★オークション
僕達だけでなく多くのプレイヤーが待ちに待ったオークション当日。いよいよ今日オークションが開催される。オークション午前の部は朝九時からの開始なので、オークション関係者は少し早めの八時に集合する事にしていた。
『ヤバイぞ、ギルマス。外が大変な事になってるぞ』
大変な事って、少し大袈裟過ぎないか?
『それで、どんな感じなんだ?』
まぁ、チャリさんやネイルさん達からの忠告も有るから、大体は想像出来てるし、多少の行列は出来ているかも知れないけど、それでも行列の出来るラーメン店くらいの規模…多くても二~三十人くらいだろう。
『どんな感じ?う~ん、列の最後尾が分からないくらいの行列だ。この分だと、用意している当日券は全然足りそうに無いぞ。どうするんだ、ギルマス?』
カゲロウが窓から外の様子を伺いながら状況を伝えてくる。
それは困ったな。普段はお気楽なカゲロウですら若干引き気味の状況と言う事は、相当な人数が並んでいるんだろう。そして、僕の予想よりも遥かに多い。でも、まぁ、冷静になって鞄事件の時を思い出すと、その気持ちは分からなくも無いかな。
だが、鞄事件の時とは違い、オークション自体が始まれば、お祭みたいなノリになって楽しいとも思うぞ。
『シュン、どうするの?』
『どうするって言われてもなぁ。まぁ、結局のところは当日券にも限りが有るから、早く並んだ人から配るしか僕達に方法は無いんだよな。う~ん…でも、そうだな、予定よりは少し早く当日券を配り始めるとするか。多少の揉め事も予想出来るし、当日券は男の僕とカゲロウで配るよ。ヒナタとケイトは僕達が券を配った人に対しての案内係を頼む。アキラとフレイは予定通り受付で出展者への対応をお願い出来る?』
『ゆきは、なんのおてつだいすればいいの?』
『………』
雪ちゃんのお手伝いか…それは考えて無かったな。
雪ちゃんの立場的に、流石に今日はホームで大人しく待機してもらった方が良いよな。皆が楽しんでいる中で、一人だけホームに残すのは、ちょっと可愛そうな気もするけど…
今日、雪ちゃんを連れ回すのは色々とリスクが高過ぎる。
『じゃあ、雪ちゃんは私達と受付に一緒にいる?ただ、今日は私達だけでなくて他のプレイヤーさんもいるから、ちゃんと姿を消して大人しくしている事。それだけは約束出来る?』
返答に困りかねた僕を助けるアキラの一言。
おぉ、これはアキラに助けられたかな。確かに、アキラの側なら安心だな。
それに、オークション中に何か有った場合なら、近くに僕もいるから何とか出来るだろう。まぁ、仮に雪ちゃんの存在が他のプレイヤーにバレたとしても、その時は開き直って公表すれば良いだけだからな。大きな問題にはならないだろう。
『わかった、大丈夫なの。ゆき、ちゃんとやくそくまもれるの』
嬉しそうな顔をして、アキラの周りをぐるぐると飛び回る雪ちゃん。
うんうん、雪ちゃんもアキラ達と一緒にいることが出来て嬉しそうだな。それだけで僕達も嬉しいよ。
外はカゲロウの言葉(正確にはカゲロウの言葉を聞いた僕の想像)よりも随分と酷い行列になっていた。かろうじて揉め事は起きてないと言った感じか?だが、これは遅いか早いかだけの問題だろう。見ただけで、行列の後ろの方に並ぶプレイヤー達のイライラが伝わってくるのだから。まぁ、対照的に行列の前に並ぶプレイヤー達からはワクワクが伝わってくる。
これなら、もう当日券を渡した人から順に会場入りして貰った方が賢明かもな。僕はコールでヒナタ達に予定より早く入場させていく事を伝えた。
『え~、事前に告知していた時刻よりも少し早いですが、只今から当日入場券の配布をします。数には限りがございますので、お一人様一枚限りです。申し訳ございませんが、お並びの皆さま全員に行き届かない事はご了承下さい。当日券の枚数は午前と午後で各四百枚の計八百枚になります。事前に情報系サイトでも告知していた通り、午前が《調合》・《木工》・《布製作》・《裁縫》系のアイテム。午後からは《鍛冶》・《細工》・その他の特殊アイテムになっています。列に最初にお並びの方から順に好きな方を選んで下さい。尚、この入場券は転売、強盗等のトラブル防止の為、こちらから一度お渡ししたあとは譲渡不可になっていますので、ご注意下さい』
僕の説明が終わると、カゲロウが先頭に並んでいたプレイヤーから順に午前か午後の選択や欲しい生産系の種類を聞きながら入場券を配っていく。当日券の枚数の内訳や僕の説明を聞いて去っていくプレイヤーもちらほら見受けられる。多分、転売を企ていたプレイヤーや自分のいる位置が八百番以降だと気付いたプレイヤーだろう。
八百枚の定数に対して、ざっと見ただけでも千人以上が並んでいる為、どうしてもオークションに参加出来ないプレイヤーも出てくるからな。仕方が無い事だけど、申し訳ない気持ちがいっぱいだな。次に開催する時はアイドルのコンサートみたいに抽選方式の採用も検討した方が良いかも知れないな。
その問題が起きたのは五百枚ほど配り終えた時だった。
『すみません。午後の分は只今終了しました。残りは全て午前になります』
やっぱりと言うか、予想通りと言うか、当然だったと言うか、午後の分の当日券が先に配り終わった。開始直後から午後の方が当日券の捌け方が良かったし、【鍛冶ゅR】・【闇鍛冶店】・【サイク=リング】の高性能製品や新製品が入手出来るチャンスが有るとなれば、それも無理は無い事だろう。
まぁ、午後の方がオークションの開催時間も長いので、所持金が少なくて入札自体には参加出来なくても、イベント自体の雰囲気を楽しみたいプレイヤーにも人気が有るみたいだから、それ自体は仕方が無い事なのかも知れない。
ちなみに、僕も午後からの出展になっている。
ただ、僕達が思った以上に午前分の当日券が捌けている気がする。《魔術師》系のプレイヤーに《木工》で製作された杖と《布製作》と《裁縫》の組み合わせで製作されたローブ類が人気みたいだな。まぁ、そうなるように時間を分けたんだけど、思惑通りにいくと嬉しいものが有るな。珍しく低姿勢で笑顔が絶えないカゲロウも同じ気持ちだろう。
アンケートで聞くかぎり、今のところ人気が薄そうなのは《調合》系のアイテムか?ネイルさん達が妙に張り切っていたから、誰もが驚くようなアイテムが出てくると思うけどな。
『おい、ふざけるな!!こっちは、朝から何時間並んでたと思うんだ。今すぐ責任者を連れてこい』
一人のプレイヤーが列を乱し大声をあげて、当日券を配っている僕達の方へと近付いてくる。
そのプレイヤーに同調したかのように数人のプレイヤーも動き出した。
『そうだ、そうだ!!責任者をさっさとだせ。こっちはお客様だぞ。神様なんだぞ』
『責任者、さっさと出てこいや!!』
そんな不条理な神様は存在しません。それに、さっきからあなた達が問題としている責任者は、あなた方の目の前にいるのだけど、全く気付く余裕も無いらしいな。あ~ぁ、あんなに暴れ散らして後片付けが大変だ。
そして、遂にプレイヤー数人がチケットを配っていたカゲロウを取り囲むように言い寄り出す。やっぱり、こんな奴等が現れたか。鞄事件の時といい…はっきり言って面倒くさい。面倒くさいは面倒くさいけど、僕の責任として、カゲロウだけは助けなければならい。
僕はカゲロウの方に数歩近付いた。カゲロウを囲む輪が僕を受け入れるように広がっていく。
『え~っと、《盗賊》レベル35のステファンさん、《騎士》レベル28のプリンスさん、その他大勢・・・ですね。僕がオークションの総責任者で【noir】のギルドマスターをしているシュンと言いますが、僕達に何か不手際や問題でも有りましたか?』
他の関係の無い多くの皆さんには悪いけど、今日は《見破》を使っている。なので、僕はあなた方のステータスは全て把握している。それにしても、う~ん…クレームを付けてきた割りには、ジョブやスキルのレベルが低いな。それなりの人数がいるけど、カゲロウと僕の二人…いや、装備を固めればカゲロウ一人でも楽勝だよな。
『な、なんで、お、お前は俺達の事を…』
最初の一人を中心にして、カゲロウを取り囲んでいたプレイヤー達が一気に僕の方へと振り返った。その表情はどれも驚きの顔に満ちている。
『そこにいらっしゃる皆さん、揃いも揃ってこんな些細な事で驚いているようですけど、別に僕とあなた方は知り合いとかでは無いですよ。完全な初対面です』
この言葉に数人のプレイヤーが後退る。この程度で引くくらいなら前に出て来なかったら良いのに…
まぁ、次の行動への牽制も含めて多少威嚇しながらでも、穏便に済ませる方が得策かな。何よりもギルドメンバーに手を出そうとした罪は重い。僕に手を出すだけなら穏便済ませるんだけど。
『じゃあ、何故だ!?』
『さぁ、何故でしょうかね。もしかすると、色々と視えてるのかも知れませんね。《弓士》レベル33のライチさん。ギルドは無所属』
『う、嘘だ!!』
『さぁ、どうでしょうね。そこは各自のご想像にお任せしますよ。クレームの内容は皆さん同じで当日券の数の問題だと思いますが、オークションの当日券につきましては事前に告知させて頂いておりますので、クレーム等は一切受け付けておりませんし、受け付ける気も有りません。このイベントはトリプルオーの運営サイド主催では無く、あくまでもプレイヤーサイドの運営による自主的なイベントです。そして皆さんが暴れていらっしゃるこの辺り一帯のエリアは【noir】の私有地です』
『し、私有地だと?こ、ここがか?』
また数人のプレイヤーが後退る。
『はい。皆さんが並ばれているこの場所も含めて、この辺り一帯です。これ以上、僕の仲間に言い寄る等の行為を続けられるつもりでしたら、永久的にこのエリアから追放させて貰います。当然、次回以降の【noir】主催のオークション参加並びに【noir】系列の店舗のご利用は出来ませんが、いかがいたしましょうか?』
あ~ぁ、言い寄ってきたプレイヤー達だけでなく、大人しく並んでいたプレイヤー達もがドン引きだな。
だが、何故?こっちサイドの人間であるはずのカゲロウまでがドン引きなんだ?それは少しおかしくないかな。それに、こんなに一斉に引かれると、最近は慣れてきたとは言え、僕の心が持たないんだけど。
『くっ…そ、それは恐喝じゃないのか、う、運営に通報するぞ』
おいおい、小物臭がしてきたぞ。
運営に通報ねぇ、自爆にしかならないと思いますけど…まぁ、実際のところは、この辺りが落としどころかも知れないな。
不本意な話だけど、事実を述べるだけでも充分な威嚇にはなったらしい、クレーマー達だけでなく列に大人しく並んでいたプレイヤー達も含めて。これで、これ以上トラブルを起こすプレイヤーも出ないだろう。
『通報したければご自由にどうぞ。こちら側には多くの承認もおりますので、困られるのは皆さんの方かと思いますけどね。ただ、運営しているこちらサイドと致しましてもステファンさん、プリンスさん達の言い分も分かりますので、次回以降のオークション開催時は抽選方式も検討させて頂きます。それで、納得してはいただけませんでしょうか?』
『うっ、そ、それなら、分かった。こ、今回は我々もすまなかった』
あら、さっきまでの態度が一転して予想外に素直に謝ったな。案外まともな神経のプレイヤーかも知れない…いや、無いな。まともな神経の持ち主があんな行動には出ない。多分、小物中の小物だっただけだろう。
『いえいえ、分かって頂ければ、こちらとしても幸いです。あと、あなた方が散々散らかした場所は自分達で片付けて帰って下さいね。ここはあくまでも【noir】の私有地ですので、よろしくお願いいたします』
『うっ…はい、分かりました』
まぁ、着に大人しく並んでいるプレイヤー達の雰囲気的に嫌とは言えないよな。彼らの前に並んでいたプレイヤーさん達は余計な時間を待たされてご立腹なのだから。数人だけで、これ全員相手にするのは無謀だろう。
『皆様、大変ご迷惑をお掛けして申し訳ございません。本日、オークションに参加して頂ける皆様は、ごゆっくりとお楽しみ下さい。今回は、残念ながら参加出来なかった皆様は、次回のご参加を心よりお待ちしております』
僕が話している間も、カゲロウは脅してきたプレイヤーにも怯まずに一生懸命に当日券を配っていた。普段と違って真面目な一面が見れて良かったかもな。この規模のプレイヤーが本来は参加したかったのなら、次回は大きな会場を建て替えても良いかもな。
『ギルマス、ここで終了だ』
両手を上げたカゲロウの終戦宣言。それと同時に僅かな希望を頼りに並んでいたプレイヤーの皆さんのテンションが波紋のように下がっていく。ただし、ブーイングは一切起きない。
『申し訳ございません。只今、全ての入場券の配分が終了しました。このあとにお並び下さっていた皆様には申し訳ございませんが、以上で当日券の配布を終わらせて頂きます』
入場券を受け取れなかったプレイヤー達をその場に残して、カゲロウと共に会場へと向かう。カゲロウは、午前の序盤に出展する予定だ。しかも、【noir】の中ではトップバッターになっているとなると多少の緊張も持ち合わせているのだろう。
『さっきは少し迷惑をかけたな。悪かった』
『いや、俺の方は大丈夫だ。それよりも、さっきは、ありがとう。ギルマス…』
あれ!?今、ギルマスって呼ばずに、シュンと呼ばなかったか
『カゲロウ、お前今…』
遂に、僕の願いがカゲロウへと通じたのか?それとも、日頃の行いのツミカサネニよるものか?どっちにしても素晴らし…
『うん!?何かあったか?シュン』
…くなかった。
どうやら、僕の盛大な勘違い。非常に残念だ。常日頃からの願い事の余り、虚言まで聞こえるとは…
『いや、何でもない。今日は頑張れよ。まぁ、僕も司会をしてるから近くにいるし、困った事があったら頼ってくれても良いぞ』
これくらいのエールが、今のカゲロウには丁度良いだろう。それに、どんなに安くても入札してくれる人がいれば、出品者側からすれば大成功だろう。頑張れ、カゲロウ。
僕達が会場に入った時にはすでに満席に近い状態だった。しかも、一番舞台に近い手前の席に見知った顔が…かなりいるな。まぁ、僕の数少ない知り合いと言う理由でチケットを渡しているので、当たり前と言われれば当たり前なのだけど、この距離間は微妙に恥ずかしい。
まだ、開始までに少し時間の余裕も有るし、せっかく来てくれたんだ。挨拶くらいはしてた方が良いだろうな。
『よぉ!皆も来てくれたんだな。今日はありがとう』
『こんな楽しそうなイベントは絶対に逃しませんよ。【ワールド】からは、この四人で伺わさせてもらいました』
ガイアを筆頭に、いつものリツ、マナカ、レジーアの四人だ。ツインテールドラゴンの討伐以降、仲良くさせて貰っている【noir】メンバーと幼なじみ関係以外では数少ない僕の気心知れたメンバーだ。
『おい、今日は俺に相応しい武器も出るのか?』
この四人の中では一番興奮しているであろうレジーアが、オークションの開始をもう待てないと言った感じで、僕に詰め寄ってきた。
『さぁ、どうだろうな。レジーアの武器は確か大剣?だったよな。僕は《鍛冶》関係の出品はノータッチだから、ちょっと分からないな。まぁ、【鍛冶ゅR】からも多く出展してし、その辺りは充分に期待しても良いんじゃないかな』
僕の説明を聞いても、まだ興奮冷めやらないレジーアは自分の相棒となる武器を探しに来たらしい。本人は必死に隠しているつもりなんだろうけど、遠足前の子供のようにワクワクしているのが周囲に伝わり過ぎている。ギルドの身内であるマナカが、レジーアとの距離を一人分空けるくらいには…まぁ、座席には限りが有るので出来れば詰めて座って欲しいけどな。
『今日はシュンの弓も出展してますか?』
続いて僕の個人的なお客でもあるリツ。リツの目的は、やっぱり弓か?
『リツ、情報サイトでリストを見なかったのか?残念だけど、今回の僕の出品は機関銃と狙撃銃のセットだ。変わった弓が必要なら、また個人的に依頼してくれたら良いぞ。最近は新しく杖も始めたから、マナカも良かったら依頼してくれよ。それじゃあ、今日は楽しんでいって下さい』
他の人に遠慮して、あまり喋らなかったマナカに対しても一言を添えた。マナカ自身もその事を察してか、笑顔の会釈で返してくれる。マナカらしいな。
次は、いつものメンバーのとこだ…と言っても、こっちは普段からよく会うので改めて何か話す必要性は低い。形式だけの挨拶だけと言うやつだ。
『アクア達も来てくれて、ありがとな』
『当たり前だ。こんな楽しそうなイベントに俺達を呼ばなかったら絶交だったぞ』
いつも以上にテンションの高いアクア。アクア達は最前列のしかもど真ん中の席を確保していた。何時から並んでたんだ?
いや、ちょっと待て。さっきの言葉は変だ。アクアはイベントの有り無しなんか関係無く、いつでも楽しそうだぞ。現に些細な狩りでも楽しんでいたはずだ。
それはともかく、どんなイベントでもアクアとジュネの二人は絶対に巻き込むけどな。苦痛系は勿論、楽しい事なら尚更な。
『ドームとレナも楽しんでいってね』
そろそろ時間だな。僕も準備をしなければ…さっきからアキラにコールで呼ばれ続けている。時間に余裕が有るにしても、あまり待たせるのも悪いだろう。
『悪い、待たせた。来てくれた知り合いに挨拶してた』
あらかじめコールでも伝えてはいるけど、形式上の言い訳くらいは必要だろう。
『それは分かったから、シュンは早くこれに着替えて』
『えっ!?マジで!?いやいや、冗談だよね』
アキラの手元に有る衣装を一目確認して、僕は明らかに同様を隠せていない。
『大マジ!!時間が無いから早くしてね』
僕にとある衣装を手渡してアキラは去っていく。この衣装が何なのかは内容を確認しなくても僕には分かる。今から、これを僕が着るのか?
僕がアキラから手渡された衣装…つまり僕の手元に有る衣装は僕がデザインしていた【執事服】だ。まぁ、細部のデザインが微妙に変わっているみたいだけど…と言うか、僕のデザインしていた物よりも細部が派手になっているよな。
これって一応は『マナさん、ミナさん用にどうかな?』って、アキラに頼んでいた代物のはずなんだけど…どこをどう間違えれば、僕用になるんだ?しかも、身長もあまり高くない僕が、これを着ても全く似合う気がしない。その事に輪をかけて、多分【執事服】が良く似合うであろうアキラの横に立てと言うのか?
だけど、あの時のアキラの目はマジだった…よな。
まぁ、こう言う時の司会は会場を盛り上げる事も重要な役目の一つになる…それも分かってはいるのだけど、納得出来るかは別問題。その事を踏まえても、やっぱり僕が諦めるしかないのか。
はぁ~~、仕方が無い。今日だけは笑いの的になる事を甘んじて受け入れさせて貰おうか。それに、司会は僕とアキラ以外にも、もう一人…僕よりも【執事服】が似合わなそうなチャリさんもいるからな。少しは恥ずかしさもマシだろう。
僕は、受け取った【執事服】に装備を替えて、皆が待っている控え室兼待機場所へと向かった。
僕が控え室に入ると、控え室の空気が一変した。
『おいおい、どうした?ギルマス。その格好は、熱でも有るのか?』
カゲロウ、仮にもギルドを束ねる代表者に対する第一声が、それなのか?と言うか、もう少し労れる優しい言葉が有るだ…うん、無かったな。熱や正気を疑ってくれただけ優しいのかも知れない。そもそもの話、僕にギルドマスターの風格や威厳は無いのだから…
『馬子にも…』
『カゲロウ!!シュンさん、そんな事は無いですよ。良く似合ってます。今日は頑張って下さい。応援しています』
カゲロウの発言に対して、間髪入れず黙らせるヒナタ。次の言葉を言わせるつもりは無いらしい。
だが、カゲロウの言葉の続きは、あそこまで聞こえれば否応にも想像出来る。馬子にも衣装…だけど、それは少し意味が違うと思う。僕にこの【執事服】は似合ってないのだから…
純真無垢なヒナタの笑顔で応援されても、この格好で頑張れる気はしない…と言うか、あれ!?何かおかしくないか?僕以外の司会者…アキラとチャリさんの二人は普段と変わらない格好のままだ。
『えっ!?アキラとチャリさんの分の衣装は?』
とある可能性が、頭を過る。寧ろ、ドッキリであって欲しい。オークション中は着なくても済むのだから。今、笑われるくらいなら、ドッキリも受け入れよう。
『あっ、その服の事?まだ一着しか出来てないから、今回はシュンだけが特別だよ。メイン司会だから、格好良くないとね』
僕の淡い期待は、アキラの無情かつ非情な一言で黙殺される。これは、謀られたのか?それとも完全な善意なのか?どっちにしても凄くテンションが下がる。
それに、一瞬でもドッキリを期待した僕が微妙に裏切られた気分だよ。
『マスター、アキラやヒナタの言う通り、格好良いのです。とっても似合ってますよです』
ケイトを含めた三人に悪意が無い事も、その言葉が嘘をついて無い事も分かる…のだけど、流石にこの姿で人前に出るのは恥ずかしくないだろうか、僕の予想の遥か斜め上をいってる気がするぞ。
さっき、決意したばかりの僕の心は、すでに折れそうだった。
『シュン、まぁ、その、なんだ。今回は色々としゃあないわ、諦めとき。それに名目上はオークション発起人で発案者なんやから、その格好はウチとしてもイケてると思うで、ウチは陰なら応援しとるから頑張りよ』
妙に『ウチは』の部分を強調するフレイ。本音半分、嘘半分と言ったところか。多分、フレイは【執事服】を着て表に出たくないのだろう。
皆にこれだけ言われると、もうあとに引けないらしい。着替え直す時間(装備を変更するだけなので一瞬)も与えてくれさそうだから、今度こそ本当に開き直って諦めるかな。
それと、オークションが始まる前に会場内のスクショの撮影は禁止設定にしておこうかな。万が一の事だけど、アキラのそばで浮かんでいる雪ちゃんが写っても困る…まぁ、それは建前で本音は、僕の執事服姿を記録に残したくないだけなんだけど。特に最前列に陣取る幼馴染みや知り合い達にはな。
『大変長らくお待たせ致しました。只今よりオークションを開催させて頂きます。司会は【noir】のギルドマスター、シュンと…』
『同じく【noir】のギルドマスター、アキラ』
『【サイク=リング】のギルマス、チャリがしますっすよ。普段の僕はギルドの奥の方で偉そうにふんぞり返っているだけっすけど、今日一日は黒の職人さんのアシスタントをするっす。皆さん、よろしくっす』
チャリさんは、今日も軽いな。この圧倒的な雰囲気に対して、チャリさん本人が本気で楽しめてるのも凄いけど、それ以上に会場にいるお客さんのウケが良い。まるで人気司会者のようだ。
ただ、会場全体を煽っての大合唱的な黒の職人さんコールだけはしないで欲しいのだけど…と言うか、ちょっと待て、今ので思いっきりお客さんに黒の職人さんの正体がバレてないか?黒の職人さんコールが想像以上に盛り上がっているのは、もしかしてそのせいか?
本当にスクショ撮影禁止にしておいて良かったし、有る意味で普段の黒一色の装備じゃなくて良かった。
チラッと隣を見るとアキラが僕を見て微笑んでいるように見える。もしかすると、ここまで考えての行動だったのかも知れないな。今さらながら、この【執事服】とアキラに感謝します。
『じゃあ、オークションの開幕を記念すべき一品目を飾るのはオークションの主催者側の一人【プレパレート】のギルマス、ネイルさんにお願いするっすよ。こちらにどうぞっす』
妙に司会者が板についたチャリさんに紹介されて、ネイルさんが舞台の袖から中央へと歩いてきた。
『只今、ご紹介に与りました。【プレパレート】のネイルです。僕のアイテムは、これです』
ネイルさんの言葉に合わせて、ネイルさんと同時に真っ赤な台車(フレイの力作)を押しながら中央へと歩いてきた黒子が、台車の上を覆うように掛けられていたこれまた真っ赤な布(僕の力作)を取り去ると、そこからアイテムの実物とそのアイテムについての解説が書かれたプレートが現れた。
名は体を現すを、これでもかと表現したアイテムだ。
二倍にな~る
効果:飲むと一定時間最大HPが二倍になる
『ネイルさん、これマジっすか?』
司会者業を忘れて驚き、まじまじとアイテムを確認するチャリさん。その様子を察してか、会場も前の方からざわつき始める。
おいおい、本当にとんでも無いアイテムがトップバッターだな。これが一番最初だと次以降に出展するプレイヤーが、可哀想になってくる気がする。それもそのはずだろう、いきなり期待値が跳ね上がったのだから…
『うん、マジ!大マジだよ。僕達【プレパレート】も【noir】に負けないように頑張ってるんだよ。ただ、僕達が目標にしている蘇生系のアイテムは、まだ出来てないのは残念だけどね。だから、会場にいる皆も次のオークションは期待しててね』
いや、ある意味では、このアイテムは蘇生系のアイテム以上に価値が有るんじゃないのだろうか?特にHPや防御力が低い僕のようなプレイヤーには…
例えば、HPが100のプレイヤーに150のダメージを受けると倒されるが、このアイテムを使っているとHPが50残る。つまり、即死するような威力の攻撃を耐えれるって事になる。一度倒された事によって他者に使って貰わざるを得ない蘇生系のアイテムより、事前に自分自身で使えるHP倍増アイテムの価値って計り知れない気がする。
『では、そうっすね。これはいきなり高価格が予想されるっすから、最低落札価格はネイルさん希望の二万フォルムから五万フォルムに変更するっす。では、事前に説明してある通り、落札に挑戦する方はご起立を、落札に不参加または諦めた方はご着席下さいっす。それではスタートっす』
オークション開始前に、いきなり倍以上の値上げを提案するチャリさん。
『『七万だ』』
『七万五千!』
『くっ、八万』
『九万、これ以上は…』
『十万フォルム』
しかし、そんな事はものともせず、瞬く間にどんどんと価格は吊り上げっていく。
・・・・・
『に、二十万です』
あっという間に当初の四倍…ネイルさんの希望価格からすると十倍か。まぁ、あの内容なら仕方が無いとも思うけどな。製作したアイテムって言うよりも、レアアイテム並の性能だからな。僕もお客さん側なら購入に走っていただろう。
『ストップ、ストップ!今の二十万フォルムの方に売ります。お買い上げありがとう。使った素材の価値を考えると、流石にこれ以上は貰えないよ。今落札出来なかった人もギルドのホームでも、数量限定で依頼を請けるから買いに来てね』
ネイルさん自らがハンマーを叩き鳴らした。落札中の途中終了にも関わらず、意外にもネイルさんの最後の一言の追加で不満が出る事は無かった。
おぉ、なるほど。上手い終わらせ方だな。高過ぎず、安過ぎず、会場と観客が白けない程よい価格で終らせる…ついでに、自分達のギルドの宣伝まで同時に終わらせている。ネイルさんがやり手の経営者みたいに見える。まぁ、みたいじゃなくて、実際にやり手なんだけど。
『ネイルさん、ありがとうございました。落札者の方は、あちらのカウンターでお支払をして、直接アイテムをお受け取り下さい』
アキラが指示した方向では、ヒナタとケイトが出展品の管理をしていた。そこには他のギルドからも一人ずつ担当者が配置されていた。
『じゃあ、どんどんいくっすよ。次は…』
ネイルさんの衝撃が冷めやらぬまま、オークションもどんどん先に進んでいる。【noir】のトップバッターであるカゲロウ作の回復アイテムセットは二万五百フォルムで売れた。ネイルさんの価格からすると平凡な金額。だが、この回復アイテムセットは衝撃的だった。
この回復アイテムセットはその名前だけを見れば、NPCの露店で五千フォルム程度出せば苦もなく買う事の出来るありふれたアイテムだ。だが、カゲロウが製作した物を普通に販売すると露店売りの回復アイテムを軽く駆逐するくらいに性能が段違いだった。なので、市販品の四倍強と言う驚愕の価格が付いたこの結果も当然だろう。その点は、《調合》系のギルドを代表してネイルさんも太鼓判を押してくれてたので間違いは無いだろう。そして次はいよいよ…
『次は、こちらにいる二人組。【noir】の天使。ヒナタちゃんとケイトちゃんの二人で作った杖っす。え~最低落札価格は三万五千フォルムからで良かったっすかね』
『『はい』です』
二人同時に被せてあった赤い布を剥ぎ取り、真っ赤な炎が燃えているように巧みに加工された美しい水晶の杖が姿を現す。【アイス&ファイア】や【風華水流】僕が以前に製作した二本の自信作よりも美しいと思う。
それに、僕には《見破》スキルが有るので、二人がこの杖を製作する為に、どれだけの時間と手間を費やして頑張って作ったのが手に取るように分かる。
【焔】攻撃力45〈特殊効果:火属性+20%〉〈製作ボーナス:消費MP減少・中〉
杖自身に魔法発動時の消費MPを減少させる消費MP減少…しかも中の効果を付けれたのか。これを装備するであろう《魔術師》にとって、そこは大きなポイントだよな。
ちなみに、製作したアイテムの製作ボーナスは製作者が自由自在に付けられる訳では無い。製作出来たアイテムの価値や製作時に使用した素材で付けれる種類、内容が変化する仕様になっている。その為、高い能力や珍しい能力は、価値や評価の高いアイテムにしか付けられない。なので、今回のような消費MP減少・中には計り知れない価値が生まれる。
『二十八万四千フォルムかぁ、凄いな~。ヒナタ、ケイトよく頑張ったな。本当に綺麗で素敵なな杖だったぞ』
皆に見られているステージの上にいる為、他の人には聞こえないようにヒナタ達に小声で伝えた。
『『ありがとうございます』です』
二人も他の人を気にしてか、小声で返してきた。まぁ、その笑顔を見れば嬉しいのが伝わるってくるけどな。カゲロウの時もそうだったけど、自分が製作したアイテムが他人に…しかも、自分達の想定よりも高く評価されるのは嬉しいものだから。
午前の部は【noir】からもう一人、アキラが出展している。《革製品》と《裁縫》の女性用の防具セットらしく、多くの女性プレイヤー達の意見で急遽午前のラストに組み込まれた。その為、僕も何が出てくるかは名前すら分からない。一体、アキラはどんな防具を作った事やら…全く知らないから、本気で気になっているんだよな。
『じゃあ、いよいよ次が午前のラストっす。黒の職人さん、紹介の方はヨロシクっす』
午前の最後になって、ようやく僕に振ってくるのか…今まで、チャリさんの影で黒子に甘んじてたツケがやって来たのかも知れないな。まぁ、知らない相手ではないだけ、良かったけどな。
『午前のラストは【noir】のギルドマスターで、トリプルオー開始当初から僕の相棒でも有るアキラさんです。よろしくお願いします』
アキラを紹介して、僕はオークションをサポートする為にチャリさんの見よう見まねでアキラの隣に付いた。隣でチャリさんを見続けていたお陰で、動作や喋る言葉が僕に似合わず滑だ。
『アキラさんは、どんなアイテムを製作したんですか?』
今日は、いつにも増して凄く自信に満ち溢れている気がする。本当に何を作ったんだ?
『私が作ったのはこれです』
一瞬の沈黙のあとに、会場中から歓声がどよめく…と言うか、これはマジか!?
【鱗の水着】防御力20〈特殊効果:耐水/速度上昇・中〉〈製作ボーナス:透過防止〉※女性専用
『こ、これは、み、水着ですか?えっと、最低落札価格は、いくらになさるのでしょうか?』
この水着は鱗とは名ばかりで、しっかりとした一枚生地で縫われた現代風の水着になっている。決して、多くの鱗で構成された野蛮部族が着てそうな水着ではない。
そして、会場の反応は実際に装備する事が出来る女性プレイヤーの皆さんだけでなく、女性専用なので絶対に装備する事が出来ないはずの男性プレイヤーの皆さんまでが、かなり熱くなっているのがステージ上の僕達にも伝わってくる。
でもですよ、アキラさん。流石に、これはやりすぎじゃないのでしょうか?
これからの季節(トリプルオーに季節と言う概念があるかは分からないけど…)に合わせて、水着と言う事は理解出来るんですけど、あまりにも、その、なんと言うか、身体を覆い隠す生地の部分が少な過ぎませんかねぇ?まぁ、男の僕としては眼福で有り難いアイテムではある。
この水着を見た男性プレイヤー達の急激なテンションに若干以上引き気味の女性プレイヤー達。だが、そんな事はお構いなしにオークション会場は確実に午前で一番の盛り上がりを見せていた。
『これは、そうですね。見なさんのご期待にお答えして二万フォルムからで、どうでしょうか?』
まぁ、装備の性能としては妥当なとこだろうけど、その見た目の織り成す付加価値が計り知れないんだよな。一体、いくらの値がつくんだろうか?
『俺は二万二千で』
『『三万』』
『甘い!三万五千だ』
『あなたも甘い!四万五千よ』
『お前もな。五万フォルム』
『ふっ、六万だ』
『ふん、私は七万よ』
『じ、十四万。倍プッシュでどうだ』
皆、そんなにしてまで、この水着が欲しいのだろうか?確かに、現状一点しかないと言う付加価値は有る。だけど、二つ目を製作出来ない訳ではないんだけどな。皆、気付いてないのかな?
…と言うか、これならあの真っ白な【湯着】を出しても売れたかも知れないよな。風呂が出来た時の優先入浴券とセットにして。
『まだまだ甘い、十五万よ』
『ううぅっ、じゅ、十五万五千』
『残念、十六万よ』
あの綺麗で目立つ女性のプレイヤーさん、さっきから一切躊躇せずに淡々と価格を上げてるよな。いったい、いくらくらいの予算を用意しているんだろう。
・・・・・
『三十万よ』
げっ、三十万フォルムを超えてるし………
『う~~~、三十万四千、いや、三十万五千フォルム、これ以上は無理だ』
綺麗で目立つ推定お金持ちの女性プレイヤーさんに最後まで抗い続けた男性プレイヤーさんがギブアップ宣言と共に最後の抵抗を見せる。
『三十一万よ』
その最後の抵抗も虚しく、あっさりと金額を上げる綺麗で目立つ推定お金持ちで容赦ない女性のプレイヤー。
周囲の視線等は全く気にもせずに最後まで粘っていた男性プレイヤーが遂に諦めたような面持ちでイスへと腰を下ろした。見るからにテンションが下がっている…と言うか、そんな事よりも最終価格が凄すぎると思う。
落札を決定付けたハンマーの音が、僕には何故か孤高の音に聞こえていた。
『えっ~と、こんな価格で買って貰えて嬉しいです。それと【noir】では、個別デザインの依頼も請けてますので、そっちの方もヨロシクお願いします』
アキラもギルドの宣伝してるし…と言うか、その発言を聞いた価格戦争に敗れた勇者が一気に息を吹き返している。
【noir】では週一でしか依頼を請けてないのに、依頼が殺到したらどうするんだろうな。この状況だと、絶対に水着関係の依頼が殺到しそうだな。まぁ、他にも自分で製作するプレイヤーも出てくるだろうけど。通常の依頼枠とは別に、水着専用の依頼枠を増やす事も検討しなければならないかもな。た・だ・し、この他称勇者には販売しない方向で話を進めよう。どうも犯罪臭い匂いがする。
『以上で午前の部を終わらせて頂きます。午後の部は約二時間後の午後二時より再開させて頂きます』
しばしの休憩。一時の憩い。まぁ、主催者側の僕達にしてみれば、片付けや午後の準備の時間を差し引くと、僕達自身の休憩時間は無いかも知れないけどな。それでも、ログアウトして昼ご飯くらいは食べたいよな。
『皆、午前中はお疲れ様でした。カゲロウ、ヒナタ、ケイト、あのアイテムは凄かったな。どれもこれもかなり驚いたよ。それと、最後のアキラのアイテムには本当に色々な意味で驚かされたな。皆、午後からも頑張ろうな』
午後のトップバッターはフレイ。フレイの笑顔からして、こっちも期待出来そうだ。
嬉しい事に、今日は【noir】のメンバー大活躍だと思う。是非、僕もその波に乗りたいものだ。
『皆様、ご着席下さい。只今よりオークション午後の部を始めます』
がやがやしていた会場が、アキラの一言によって一瞬で静まりかえる。
『よろしいっすかね?皆さん、ご注目をして下さいっす。これは多分トリプルオー史上初の快挙になるはずっす。これまで多くの《鍛冶》スキル所持者が懇願して、敗れさった刀の製作に成功した【noir】のフレイさんっす。フレイさんは二振りの刀を出品してくれてるっす。皆さん、拍手っす』
午後からのトップバッターのフレイは、いきなり会場全体の度肝を抜きボルテージを一気に最高潮まで上げ、チャリさんの言葉と共に大きな拍手の合唱が繰り広げられている。
まぁ、チャリさんが言ったように、今までの《鍛冶》スキルでは刀を打つ事は出来なかった…それは知っている。だが、トリプルオー史上初は言い過ぎの気がする。
武器系スキルと生産系スキルを合わせた複合スキルの可能性は以前にフレイと話してはいたし、こんなにも早く新種の武器の製作を実現するとは思ってなかった。有る意味で発案者の僕ですら、言葉が出ないくらい驚いているのだ…観客席にいるプレイヤー達の驚きは計り知れないだろう。
だだ、僕としては最も意外に感じたのはオークションを共同で運営している同じ生産系で、しかも《鍛冶》スキルに特化している【鍛冶ゅR】や【闇鍛冶店】のプレイヤーまで驚いているところだろうか…もしかして、チャリさんの言うように本当に史上初なのか?
『ウチが今紹介された【noir】のフレイや。この二振りの刀は、ウチの複合スキル、《刀鍛冶》で打ったものや。ただの珍しい刀ってだけやない。その性能の方もウチが保証するで!えっ、何や?ウチの保証なんか全く保証にならへんて。まったくもってその通りや。けどな、そんな言葉を言いたくなるくらいには自信の逸品て事やで』
自信満々に自分の刀について語るフレイとフレイの一人乗り突っ込みを絡めた関西風の説明を食い入るように聞いている観客席の皆さん、それに何かしらのヒントを得ようとしているステージ脇の【鍛冶ゅR】や【闇鍛冶店】のギルドメンバー。
そこには、一触即発の雰囲気があるようにも見える。
『そやな…開始価格は二振りセットで十万フォルムからスタートや』
本当、いつのまに《刀鍛冶》スキルまで取得してたんだよ。皆を驚かせる(【noir】のメンバーを含む)為に今日まで秘密にしておきたかったんだろうけど、発案者の僕には少しくらい…せめて、何かしらのヒントくらいは教えて欲しかったよ。
【氷雨】攻撃力60〈特殊効果:氷属性〉〈製作ボーナス:防御力上昇・中〉
【蛍火】攻撃力60〈特殊効果:火属性〉〈製作ボーナス:攻撃力上昇・中〉
※セットボーナス:速度上昇・中
『この二刀を同時に装備した時の名前は【氷雨蛍火】。個別でも装備する事は可能やけど、二刀流を想定して打った二刀流専用の刀やから、なるだけ二刀流出来る者に落札して貰いたいわ』
フレイの願いは届いたのか?届いてないのか?は分からないが、凄い勢いで落札価格が上昇していく。チャリさんが絶妙に捌いているけど、僕には誰が何を言っているのかさえ分からない。
現存していた刀…つまり、NPCから購入する事が可能な刀の最高攻撃力は50。それを凌駕して、なおかつ二刀同時に装備すればボーナス等で攻撃力と防御力、さらには速度まで上昇するとなれば、この喧騒も仕方が無い事なんだろうけど…勢いが、今までとは全然違う。そして、その勢いは全く衰える気さえしない。
すでに五十万フォルムは越えた。皆、このオークションで何かしらを得る為に狩りやクエスト等で大金を用意していたのだろう。これを見ていると次の開催も頑張ろうと言う気がしてくるよ。
『はい、そこのあなた。本日の最高落札価格の九十八万フォルムで落札っす。おめでとうっすよ』
アキラの鳴らす落札を決定付けるハンマーの音も高々と会場全体に鳴り響いていく。それと同時に本日最高落札価格に対する称賛と拍手の嵐。
惜しくも百万フォルム越えはしなかったが、フレイも落札者もかなり喜んでいるな。オークションと自称スキルの発案者としては嬉しい限りだな。まぁ、この次に控えているのが僕の出番じゃなかったら、もっと喜べたんだろけど。
では何故、こんな巡り合わせの悪い順番を組まれているかと言うと、単純に僕のくじ運の悪さによるものだ。まぁ、出品者全員参加のくじ引きで決めたのだから仕方が無いのだけど…現時点での最高落札価格を叩き出したフレイの次だけは、今になって考えると理不尽だよな。
最初は同じギルドのメンバーのあとと言う他の皆よりは少し落ち着けそうな順番に対して、心の中で密かに喜んでいた僕自身が今となっては痛々しい。
いまだ、最高に盛り上がった熱気が覚めない中…
『さぁ、次は、ある意味で本日のメインイベントっすね。このオークションの発案者で会場のオーナー、黒の職人さんの出展っす』
チャリさんの過剰とも言えなくない演出と共に、僕の名前?がコールされた…と言うか、何で僕だけキャラクターネームじゃなくて、愛称なんだ?まぁ、黒の職人さんに反応した僕も僕なんだけど…
その僕の反応よりも一歩早く、会場全体から一斉に拍手が巻き起こり、『黒の職人さん』と『鞄』と言う二つのワードを含めたコール鳴り響く。しかも、フレイのあとと言う順番も有り、会場全体の雰囲気が異質とも言えなくない異様な雰囲気を醸し出している。
『え~っと、【noir】のシュンです。僕は狙撃銃と機関銃のセットを出品しました。性能としては自信が有るので四万フォルムが最低落札価格です。個人的には本当に必要な人の手元に行って欲しいです』
会場の雰囲気に飲み込まれないように、一つ一つの言葉がたどたどしくなりながらも丁寧に話す。
『じゃあ、いくっす。欲しい人がんがん手を挙げるっす』
今まで以上に会場を煽るチャリさん。僕としては本当に必要にしているプレイヤーが一人立ち上がってくれれば良い、これは狙撃銃と機関銃を出品すると決めた時から思っている事だ。
『………』
狙撃銃と機関銃と言うフレーズを聞いたとたん、先程までの盛り上がりが嘘だったかのような静寂が会場全体に訪れた。
この状況に、あえて効果音を付けるなら「し~ん…」。実際はそんな「し~ん…」すらも聞こえてこない無音の世界。
『………』
おい、さっきまでの異様なハイテンションは、どこに行ったんだ?皆さん、起きてますよね。
『………』
その間約一分。誰の声も上がらない。静寂と緊張の影響か?約一分が十分にも二十分にも感じられる。
『えっ~とですね、その…誰か入札者はいないですか?…』
いたたまれない空気に耐えきれなかったチャリさんの普通の喋り方。
マジで!?誰一人としていないのか!?本当に凄く良い物なんだよ…この銃達。
『・・・・・・・・』
隣同士に座る観客達がステージ上には聞き取れないないような小さな声で、何かを話始めている。中には『何で鞄じゃないんだ?』の声も…
そして、その全ての視線は、僕と僕の子供達に注がれている。全ての目から注がれる視線の暴力は、実際に殴られるよりも痛い気がする。
『…えっ~と、残念ながら|です・・ね。今回は落札者は無しみたですね。これは、多分…そうですね。ちょっと順番が悪かったかも知れないですね。黒の職人さんには、次回頑張って貰いたいですさぁ、さぁ、皆さん!気分を変えて次に行きましょうっす』
まぁ、《銃士》が不遇で人気が無い事も知っていたし、ある程度入札者が少ない事に対しての覚悟も有ったけど、この広い会場に一人もいないんだな。
まぁ、チャリさんの言う通りで、確かにフレイの次で【鍛冶ゅR】の前となると、メイン料理からメイン料理へ移る箸休め的な割合で順番は悪かったのかも知れない。いや、きっとそうだ…うんうん、そうに違いない。
…と言うか、そうだと信じたい。切実に…
それにしても、落札者ではなく、入札者が0か…改めて《銃士》に対しての不人気さを突き付けられた気がする。こんな事が続くと《銃士》を気に入っている僕だってね、心が折れるんだよ。心がね!
まぁ、少し冷静になって考えると、そもそも入札者がいないから落札者もいないんだよな。落札者がいれば必然的に入札者もいるのだから…はぁ~~~、ますます凹む事実に気付いただけなのだけど、僕にはこのあとも笑顔で司会を続ける自信が無い。
『はい!気分を切り替えてまいりましょう。次からは僕の銃とは違って、皆さんがお待ちかねのギルド【鍛冶ゅR】のメンバーの製品が出てきますよ。皆さん所持金に余裕は有りますか?まずは、ギルドマスターのナナクサさんお願いします』
自信が無い…今は、そんな事を言っている場合でも無いのだけど。この場合は発案者として司会だけはオークションに貢献するしかない。
皆さんに最後まで笑顔で楽しんで貰いたいのは、(入札者0の)僕だって他の出品者達と変わらないのだから。まぁ、多少の自虐的なコメントくらいは許して欲しいところだな。
入札者0事件から、どれくらいの品を僕達は捌いたのだろうか?たった今最後の品の入札が終わった。だけど、僕にはあまり記憶が無い。たんたんと作業を繰り返して、かなりの時間も経過しているので、それなりの数が有ったくらいしか覚えていない。その中には僕の欲しかった素材も複数点出品されていたけど、残念ながら司会をしていた為に、僕自身は落札そのものに参加する権利が無かった。
しかも、忙しかった事と入札者0の衝撃もあいまって、落札者の顔自体も覚えていない…本当に、色々な意味で凄く残念なオークションだったと思う。
『えっ~と、さっきの品が最後の予定だったんすけど、急遽変更があったみたいっす。と言う訳で、次が本日の本当のラストっすね。皆様、長い間お付き合い下さって、本当にありがとうっす。最後の最後まで楽しんでって欲しいっすよ。えっ~と、最後は…【カーペントリ】のギルドマスター、トウリョウさんからの急遽持ち込まれた飛び込み出展品っす』
えっ!?何、それ?僕は聞いてないのだけど…それ、いつ決まったの?しかも、ステージ上では僕だけが慌てている。どうやら、アキラも知っているらしい。
左右を見渡すと、ステージ脇にカンペを掲げるネイルさんがいた。あれはいつから出されていたんだろうか?ネイルさんの表情から微妙に疲労を感じる。
『今紹介のあったトウリョウや。私のギルドは、本日付けでホームを別の場所に移転したんや。そやから、オークションの記念…ちゃうな、今後のオークションを盛り上げる為にも今日まで使ってたホームをこのオークションに出品したいんよ。規模としては二十人想定で大部屋五部屋に倉庫と小さな工房付き。西側の大通りにも面しとるから、そんなに不便はないはずや。えっ何?それなら、何で手放すかって?そんな他にええ物件見付けただに決まっとるやろ。中古っちゅう事で、相場よりも少し安くしとくから誰か買ったってや』
とんでもない物が出品されたな…まさかギルドホームを一個丸ごととはスケールがデカイと思う。しかも、そこそこの規模のギルドホーム。まぁ、【noir】がそれを言うなと言う話だけど…
でも、どこに移転したんだろうか。あとで、聞いてみよう。多分、わざわざ聞かなくても教えてくれるとは向こうから思うけどな。
『最低落札価格は五十万フォルムで、最高落札価格はちょい狭目の中古物件っと言う事も加味して…おまけのおまけで百万フォルムにさせてもらうわ。ちなみに、早いもの勝ちの一点物やで』
新しいやり方だな。最高落札価格と言う設定は思い付かなかった。これは、かなり効率が良さそうだよな。次回以降は参考にさせて貰おう。まぁ、僕としてはその前の段階で売れる…いや、その前に一人でも良いので興味を示して貰える事を目指さないといけないんだけど。自分自身で思っていて心が痛い。
『おっし、百万フォルム!現金一括払いだ』
開始直後の一声にハンマーが高々と鳴り響く。めちゃくちゃ早い。しかもぼんやり最高額を即決じゃないですか。この気前の良さ、一体誰が?…って、お前か。
『落札者の方は、前に出て来てくださいっす』
チャリさんに招かれて、落札者は颯爽とステージに上がって来た。
『自己紹介とこのホームを買われた理由を説明して貰えますか?』
色々とツッコミたい事は有るが、今日のところは司会者としての仕事に徹させて貰うぞ。
『俺はギルド【双魔燈】のマスターでアクアだ。ギルドは作っていたんだが、ホームはギルドの資金的な問題でまだ無かったんだ。そんな時に、貯金額ピッタリの百万フォルム。安くて俺達の規模的にも丁度良いホームが出品されたから即決で買わせて貰った。場所的にも広場に近くて最高だ』
今話した内容よりも嬉しそうだな。だけど、本当に良いのか?お前のギルドメンバー達は頭を抱えているように僕には見えるぞ。
さすがにアクアもそれには気付いたらしい…けど、彼は一切怯まない。
『じゃ、譲渡するで。ほい、どや?』
『確かに頂いた。大切に使わせて貰うぞ』
実際に手に入った事で、より一層喜びの顔を増すアクア。
お前は本当に満足そうだな。まぁ、最初から何も買わず(正確には個人的な予算面で欲しい物が買えずだけど)に最後まで参加していたかいが有ったらしい。ただ、いくら欲しくてもギルドの予算に手をつけなかった事だけは誉めておこう。
『そろそろ、今回のオークションを締めるっす。各ギルドのマスターさん大集合っすよ』
チャリさんが、オークション主催者側の生産系七ギルドの八マスターに呼びかけてステージ上に集める。あらかじめ事前に決まっていた事なので、全員がスムーズに集まってきた。
『全員が揃ったところで、当然締めの挨拶は黒の職人さんっすね』
これについても事前に決まっていた事だ。だから、今さら嫌だ嫌だとごねる気も無い。
『皆様、本日はオークションにご参加頂きありがとうございました。残念ながら、僕のアイテムだけが入札者0を出し売れ残ってしまいましたが、今日一日を通して楽しく過ごせたと思います。入場者の見極め等、至らないところも多々有ったと思いますが、そこは次回開催への課題とさせて頂いて今回のオークションを終わらせて頂きます。今日は本当にありがとうございました』
皆で一斉に頭を下げた。それと同時に僕の自虐ネタにクスクスと小さな笑いが出ていた会場から一斉に拍手が巻き起こる。スタンディングオベーションとか映画の中の世界だと思ってたわ…なるほど、これはちょっと良い気分だ。
今日は、オークションに予定を大幅にオーバーしたと言う事も有って、反省会等は後日回しになった。なので、今はギルド内だけで軽い打ち上げをしている。
『今日は、皆お疲れ様でした。雪ちゃんもずっと良い子にしてたね。あまりお喋りも出来なかったけど、雰囲気くらいは楽しめたかな?』
いつものようにアキラが仕切り、いつものように僕は皆に紅茶を配って行く。紅茶を淹れる作業だけは、どんなに疲れていても他者には譲れない。
『ゆきね、とっても、と~ってもしずかにしてたの。それといっぱいのひとに、ちょっとビックリしたけど、みんながたのしそうだったから、いっしょにいたゆきもうれしいの。おにいちゃんたちもおねえちゃんたちもかっこうよかったの』
ニコッて笑う雪ちゃんの笑顔で、皆の疲れもぶっ飛ん気がする。雪ちゃん、マジ天使。もはや【noir】に欠かす事の出来ないマスコットキャラだな。
『ギルマス、またやろうな。今日は楽しかった』
『私も、楽しかったです』
『ウチもや!!シュンはどないやった?』
『僕か?この執事服と入札者0以外は楽しめたかな。まぁ、入札者の件については次回以降で挽回するよ。それよりも、皆のアイテムは凄かった。どのアイテムにも、かなり驚かされたんだぞ。特にフレイ、いつの間に《刀鍛冶》スキルを取得したんだ?』
スキルを取得していた事にも驚いたが、オークション当日までギルドメンバー全員に隠し通すとはな…その努力にも恐れ入りました。
『その方が、絶対に皆が楽しい思てな。ビックリしたやろ。これでも、ここにおる全員に隠し通すのは大変やったんやで。残念ながら、雪には知られてたけどな』
『ひみつなの』
なんとも楽しそうなフレイと雪ちゃん。右手の人差し指を立てて口元に当てて笑うる仕草がなんとも可愛らしい。それに引きかえ、フレイの悪戯心満点の笑顔ときたら…いや、まぁ、これはこれで可愛いのかも知れないな。
『あぁ、驚かされた』
これが僕の素直な感想。
『でも、シュンは司会しとったから何も落札してないんやろ?これはウチから日頃のお礼と感謝の品や』
フレイからアイテムを渡される。えっ!?これって…
『竜髭じゃないか、どうしたんだ?』
『どうした?って…シュンも、ウチが落札するの目の前で見てたやないか』
…と言う事は、僕が精神的にやられていた後半に出展されていたのか?
『いや、その、なんだ…落札者0の衝撃を引きずっててな。オークション後半の記憶が微妙に無い感じなんだよな』
少しだけ微妙な空気になるのを感じた。
『それは、まぁええわ。ウチらには、ちょいちょいと休憩時間有ったからな。たまたま一つだけ落札出来たんやわ。本当に、たまたまやで』
『マジでか!?ありがとう』
超感謝したい。あとでお金を払おう。
『『『えっ!?』』』
喜び驚く僕以上にヒナタ、ケイト、カゲロウが驚いている。一体どうしたんだ?
『俺もシュンが探してたの知ってたから落札した』
『『私も手に入れました』です』
ヒナタ、ケイト、カゲロウの三人にも竜髭を取り出した。どうやら、三人も僕の為に忙しい時間の合間を縫って落札してくれていたらしい。皆、優しいな。
『皆~、ありがとう。本当に嬉しいよ。お代はあとで必ず払うよ』
存在自体が少ない本当に貴重なレア素材だから、そこそこの価格にはなっているはずだ。僕一人に対して四個は多いのかも知れないけど、皆の気持ちは素直に嬉しいからな。一つも無駄にしたくない
『ダメだ』
『アカン』
『ダメです』
『Noと言いますです』
だが、その言葉は四者四様に掻き消される。何故だ?
『ギルマス、多分皆一緒の考えだと思うから、俺が代表して答えるけどさ、こう見えても俺達はギルマスには色々と感謝してるんだ。俺達は、すでにギルマスからいっぱい貰ってる。鞄とか装備とか…ギルドとか。だから、これはそのお礼だと思って黙って受け取って欲しい』
ヤバい!これはちょっと…いや、かなりヤバいな。心からじ~んときているのが分かる。涙が出そうだ。
『うん、分かった。ありがとう。じゃあ、これは有り難く貰っておくよ。でも、このお礼は別件でさせて貰うからな。それは、僕の気持ちだから受け取って欲しい』
何かしらのお返しはしたいと思う。お金じゃない何か別の方法で。
『いや、でも、それじゃ…』
だが、それでも何か食い下がろうとするカゲロウ。
それを見ていたフレイが宥めるような口調で口を開いた。
『カゲロウ、大丈夫や。シュンの気持ちもウチは分からんでもないし、その辺が落としどころやろ。シュン、そやからその申し出は了解や。でも、まぁ、その辺りは気長に頼むわ。そやな、ウチらが忘れた頃にさりげなくしたってな』
フレイの言葉にカゲロウを含めた三人も同調して頷いた。
『そうなると私だけシュンへのプレゼントが無しだったね。ごめんね、シュン』
アキラも僕と同じで全く休憩無しで司会をしていたのだから、仕方が無いだろう…と言うか、僕へのプレゼントくらいで残念がらなくても良いと思う。
『いつも一緒にいて貰ってるかな。それで十分だ』
だけど、フォローくらいはしておこうか。その言葉に嬉しそうな表情を見せるアキラに僕も嬉しくなる。
しばらく、皆で打ち上げを楽しんで僕達はログアウトしていった。明日からは、しばらく生産活動で忙しいだろう。【魔銃】に露天風呂、そして…ヒナタの夢の《造船》も。
装備
武器
【烈火】攻撃力50〈特殊効果:銃弾に火属性が追加〉
【霧氷】攻撃力50〈特殊効果:銃弾に氷属性が追加〉
【雷鳴】攻撃力50〈特殊効果:銃弾に雷属性が追加〉
【銃弾3】攻撃力+15〈特殊効果:なし〉
【魔銃】攻撃力40〈特殊効果:なし〉
防具
【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40
〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+1010%/跳躍力+20%/着心地向上〉
アクセサリー
【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉
【ノワールホルスター】防御10〈特殊効果:速度上昇・小〉〈製作ボーナス:リロード短縮・中〉
+【マガジンホルスター2】防御力5〈特殊効果:なし〉〈製作ボーナス:リロード短縮・中〉
【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉
《双銃士》Lv41
《魔銃》Lv40《双銃》Lv36《拳》Lv35《速度強化》Lv70《回避強化》Lv73《旋風魔法》Lv25《魔力回復補助》Lv71《付与術》Lv38《付与銃》Lv48《見破》Lv63
サブ
《調合職人》Lv18《鍛冶職人》Lv26《革職人》Lv47《木工職人》Lv16《鞄職人》Lv48《細工職人》Lv23《錬金職人》Lv24《銃製作》Lv30《裁縫》Lv25《機械製作》Lv1《料理》Lv32《造船》Lv1《家事》Lv59
SP 43
称号
〈もたざる者〉〈トラウマ王〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈自然の摂理に逆らう者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉




