完全に無意味で、ある意味では無理難題な問題の解決について、真剣に喜んでくれている。これなら、露天風呂が上手く作れた時にはキットの情報を教えても良いかも知れないな。


 『ありがとう。それで、今日はヒナタに用ですか?』


 『そやそや、ヒナタに呼ばれてん。なんでもテーブルとイスの件で追加で依頼があるそうや』

 依頼の内容に武器製作(普段)を依頼されるよりも遥かに生き生きとしているトウリョウ。


 『そうですか。イスの方は僕からの依頼も兼ねてます。ヒナタに内容は伝えてますので、そっちの方も良い物をお願いしますね』

 あぁ、確実に船のダイニング用だな。


 『当たり前や、このトウリョウに任せとき。万事、抜かりはあらへんで』

 《木工》の実力は当然申し分は無いし、家具の製作(デザインセンス)も抜群。ギルドメンバー以外では最大級の信頼もしている一人でも有る。


 〔『さっきは危なかったよ。白、改めてありがとな。あと、分かっていると思うけど。トウリョウさんが帰るまでは竜になるなよ。黒は大丈夫だと思うけど、万が一起きたら念の為に伝えておいてくれ』〕


 〔『了解じゃ』〕


 『さて、やりますかね』

 取り敢えずは、配置決めからだよな。


 えっ~と、サウナと水風呂、男女別の脱衣場(温泉宿風)は裏口側でホームと直接連結させて、露天風呂本体二つ(45~50℃(熱目)(小)・40~45℃(温目)(大))と子供用の水で温度調節可能な露天風呂、噴流式泡風呂(ジェットバス)・大の四つは【シュバルツランド】の城が見える向きに固めて配置にしようか…残った滝をモチーフにした打たせ湯二つ(緩・急)は、露天風呂の反対側で良いだろう。


 〔『主よ、露天風呂とは、結構な場所を使うのものじゃな…』〕


 〔『あぁ、これには僕も若干引いている』〕

 軽く配置を考えただけにも関わらず、広さや設備がちょっとしたスパ並だと言う事に僕は気付いた。衝動買いと言うのは本当に恐ろしい…今後は出来る事なら、善処したい部分では有るな。


 〔『主よ、多分それは諦めた方が早いのじゃ』〕

 また、見も蓋もない事を…諦めたら、そこで終了(おわり)なんですよ、そこでね…


 まずは、メインの露天風呂二つからだろう。地面を適当な深さ(座って丁度くらい)に掘って露天風呂キットの縁岩や底岩を配置していく。何故か地面を掘る作業は採掘と同じ要領でのツルハシやスコップを使っての地道な手作業だったが、岩を並べる作業はメニュー画面から選んで配置していけたので一個一個手作業で並べる必要は無かった。形の違う岩も選択するだけで上手く組み込んでいける。掘る作業との労力の対比が凄すぎる気もする…微妙なところで芸が細かいんだよな、ここの運営さんは。


 『うんうん』

 でも、こう言う地道な作業は僕に向いている気がするな。さぁ、どんどん続けようか。


 露天風呂の回りも、元から生えていた芝生を石畳へと変更した。ついでに、屋根付き通路とお風呂部分以外はオプションキットとして購入した日本庭園風の枯山水仕様に変更済みだ。ついでのついでに、雰囲気を強調する為の竹で作られた鹿威し(ししおどし)も設置している。ちなみに、この鹿威しもオプションキットの一つで、静かな場所に定期的に響くカコ~~ンの音色は、それだけでも耳心地が良い代物だ。お一つ五十万フォルム…これも、決して高くないはず…多分、決して。


 『あれ…』

 もしかして、これは少しやり過ぎたか?


 完全に見た目は高級旅館の離れに備え付けられた特別な露天風呂って感じだな。大きさも十人くらいが同時に余裕で入れる規模に仕上がっていた。


 〔『主よ、先にこれだけを《合成》するのかの?ここだけをさきに試してみてはどうかの?何事にもテストは必要なのじゃ』〕

 さっきまでと違い、全体像が見えてきた事で自身の興奮を隠しきれない白。はっきり言ってワクワクしている事しか伝わってこない。


 〔『それな、僕も悩んでるんだよ。今、ここだけを《合成》すると、僕は絶対に入りたくなるのを我慢出来ない気がするんだよな。う~ん…よし!!決めたぞ。全部出来てから、一気に《合成》する』〕


 そうと決まれば、次々に組み立てなければならない。当然、休む暇等は存在しない。なぜなら、最後に露天風呂に入って帰る事だけは絶対厳守なのだから。


 双子のような二つの露天風呂に続いて、雪ちゃん用の子供露天風呂とジェットバスに二~三人用のサウナと水風呂、打たせ湯の順にどんどん組み立てていく。打たせ湯は水の流れとは逆に立ち上る湯気が無かったら、完全な滝にしか見えないよな。これは、あとで修行(・・)の必要が有るかもな。


 『あとは、これら全てを一体化するように《合成》すれば、自然とお湯が出てくる(・・・・・・・・・・)予定なんだけど…あれ!?』

 自然とお湯が湧き出てくるのなら、ここに在るのはお風呂では無くて温泉になるのか?…そんな事を気にしながら、僕は右手と左手を露天風呂に添えて《合成》を行使した。


 〔『主よ、ワシの目には何も変わらないように見えるのじゃが…』〕


 〔『いや、この場所(エリア)の表示をよく見てみろ。裏庭から露天風呂&スパって施設に表示が変更されているぞ』〕

 名前の変更も自由のようだし、《見破》で確認もしてるから間違いない…と言いたいところだけど、その見た目の変化は僕にも分からない。


 〔『主よ、しかしじゃ、見た目はどう見ても渇れ果てた池のようじゃ…』〕

 白が、見も蓋も無い(ひどい)事を言いきった瞬間に、ゴゴッゴォォォ~と言う轟音を立てて、勢いよくお湯が吹き出してきた。


 『おぉぉ~~~~!!これは、すっげぇ~』

 渇れ果てた池(露天風呂)は、あっという間にいっぱいになり、湯船の端から溢れて風呂の周りの石畳を僅かに濡らしている。


 どう言う原理かは分からないけど、お風呂キット購入時にオヤジさんから渡された説明書(アナログな紙仕様)によれば、溢れ出たお湯は循環をして、また綺麗で新しいお湯として湯船に溜まる仕組みになっているらしい。大量の湯気が発生しているので、お気に入りの【ダテ眼鏡】も曇っている…仕方が無い、露天風呂の中では外そうか。


 『…凄い』

 いつの間にか目を覚ましていた黒が竜の姿で僕の頭の上に座っている。それにしても、これは天国…いや、本当に聖地になったかもな。これも、決して大袈裟な感想では無いだろう。人見知りな黒が普通に竜の姿になると言う事はトウリョウさんは帰ったらしいな。


 『黒も、そう思うか?』


 『…うん…〈結界〉張る?』

 確かに、いくら【湯着】が有るからと言っても、覗きを防止系の機能は欲しいところだよな。だけど…


 『残念だけど、〈結界〉を張るアーツを僕は覚えてないんだよ』

 だが、この際だから新たなスキルを取得する事も考慮した方が良いかも知れないよな。


 『…取得と違う…本』


 『えっ!?本?』

 あっ!あぁ~、そう言えば、【アーツの書・結界】と言うアイテムを前のイベントで貰った気がするな。


 …と言う事は何か、それを僕が取得して露天風呂に入る時に使えば良いのか?なるほど、それは有りかも知れないな。


 『…ちょっと違う?』


 『???』

 ちょっと違う?〈結界〉って、それ以外にも使い方が有るのか?


 『主よ、黒はアーツとしての〈結界〉を使うのではなく、【アーツの書・結界】と露天風呂を《合成》して欲しいのじゃ』

 こちらも黒に負けじと、いつの間にか竜の姿になっている白。その白が露天風呂の上空をぐるりぐるりと回りながら教えてくれる。


 『えっ、えぇ~~~~!?《合成》スキルには、そう言う使い方も出来るのか?いやいや、流石にそれは無理じゃないか?それが出来たら、ある意味で革命だぞ』

 いくら、二つ以上の生産系スキルをある程度極めて取得する複合スキルを使うとは言え、【アーツの書】を《合成》するだけでアイテム(プレイヤー以外の物)にもアーツを覚えさせる(与える)事が出来るなら、その価値は計り知れない気がする。


 『主よ、その結果は黒にも分からんらしいのじゃ。どのみち、失敗したとしても元のアイテムは無くならないのじゃ。やってみれば全てが分かるのじゃ。それに、主の世界ではこう言う時に物は試しとも言うのじゃろ?』

 分からないと言いながらも、自信に満ちた顔でこちらを覗き込む白と発案者の黒。ここで、確信犯的な臭いを感じるのは僕だけだろうか?


 『まぁ、僕は《合成》を試すだけだから、良いんだけど…』


 僕はキットを《合成》して露天風呂を作った時と同じように【アーツの書】の《合成》に取り掛かる。露天風呂の時との違いは、右手で露天風呂を触り、左手に【アーツの書】が握られているくらいだ。


 『いくぞ!!《合成》』

 今回はピカッと光ると同時に左手の【アーツの書】が完全に消えてなくなった。


 『…成功』

 黒の言葉で《見破》を使って確認してみると、露天風呂&スパのエリア内に人が入っていると、外から中が見えなくなるらしい…まるでマジックミラーのような結界が張られていた。


 同時に露天風呂入浴中の〈結界〉の中は、【湯着】を装備して(着て)いないと入れない設定も追加されている。さらに、それだけでは無く、最初に入ったプレイヤーが入退室の許可を出す事の出来る至れり尽くせりの仕様になっていた。


 これなら、男女が同意無しで一緒に入ると言った偶発的な事故(ラッキースケベ)も起きないだろう。混浴の普及率が上昇している世の中(湯着・水着着用厳守)から考えると些細な事かも知れないが、男女比の差が激しい【noir】では、それが命取りになりかねない。


 ちなみに、この〈結界〉は無色透明な立方体の形で露天風呂エリア全体を覆っている。その完全な副産物の中には雨や雪の進入も防ぐ簡易的な屋根も含まれていた。景観を害わずに屋根を付ける事が出来たのは奇跡に近い。


 『うわっ、マジか!?この〈結界〉って、色々と細かく設定出来て凄く便利なんだけど…』

 この性能なら、露天風呂に使ったのは少し勿体なかったかも知れないな。アーツの能力を確認すると状態異常系を防ぐ能力も有る。その能力は、かなり欲しかった。いや、ここは僕の大切な露天風呂(温泉)が、強化された事を喜ぶとしようか。


 余談になるが、【アーツの書】を《合成》した時のアーツの効果とプレイヤーが使用した時のアーツの効果では天と地ほどの差が有る。この事をシュンが理解するのは、少し先の話。


 こうなるってくると、次は回復系や状態異常回復系の【アーツの書】も手に入れて露天風呂に《合成》すれば、ログインに入るだけで、全てが完治するようなリラクゼーション施設を作る事も可能なのかも知れないな。


 いや、そんな事よりも、この露天風呂&スパを誰かに見て欲しい。そっちの方が先だ。まだ、ヒナタはホームにいたか?





 『ヒナタ、いるか?』


 『主よ、残念ながら、ホームには雪を含めて誰も居ないのじゃ。ヒナタ嬢は、お客と二人で転移して行ったのじゃ。だから、ワシらは竜の姿に…』

 …と言う事は、二人で【蒼の洞窟】にでも下見に行ったのだろう…あっ!しまった~!!あの光景を見て驚くトウリョウさんの顔を見損ねたぞ。でも、雪ちゃんがいないのは…


 『雪はケイト嬢と一緒なのじゃ』

 僕の思考に喰い気味で答える白。


 でも、まぁ、それならそれで…


 『仕方が無い。うんうん、これは仕方が無い事だよ。完成を記念して誰かを呼びたくてもホームに誰も居ない(・・・・・)のだから、仕方が無い。仕方が無いから、白、黒、僕達だけで露天風呂に入ろうか?』

 僕は自分自身への言い訳で必死に身を固めた。誰かに咎められる訳でもないにも関わらず…


 皆には悪いと若干(・・)思うけど、身体の方は素早く装備を【湯着】へと変えていた。元から裸がデフォルトの白と黒は【湯着】へと着替える必要が無い事が少し羨ましく感じる。


 『主よ、ワシも賛成なのじゃ』

 白が素早く露天風呂まで飛んで行く。黒に至っては、さっきから準備万端と言った感じで湯船の前で待機しているからな。まぁ、この場合は勝手に入っていないだけ良しとしようか。


 『白、黒、そっちの湯船の中は僕好みの熱い湯になっているから、気を付けてな。それと、入る前にはかけ湯…まぁ、今回はいいよ』

 僕の事を待ちきれずに足先で湯面をツンツンしている両者。その両者は僕のOKの意思と共にお湯の中へとダイブしていった。


 『おぉ~、主よ、これは非常に良いのじゃ。最高なのじゃ。主の言っていた事が今やっと分かったのじゃ。さっきはすまなかったのじゃ』

 僕がゆっくりとかけ湯を楽しんでいる間に、白と黒は露天風呂にで一発KO(ノックアウト)されていた。


 その白の喋り方と雰囲気だけみれば、完全なお爺ちゃんだよな…今度入る時には、かけ湯の文化を徹底して広めないとダメだな。この調子だと絶対に二度目()以降が有るのだから…


 『主よ、ワシをお爺ちゃん扱いは酷いと思うのじゃ…が、今回は特別に許すのじゃ』


 『それは、ありがとう』

 お湯から頭だけを出して本当に気持ちよさそうにしている白。普段は無口無表情の黒が何とも言えない表情をしている事からも、その事が伺える。


 それほどなのか?それほど気持ちが良いのか?僕のワクワクも止まらないんだけど。一体、どうしてくれるんだよ…露天風呂様。


 それでは僕も中に入らせてもらおうか。


 だが、その前に…僕は白と黒の頭の上に折り畳んだタオルを乗っけてやる。やっぱり、温泉としての雰囲気は大事だよね。当然、僕の頭の上にも乗っけている。これも【湯着】と一緒にさりげなく作っておいた代物だ。


 『ふっはっ~~~~』

 ヤバい、ヤバいぞ、これは最高だ。簡単にダメ人間が出来そうだ。ぬくぬくポカポカって気持ち良すぎだろ。目に見える数値としての感情度も湯船に入った瞬間にMAXまで上昇してるし、何の言葉も発しなくても顔を見ただけで全員に伝わるだろう。


 改めて言わせて貰う。あぁ~~幸せだ。


 それにしても、《合成》のレベルの上がり具合もエグいよな。お風呂キットと【アーツの書】の《合成》をしただけで一気に7レベルも上がっている。まぁ、【アーツの書】等は貴重過ぎて気軽にレベル上げには使えないんだけどな。そもそも、僕の所持している【アーツの書】は残り一つしか無いのだけど。





 『…誰か来た』

 長い静寂を切り裂いた黒の一声で我に返る僕と白。


 どれくらい時間が経ったか分からないが、心身ともに良い気分に(ひた)っていたらしい。多分、長時間入っているのだけど、全くのぼせていないのも嬉しい仕様だ。


 『それで、誰が戻って来たんだ?』

 戻って来た(もしくは、やって来た)人物によっては、リフレッシュタイムの終了を意味する大事な問題。


 『うむ。この様子は弟君じゃ』

 一切微動だにせず答える白。白の場合は誰が戻って来ても問題ではないらしい。


 『あぁ、カゲロウか…』

 それなら、何も問題は無いな。むしろ、こっち側に巻き込んでしまえば良いだろう。さぁ、カゲロウにも至福の一時を味わって貰おうか。


 『お~い。お帰り、カゲロウ。ちょっと裏庭まで来てみろよ』


 『ギルマス、いたのか?裏庭で何してる…って、何だ!?これ!?もしかして温泉か?おい、ギルマス、どこにいるんだ?』

 僕達側からは、見えない所から聞こえる声と昨日までは無かった露天風呂に慌てふためくカゲロウの姿が完全に確認出来ていた。


 『目の前の露天風呂の中だ。〈結界(アーツ)〉のお陰で外からは見えないからな。皆の分の【湯着】も作って有るから、倉庫から取り出して着替えて来いよ』





 『あのさ、ギルマス。俺は何から突っ込んでいいのか分からなくなった』

 【湯着】に着替えて露天風呂に浸かり、何かを悟ったらしいカゲロウの第一声がこれだ。推定、諦めの境地。


 『まぁ、色々言いたい事も有るんだろうけど、何も言うな。顔を見れば全てが分かるよ』

 不安そうな顔から、徐々に幸せそうな顔へと変貌を遂げるカゲロウ。その表情の変化を見るだけで、色々と突っ込みたかった事も徐々に言えなくなっているのが僕には伝わっている。


 多分、カゲロウの感情度もMAXまで上昇したことで、僕に対する小言を言い出したくても言い出せないと言ったもどかしい状況。感情度、本当に良いシステムだよ。ありがとう、感情度。


 『こんなに気持ちが良いんだから、当たり前だろ。入浴(これ)のお礼代わりに《木工》を使って看板でも作っておくぞ。入浴してるのが男か女か分かる方が問題が起きなそうだろ?』


 『そうだな。この場所に相応しい看板を頼むな』

 カゲロウは、良いとこに気付いたな。


 カゲロウが言うには、誰かが入浴している露天風呂を外から見たら、現在使用している露天風呂は曇りガラスみたいになっていて、中の様子は全く分からなかったそうだ。《見破》で事前に確認していた通りの結果だな。





 露天風呂から上がったタイミングでヒナタからSOSのコールが入り、僕とカゲロウは今造船所に来ている。白と黒はギルドメンバーの誰かがホームに来るまでは、露天風呂の案内人としてホームに残して来ている。『急にあの露天風呂を見れば、誰だって驚いて自分の頭を疑うだろう』と言うカゲロウのアドバイスを採用した結果だ。


 『お待たせ。それで、トウリョウさん、僕に用って何ですか?』

 ヒナタからのコールで呼び出されたのは僕一人だけ。だが、少し焦るヒナタの様子に不思議に感じ、何かしらの緊急事態(厄介事)だとしたら、労働力(犠牲)は多い方が良いと思いカゲロウも連れてきている。まぁ、カゲロウ本人には内緒だけど。


 『シュン、どうやって《造船》スキルを取得したんや?今、多くのプレイヤーが海に出る為に船を探しとるが、まだ誰にも見つかってないんやで、ヒナタに聞いてもシュンやないと分からないって答えるし…なぁ、シュン、頼むわ。私にも教えてや』

 いつも見せている余裕は全くなく、今にも僕に掴みかからんと言った感じのトウリョウさん。


 『だから、落ち着いて下さいって…』

 そのトウリョウさんを必死に抑えるヒナタ。


 トウリョウさんにいつもの余裕が全く無い。話の内容からするとヒナタも色々と質問されて困っているようだ。まぁ、日頃からお世話になっているし、教えて貰った《合成》スキルのお陰で、念願の露天風呂も出来た事だし…


 『それは別に良いですよ。特に隠している訳でも無いですし、僕が知っている事なら全部教えますよ。えっ~と、カゲロウはそうだな、ヒナタを手伝って船の仕上げをしてくれ。僕はトウリョウさんにあの時の状況を教えてくるよ』

 造船所を訪れてから、一切の言葉を放っていないかなり取り残された感の強いカゲロウにも、さも予定通りと言った感じで役割を与え、僕は逃げ出すように造船所をあとにした。


 取り敢えず、造船所の持ち主がいた場所にでも行ってみるか、今日会えるかどうかは別にしてだけど…





 『ここが、さっき話した造船所の元持ち主のおじいちゃんと出会った場所…なんですけど、今日はいないようですね。当たり前ですけど、トウリョウさんのギルドには《木工》スキル持ちは多いですよね?』

 僕とおじいちゃんが出会った海が見渡せる少し小高いエリアの一角。あの時も僕とおじいちゃん以外はいなかったこの場所に、今日は僕とトウリョウさんしかいない。


 『勿論や、メンバー全員が取得しとるで。【カーペントリ(私のとこ)】の入会条件の一番目やからな。必須やで』

 一番目って…一体、何番目まで有るんだろう?もしかして、【カーペントリ】は敷居が高い?のか。


 『そうなると、《造船》イベントの発生条件が不明か…てっきり《木工》取得三人以上がギルドメンバーに存在するがイベント発生の条件だと思っていたんですけどね』

 むしろ、あの時の状況やおじいちゃんの言い回し的に、これ以外の条件は有り得ないとも思っていた。


 『う~ん…若干、手探(てさぐ)りになって申し訳ないですけど、この辺りにいるNPCに色々声掛けてみましょうか』

 あの時は、海をただ単に眺めていたら話し掛けられただけで、こちらから話し掛けた訳ではないけど、イベントが発生しないこの状況だと、例え手探りになったとしても何もしないよりは良いだろう。あの時のおじいちゃんに再び会える確率も0ではない(有る)のだから。


 『私としては願ったり叶ったりやけど、まだ付き合わせてもええんか?』

 いつもの余裕が戻ってきたのか?若干申し訳なさそうな態度を見せるトウリョウさん。


 『それは大丈夫です。ただ、声はトウリョウさんが掛けて下さい。僕はすでに《造船》スキル取得済みだから、イベントが発生しないのかも知れないので』


 『勿論や、取得者のアドバイスだけでも助かるわ』





 しばらく、僕達二人は街の海側を回って様々なNPC…海の男風や小さな子供にまで声を掛け続けてみたが、あの時僕が出会ったおじいちゃんみたいに特殊なNPCが全く見付からない。


 『今日は付き合わせて悪かったな。また今度ギルドメンバー総動員で探してみるわ。それと、ヒナタの依頼は来週の金曜までには仕上げとくって伝えといてくれるか。お代の方は今日のお礼に、少し勉強させて貰うわ』


 『???』

 今の言葉にキョトンした表情を見せるシュン。


 『なんや、変な事でも言ったか?』


 『あの~、すいません。お代を勉強って何ですか?』

 このフレイも使った事は無いはずの関西弁?は全く分からない。


 『あぁ、これは関西弁で安く(オマケ)しとくって事や。簡単に言うなら次回以降の商売の授業料って事や、だから勉強(・・)な。そっちのフレイなら簡単に伝わるやろ、ちゅうかフレイも普通に使うやろ』

 エアで算盤を弾く仕草を見せるトウリョウさん。その仕草は関西人(トウリョウさん)の気質に合っていて妙に似合って見える。


 『なるほど、それならフレイも出身は関西みたいですから知ってそうですね。ただ、ギルドでは使った事はないと思いますよ。そのフレイも最近ログインしてこないので少し心配なんですよ』


 『そなんか?まぁ、大丈夫やろ。あのフレイなら、そのうちひょっこりと現れるで』


 『まぁ、そうですね。また何か有ったら、いつでも呼んで下さい』


 『そん時は頼むわ。ほな』

 その言葉を最後にトウリョウさんは街のゲートから【カーペントリ】のホームに転送していった。





 『ヒナタ、カゲロウお待たせ。それと、トウリョウさんからの伝言だ。依頼品は金曜までには仕上げるってさ』

 僕はポルトのゲートからホームを経由して造船所に戻って来た。そのついでに、ホームに残して留守番をしていた白と黒も回収済みだ。


 『シュンさん、おかえりなさい。依頼の件は分かりました。それで、《造船》スキルは見付かりましたか?』

 チラっと一瞥し挨拶を交わしただけで、職人気質の彼女の作業の手は止まる事はない。その態度に腹を立てる訳でもなく、逆に好感が持てるシュン。


 『いや、二人で粘りながら探してみたけど、残念ながら《造船》スキルはダメだった』


 『えっ!?ダメだったんですか?』

 その言葉の意外性にすぐに反応して振り返ってくるヒナタ。その驚きは職人気質の彼女手も止めるほどだ。


 僕はヒナタに、二人でかなり歩き回って手探り状態で探し回ったけど、手掛かり(ヒント)すら見付からなかった事等を伝えた。


 『まぁ、今回はすでに《造船》取得済の僕が一緒にいたからイベントが起きなかったかも知れないんだけどな。また今度探すって言ってたから、そのうち見付かるとは思うけど…』

 今さらながらだけど…今、口に出した理由が一番有りそうだな。


 『ギルマス、そんな事よりも今は最後の仕上げ中なんだ。ギルマスも帆を取り付けるの手伝ってくれ。一人での作業が難し過ぎて、俺は一人でヒナタに怒られっぱなしだったんだぞ』

 マストの上から聞こえてくるカゲロウの声。気配はしていたので、造船所にいるとは思っていたけど、そんな所にいたんだな。


 今、問題として提示された帆は無惨にも地面に落ちていた。その光景を見る限り、作業中に運悪く落としたんだろう。


 それ自体はヒナタに怒られても仕方が無いとも思う…けど、結果的に言えば、僕がトウリョウさんに付き合ったせいで、カゲロウに全てを押し付ける形になったから起きたとも言えなくもない。そこだけは少し悪い事をしたよな。


 『すまなかった。白、黒、ちょっと頼める…』


 その言葉を言い終えるよりも早く、白と黒は竜の姿になって帆の両端を持ち、マストの上部まで一気に飛び上がった。二人は器用にバランスを取りながら、丁度マストの高さで浮いている。


 『…ありがとう。カゲロウ、これで結びつけれるか?』


 『あぁ、大丈夫だ。白、え~っと、一応黒は初めましてになるのか?二人ともありがとな。使えない誰かさんと違って、本当に助かるよ』

 おい、カゲロウ君、その使えない誰かさん(・・・・・・・・)とは僕の事かな?


 僕の反応(リアクション)を一切確認せず、カゲロウは手早く帆を太い紐で結んで行く。ちなみに、下の方は使えないと喚ばれた僕が結んでいた。決して白と黒の二人に任せてサボっている訳では無い。


 『主よ、今回の依頼(クエスト)の報酬として、あとで紅茶を淹れて欲しいのじゃ。今回はお茶菓子も所望するのじゃ』

 その白の言葉に、反対側で黒もコクコクと頷いている。それくらいは、いつも報酬関係無しで淹れさせて貰ってるんですけどね。その言い方だと、他人に聞かれると僕の事を誤解されないかな?まぁ、ここにはその事を聞かれる他人がいないのだけど…


 『了解だ。今日は雪ちゃんがクッキーを焼いてたからな。お茶菓子の方にも期待してて良いぞ』

 先週末にケイトと三人で焼いたクッキーを気に入った雪ちゃんは、僕が造船所に戻る過程でよったホームで、一人黙々と調理に挑戦していた。


 僕達が手伝ったとは言え、この前も上手く(美味しく)焼けていたので味の方は問題無いだろう。問題なのは《料理》と言う過程だ。これがオーブンレンジを使わず、ガスコンロを使った料理なら一人での調理は、僕も影でこっそりと見守っていたケイトも許可しなかっただろう。クッキーはオーブンレンジで焼き上げる事も出来るので、安全面(その点)だけは安心出来る。


 少し寂しい気もするけど、こうやって少しずつ大人になっていくんだろうな。少し寂しいけど…

装備

武器

【雷光風・魔双銃】攻撃力80〈特殊効果:風雷属性〉

【白竜Lv15】攻撃力0/回復力125〈特殊効果:身体回復/光属性〉

【黒竜Lv10】攻撃力0/回復力120〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉

防具

【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40

〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉

アクセサリー

【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉

【ノワールホルスター】防御力10〈特殊効果:速度上昇・小〉〈製作ボーナス:リロード短縮・中〉

【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉



天狐族Lv33

《双銃士》Lv52

《魔銃》Lv50《双銃》Lv46《拳》Lv35《速度強化》Lv78《回避強化》Lv79《旋風魔法》Lv32《魔力回復補助》Lv76《付与術》Lv45《付与銃》Lv54《見破》Lv70


サブ

《調合職人》Lv24《鍛冶職人》Lv27《革職人》Lv49《木工職人》Lv28《鞄職人》Lv49《細工職人》Lv24《錬金職人》Lv24《銃製作》Lv35《裁縫職人》Lv9《機械製作》Lv1《料理》Lv34《造船》Lv12《家守護神》Lv12《合成》Lv12


SP 52


newアーツ

〈サザンクロス・四点バースト〉攻撃力×4/消費MP 60

四点同時撃ち

習得条件/《双銃》スキルLv45


称号

〈もたざる者〉〈トラウマ王〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈自然の摂理に逆らう者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈なりたて飼い主〉

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