★第二回公式イベント 2
・第二回公式イベント一日目 ~フレイ編~
『やっぱり、まだ少し早かったかな?』
僕はフレイとの待ち合わせ時間に合わせて、五分前にトリプルオーにログインをした。
普段の僕なら、もう少し早くログインして待ち合わせ場所の広場で軽く二十分~三十分は待っている事だろう。本当に普段の僕なら、待つ事がさも当然と言った顔で平気で待つ…だけど、今回のイベントが肝試しだった場合の事が頭の中をちらつき、その事を考えれば考える深くほど二十分~三十分前から待っていると言う、誰が見てもやる気に満ち溢れて見える感じは是が非でも避けた。なので、今いる場所は広場ではなく【noir】のホームのリビングだ。
そんな事を思いながら、改めてコールリストを確認するけど、フレイはまだログインしてないらしい。いつも通り…いや、いつも以上にゆっくりと時間を掛けて紅茶を準備して、これまたゆっくりと時間を使いながら紅茶を飲み、精神を落ち着かせる。
それに、感情度システムが導入されたので、完全に趣味スキル扱いだった《料理》も若干だけど確実に以前よりも日の目をみている。何故かと言うと、感情度を上昇させる為に飲食をする事が最も手っ取り早かったからだ。他にもクエスト達成やレベルアップ、珍しいところでは精神的なリラックス等、色々と有る。
まぁ、実際は《料理》での感情度の上昇値は低いのだけど、クエストの達成やレベルアップ、それに判定基準が微妙なリラックス等に比べると遥かに手頃だよな。その活用方法を踏まえた結果、新しく《料理》スキルを修得したプレイヤーも増えたらしく、以前みたいに不遇スキルや完全な趣味スキルと呼ばれる事も無くなっていた。
『シュン、お待たせや。ちょこっとだけ待たせか?そこは堪忍やで』
そうこうしている内に、ようやくフレイもログインして来た。
リラックスして落ち着けた時間の事を考えるとちょこっとだけと言う点に僅かな疑問は残るけど、今回の僕にとっては大きなプラス要因だろう。むしろ、逆に遅れてきた事に感謝したいくらいにな。なので…
『気にするな。僕も来たところだから』
デートの定番のような台詞を残させて貰おう。
『そんな事よりもフレイの準備は出来てるか?それじゃあ、広場に行くぞ』
フレイが頷くのを確認して僕達は広場を目指した。
『うわっ…えげつない人やで、これ』
全くその通りだと僕も思う。
今回のイベント用に設置されている臨時の転送ゲートの前には鞄事件並…いや、明らかにそれ以上のプレイヤーで溢れていた。転送ゲート自体も複数有り、どのゲートもかなりの列が出来ているのだが、どんどんと前に進んでいるので、思ったよりも待つ必要は無さそうだ。
『そうだな。まぁ、行ってみようか。問題は、どんなエリアが用意されているのかだからな』
僕にとっては、そこが一番重要で今回のイベントの核心だ。仮に百歩…いや千歩譲ったとして、イベントの内容が肝試しだった場合は、必ず新たなトラウマを生まない幼い子供にも優しいエリアにして下さい。本当にお願いします。
僕とフレイは、互いにお互いだけをパーティー登録してゲートから転送していく。
転送されるエリアは、複数用意されている転送ゲートから、どれを選んでも完全に個人の運らしい。これで完全に肝試しだけを徹底的に回避する方法は無くなった。
ちなみに、今日のパーティーリーダーはフレイになっている。まぁ、言うまでも無い事だとは思うけど、僕が使い物になるかどうかが完全に未知数なのだから…
『…うん。定番だな。はぁぁ~~~~』
妙に納得すると共に長い長い溜め息を吐く僕。心の中では『怖い』の言葉を大絶賛連発中だ。
『ほんま、頭に「ど」が付く程のThe・定番やな』
いやいや、今フレイが定番の頭に付けたのは「ど」ではなくて「ザ」だから…でも、今の不確定のボケに突っ込むのは明らかに僕の負けだろう。それに、もしかすると僕の気を単純に紛らわせようとしてくれているだけかも知れないしな。
僕とフレイが転送されてきたエリアは、古き良きザ・日本の墓地…いや、この場合は墓地よりもお墓と呼ぶ方が似合っている気もするな。しかも、妙に田舎臭い。あの木で出来た板は、確か卒塔婆だったかな?無駄にリアリティーが有り過ぎる凝った造りになっている。
やっぱりと言うか、予想通りと言うか、肝試しみたいだな。それに、ご丁寧な事と言うか…このエリアの時間帯までをわざわざ丑三つ時に設定されている。
現実では深夜のお墓には行かない。絶対に行かない。何が有っても、誰が一緒でも行かない…と心に誓ってたんだけどな。
おそらく、この場所は僕が今回のイベントを予想した時に最も来たくなかったであろう場所ナンバー1だ。まぁ、おそらくを付けたのは、これ以上最悪であろうエリアが無い事を願っての事だけど…
『はっきり言うとや、何も聞かされずに、いきなりこんなところに転送されてもウチらはどないすれば良いんやろな…って言うか、シュン。自分、若干顔青いで。ほんまに大丈夫かいな』
転送されてから、ほんの僅かなこの短期間で、もうそんなに顔に出てるのか?我ながら情けない精神だ。いや、まだ足が震えていないだけ自分で自分を誉めてあげたいところだな。
『まだ、一応は大丈夫の部類になる?のかな。まぁ、他人から見れば、『コイツは何を言っているんだ』と思うだろうけど、これでもギリギリな』
『そなんか?本当に無理なら、ちゃんと言いよ』
下から僕の顔を覗き込むように見てくるフレイ。
今までとは少し違うフレイのその表情から、本気で心配してくれているのが伝わってくる。
『ありがとう、フレイ。それで、最初の質問だけど、多分これに書かれているであろう内容をこなせば良いんじゃないかな』
そして、まだかろうじて僕の頭は機能しているらしい。
僕は、転送されてきた場所の足元に都合良く目立つように落ちていた漢字二文字で指令とだけ書かれた封筒を手に取り中身を確認した。その封筒の中には、指令書と地図とマッチ(この時代には合わないけど、この場所に絶妙に合っている)の三つのアイテムが入っていた。
指令1
地図に記された五つの灯籠に火を灯せ
指令の文章的には分かりやすいけど、本当にそれだけなのだろうか?
『地図によれば、この五ヶ所に問題の灯籠があるみたいだな。エリア自体はそんなに広く無さそうだし、さっさと終わらせよう』
…と言うか、僕は一分…いや、一秒でも早く終わらせたい。
僕達は、警戒しながら慎重に最初の灯籠を目指す。今ほど、最初のジョブ選択で前衛系を選ばなかった事が、僕にとっては一番の幸せだったと思う事は無い。
僕は、さりげなくフレイを盾に…もとい背中に隠れながら、フレイの防具の端を左手でちょこっと摘まみながら進んでいる。出来ている自信は無いけど、精一杯のポーカーフェイスも添えて…
ちなみに、シュン本人はさりげなくを完璧に装っていたつもりだが、摘ままれているフレイからしてみれば完全にバレバレだった。
それにしても、深夜のお墓に初めて来るけど、深夜のお墓と言うのは、こんなにも静かで気味が悪いのか?想像以上に僕には酷なんだけど…現実では、お化け屋敷以外で絶対に有り得ない感じの火の玉がゆらゆらと揺れていたり、妙にひんやりとした湿っぽい空気が漂っている。
僕の持つスキル…《見破》のお陰でエリア設定外の余計な物まで僕の目には見えている気もしている。実際は、完全に気のせいで、そんな事は有り得ないのだけど…そう思えても仕方が無い。いくらこの場所が現実ではないと言っても、これはやり過ぎじゃないのかな?
運営さん、知ってますか?精神的なトラウマと言うのは、こう言う時に生まれるんですよ。本当に知ってますか?
かなりおかしい状態の僕で、終わりまで自分自身を保つ事が出来るのだろうか?まぁ、それは神のみぞ知る事であって、僕個人としては100%自信は無いからな。
最初の灯籠の場所に着き、フレイは素早く手に持っていたイベント用アイテムのマッチで火を灯す。ただ、僕はフレイの背中にいたので、いつ火を灯したのかも分からなかった。
『シュン、あのな、良い話と悪い話が有るんやけど、どっちからが良い?』
『う~ん…個人的に良い話からでお願いしたい』
僕としては、イベントの攻略よりも今すぐに少しでも気分のドーピングをしたい。
『分かった。良い話の方は、出てくる魔物は予想通り幽霊系やけど、見た目はめっちゃ普通やわ。全くグロテスク系では無いで』
『えっ…』
ちょっと待って欲しい。それで良い話になるのか?僕としては、あまり喜ばしい事では無いんですけど…と言うか、なぜ?急にその事を話し出したんだ?その事を考えると悪い話を聞くのが怖い。それでも、全く聞かないよりは遥かにマシだけど。
『…分かった。それで、悪い方は?』
僕は意を決して、フレイに訊ねた。
『うん?悪い話か?悪い話は、灯籠に火を着けたら、灯籠の周りに幽霊が出るわ』
フレイの一言で僕の脳は一気に思考モードから戦闘モードへと切り替わる。だが、敢えて一言だけ言わせて貰おう。
『フレイ!!それは早く言え!!』
良い話から話す事を選んだのは僕だけど、TPOは弁えて欲しいところだ。
灯籠に火を灯すと同時に目の前に現れた多くの幽霊は、アニメや漫画に出てきそうなデフォルメされた幽霊だった。フレイの言う通りで、幽霊の見た目にかなり救われた気もするけど、フレイはちょっと冷静過ぎないか?
『取り敢えず、物理攻撃からテストするで』
フレイが、三節棍を手に僕を庇うように前へと駆け出していく。
うん、かなり男前だ。当社比でも五割増しで格好良く見える。あっ!これが吊り橋効果と言うやつか?確かに、これが現実なら一気に好きになりそうだよな。いや、僕は確実にフレイに惚れていただろう。むしろ、こんな事を考えるくらいなのだから、現在進行形でフレイに惚れているかも知れない。
何故、僕が冷静にこんな事を考えているかと言うと、僕にとっては戦闘の対象が、いくらデフォルメされた幽霊であっても、その存在が幽霊だと言う事には違いないので現実逃避からは逃れられないからだろう。まぁ、完全に無抵抗でフレイ任せと言う訳でもないけどな。
エリアがお墓で、配置されている障害物に高さが無く、見通しが良い事は戦闘面で有利かも知れないけど、僕には全く関係が無い。僕は目を瞑った状態で〈必射〉で援護をしながら《付与術》をフレイにかけていく。ここで〈必射〉を使った理由は、いくら魔物の見た目に救われたと言っても僕に直視し続けるのは無理だからだ。マジで、《銃士》を選んでいて良かったよ。
『シュン、良い話の追加や。物理攻撃も普通に効くみたいやで』
フレイは、どんどん幽霊の群れを殲滅して前に進んでいるようだ。二人パーティー用のイベントなので、魔物自体もそんなに強い設定では無いらしい。そして、フレイ。本当に何から何まで、ありがとううごさいます。
…異変があったのは、残り一体になった時だった。
『うわ、こいつ分裂しおったで。シュン、気い付けや』
ちょっと待って欲しい。目を瞑って後ろに控える僕に、これ以上は気の付けようが無い気もがするんだけど…
幽霊は分裂を続けて数を増やす。その分裂で増えた幽霊を、フレイはまた倒していく…が、残り一体まで減らすと、また幽霊は分裂を始める。この戦闘は、それの繰り返しだった。
どうやら一人だけに任せっきりにするのは無理らしい。僕がその事を思い付くと同時にフレイが僕の方へ振り返った。
『シュン、次は残り二体になったら同時に仕止めるで。ダメージの調整はシュンに任せるわ』
ダメージ調整は《見破》を持つ僕向きの仕事だ。僕はフレイの指示に従って、任された二体の幽霊を削っていく。直視は出来ないけど、チラ見なら…ギリギリで…
『今だ!フレイ』
僕とフレイは同時にアーツを放った。
二人の放ったアーツは、ほぼ同時に二体の幽霊を駆逐する。どうやら、今度は無事に分裂前に倒せたようだ。
…と言うか、確か火を灯さないといけない灯籠の数は五ヶ所だったよな。と言う事は、だ。これがあと四回も続くのか?マジでこの場から逃げ出したいんですけど。フレイがいなかったら絶対に逃げだして…いやいや、それは違うな。そもそもの話、フレイがいなかったら絶対に来ていないな。
おや?でも、ちょっと待てよ。怖いと言う感情よりも、こんな考えが真っ先に頭に浮かぶくらいは、落ち着けてきたのか?少しは良い傾向なのかも知れない。
幽霊の出現方法と倒し方が判明した事で、思っていたよりも簡単に残っていた四ヶ所の灯籠にも火を灯す事が出来た。頭に思っていたよりもと言う形容詞が付く理由は、先に起こる展開が分かっている事で事前に戦闘の準備が出来たにも関わらず、僕自身が灯籠に火を着ける行為だけでも精神面が一杯一杯で、その都度ビビり、フレイの足を引っ張っていたからだ。我が事ながら本当に情けない。
五ヶ所の灯籠に火を灯すと、指令書に書かれていた指令1が消え新たな指令が浮かび上がった。
指令2
お寺の境内でお札を二枚手に入れろ
『お寺って、地図のこの場所やんな』
地図の中心を指さすフレイに対して、僕は黙って頷いた。
これは格好良く見せたり澄ましている訳では無く、頭は回っていても、ただ単に言葉を発する余裕が全く無いだけだ。
『シュン、左手出してウチと繋いどき。これだけでも少しはマシなはずやで』
『…良いのか?』
今の僕に羞恥心の三文字は存在しない。
『勿論や。ウチとしては役得やな』
『ありがとう』
僕はフレイと手を繋いだ事で、フレイの温かさを直に感じ、僕にもほんの僅かだが温もりが戻ってくる。本当にフレイには感謝しかないな。
僕達は手を繋いだまま、目的のお寺まで辿り着いた。辿り着いたお寺は、障子はボロボロに破れていて、瓦も何枚か無くなっている。屋根にも大きな穴が空いていたり、瓦の隙間から雑草も生えていたりする。一言で言えば、いかにも幽霊が出ます的な廃寺だ。
『やっぱり、お寺の中に入らなアカンみたいやな。自分は外で待ってるか?』
僕は、無言で首を振るった。
どう考えても、廃寺の中にはいるよりも、ここで一人になってフレイを待つ方が恐ろしいからな。僕の恐怖を計る天秤はフレイの手を放す選択肢は選ばない。
僕達は、恐る恐る中に入り無造作に置かれていた二枚のお札を手に取った。僕は手に取った瞬間に何か仕掛けが作動するのでは?と細目で警戒していたけど、完全に無駄に終わった。この場合の無駄は喜ばしいし、素晴らしい。
例の如く、指令書には次の指令が浮かび上がる。
指令3
鬼門(北東)と裏鬼門(南西)をお札で同時に封印しろ
『べ、別行動だと…』
ここに来ての別行動の司令。それを目にした僕の瞳には思わず涙が浮かび上がっていた。フレイと手を繋いだ事でリラックス出来ていたのか、声を出す余力くらいは僕にも戻っている。今までは怖すぎて、大声は愚か、まともに声を発する余裕も無かったのだから…
『シュン、本当に大丈夫なんか?ウチはここでリタイアしても大丈夫やで』
フルフルと捨てられた仔犬のように首を振る僕。
『が、頑張る。これ以上は、情けないから…な』
これ以上は情けないと言ったけど、現状でもこれ以下が無いくらい情けない。これ以上フレイに迷惑を掛けるのは避けたいし、今後どんな事があっても僕が僕自身を許せなくなるだろう。
僕達はこのイベントが始まって以来、初めて二人バラバラに別れて行動する。でも、その際の方角選びでもフレイの優しさに甘えた僕は、北東と南西の二ヶ所を比べて、現在地から比較的近くに有る南西側の裏鬼門方面を目指している。
『僕は怖くない…僕は怖くない…僕は怖くない…』
『僕は一人じゃない…僕は一人じゃない…僕は一人じゃない…』
僕は、なるべく周囲を見ないようにして、『僕は怖くない』と『僕は一人じゃない』の二つの言葉を繰り返し呟きながら、ゆっくり一歩また一歩と慎重な面持ちで歩みを進めていく。
『シュン、大丈夫なんか?こっちは今着いたとこやで。そっちは…そやな。焦らずにゆっくりでええからな』
こう言う時にコールでフレイの声が聞けるのは、凄く安心出来る。
『了解…だ。こっちも今着いた。うん!?何だ?あれ?』
今、あそこに誰かいないかったか?人影が見えた気が…する。だが、今このエリアに僕とフレイ以外のプレイヤーは存在しないはずだ。
『どないしたんや?大丈夫なんか?』
より一層に心配してくれるフレイ。
『いや…多分、大した事ではないと思う。確認してみるから少し待っててくれ』
そう言ってフレイとのコールを終えた。
怖さが増すので本来ならコールを終えないところだろう。だが、この時は驚いた時の悲鳴をフレイに聞かれたくもないと言うシュンに僅かばかし残っていたプライドが無意識に作用していた。
絶対に僕の気のせいだと思いたいけど…この場合、確認をせずに進む訳にはいかない。本来なら、絶対に近寄りたくないところだけど、あとの指令で戻ってくる可能性や背後から不意討ちで襲われる事と比べれば、正面から様々な覚悟を決めてご対面する方が数倍マシだよな。自分自身に、何度もそう言い聞かせながら恐る恐ると推定人影?らしきものへと近付いてみる。
『うっぐ…』
僕が見付けた推定人影?の身体は明らかに透けている。しかも、今までのアニメチックな幽霊(魔物扱い)とは違い、はっきりと人間?…しかも、踞って泣いている小さな女の子の姿をしているように見える。
99%以上の確率で何かしらのイベントだろう。関わる事にろくでもない未来しか見えない。はっきり言って怖い。だが、この時の僕は何故かは分からないけど、この女の子を無視すると言う考えが浮かばなかった。多分、僕もフレイに助けられてるからだろう。
『…仕方が無いよな』
あとから冷静になって考えれば、さりげなく《見破》で確認した時に、この女の子自身のステータスは全くの不明ながらも、全く悪い感じはしていなかった(魔物ではない)事も大きな理由だったのかも知れない。
『…ど、どうかしたの?』
女の子の幽霊は、僕の声に驚き自分の左右を見渡している。
『き、君の事だよ。ここは、怖いところだから、どこか別の場所に行った方が良いよ』
僕の言葉と僕の姿を見て更に驚き、女の子の幽霊はより一層身を屈めてくる。
どうやら、女の子は僕の事を警戒しているらしい…まぁ、僕も大絶賛警戒中なのでお互い様だけど。
『それとも一緒に来る?向こうに有る…まぁ、あまり綺麗では無いけど、古いお寺までは連れて行ってあげれるよ』
相変わらず一言も喋らないが、目を輝かせてくる女の子の幽霊。一応、言葉は理解出来るらしい。
それに…これは多分、喜んでるんだよな。僕に対しての警戒は緩めてないだけど、お寺のワードには反応したぞ。やっぱり、これは何か特殊なイベントなのか?
まぁ、今の段階で深く考えても仕方が無い事なので、今は無視だな。考えれば考えるだけ、ネガティブな事しか浮かばないのだから。
『先に僕の仲間と合流したあとになるけど大丈夫?』
その言葉に、ゆっくりと縦に一回頷いたので、僕は待たせていたフレイにコールで連絡をとった。
『フレイ、お待たせ。ゴメンね』
『シュン、本当に大丈夫なんか?無理したらあかんで』
『ありがとう、何とか大丈夫だよ』
フレイは、なんだかんだ言って優しい…と言うか、関西弁のせいで損をしている面があるよな。
『じゃあ、いくで。いっせ~のぉ~で』
僕とフレイの二人は同時にお札を貼り付けた。その瞬間、お札は一瞬だけ強烈に光輝いて消滅する。それと当時に、徐々にだがお墓全体が清浄化されていくようにも感じる。
『えっと…これで終わりなのか?
『『きゃぁぁぁぁ~』』
…えっ!?』
遠くと近くでフレイの悲鳴が聞こえる。
『フ、フレイ、フレイ、大丈夫か?何かあったのか?』
『………』
まだ繋がっているはずのコールには、さっき聞こえた悲鳴以外の返事は無い。
すでに、僕は悲鳴が聞こえた方に駆け出していた。幽霊の女の子も僕のあとから、遅れずに宙に浮きながらついてきている。やっぱり人間にしか見えないけど、こうやって浮いてるところを見てしまうと幽霊なんだよな…
『ゴメンな。僕の仲間がピンチみたいだ。あとで必ずお寺に連れて行くから、今は先を急ぐね』
女の子に一声を掛け、《付与術》を使い一段ギアを上げて走り続ける。フレイの…仲間のピンチだ。このイベントで、あれだけ迷惑をかけて、お世話になっていて、最後の最後で『怖いから無理』とかふざけた事は、いくら僕でも言ってられないだろ。
フレイの悲鳴が聞こえた方向には遠目からでも大きな魔物がいる事が分かる。名前はラージゴーストか…きっと、アイツがこのお墓エリアのボスなんだろう。今までで一番迫力の有る姿をしている。
だが…な。どうやら、僕はギリギリで間に合ったらしい。
『フレイ、大丈夫か?〈ウインドヒール〉〈防御力上昇〉』
不意討ちでも喰らったのだろうか?すでに、HPが危険領域になっているフレイ。このエリアにアイテムを持ち込めない為、回復が全く出来ていない。それを踏まえて考えるとよく耐えているのかも知れない。
『あいつ…あいつが急に背後から現れおったんや。シュン、回復サンキュ…シュン、後ろや!!』
少しHPが回復した事で、ラージゴーストの攻撃を回避しながら反撃体勢に移るフレイ。それと同時に僕の背後に隠れている幽霊にも気付いたようだ。
『あぁ、この子は多分だけど大丈夫。それについては、あとで説明するから…』
僕は女の子は幽霊について、簡単に説明しながらフレイの援護に入る。
その援護を受けたフレイがアーツで攻撃していく。僕も援護の合間に牽制や攻撃を入れてボスの注意も惹き付けていく。その間にもフレイに向けて〈ウインドヒール〉を唱え続けるのは忘れていない。今のフレイに攻撃を当てさせる訳にはいかないのだから。
今まで、散々と助けて貰ったのだ。推定最後?くらいは頑張らなければならない…と言うか、これで最後だよな。運営さん、そこだけは本当にお願いしますよ。僕の精神的にも切実にお願いします。
『〈防御力激減〉それと〈曲射〉〈必跳弾〉〈零距離射撃〉だ。フレイ止めは任せた』
ある意味で過剰とも思えるアーツの連発(簡単に分かりやすく例えるなら、ゴキブリを見付けた時の殺虫剤連打)からの一斉離脱。
完全に僕をターゲットとしてロックオンしているラージゴーストは、アーツ発動の溜め過程に入っているフレイに、がら空きの背中を向けてこちらへと近付いて来ていた。そして、そのラージゴースト越しに、こちらを見るフレイの表情は鬼の一言に尽きるだろう。
『了解や。喰らいな!〈水面蹴り〉からの〈熾烈脚〉そして、これが止めの〈三連突〉や』
蹴り、蹴り、蹴り、蹴り…上下左右の蹴り連打から、最後は三節棍による頭・鳩尾・急所?段の三連突き。
『グォォォォ~』
フレイ渾身のコンボが決まり、ボスの息の根を止めた。
『ふ~~シュン、本当に助かったわ』
『いや、僕の方こそ色々助かった。ありがとな』
一人なら絶対速攻でリタイアしている自信ところを確信が僕には有る。
僕達二人は完全にイベントの終了気分で会話を続けていたが、その間にも、指令書には新しい指令が発生していた。
『はっはは、新しい指令やな。まだ続くんやな。ちゅうか、これ以上が有るんか?』
おいおい、まだ続くのか?雰囲気的にも今ので完全に終わったと思っていたし、終わりで良いと思う。
指令5
お寺でお参りをする
『あれ?指令4は?』
何故か指令3の次が指令5になっている指令書。指令4は欠番?それとも、縁起の悪い数字たから省かれた?いやいやいや、ルームナンバーじゃないんだから有り得ない。そうなると…
『もしかするとや、さっきのボスを倒すのが指令4やないか?』
多分そうなのだろう。フレイと同じ事を僕も思い付いていた。ラージゴースト討伐は指令の一つに数えても差し支えがない内容だったのだから。まぁ、それを確認する事は、もう出来ないのだけど…
『まぁ、それよりもやな…改めて聞くわ。シュンの後ろにおるのは何なんや?』
事情を問われた僕は、分かっている数少ない事を全てフレイに説明した。
『シュン、自分は流石やな。自分は幽霊の女の子まで落とすんやな…』
何か凄く不本意で不誠実な事を言われている気もする。今の説明に口説く要素は皆無なのだから…いや、待てよ。端から見て、誘拐と言われると否定出来ないのかも知れないな。
『ま、まぁ、その事は置いておこう。この子との約束も有るからな。さっさとお寺に行こう』
困った僕としては、さっさと話題を変えたいし、さっさとこの場所から解放されたい。
二人+αでお札を見付けたお寺を目指す。お札の封印のお陰か?はたまた、ラージゴーストを倒したお陰か?お墓エリア全体に満遍なく浮かんでいた火の玉等が消えていて、あまり怖いと感じなくなっているのが僕にとっては大きな救いだ。
お寺に着き、フレイと幽霊の女の子に作法を教えながらお参りを済ませる。まずは境内の手水舎らしきもの?で両手と口を清めて、賽銭箱にご縁ならぬ五フォルムを入れた。まぁ、これ以上幽霊とのご縁はご免なんだけど…
次に鈴を鳴らして、ニ礼、二拍手、一礼の作法だ。
僕の説明を黙って聞いたフレイが、若干首を傾げている気もしなくはない。もしかして、バレたか?
『お寺の参り方とか知っとったんやな。でも、お寺のお参り方って、神社と同じ方法やったか?』
『いや、お寺の作法は僕も分からない。これは僕が知っている神社にお参りする時の作法だな。あそこに手水舎みたいな物も有ったし、一応はゲームの中だから、そこまで厳しくないと思って…それに、何もしないよりは幾分かマシかなって…』
フレイも僕と同じで、神社の作法は知ってるけど、お寺の作法は知らないらしい。
基本的にお寺には近付きたくないはずの僕が、お寺のお参りの仕方を知るはずがない。それを言うと神社も似たようなものかも知れないけど、初詣の度に厳しく躾られていれて自然に覚えた神社はともかく、洋風の墓地を持つ相馬家にとってお寺は縁の無い場所だ。
『お、おぉぉぉ~!!や、やっとクリアか?』
お寺の賽銭箱の横に宝箱が現れた。さっきまで僕の後ろを付いてきていた幽霊の女の子も、いつのまにか消えている。何か特殊なイベントだったのか?
…と言うか、あの幽霊の女の子はイベントに必要な要素は有ったのだろうか?
あっ!もしかすると今になっては完全に分からない指令4と関係が有ったのか?そう考える方がしっくりくるかも知れない。
いや、待て。実は本当に幽霊だったって事は無いよね…う、うん。それは無い無い。僕だけにしか見えてないならともかく、フレイにも見えていたのだから、大丈夫。でも、《見破》で確認した時はステータス見えなかったよな…ううん、あれは気のせいだ。大丈夫…きっと大丈夫、大丈夫だよね…
今になってみると、かなりの謎だろう。考えれば考えるほど悪い方向へと考えて身が震えるほど怖い。
…それでも、今ので成仏できたのなら、ここまで連れて来て良かったかも知れないな。
僕は僅かばかしの時間を使って気分を落ち着かせた。その間、僕の状態に気付いたフレイは、ただひたすらに黙って僕の回復を待っていてくれている。本当に感謝しかないな。
ようやく、宝箱を開けてみると【アーツの書・結界】と【スキルの書・武器】と言う名の二つの書物が入っていた。多分、この宝箱の中身は、イベントのクリア報酬だろうな。どっちを選んだとしても簡単に使って良いものかどうかを悩みそうだ。まぁ、僕に貰う資格は無いんだけどな。
【アーツの書・結界】は、魔物を近寄らせない〈結界〉と言うアーツを覚える事が出来る。
【スキルの書・武器】は、好きな武器スキルレベルを10上げる事が出来る。
『確かに、報酬はレアアイテムみたいだな。フレイ、好きな方を選んで下さい。もし良かったら、二つとも選んでくれても…』
僕は、最後まで言いたかった言葉を言わせて貰えず、無言のフレイに人差し指で唇を押さえられた。
なんと言うか、妙に恥ずかしい光景だ。
そのあとで、フレイは【スキルの書・武器】だけを選んだ。その理由としては、フレイの武器スキルは生産スキルに比べて育ってないかららしい。そこは、武器スキルが育ってないのではなくて、生産スキルが育ち過ぎなだけだと僕は思うのだけどな。
そして、有無を言わさないフレイの態度に僕は、残っている【アーツの書・結界】を取り出した。
僕が【アーツの書】を取り出した事を確認したかのようなタイミングで急に光りだした指令書を見ると、完了と言う二文字が浮かび上がっていた。
あぁ~良かった~~~!本当に、本当にこれで終わったらしい。フレイの足を引っ張っりまくりだったけど、イベントの攻略を失敗しなくて本当に良かった。それだけで僕は幸せです。
僕達は、お寺の横に出現していたゲートから広場へと戻っていった。
広場に戻ってきた僕は少なからずの違和感を覚えた。広場にいるプレイヤーの大半の皆さんは、とても楽しそうにしていたからだ。墓場エリア以外にも楽しいエリアも有ったのだろうか?僕にも楽しいエリアが訪れる事を切に願っている。きっと誰よりも強く…
イベント間は、ずっと幽霊を怖がっていたので、トラウマの称号も成長していた。う~ん、これ以上の成長はマジで勘弁して欲しい。まぁ、お化け屋敷よりも数倍怖く感じたので仕方が無い事かも知れないけど…
称号成長
〈トラウマ王〉
数々のトラウマを得た者への称号/成長称号
『フレイ、今日は色々と迷惑かけてすまなかったな。そして、本当にありがとう』
『大丈夫や。それに、ウチはシュンと手を繋げただけでも楽しかったで。場所はあれやけど、ちょっとデートみたいやったやろ。ウチの方こそ役得やわ。ありがとうやな。それよりもや、あの幽霊の子はどないなったんやろな?ウチ、ちょっと気になるわ』
それは、僕も思っていた。だけど…
『あの子は、お寺にお参りしたあとにはいなくなってたから、成仏したんじゃないかな。それとだな…僕としてはお墓でのデートとかは嫌すぎるぞ…』
夜のお墓だけは是が非でも遠慮したい。
『そやな。デートなら別の場所がええな。そなら、またどっか別の場所でウチとデートしよな』
フレイは約束やでと小指を立てて指切りを上目遣いで恥ずかしそうにせがんできた。
僕も同じように小指を立ててフレイに答える。
『お、おう、他の場所なら全然良いぞ』
その言葉にフレイがかなり嬉しそうにしている。まぁ、僕もフレイと一緒に冒険するのは楽しいからな。それは、他のギルドメンバーも同じなのだけどな。
さて、あとはホームに戻り、防具と武器のメンテナンスをしてログアウトするか。いや、今日は本当に疲れたから、メンテは明日でも良いかな。
多分、僕は風呂から上がるとすぐに寝てしまうだろう…まぁ、それでも良いか。早く寝て今日の事は忘れたいのだから。
・第二回公式イベント二日目 ~ヒナタ編~
僕は指定された広場の前でヒナタを待っていた。何故かは分からないけど、ログインした直後のホームで待ち合わせ場所と時間を指示されている。一緒にここまで来るのはダメだったのだろうか?僕も、多少の準備くらいなら平気で待てるんだけどな。
イベントのスタート地点となる広場は、今日もプレイヤーで溢れている。昨日、フレイと僕はお墓エリアだったが、カゲロウとヒナタ組は洞窟エリアで脱出ゲーム、アクア達は廃墟で肝試し、ドームとレナ組は廃病院でゾンビ退治だったらしい。ゾンビは特に怖くないけど、廃病院はアウトだよな。
しかも、時間帯は時間帯が分からない洞窟エリア以外は全て深夜。本当に嫌になってくるな。
僕がログインするとイベントエリアの情報を添付したメールがきていたので、僕達も過大評価で返信しておいた。僕だけでなくアクアも肝試しだったので、アクアには悪いが少し救われたような気もする。多分、アイツもパートナーに醜態を晒しているのだから。
『もう、肝試し系だけは勘弁して欲しいよな。マジで…』
わざわざ、トリプルオーの世界に現実の建物エリアとか作らないで欲しい。
風景のCGがリアルで綺麗で作り込まれているだけに、現実よりも現実だったからな…と言うか、何を言ってるんだ?僕は…
幽霊や妖怪と違いゾンビならあまり怖くないし、脱出ゲームとかなら、楽しそうで逆に嬉しい。街で聞こえてきた話では、クイズエリア等も有るらしい。それも楽しそうだよな。僕にとって肝試し系だけが絶対的なハズレだからな…これを率先して楽しむ人達の気が知れない。うん?下心?そんなものよりも命が大事だ。
『お待たせしました』
『おう。あれ?僕の気のせいか?ヒナタ、今日はやけに軽装じゃないか?』
『あっ…はい、私は昨日の脱出ゲームで色々と大変でしたので…』
どうやら、ヒナタも何かをしでかしたらしい。だが、それでも僕よりは遥かにマシだろう。なので、安心して下さい。
『シュンさんも大変だったみたいですね。フレイに聞きました』
な、何?フレイ、一体何を…どこまで話したんだ。
『ま、まぁ…な。そ、それで、い、一体、ヒナタは何を聞いたんだい?』
昨日のあらゆる出来事を思い出しただけで僕は動揺を隠し切れる自信は無い。
『フレイがボスに襲われた時に、颯爽と駆けつけてくれたって聞きましたよ。まるでウチだけのヒーローだったって、・・・・・・』
邪魔者や足手まといではなくて、ヒーロー?僕がか?
あれ?予想と大きく異なるな…異なると言うよりも美化され過ぎてないだろうか?昨日の僕がヒーローと言うのは、どう見繕っても有り得ない。明らかに昨日のヒーローはフレイだったのだから。
『そ、それだけ?たったの?本当に?本当は他にも何か聞いてるんじゃないの?』
『はい。勿論聞いてますよ。あとは手を繋いだそうですね、ちょっと羨ましいですよ』
微妙に照れながら僕の方をチラチラ見て、最後の方を小さな声で語るヒナタ。
…となると、フレイはヘタレな僕の部分は全く話していないらしい。あとでお礼をしなければならない。それにしても、フレイは同姓にも人気が有るんだな。まぁ、あれだけ格好良かったら分かる気もするけど。
『そうなのか…でも、フレイなら頼まなくても手を繋いでくれると思うぞ』
まぁ、これはフレイだけでなくアキラ達もだろうけど…
『…そうですね』
少し残念そうな表情で語尾を強めるヒナタ。
あれ?もしかして、僕は何かを間違ったのだろうか?
『・・』
ヒナタが小さく言い放った『鈍感』と言う一言は、当然僕には聞こえなかった。
『ま、まぁ、そろそろ行くか。ヒナタの準備は出来てる?』
『はい!』
大丈夫みたいだな。はたして、今日はどのエリアに飛ばされるのか…楽しみと言うよりも不安の方が大きく勝っている今日この頃。
僕達は、ゲートから転送されて行った。
『…うん!?』
ここは森の中か?どれだけ辺りを見回してみても、この場所が鬱蒼と生い茂る森の中と言う事しか分からない。
さらに、付け加えさせて貰えば、時間帯も推定真夜中で森の中だけでなく空さえも真っ暗と言う事も有り、全体的に薄気味悪い。でも、この感じだと肝試し系では無さそうだな。森、もしくは樹海からの脱出ゲームか?不安な表情とは裏腹に心の中ではホッとしている。
『あっ!!指令書ありましたよ』
ヒナタが指令書を見つけて近寄ってきた。
指令
樹海の中心を目指せ
やっぱり、樹海エリアだったか。でも、中心を目指すのなら脱出ゲームとは少し趣向が違うみたいだな。それに、今回の指令は一つなのだろうか?昨日と違って、指令に番号が付いてないし、支給されたアイテムも無い…と言うか、自分の居場所そのものが分からないこの状態で、樹海の中心を目指せと言う指令は無理ゲーじゃないのだろうか?
しかも、樹海エリアと名乗る限りは、だ。この鬱蒼とした森はそれなりの広さを持っているエリアのはずだ。一体どれだけの広さを想定してるんだ?それとも、プレイヤーが迷子になってさまよう事が前提なのか?
ま、まさか…現実の樹海と同じで自殺(この場合は自滅)のポイントで、ここで自滅したプレイヤーの霊が肝試しイベントで幽霊として出現…まぁ、そんな訳はないか。さすがに、それは考え過ぎだし、そんな事があったならばクレーム案件だろう。
なぜ、こんなどうでもいいような思考に至っているかと言うと、イベントは開始したばかりだけど、はっきり言って簡単なヒントでも無いと、同じような木に囲まれた今の僕達では完全に手詰まりだからだ。
『う~~これは、困りましたね。どこかにヒントとか有るのでしょうか?』
僕以上に困惑と不安を顔に出すヒナタ。
まぁ、僕としては肝試し系では無い事が分かったので、多少困ったとしても不安の方は全く無い。
落ち着いて再び辺りを確認する。辺りを見渡して、さっきまでと何も変わらず、木、木、木、木…どこを見渡しても同じような木しかない。まぁ、木の大小や幹の太さの違いは有るけど、年輪や苔を調べたらある程度分かる方角はともかく、中心が全く分からないんだよな。この状態で何かしらのヒントを探し出すのも一苦労だろう。
『取り敢えず、適当に進んでみるか。ヒナタ、何が有るか分からないし、危ないから僕から離れるよ』
ヒナタは、嬉しそうに『はい』と言って、僕の後ろから付いてきた。
しばらく歩いてみたが、樹木以外は本当に何も見付からない。こんなに広いエリアにも関わらず、一体の魔物すら出てくる気配が無いのだから。
『う~ん、本当に何も無いな』
何かしらの条件が足りてないのか?
『はい、本当に何も無いですね』
仮に何かしらの条件が足りないのなら、少しはヒントをくれないのだろうか?すでに一時間くらいは迷っているし、何回今と同じ会話をヒナタと繰り返しているか分からない。
『あっ!!あ~!シュンさん、シュンさん。今気付いたんですが、この木って採取出来そうですよ』
『えっ?』
ヒナタに言われて僕も《見破》スキルを使って確認する。確かに、ヒナタの言う通り採取出来るし、見た目は同じにしか見えないが樹木の種類が違う。
それに、だ。《見破》を使って初めて分かった事だけど、ごく一部の木に樹木系の魔物が擬態している木も有るらしい。つまりは、最初から辺り一面を埋め尽くしている生い茂る木にヒントは有ったのだ。
『それだ。ヒナタ、ナイスだ。木材を採取しまくるぞ。ただし、中には樹木系の魔物が擬態している木も有るから気を付けろ。ざっと《見破》で見た感じだと、一定の方向に向かってレナな木材の比率が増えているな。多分、レアな木材が多い方が中心だと思う』
…と言うか、そうじゃないと困る。今の段階では、それ以外に判別方法が思い付かないからな。まぁ、逆の可能性も有るけど、樹木系の魔物もレアな木材と一緒の方向に増えているのだから、間違いは無いだろう。
『はい!頑張ります』
僕達が採取を始めた途端に、それまで木に擬態していた樹木系の魔物が一斉にヒナタを襲ってきた。
『ヒナタ、避けろ!!〈速度上昇〉』
僕は、樹木系の魔物の蔦とヒナタとの間に体を入れてヒナタを庇いながら、両手に持つ【烈火】と【雷鳴】で射撃していく。
樹木系には火属性が良く効く、時点で雷属性かな…転送されたエリアが森だった為、【烈火】と【雷鳴】の武器に予め変えていたが幸いだったらしい。消費アイテムの持ち込みは出来ないが、装備の持ち込みは出来て助かった面でも有るな。
『うわわわ、わゎゎ…』
急に襲われた事で、いつものような冷静さを欠くヒナタ。非常に珍しい光景だ。
『ヒナタ、まずは落ち着け!!ゆっくりで落ち着いてからで大丈夫だから、攻撃魔法で援護頼む。回避重視で数を減らす事を優先するぞ』
ヒナタが正気に戻るには、まだ時間が掛かりそうだ。
まぁ、この程度の魔物なら、ヒナタを庇いながらでも戦える。僕は牽制と攻撃を織り混ぜて射撃していく。比率で言うなら牽制七割、攻撃三割くらいだ。
樹木系の魔物は蔦での攻撃がメインになる。攻撃のリーチは確かに長いけど魔物自体は出現した場所から移動出来ない事も僕に味方しているよな。言い換えれば、全く動かないレクトパス…(まぁ、強さの比率は全然違うけど…)だ。それに、火属性の【烈火】が、樹木系の魔物に効き過ぎているので攻撃三割の手数でも十分だろう。
『シュンさん、すみません。お待たせしました。いきます〈レイニングボルト〉』
樹木系の魔物を四体くらい倒したところで、正気に戻ったヒナタの追撃が決まる。
それにしても、範囲魔法は便利だよな。今の一撃で魔物のいた位置の違いでダメージに多少の誤差は有ったけど、五体の魔物は巻き込んでいる。今の威力を見てしまうと僕も範囲魔法が欲しくなるよな。
『気にしなくても大丈夫だ。援護は任せるぞ。それと、なるべく引き付ける予定だけど、蔦の攻撃には気を付けて。〈魔方攻撃力上昇〉と〈防御力上昇〉だ。受け取れ!』
ヒナタに《付与魔法》を掛けて、僕は一歩ずつ前進していく。
銃は近寄れば近寄る程に攻撃力が上がる。僕の慣れ親しんだ回避重視のスタイルは依然として変わらないけど、樹木系の魔物が繰り出す蔦の単調な攻撃にもかなり慣れてきたので攻撃に割ける時間も増やせる。
僕の戦闘を端から見れば、一人でダンスを踊っているように見えそうだな。それくらいリズミカルに動けている。
『鮮明なる光が貫き響く…』
強力な魔法の詠唱に入るヒナタ。
それなら、僕の役目はヒナタを守る事だけだ。【雷鳴】を【魔銃】に持ちかえて射撃を続ける。
『大気を切り裂く雷鳴と共に…』
まぁ、【魔銃】に持ち掛けた理由は、僕が調子に乗って魔物に近付き過ぎて、銃弾の補充をしながらヒナタへの攻撃を捌く余裕が無くなったからなのだけど。いまさら後ろに下がるのも、僕を信じて詠唱を続けているヒナタに対して少し気が引けるしな。
『…弾け震える雷よ轟き叫べ!!〈ボルティックスパーキング〉』
白い雷を帯びた電光が、ヒナタを中心に放射状に放たれる。僕のいる部分だけを綺麗に避けて…これ、味方を巻き込むタイプの魔法じゃなくて本当に良かったと思う。
…辺りにいた樹木系の魔物達は、燃えながら焼滅していた。ドロップアイテムとして手元に残ったのは残りカスくらいか。このイベント中は、まともな素材の回収は諦めた方が良さそうだ。
それと、だ。これが一番大事な事だけど、ヒナタを怒らせるのは絶対に止めよう。僕は、この魔物達みたいに炭にはなりたくないからな。僕の持つ成長する称号的にも…
『・・・・・・凄いな。これ』
威力も凄いけど、その詠唱もまた違う意味で凄い。
威力の方は完全に過剰攻撃だよな。過剰攻撃…えっ~と、ゲーマー達は何て言ってたかな…あぁ、過剰攻撃だったかな。完全にそれだよな。いつも冷静なヒナタに比べると、本当に今日のヒナタは珍しい気もするな。
『〈ボルティックスパーキング〉と言う広範囲《雷魔法》です。私も初めて使いましたが、とんでもない威力でしたね。ただ、詠唱にもそれなりの時間が掛かりますので、普段は余り使う機会が無さそうですけどね』
まぁ、初めて使ったのなら、魔法の威力を知らなくても仕方が無いのかな?
…と言うか、ヒナタは〈詠唱破棄〉を知らないのか?そう言えば、新人組には教えていなかったかも知れないな。ヒナタに聞いてみると〈詠唱破棄〉の事を知らなかったので、軽いノリで教えてみた。
『こんなアーツも有ったんですか?これ、便利過ぎますよ。それに、もう、あんな恥ずかしい詠唱しなくても済むんですね』
あぁ、やっぱりヒナタもあの詠唱は恥ずかしかったんだな。確かに、魔法っぽいし、ゲームっぽいけど、真面目な顔で詠唱するのは見ている方も唱える方も恥ずかしい。特に見ている方は…まぁ、その事を直接言う機会は絶対に無いけどな。
それと、どうやらケイトも知らないらしいので、こっちの方も明日のイベント時にでも教えておこうかな。
『まぁ、詠唱を破棄してショートカットする分、威力は下がるけど、緊急時には効果的だからな』
僕の知っている最たる《魔術師》のお墨付きだからな。
《見破》を利用して採取を繰り返した結果、歩いて来た方角よりも今向かっていた方角の方がレアな素材が多い事が分かった。
《調合》や《木工》スキルを取得していないプレイヤーは、採取出来る木材の名前は分からないけど、それが素材と言う事は分かる。僕やヒナタは生産系を取得しているので、採取した木材の名前や種類、価値まで判別出来るけど、判別出来ないプレイヤーや採取をする気が無いプレイヤーがこのエリアに来ていたら、簡単に詰むんじゃないのか?
それとも、僕達二人が《木工》や《調合》を取得しているから、このエリアになったのか?あぁ、そう言う可能性の方が有り得るのか。もし、そうだとするなら…過去の僕、肝試しの可能性を減らしてくれてありがとう。本当にありがとう。
それからしばらくの間、レア度の高い素材が出る方角に移動、採取、戦闘、回復、採取、移動の繰り返しだった。
《木工》と《調合》を取得していたので、採掘の時と同じように樹木系の魔物からも攻撃と同時に採取する事も出来たらしい。そのお陰もあってか、かなりの量の素材を手に入れている。その中には新しい木材や上位木材まで有った。
ふふふっ、イベント後に集まった素材を惜しみ無く使っての生産活動が今から楽しみになってきたな。心の中で笑いが止まらないぞ。まぁ、終わりの見えないイベントに対して、少し現実逃避気味なのかも知れないな。
『…う~ん、ちょっとやり過ぎたか?』
ふと、僕達が進んで来た方向を振り返ってみると、僕達がどのルートを通って進んできたのかが遠くまで良く見渡せる。仮に、上空から下を見る事が出来たのなら、一直線の一筆書のような跡が残っている事だろう。まぁ、スタート地点では山焼きでも有ったかのような惨状になっているけど…〈詠唱破棄〉を覚えて、詠唱の長い高威力の魔法を連発出来るようになった《魔術師》のえげつなさを改めて思い知ったな。
『す、すみませんでした。魔法は気を付けたつもりなんですが…』
ヒナタは、先程の〈ボルティックスパーキング〉の件が尾を引いているらしい。
『あっ、違う、違う。ヒナタの魔法じゃなくて、採取の方だよ。ヒナタの魔法には、かなり助けられたからな。逆に感謝だよ。ありがとな』
少し考えが見透かされたか?取り敢えず、形だけでもフォローはしておこうか。
その件については初め少し疑っていたヒナタも、僕が指差した方向を見てヒナタも一目で納得したらしい。まぁ、採取の跡を見て、引いたのも事実だからな。問題は無いし、バレないだろう。
『それよりも、MPは大丈夫か?』
すかさず、話を変える僕。
『それは大丈…あれ?シュンさん、あそこを見て下さい。何か有りますよ』
ヒナタが、会話もそこそこに僕の背後を指差した。
振り返ってみると、確かにヒナタが指差す方向に建造物に見えなくもない何かが見える。そうなると、あそこが中心になるのか?指令の内容に困惑していた時からすると考えられない事だけど、攻略のコツさえ分かってしまえば、昨日の指令よりは呆気ない気もするな。
近付いて見ると、それは建造物では無く、ただ単に形があくまでも自然の範囲で整っただけの大きな岩だった。その岩自体も大きいだけで、その妙に整った形以外に特に変わったところも無さそうだ。念の為に、僕とヒナタは別れて岩の周囲を調べ始めた。
程なくして、ヒナタの声が聞こえてきた。
『あっ!!有りましたよ、シュンさん。新しい指令書みたいです。今度は地図も有りますよ』
指令
地図に記された☆の場所を目指せ
今回は、指令をクリアする度に新しい指令書を発見出来るパターンらしいな。まるで、中学校入学時に体験した知らない人達と仲良くなる為のオリエンテーリングみたいだ。
指令とは別に、今僕達のいる場所が地図の中心部分だと言う事も改めて分かっている。まぁ、中心を目指せと言う指令の過程で次の指令を見付けれたのだから、当たり前の事かも知れないけどな。
その地図を見ると、赤く点滅している二つの並んだ点とSと記された印が有る。位置的に見ても、赤く点滅している二つの点が僕とヒナタで、方角的にも南にあるS印がスタート地点なのだろう。Sと言うのもスタートの頭文字だしな。多分、間違いは無いだろう。
地図には他にも☆印が三ヶ所記されている。まぁ、これは近場から周ってみるしかないか…
『ヒナタ、疲れてないか?大丈夫か?』
『はい。私は、まだまだ大丈夫ですよ』
『なら、一番近いここから順に周ってみるのはどうだ?』
僕達は現在地から一番近い☆印を目指す事にした。
その間も採取だけは忘れない。さっきまでと違い、樹木系の魔物の量が減ってる気もする。多分だけど、中心から遠ざかっているからだろう。まるで中心への警戒が薄れていくかのように…やっぱり、中心部分の大岩には何か有るのか?ちょっと気になる気もするな。
『えっ~と、地図からするとこの辺りだと思うけど、何か有るか?』
最初の☆印に着いて辺りを確認してみたが、何か変わった物を見付ける事は出来ない。
『特に変わった物は無さそうですよね』
『うん。何も無さそうだよな』
しばらく辺りを探してたり、☆印の場所を観察してみたけど何も見付からないので、先に他の☆印を目指そうかと、地図を見てみると地図の東側に載っていた☆印がEに変わっている。S印とE印と残り二つの☆印か…
『なるほどな…』
『えっ!?シュンさんは、何か分かったんですか?』
『あぁ、多分な。次はここを目指して見ようか、僕の考え方が当たっていたらWになると思うぞ』
次は、地図上で今いる場所の反対側に有る☆印を目指す。採取もしたいのだが、そろそろ鞄の許容を超えそうなので中心部分の近くレア素材が多く取れる部分以外は無視する事にした。
『やっぱりだな。僕の予想通りWになったぞ。ヒナタも分かったんじゃないか?』
『地図にS・E・W…もしかして、これは方角ですか?』
少し悩んだヒナタもすぐに閃いた。
『うん。僕もそう思ってる。最初のSは単純にスタートのSだと思ってたけど、僕達が迷っている時に偶然通過した☆だったんじゃないかな。それで、残ってるここが北を示すNになるんじゃないか?多分だけど、これは宝探し系のイベントだと思う』
なかなか考えられているよな。まぁ、最初からスタートと南を兼ねていたの可能性も有るけど、スタート時に地図を持っていなかったのだから、その真相は分からないよな。
残っていた☆印の場所を目指すとやはりNに変わる…が、近くに出現するであろう次の新しい指令書、またはクリア時に出る報酬やゲートが見付からない。何故だ?何かを間違えたのだろうか?それとも…
『やっぱり、ここにも新しい指令書は無いみたいだな』
念の為にと、二人で中心部分に有った大岩まで戻ってみたが何も見付ける事は出来無い。
『無いですよね。何か地図に見落としが有るのでしょうか?』
ヒナタと一緒に地図を見ながら考える。文字を時計周りに繋げていくとN・E・S・W…?意味が分からない。アナグラム的に繋げていくとN・E・W・S…?これも今は関係無さそうだよな。
『う~ん…』
正確に言うと、だ。微妙に東西南北の北の方角が、東の方にずれている気もするけど大した問題では…
『あっ、あ~~~有った。分かった、ここだ、ここ』
僕は、地図の有る場所を指差した。
『えっ~と、ここですか?』
ヒナタに僕が気付いた事を説明していく。
説明していくにつれて、初めは不思議そうにしていたヒナタの表情が、僕の考えが正解の気がしてきたらしく、徐々に明るくなってくる。
『じゃあ、やっぱり最後は中心にあたるここですか?そしたらさっきのアルファベットは?』
ヒナタが指差した場所は、今僕達がいる大岩がある中心部分だ。だが、若干の疑問も残っているらしい。ここから先は、地図をよく見れば気付きそうな気もするけど…
まぁ、僕が間違っている可能性も有るし…
『多分、宝探し系に有りがちなミスリードの一種だろうな…運営は妙なところで意地が悪いからな。取り敢えず、ここに行って見ようか。全ては、それからだ』
今から僕達二人が目指す場所は〔地図の左上部に記された☆の場所を目指せ〕の文章中の☆印だ。ある意味で狡い気もするけど…嘘は付いていないからな。
『やっぱり、ここの☆印もそうだったな…』
ここは、今までのようにアルファベットは表示されずに白の☆印が黒の★印へと色が変る。そして、ここからは僕の予想した通りに、今まで寄った場所が白い線で繋がって地図に大きな一つの☆印が表示された。当然その中心にくるのは大岩がある場所だ。
地図の中に、わざわざ白の空きスペースを作って、文章が書いてある理由はこれだったんだな。二人で意気揚々と大岩を目指すと、そこにはさっきまでは無かった二個の宝箱とゲートが出現していた。
『ふ~~』
やっと終わったか…今回はボス無しのエリアだったか。まぁ、謎解きに時間が掛かったし、収穫物にも満足出来るから、ボス無しでも十分に楽しめたけどな。
『どうやらクリアみたいですね。クリア出来たのは、シュンさんのお陰です。ありがとうございます』
『これは二人で頑張ったからだよ。こっちこそありがとな。ヒナタ』
二人で同時に宝箱を開けると、中には【アーツの書・浮遊】と【スキルの書・魔法】が入っていた。
【アーツの書・浮遊】は、空を飛ぶ〈浮遊〉と言うアーツを覚える事が出来る。
【スキルの書・魔法】は、魔法スキルレベルを10上げる事が出来る。
『どっちもかなりレアだな。ヒナタが好きな方を選んで良いぞ』
こう言う時は、レディファーストだろう。こう言う場合に僕が先に選ぶ事は有り得ない。
ヒナタは【スキルの書・魔法】を選んだ。《魔術師》なら当然の選択かもな。
まぁ、僕としても【アーツの書・浮遊】の方が変わったアーツが覚えられそうで嬉しいのだけどな。それよりも、このイベントエリアで手に入る【アーツの書】のアーツをイベント前に覚えていたら、イベント攻略に役立つ便利な物ばかりだよな。お墓エリアの時に〈結界〉が有れば、あんなに恐がる必要なかっただろうし、樹海エリアなら〈浮遊〉で空を飛んで全体を把握出来ていたら、これまた楽勝だっただろう。
二人でゲートから転送しようとした時に、ヒナタは顔を赤くして僕の手を握ってきた。一瞬戸惑うも、今回は幸いにしてすぐに気付く事が出来た。我ながらナイスだと思う。
多分、ヒナタにとっての樹海エリアは、暗く薄気味悪くて怖かったのだろう。女の子だもんな…もう少し、フレイみたいに気を配っていれば良かったかもな。次は気を付けよう。
そう思った僕はヒナタの手を強く握り返した。
残すは、ケイトとアキラの二人か。ここまで来ると、もう二度と幽霊系のイベントが出ない事を祈るしかないだろう。今日みたいな冒険なら僕も一緒にイベントを楽しめるのだから。
装備
武器
【烈火】攻撃力50〈特殊効果:銃弾に火属性が追加〉
【霧氷】攻撃力50〈特殊効果:銃弾に氷属性が追加〉
【雷鳴】攻撃力50〈特殊効果:銃弾に雷属性が追加〉
【銃弾3】攻撃力+15〈特殊効果:なし〉
【魔銃】攻撃力40〈特殊効果:なし〉
防具
【ノワールブレスト】防御力25〈特殊効果:なし〉〈製作ボーナス:重量軽減・小〉
【ノワールバングル2】防御力15〈特殊効果:回避上昇・小/耐水〉〈製作ボーナス:命中+10%〉
【ノワールブーツ】防御力15〈特殊効果:速度上昇・中〉〈製作ボーナス:跳躍力+20%〉
【ノワールクロース】防御力20/魔法防御力15〈特殊効果:なし〉〈製作ボーナス:耐火/重量軽減・小〉
【ノワールローブ2】防御力15/魔法防御力20〈特殊効果:回避上昇・中〉〈製作ボーナス:速度上昇・中〉
アクセサリー
【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉
【ノワールホルスター】防御力10〈特殊効果:速度上昇・小〉〈製作ボーナス:リロード短縮・中〉
+【マガジンホルスター】防御力5〈特殊効果:なし〉〈製作ボーナス:リロード短縮・中〉
【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉
《双銃士》Lv35
《魔銃》Lv32《双銃》Lv30《拳》Lv32《速度強化》Lv65《回避強化》Lv68《旋風魔法》Lv18《魔力回復補助》Lv66《付与術》Lv32《付与銃》Lv45《見破》Lv53
サブ
《調合職人》Lv8《鍛冶職人》Lv24《革職人》Lv45《木工職人》Lv12《鞄職人》Lv47《細工職人》Lv20《錬金職人》Lv20《銃製作》Lv30《裁縫》Lv19《機械製作》Lv1《料理》Lv28《家事》Lv55
SP 33
newアーツ
〈チャージ・魔銃〉攻撃力×溜めた分だけ※最大三倍/消費MP 溜めた分に依存
魔銃の銃弾を溜める事が出来る
習得条件/《魔銃》スキルLv30
〈トライアングル・三点バースト〉攻撃力×3/消費MP 45
三点同時撃ち
習得条件/《双銃》スキルLv30
称号
〈もたざる者〉〈トラウマ王〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈自然の摂理に逆らう者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉




