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OOO ~Original Objective Online~ 改訂版  作者: 1048
第一章 第二部
14/65

★ギルド活動再開

 ここ数日間は、ギルドを挙げてオークション会場の備品の準備に専念していた。その会も有り会場の準備は完了している。まぁ、備品の準備と言っても生産系スキル取得者の集まりである【noir】の僕達からしてみれば、ほぼ全て自作で賄えるのだけど。


 その出来上がったばかりの会場を使って、次の日曜日にはオークションの説明会も開催される予定だ。ネイルさんの呼び掛けのお陰も有り【noir】と【プレパレート】以外にも五つの生産系ギルドが説明会へと参加してくれる事になっている。


 説明会に参加してくれる五つのギルド全てが僕でも知っているようなトリプルオーの中では有名なギルドばかりで、そのギルドマスター達が一同に揃う。その場に零細ギルド【noir】の僕達が含まれるのは、いくら主催者側と言えどかなり場違いな気もするけど、今から楽しみなのは隠しきれない事実だ。


 ログインする前に晶から携帯に連絡が入った。晶の所属する女バスは惜しくも決勝戦で負けたようで、残念ながら全国大会には出れないらしい。次は冬のウインターカップ(と言っていたかな?)を目指すようだ。


 今日は反省会を兼ねた打ち上げらしく、ログインは出来ないみたいだが、明日の午後からは久しぶりにログイン出来るらしい。アキラが変わり過ぎたホームを見たらびっくりする事だろう。今から楽しみだ。多分、今の僕は悪戯(いたずら)心満載の悪意に満ちた(悪い)顔をしてるのだろうな。


 と言う事で、今日は久しぶりにまともな(・・・・)製作でもするとしようか。ここ数日間もオークションの準備用の生産はしていたけど、自分の為だけの生産は久しぶりだ。僕の心が躍るのも無理はない。


 まずは、以前からやっておきたかった【銃弾3】の量産。製作出来る時に在庫も含めて多目に作って置きたい代物だな。アキラがログインして来たら洞窟ダンジョンの攻略も待っているのだから、過剰な準備でもしておくに越したことはないだろう。


 『よし!』

 これくらい有れば当分は大丈夫かな。


 以前に製作済みの在庫分と合わせて百マガジン分を用意している。【銃弾3】は銀塊を利用して《錬金》と《銃製作》スキルの組み合わせで製作するのだけど、今では必要な素材が簡単に手に入る事と一度《錬金》で素材を加工して全ての準備をしたあとはメニューから一括製作出来たので、思いのほか量産は楽だった。まぁ、《錬金》での加工にそれなりの時間は掛かっているけどな。


 次は、初めて狙撃銃を作ってみる事に。銃の製作リストに載っている事は僕も初めから知っていたけれど、狙撃銃に関しては使用者が不明な事や僕自身が使わないと言う事も有り、完全に需要と供給が釣り合わなそうなので製作の方は完全に放置していた。


 倉庫の容量を圧迫する無駄になる(・・・・・)物は出来るだけ製作したくないからな。誰からとは言わないけど、在庫を増やし過ぎると怒られそうだから…


 しかし、オークションを開催しようとしている今、出展するアイテムの質は勿論の事、種類も豊富な方が良いだろう。幸いな事に狙撃銃リストの一番上に有る【ライフル】は在庫の素材から作る事が出来る。まぁ、一番上と言っても現状のリストには【ライフル(これ)】しか表示されていないのだけど。


 『まぁ、所詮は初期武器だからな』

 露店でも普通に売ってるいるし、性能としてはこんな物だろう。


 【ライフル】も【ハンドガン】同様、初期に貰える武器らしい微弱な性能だった。やはり、リスト上の銃を製作を成し遂げると製作可能な銃が増える。


 僕は、上から順に今素材を持っていて現状でも製作可能な物は全部作ってみる事に…


 『狙撃銃は、ここまでか』


 在庫の素材で八種類の狙撃銃が製作出来た。一番性能が良いのは当然一番最後に製作した…



【ロングリーロング】攻撃力75〈特殊効果:超遠距離射撃〉



 当然だが、威力、備わっている効果共に露店で買う事は出来ない武器で、これも一応オークション出展候補になる。特殊効果の超遠距離射撃は直線距離だと三百メートル先を狙える。通常射程が百メートルの狙撃銃を持ってしても破格の効果だと思う。


 『さて、続けて機関銃も作ってみるかな』

 狙撃銃の時と同じようにリストの上から順にどんどんと製作していく。こちらは、六種類製作出来た。その中でも…



【マルチブレイク】攻撃力10~20〈特殊効果:広角攻撃〉

※一秒間に十発射撃可能



 これは【ロングリーロング】と違って連射性能がエグいな。その半面消費する弾も半端ないのだろうけど…まぁ、その辺りはコスト面と連射性能を天秤にかけてどっちを取るかだよな。


 連射速度が早いので便利だとは思うけど、無駄撃ちを避けて一発一発を大事にする僕には向いてないかな。だが、これも一応は出品候補にはなるかな。


 と同時に、銃の製作はこれで新しいものは作れなくなった。


 『おっ!』

 レベルが12も上がってるな。短い時間ながらも、僕はなかなか良い経験を積ませて貰ったらしい。これは、自分では使わない製作品の出来よりも僕の心の満足度合いの方が強いな。





 『マスター、今良いですか?です。私、《細工》が《細工職人》まで進化しましたよです』

 僕が《銃製作》を終えたタイミングで工房に現れたケイトの一言。


 『おぉ~、それは凄いな。ケイトも頑張ってるんだな。えっ~と、それだと残すは《錬金》と《鍛冶》を進化させたら複合スキルのベースが取得出来るな』


 『はいです。《鍛冶》は最近始めたばかりですが、《錬金》はもう少しですよです』


 『それだったら、ケイトに時間が有れば今から一緒に《鍛冶》でもしていくか?』

 せっかくケイトが声をかけてくれたのだ、少しくらいはケイトの成長に僕も協力したい。これは決してギルマスや先輩等の上から目線ではなく、ギルドの仲間…友達としてだ。


 『Oh~!でもマスター、先程作っていた銃の方は良いのですか?です』

 うん?あぁ、なるほど。


 どうやら、ケイトはさっきまで銃を作っていたのを見ていて、僕が一段落付いたのを確認してから声をかけてきたのか。こう言う気遣いが出来るのがケイトの魅力の一つだよな。


 そう言う事なら尚更、ケイトの成長に協力したいと言う気持ちが強くなる僕。


 『銃の方は、もう終わったから大丈夫だ。一応、オークション出展用の候補分も出来たからな。今からは気分転換を兼ねて《鍛冶》でもしようかと思っていたところだ』

 ケイトが気を使わなくて済むくらいの言い訳は必要だろう。まぁ、実際《銃製作》は一段落着いているけどな。


 『それでしたら、お願いしますです』

 喜びを隠しきれていない遠慮がちのケイトが近付いてくる。


 いつものように《錬金》スキルを一緒に鍛えても良かったのだけど、ケイトは《錬金》のスキルレベルは高いので一人で生産しても失敗する確率が低い。なので、一緒に製作出来る時はレベルの低い生産系スキルの方が良いだろうと言うちょっとした親心が僕には有った。


 『うん。OKだ』

 僕はケイトと一緒に《鍛冶》を始める。


 ケイトは鉱石を塊にする初歩的なところから始めだした。となると、その間に僕はもう片方の(・・・・・)魔高炉の準備だな。


 【noir】のホームの工房にある鍛冶で使う炉には、名目上鉱石を塊にする為の魔高炉と出来た塊を武器に加工する為の魔高炉の二つが存在している。


 普通は一つ有ればどちらの作業も火力調整をすれば可能な為、二つ別ける必要性は全く無い。【noir】ではフレイの強い要望(フレイ専用魔高炉が欲しい)や二人が同時に別々の作業出来る為にも二つ用意されていた。


 ちなみに、フレイの要望は全員に却下されているが、シュン達には伝えていないし、知られてもいないだけでフレイの中では魔高炉二号機に大和(その名前の由来は、某有名在阪球団で活躍した凄く器用な選手だったりしたとか、しなかったとか…)と名付けており、その大和でしか《鍛冶》を行っていない。


 ただし、魔高炉の火力は上がり難いので常時片方(塊にする時に使用する方)だけは、その作業に適した火力で火を入れてあるのだが、もう片方は二人以上が同時に作業をする時にしか使わないので火を全く入れていない。なので、こう言う場合は塊に使う魔高炉では、武器に加工する作業は行わない事になっているのが暗黙のルールだ。


 まぁ、一つ目の魔高炉の場合と違って、準備さえ終われば二つ目の魔高炉はすぐに火力が上がって使える仕様なのだけど。これは二つ目の魔高炉を設置した時に気付いた裏技のようなものである。


 今回はケイトの《鍛冶》スキルの練習兼レベル上げが目的なので、もう片方への魔高炉の火入れはケイト本人にやって貰う。それにしても…


 『ケイト、僕よりも数段上達が早いんじゃないか?僕は、塊にする作業をかなり失敗したんだよ』

 上達の早いケイトを見ると、過去の自分の失敗談を思い出して軽く泣けてくるよな。


 『そんな事ありませんです。今日は、た、たまたまなのです。きっと、マスターが隣でサポートしてくれるからですよです』

 言葉とは裏腹に嬉しそうな顔のケイト。


 でも、この成功率なら本当に早めに《鍛冶職人》に進化出来るかも知れないな。


 『ヒナタやカゲロウもこんなに順調なのか?』

 ケイトと同様の成長率なら、あの二人も職人クラスに進化した生産系スキルが有ってもおかしくない。


 『Noです。否定しますです。ヒナタもカゲロウもまだ職人には進化してませんです。二人を否定する訳ではありませんですが、何故か私に比べて成長速度が遅く感じますです。同じくらいの時間を生産に費やしているのは間違いありませんです。なので、謎が残りますです』


 『へぇ~、そうなのか?』

 言われてみれば、ホーム内で三人を僕が見かけた時は頑張って作業していた。


 ヒナタ家のルールによって多少の差はあるにしても、ケイトだけが成長が格段に早いと言うのは謎だよな?仮に、生産系スキルと個人のセンスや相性が良いとしても、同じように製作していたら、ある程度は同じような成長をしても良いはずだよな。まぁ、生産系スキルによっては、多少レベルが上げにくいものも有るのは確かだけど、僕が体験してみた感じだと《調合》や《木工》と《細工》や《錬金》の4つのスキルを比べるなら誤差の範囲だと思う。


 あっ!そう言えば、僕の《革製作》の成長もアキラより早かったな。その時もアキラに同じような事を言われたような気がする。その時は特に気にならなかったけど…


 う~ん、ケイトと僕の共通点か…


 『ケイト、ちなみに《家事》スキルのレベルは、いくつになった?』


 『《家事》ですか?です。《家事》は、ホームの掃除もしてますのでレベルは28になってますです』


 【noir】が二人や三人だった頃は、ホームの掃除はスキルレベル上げも兼ねて僕一人がしていたのだが、最近はケイトも手伝ってくれている。その事を踏まえても、最初に聞いた時から考えるとスキルレベルの上昇が早い気がするな。


 もしかしたらだけど、《家事》スキルには生産系スキルに対する表には出ていない隠された成長ボーナスとかでも有るのだろうか?


 よくよく考えてみると、ゲーム的には表示されていない隠しボーナスとかは普通に有りそうだよな。まぁ、念の為に《家事》スキルを《見破》スキルで調べてみるか。


 すぐに僕は《見破》スキルで自分の取得しているスキルの確認を始めた。《家事》スキルだけでなく他のスキルも含めて…


 『うわぁ…マジで有ったか』

 有るかもとは思いつつも、実際に隠しボーナスを発見すると軽く引く。


 『マスター、どうかしましたですか?です』

 僕の引きっぷりに軽く動揺を隠せないケイトが慌てて訊ねてくる。


 『うん。ちょっと…な。ケイト、ギルド内で秘密にして欲しい事なんだけど、今《見破》スキルで《家事》スキルを確認して分かった事が有るんだよ。《家事》スキルには生産系スキルに対しての成長ボーナスが付いているみたいなんだ。取り敢えず、次に会った時にヒナタとカゲロウにも伝えてやって欲しい。これなら、掃除で使わなくても取得しておくと何かと便利そうだからな』

 多分、生産活動の準備や片付けで《家事》スキルのレベルが上がるのも無関係では無いのだろうし、万能系だと思われがちな《家事》スキルの分類が一応は生産系に属する事にも頷ける。実際に僕も取得するまでは何でも有りの万能系だと思っていたし…


 これなら、《家事》スキルは全く不遇じゃない。むしろ、生産系職人の推奨スキルや必須スキルと言っても過言ではないだろう。


 『Oh~!それなら私も謎が解けてスッキリしましたです。《家事》の件は、秘密も含めてOKしましたです。ヒナタ達にも連絡して説明しておきますです』


 たまたま《家事》スキルを取得していた僕とケイトは運が良かったみたいだな。


 それにしても、《見破》は、スキルの表示されていない隠された効果まで見れるんだな。この能力だけでも、かなり便利な気がする。まぁ、この能力はかなり集中して見ないと分からない事だけど…


 ちょっとしたチートって言うやつか?気が付かなければ、普通に見る(・・)だけのスキルだが、その特異性に気付けば視る(・・)診る(・・)に変わるような感じがしている。


 早速、フレイにもメールで伝えた。アキラには、明日ログインして来てからで良いだろう。


 今日の残りの時間は、ケイトと《鍛冶》スキルを鍛えていった。その結果として、店舗で売れそうな物もそこそこ出来ている。試しに、ケイトが製作した武器も並べてみても良いかもな。ケイトも自分で製作した物が売れると、それが次への自信へと繋がるだろうから。





 アキラを含む皆に今日の集合時間は連絡済みだ。実際のところは、アキラがログイン出来る時間に集合時間を合わせただけなのだが…


 『たっだいま~。う~ん、この感じ、この感じ。この我が家って感じが良いよね。だいたい二週間ぶりくらいかな。ちょっと懐かしい気もするし…本当に家に帰って来たって感じもするし』

 アキラがログインして来た。


 『おかえり、アキラ』


 『うん。ただいま、シュン。それで、オークションの会場は裏庭だったかな?』

 事前に教えていた裏庭の方に進んで行くアキラだが、会場を見て一瞬で言葉を失ったようらしい。


 『大概の初見はそんなリアクションだな。そこは選んだヒナタ達ですら、そんな感じだったから。そろそろ、他の皆もログインして来ると思うから正気に戻れよ』


 『うん…何て言うか、いちいち驚くのにも今さら感は有るよね。…って言うか、ここヒナタ達に選んで貰ったんだね』


 『フレイの提案で、ホームの改修を見せたついでに選んで貰ったってところだな』

 アキラをリビングの中へと誘導して紅茶を淹れる。僕は、紅茶を淹れながら、最近有った出来事や《家事》スキルの件を話していった。


 アキラも、最初は驚いていたようだが、《家事》スキルについては納得出来る内容だったらしい。鞄を一緒に作っている時に感じていた僕とアキラの成長の違和感に答えも出たみたいで、スッキリもしている。


 『あと、生産系の複合スキルが一部判明してるぞ』

 僕が見付けた《銃製作》と《機械製作》の件も話していく。


 『それなら、私は《鞄製作》所得するから、シュンも《裁縫》を取得して縫う系の複合スキルが有るなら一緒に検証しようよ』

 僕が、提案しようと思っていた事を先に提案された。まぁ、結果的に手間が省けて良かったんだけど。


 『了解だ。取得する』

 アキラの方は《家事》も同時に取得しているようだ。【noir】内での生産系複合スキルの発見&検証体制もかなり整ったな。


 あっ!もしかしたら、ネイルさんの【プレパレート】なら他の複合スキルの取得者もいるかも知れないな。次に会うときにさりげなく情報を交換でもしてみようか…





 『皆、揃ったね。お久しぶりです。それと、長らく私用を優先させてごめんね。今日から、また私も皆と一緒にこの世界で頑張るよ。でも、最近の事はあまり分からないので、その辺りは新加入した三人も遠慮なく教えてね。私で分かる事は逆に教えるからね』

 ギルドメンバーがリビングに揃い、議長(アキラ)の一言でミーティングが始まった。


 『予定では明後日がオークションの打ち合わせだから、今日と明日は前からの予定通りに洞窟ダンジョンの攻略を目指す?それとも他に『これを先にしておいた方が良いかな』って事でも有るかな?』


 『ギルドメンバーが六人に増えてからの最初に立てた活動予定やからな。ウチは洞窟ダンジョン攻略に賛成やで』

 フレイの一言に皆が同時に頷いた。


 早くも本日の予定が決まったな。そうなると…


 『一応、確認しておきたいんだけど、ヒナタ達のパーティーはカゲロウが前衛でヒナタが後衛、ケイトが回復役で良いんだよな?』

 パーティーの構成上は、多分それしかないと思うけど確認は大切だ。自由が売りのゲームで、何事も決めつけは駄目だろう。極論を言えば殴りあいをする《魔術師》がいても不思議では無いのだから…


 『はい。基本はシュンさんの言う通りです。時々ですがケイトに中衛やカゲロウのサポートで前衛をお願いするパターンも有りますけど、だいたいはそうてすね』


 『…それだと、ケイトは《杖》スキル以外に武器スキル有るのかな?』

 それは、今日久しぶりにログインしてきたアキラは勿論、僕もフレイも聞いたことがない。やっぱり、確認しておいて良かったな。


 『私は、【noir】に入るまでは《水魔法》と《風魔法》を使った後衛からの回復をメインにしてましたです。なので、余り攻撃向きの魔法が有りませんでしたですし、直接攻撃する手段もほとんど有りませんでしたです。なので、新しく《棒術》スキルも取得したのです。それで、カゲロウの後ろに隠れて杖を棒代わりに使って攻撃してますです』

 《水魔法》は分からないけど、《風魔法》は僕も使ってるから、攻撃魔法が少ないのは良く分かる。


 まぁ、〈ウインドカッター〉一種だけでも、それなりに戦えるとも思えるんだけど、回復をメインにするならMPの事を考えると厳しいかも知れないな。


 それにしても、《棒術》スキルか…常時装備している杖を棒代わりに代用出来るのは便利だよな。武器を複数持って、使うスキルによってその都度持ち変えなくても良いのは効率が良いからな。フレイを見ている僕としては、その辺の大変さは知っているからな。今度、皆で新種の可変武器を検討する必要が有るかもな。


 『分かった。ヒナタ、ケイト、ありがとう。僕達はフレイが前衛で僕とアキラが中衛をしてる』


 『そやな。それやと今回はウチとカゲロウが前衛で…』


 『私とシュンが中衛かな』


 『それでは、私が後衛でケイトが回復役ですね』


 『なかなかええんやないか。ほな、これで決まりやな』

 フレイ、アキラ、ヒナタの順でポジショニングについての発言をして最後にフレイが締める。


 だが、僕はそのポジショニングに少しばかりの異議を唱えた。


 『いや、それは少し待って欲しいな。フィールドエリアなら、そのポジショニングで大丈夫だと思うけど、今回の攻略場所は見晴らしの良いフィールドではなくて、行動範囲も制限されるダンジョンの中だから、もう少し工夫をした方が良いと思う。ダンジョンでは背後から襲撃を受ける事もそこそこの頻度で有ると思うんだ』

 実際に、この前僕一人で鉱山ダンジョンを攻略している時に、背後からの襲撃を喰らう等色々と遭遇している。つまり、経験者は語るだ。


 『なので、後衛に《魔術師(ヒナタ)》と《回復士(ケイト)》の二人では危険だと思う。だから、中衛に遊撃を兼ねてアキラと《棒術》も使える回復役のケイトと魔法攻撃役(ダメージディーラー)としてヒナタの三人。後衛は警戒を兼ねて僕が受け持つよ。カゲロウとフレイの前衛の盾役に中衛の皆を守って貰う。だからカゲロウ、期待してるからな』

 注意を込めた僕から少し浮かれ気味のカゲロウへのメッセージ。


 『おう。任せとけ』

 僕からのメッセージが届いたのかが全く分からない一層浮かれた表情で張り切るカゲロウとそれを見詰めて慈悲深い微笑みを見せるフレイ。


 カゲロウに前衛を任せる事に若干不安も残るのけど、この調子なら隣にいるフレイが何とかしてくれそうなので大きな問題は起きないだろう。


 『それじゃあ、行こうか。今日のところはシュンの意見を参考にパーティープレイの練習を兼ねて、ダンジョンの浅いところを回りながら魔物のチェックと採取と採掘を優先する…で、どうかな?』


 『賛成です。私たち三人はまだ経験が浅いので、ミスをして皆さんの足を引っ張らないように練習したいです』

 やはり真面目かつ優等生な意見がヒナタから出る。しかし、それは大きく間違っている。


 『ヒナタ、それは違う。間違ってるよ。お互いのミスは皆でフォローしていくのがパーティー(仲間)だと僕は思う。足を引っ張るのは駄目だとか迷惑がかかるとかは別に考えなくても良いんだ。もし、それでもミスが出るとしたら、それはパーティー全員のミスだと僕は思う。各々が各々でベストを尽くしたら、それが自然にチームプレイになるんだよ』

 僕も最初の頃…いや、今も継続中かも知れないけど迷惑をかけている。なので、仲間をフォローする事自体を惜しむ気は全く無い。まぁ、言葉自体は昔に読んだ古い漫画のセリフをアレンジしただけだけど。


 『ふっ、シュンは相変わらずの天然ジゴロやな。そんなんやから、また惚れるプレイヤーが増えるんやで』

 フレイに不本意な事を言われた気がする。


 また(・・)どころか僕としては一回も惚れられた(告白された)経験が無いのだから。


 『いやいや、僕に惚れるとかは絶対に無いだろ。ジュネやアクアに僕の事を聞いてみろよ。すぐに分かる事だぞ。それに、僕は当たり障りのない普通の事を話しただけなんだから』

 何度も繰り返し言うけど、僕はアクア達では無いのだ。


 僕は、そんなに簡単に惚れられたりしない。ほらみろ、フレイのせいで、皆が顔を赤くして気不味くなっているじゃないか、空気が重くなるんだよ…あぁ、余計に恥ずかしくなったな。


『まぁ、それはええわ。でもな…ウチは、自分のそう言うところ(・・・・・・・)に惚れとるんやで』

 不意を突かれた僕は一瞬ドキッとしたが表情には出さずに済んだ。それよりも、その発言のあとの女性陣の視線がフレイと僕の間を行ったり来たりと何回も往復している方が面倒(やっかい)だな。


 う~ん…若干の居心地の悪さを感じるな。そう言うところ(・・・・・・・)がどう言うところなのか、フレイを小一時間程問い詰めてみたくなるけど、残念ながら今は時間が無い。それ以前に、僕にはフレイに惚れて貰えるような事をした記憶が無いのだから。


 それよりも、フレイが開き直った態度を皆に見せている分、皆からの僕への視線が痛いんだよな。特に女性陣…本当に勘弁して下さい。


 『まぁ、フレイの冗談は置いとくとして。そろそろ、洞窟ダンジョンへ行こうか』

 僕はフレイの冗談を軽く流す事にした。その手の冗談は本当に苦手だからな。


 だって、どっちに転んだとしても、周りにいる皆に僕を含めて誰一人として得をしないだろうから。


 『ギルマス、一言良いか?』

 側に寄ってきたカゲロウが僕にだけ聞こえる声で話しかけてきた。


 『うん?どうした、カゲロウ』


 『鈍感は一番重い罪なんだぞ』

 全くもって不本意な事を言われた気もするけど…もう、この件は忘れて蒸し返さない方が良さそうだ。色々な意味で…





 初めて入った洞窟ダンジョンの中は、ここは本当に洞窟の中なのか?と意外に感じる程に広くて明るかった。


 フレイの『ウチは…惚れとるんやで』発言が今も尾を引いており、若干ぎこちない感じがしなくもないけど、連繋の方は問題無くとれていた。発言者(フレイ)の態度が今もやたらと堂々としているので、やっぱり冗談だったんだろうな…と言うか、あの時少しドキッとした僕の気持ちを返して欲しい。


 今はまだまだ詰めの甘いところも有るし、アクア達の連繋とは比べる事すらおこがましいけど、カゲロウの前衛は妙な安定感が有った。もっと成長したら、きっと良い盾役になるんだろうな。まぁ、安定感が有るのはカゲロウの背後から放たれるケイトの回復魔法(サポート)のお陰でも有るのだけど。


 ケイトの回復魔法は、回復量自体は低いのだが、回復するタイミングが異様に上手い。他のMMOでも回復系のキャラでプレイしていたらしいので、この辺りは経験の問題だろう。


 ヒナタはケイトとは逆に【noir(僕達)】に縁が無かった範囲攻撃魔法で大ダメージと戦闘中での時間的な余裕をもたらしてくれている。


 これにプラスもう一人メインを張れる攻撃系のプレイヤー(アタッカー)が入ると、新人組のパーティーのバランスは、かなり良いのかも知れないな。


 『うん。なかなか上手くいってるな。この調子で狩りを続けよう』


 『あっ、待って!次の曲がり角を左に曲がった所で、これは…ゴブリンなのかな?が八体いる』


 『では、私が魔法で先制しますね』


 洞窟ダンジョンに入ったばかりの頃とは違い、細かいところでも連繋がとれている。この調子なら、明日はもっと奥まで進めるかもな。


 僕自身も考え事をしながらでも、後方からの《付与術》による補助は忘れていない。この際だから、ついでに新しい合体(・・)の方も試してみるか。


 『右手…〈魔法攻撃力上昇〉、左手…〈魔法攻撃力上昇〉』

 左右の手に同じ《付与魔法》を詠唱して指を組み合わせる形で手を合わせた。


 これは完全に余談になるが、腕を下に下げて詠唱している今は良いけど、腕を胸の前で組んで詠唱すると教会で神に祈りを捧げるポーズに見えなくもないよな。僕は絶対にしないけど…


 『いくぞ!合体〈魔法攻撃力増大〉』

 僕は合体させた《付与魔法》をヒナタへと掛ける。魔法名は事前に知る事は出来なかったのだけど、合体させると同時に脳裏に浮かんできた。


 その効果の程は未知数だが、魔法を二発連続で放つ分よりも《付与魔法》を合体させるとMPの消費自体が遥かに増えるらしい…と言うか、この消費量なら効果が無いと全く割に合いませんよ。


 『私も、いきます。〈レイニングボルト〉』


 ヒナタから放たれた魔法は、対象の魔物目掛けて天(今回の場合は洞窟の天井部分)と地(今回の場合は地面)の両方から魔物を切り裂くように無数の雷が散っていく。


 〈レイニングボルト〉は、ヒナタの使える範囲魔法で一番威力の高い魔法だ。


 …それでも、装備している杖の補助効果を含めても一撃でゴブリンの群れを蹴散らせる威力は無い…はずだった。だが、実際には魔法の残響が消えたあとに残っていたのは、真っ黒に焦げたゴブリンの死体と鞄の中に残された大量のゴブリンのドロップだけだった。


 どうやら、これは《付与術》によるステータス底上げ効果の恩恵らしいな。MPの消費は激しいけど、《付与術》による合体《付与魔法》のステータス上昇は凄まじいらしい。さらに、〈魔法攻撃力増大〉は新しい魔法としてアーツの欄に登録されている。どうやら、一回でも使えば、短縮詠唱(ショートカット)出来るみたいだな。まぁ、一回一回手を合わせて詠唱しなくて済むのはラッキーだったな。


 『シュンさん、何だったんですか?今のは…』

 魔法を撃ったヒナタ自身が、一番驚いて一番早く僕に迫ってきた。僕はヒナタだけでなく全員に最近進化させた《付与術》について軽く説明した。僕も使う事自体が初めてで威力にビビったと素直に補足しておいた。


 『《付与魔法》って、こんなにも便利なんだな』

 カゲロウが誰にも聞こえそうにない声でボソッと呟いた。


 それは違うと思う。これは使ってみて《見破》スキルで分かった事だけど、初回の合体魔法は両手を空けないと使えないし、《付与銃》スキルでは使えない。(もしかしたら、後者ついては【魔銃】の二丁持ちで解決出来るかも知れないけど…一丁しか【魔銃】を持っていない今は無理だ)それに、いくら強力に協力(サポート)出来ると言っても、MP消費等の面で使い勝手が悪いのだから戦闘中に使うのは難しいだろう。ちなみに言っておくが、今のはダジャレでは無いので勘違いはしないで欲しい。


 取り敢えずは、新規アーツの登録と威力の確認を兼ねて他の上昇系の《付与魔法》も合体させて使ってみる事にした。ギルドメンバーを実験台にしてるようで気が引ける部分も有るけど、合体後の《付与魔法》は、どれも今までの倍以上の効果が有り、殲滅速度と進行速度がかなり早くなっている。


 《付与術》は、基本ソロ行動の多い僕には都合が良いスキルかもな。事前に全て使っておけば、死に戻りの確率は格段に減りそうだからな。


 この日の狩りは、新人達を含めてかなりの収穫が有った。新人達三人は六人パーティーでの戦闘のお陰で、いつもよりも多くの数の魔物を狩れたらしい。ケイトの回復魔法の出番が少なかったのはパーティーとしては良いことなのだけど、レベル上げ的には美味しくなかったかな。まぁ、《棒術》の方では良い経験を積めたみたいなので総評としては良かったのだろう。


 『今日は、そろそろ終わりにしようか?明日は、もう少し奥を…出来るなら、洞窟全体の突破を目指そうね』


 確かにアキラの言う通り、街まで戻る時間をふくめると良い時間になるかもな。回復アイテムは使ってないので補充の必要は無いし、晩御飯を食べて再びログインしたら一人で狩りでもしようかな。仲間では実験出来ない(試せない)減少系の《付与魔法》も合体させて、アーツの登録をしておいた方が良さそうだからな。


 『そうだな。僕はアキラに賛成だけど、皆はどうかな?』


 『ウチもそれでOKやで、ただ一つ皆にお願いや。戻る時は採掘を多目にしながら帰らせてな』

 今日は、パーティープレイの練習を第一の目的とした為、途中で見付けた数カ所の採掘ポイントは無視していたのだが、フレイは気になって仕方がないらしい。


 『はいです。私も少し採掘してみたいかもなです』

 これで賛成が二票か。当然僕も特に反対する気はないので手を上げて賛成する。合計三票。


 その結果…フレイの願いは叶った。たったの三票とて、ギルドの半数だからだ。それに、今日の狩りの中で青虫系の魔物や蔦系の魔物も多く出た。ドロップ素材が新種の糸や草だったのでアキラやヒナタ、カゲロウも満足している。だから、フレイ達が《鍛冶》系の素材が欲しいのもアキラには伝わっていた。まぁ、こう言う時のフレイは凄く分かり易いからな。


 『了解。あんまり遅くならないように、気を付けてくれたら渡しは大丈夫だよ』


 帰り道は採掘ポイントを発見する度に止まり、採掘ポイントが枯渇するまで掘った。今日は三人いるので、一ヶ所ずつは時間が掛からなかったのだけど…意外に採掘出来るポイントを多く発見出来た為、予定以上の時間が経過していた。まぁ、それに見合う物も採掘出来たのだけど。





 『はいです。この化石が出た時は、本当にビックリしましたです』

 ホームに戻ってきたケイトの第一声がこれだ。


 まぁ、鉱石を掘り出している最中に得体も知れぬ化石をケイトが掘り出した事で、驚き過ぎた皆のテンションが上がり無言で採掘を続けていたのだから、ある意味で仕方が無い事だろう。一番最初に化石を掘り出したケイトに至っては特にな。最終的には、僕、フレイ、ケイトにつき一個ずつの計三個が掘れた。


 工房の中で掘り出した三人による鑑定を進められている。ちなみに、ヒナタ、カゲロウはお家事情でログアウト済みである。


 『確かに驚いたよな。だけど、問題なのは僕達の中で一番スキルレベルが高いフレイですら、掘り出した化石の鑑定が不可能って事だよな』


 『ウチでも鑑定出来なくて、シュンの《見破(スキル)》も無理なんやから、上位の生産スキルか?《調合》系の複合スキル用の素材?なんて事も可能性も有るんやろな』


 『うん?と言う事は…』


 『しばらくの間は採掘出来たとしても、そのまま倉庫行きやな』


 『それは、とっても残念なのです』

 ケイトは自分で掘り出した化石を手に取り、残念そうに眺めている。僕もケイト同様にワクワクしていた分、その気持ちは分かるけどな。


 『化石の件はひとまず置いといて、取り敢えずこの宝石珊瑚の分配だな。七個掘れたから、ギルドメンバー一人に個ずつで分配だな。残った一個は…フレイ、例のあれ(・・・・)に使って完成させようか』

フレイは、例のあれですぐに気付いたが、この件に全く関わっていないアキラは首を傾げている。


 『そやな。今日、このあとで完成させれば、明日には実践テストも出来るやろ』


 『シュン、例のあれって何の事なの?』


 『この前、ケイトとヒナタには杖プレゼントしたんだよ。ちなみに、今日二人が装備していたのがその杖だ。それで、まだ未完成だったから渡してないけど、一応カゲロウの分も製作中だったんだ。勿論、カゲロウの分は杖では無いけどな。ただ、素材が一つ足りなくて完成まであと文字通りあと一歩ってところで止まってたんだ。それが、この宝石(珊瑚)のお陰で完成させれると思う』

 僕とフレイは、アキラにカゲロウ用に製作中の盾の詳細を説明した。


 『へぇ~、私がいない間に二人はそんな事をしてたんだ。教えてくれれば私も協力したのに…』

 自分の知らない内に楽しそうな計画が進んでいて少し拗ねた様子のアキラ。


 『ほら、アキラは部活で忙しかったやろ。そこは、流石のウチも遠慮してんよ』

 それをすぐに察知してフォローに回る気の利くフレイ。


 『まぁ、そう言う事だな。決して仲間はずれにした訳ではないよ。それに、アキラには皆の防具製作時には協力して貰う事になるから、適材適所ってやつだな』

 その意図を汲んで、すかさず駄目押しでフォローしておく僕。


 『そうだね。確かに武器製作では私の出番は無いよね。でも、防具の時は絶対に任せてね』


 『勿論だ。その時は存分に腕を振るって貰うからね』

 ふ~~、なんとかアキラの機嫌を損ねずに済んだな。


 『あっ…そうだ。ケイトも最後の仕上げを手伝ってみるか?』

 そして、すかさず話題を転換していく。


 『はい。今のを聞いて私もやる気が満ち溢れてきましたです』


 『じゃあ、ケイトには宝石を加工して貰おうかな。このスペースにに嵌まる大きさに削ってくれ』





 『う~、いきなり失敗しましたです』

 早速加工に入ったケイトが、最初の削りだし作業で宝石(珊瑚)の削る大きさを盛大に失敗してしまった。もしかしたら、宝石の素材ランクがケイトの《細工》スキルのレベルよりも高いのかも知れないな。


 ケイトは、すぐに自分の分に割り与えられた珊瑚を取り出して、また加工を始めた。大きさを失敗した方の珊瑚は、僕の銃【皇土】には問題無く使えそうだな。むしろ、このサイズが丁度良いかも知れない。あとで僕の分の珊瑚と取り替えて貰おうか。これも適材適所(・・・・)と言うやつだろう。


 『おっ!』

 次は上手くいったようだ。宝石のカットも研磨具合も絶妙だと思う。


 『はいです。多分上手くいきましたです』


 『ほな。それを預かるわ。最後はウチにお任せや』

 ケイトから宝石を預かり、盾の空いていた箇所に《細工》で加工された珊瑚を嵌め込み、全体のバランスを見ながら、最後の仕上げをフレイが施していく。


 『これで、どうや。なかなかええ感じの盾になったやろ。そや、ケイト。自分この盾に名前を付けたり』

 完成したその盾は六属性の宝石が絶妙に調和しながら輝いている。


 『私がですか?です。それは、困りましたです』

 急にフレイに振られて悩み出したケイトはブツブツと何か呟きはじめた。


 『別に名前なんか、適当に気軽に考えたらええねんで』

 いや、フレイさん。あまり気軽過ぎると言うのも貰う側のカゲロウが困ると思うんだけどな。


 『それは、ダメだと思いますです。これは、フレイとマスターが心を込めて作った物だからです。名前もそれなりに相応しいものを考える必要がありますです』

 まぁ、そう言われるとそうなのだろうけど。心を込めた製作者の中にはケイトも含まれているから、そこまで気負わなくても良いと僕は思うな。


 しばらく無言の時間が続き、そろそろフレイの限界が近づいたタイミングでケイトの目が輝いた。


 『え~と…はい。決めましたです』



【ヴァランサ】防御力10〈特殊効果:耐火/耐水/耐地/耐氷/耐雷/耐風〉〈製作ボーナス:耐光/耐闇〉



 『どうですか?です。六属性のバランスを盾で調整するという事で、バランスと言う言葉(フレーズ)からアレンジしてみましたです』


 この【ヴァランサ】は特殊効果で得た六つの耐性に加えて、製作ボーナスで上位属性に対応した耐光と耐闇まで付ける事が出来たのは大きいよな。それに、ケイトが考えた【ヴァランサ】と言う名前も素敵だと思う。まぁ、少し防御力は低いけど、その辺りは新しく素材を集めて少しずつ強化していけば良い話だからな。


 『ウチは、かなり素敵やと思うで。なぁ、シュン?』


 『そうだね。ありがとう、ケイト。僕も気に入ったよ』

 何よりも格好良いからな。カゲロウも気に入る事だろう。


 明日、三人からと言う名目でカゲロウに渡す事にした。完成までに思ったよりも時間を取られたな…このあとに予定していたソロ活動は止めておこうかな。





 次の日、僕は集合時間よりかなり早めにログインしていた。昨日は、製作出来なかった【皇土】を製作する為だ。昨日の内にケイトが失敗した珊瑚を僕の分と交換して貰っている。まぁ、珊瑚以外の素材はすでに揃えてあるので、メニューから選択するだけでポンっと製作可能なのだけど。



【皇土】攻撃力50〈特殊効果:銃弾に地属性が追加〉



 『よしっ!』

 これで、ついに六属性の銃が揃った。戦闘の幅も大きく広がる。そして、やっと次のリストへと進む事も出来る。


 『次のリストは、何か…うぉぉぉ~~やった、やったな!やっときた』


 リストの次の項目として表示された銃の名前は、もう一丁どうしても欲しかった【魔銃】だ。かなり、テンションが上がったのも束の間の事で…現時点では製作が出来ない。


 【魔銃】は今までの銃とは違い、材料として必要な物は素材だけでなく、今までに製作した属性の付いていない銃が必要になる。その属性の付いていない銃をベースに必要な素材を足していく製作方法みたいなのだけど…素材が一つだけ足りない。


 ただし、唯一の救いは一度だけ実物を見る機会が有った素材が足りない点かな。しかも、僕はその持ち主も二人(・・)も知っている。龍髭…先月の公式イベントで、ツインテールドラゴンのドロップでレジーアとガイアが獲得していたはずだ。打ち上げの場で直接見せて貰ったから間違いない。どちらかの一人が使っていなかったら、何かしらのアイテムと交換して貰おうか。僕の持ってるアイテムなら何でも良い。取り敢えず、メールだけでも入れておくか。


 …メールの返信は思っていたよりも早かった。結果は…残念。二人とも防具の素材として使ったそうだ。それは仕方が無いだろう。いくら、レア素材と言っても使えるチャンスが有れば使うのが普通だからな。逆に使えるチャンスを逃すと次はいつ使えるのか分からないのだから。そんな素材が【noir】の倉庫には色々有る。


 それに、いくらレア素材と言っても入手チャンスが一度きりしかない訳では無いだろう…まぁ、その内ドラゴン系が魔物として出てくるのを待つしかないかな。





 今日は、かなり奥の方までダンジョンの中を進んでいる。出現する魔物にも、新たに各種スライム系が加わっていた。スライム系は身体全体がアメーバ状態なので、物理攻撃があまり効かないようだ。それに加えて初級に限定されているが属性魔法まで使ってくる。


 まぁ、そのお陰としては言うか、スライムの身体の色の違いで得意としている属性と弱点とする属性が一目で分かるんだけど。


 『甘い。そいつは、背後(うしろ)には通させない』

 スライム系の属性魔法をカゲロウが楽しそうに対処している。【ヴァランサ】の効果を存分に発揮してくれているみたいだ。


 物理的な防御力は低いが、魔法に対しては非常に強いのがカゲロウにプレゼントした【ヴァランサ】。単体を狙った初級程度の魔法は簡単に防いで見せていた。


 ダンジョンに入る前のテストで、ヒナタが今使える中では一番強い雷属性単体魔法の〈ボルト〉を、ほぼノーダメージで凌げた。少しダメージが出ていたので、安全に防げるのはこのクラスの魔法なんだろうな。まぁ、ここで出てくるスライム系には無類の強さを誇るだろうけど。


 この出来には製作者の一人でもあるフレイも非常に満足しているご様子だ。今もカゲロウが魔法を盾で防ぐ度に、皆には気付かれないようにニヤリと笑って小さくガッツポーズをとっている。まぁ、この事には戦闘中なので、一番後ろから全体を見ている僕しか気付いていないだろう。


 『視認で右に地属性スライム三匹。カゲロウは前衛は頼む。アキラ、周囲に増援は?』

 僕は後方からの遊撃と《付与術》、戦場の整理、背後の警戒をしている。このポジションはレベル上げ的には全く美味しく無いが、ダンジョン攻略には必要な役割だ。


 やっぱり、このメンバーの中では高レベルの僕が受け持つのがベストだろうな。所持してるスキル的にも…


 『わかった』


 『この近くは、これで最後かな』


 『了解。フレイ、牽制。ヒナタ、魔法』

 カゲロウとアキラの声を聞き、次の指示を出す。


 スライム相手ではフレイの良さが発揮出来ない…が、その代わりと言うかゴブリン系との戦闘では、二人の役割は逆転しており、フレイに思う存分存分頑張って貰っている。


 このダンジョンでの戦闘に慣れてきたのか、ヒナタは僕の指示の前に魔法の詠唱に入っていた。僕の言葉と同時に…


 『〈レイニングボルト〉…あれ?』


 今まで、嘘のような活躍を見せていた〈レイニングボルト〉が、全くと言っていいほど効果が無い事に魔法を放ったヒナタ本人だけが驚いている。


 『ヒナタ、気を付けて。このスライムは地属性だ、さっきと違い雷属性は効きにくいぞ。他の属性魔法を使うんだ。いけ、〈ウインドカッター〉』

 今僕が使える《風魔法》で唯一の攻撃魔法を放った。


 『私も〈ウインドカッター〉です』

 僕に続けて、ケイトも同じ魔法を放つ。


 ここまで攻撃面で見せ場が少なかったケイトにも、数少ないだろう見せ場がやって来た。


 しかも、カゲロウの【ヴァランサ】を使った奮闘により、回復の方でも目立った見せ場が無かったので、MPを持て余し気味だった反動もあったからか?ケイトは〈ウインドカッター〉を連続で放ち、魔物を殲滅した。


 『すみませんでした。私…』

 ヒナタがすぐに頭を下げてくる。間違える事は誰にでも有る事なので、この場にいる誰もが気にして無いのだけど当人は別らしい。


 『気にしなくて良いよ。でも、魔法をメインで使うのなら、属性の相性は覚えておいた方が良いかもな。火は氷に、氷は風に、風は地に、地は雷に、雷は水に、水は火に強い。まぁ、魔法で弱点を狙う方が効率が良いからな。落ち着いたら先に進もうか』

 ヒナタを気にかけて僕達は先へと進む。


 しばらくの間は少し進む度に戦闘が続いたが、その度にヒナタは属性を考えて魔法を使っていた。学んだ事を即実践出来るのは単純に凄いと思う。


 『もう、かなり奥まで来たよね?進む?戻る?どうする?どっちにしても、そろそろ少し休憩しようか?』

 アキラが尋ねてきた。


 確かに、すでにダンジョンに潜ってから二時間は経つか…休憩には良いタイミングかも知れないな。


 『そうだね。この先どうしようか』

 ダンジョンマップも、かなり埋まっている。多分だけど、あと一時間も有れば【ポルト】側にも出れるのでは?とも思うけど…確実では無い。


 …かと言って、この位置から来た道を戻っても一時間は掛かるだろうし…判断をするには丁度良いかも知れない。新人達は明らかに疲れが見えているからな。HP(体力面)でも、MP(精神面)でも…


 『俺は、先に進みたい』

 アキラの問いに僕以外でカゲロウが一番に反応した。


 僕が確認も兼ねて皆の顔を見ると、素材がそれなりに手に入ったフレイはどちらでも良いと言った感じだ。正直な話、僕もどっちでも良い。わざわざ質問して確認してきたアキラもそうだろう。残るは…


 『私達も新しい街が見てみたいです』


 『はいです。私も同意しますです』

 ヒナタとケイトもカゲロウに続く。


 反対する者がいないのなら先に進もうか。これは【noir】初の全員参加の遊び(イベント)だから


 『わかったよ。じゃあ、しっかり休んでから先に進もうか』

 アキラの一言にホッとして、再び休憩に入るヒナタ達。僕とフレイは近場の採掘作業に入っていた。


 採掘中にフレイと龍髭の話もしてみるが、残念ながらフレイも持ってるプレイヤーをレジーアとガイア以外は知らないようだ。やっぱり気長にバージョンアップを待つしか方法は無いのだろうな。





 『なぁ、俺は最近気付いたんだが、ギルマス達はちょっと異常じゃないか?』


 『はいです。私には、マスター達みたいに採掘する元気が残ってませんです』


 『そうだよね。MPは私達以上に使ってたのに、もう回復してるみたいだし…』


 『いや、それもだけど…そうじゃなくて、ギルマス達は戦闘中ずっと僕等のフォローしながら、戦場以外の場所まで気にしてたんだぜ。俺達の進路や退路を確保したり、俺達が動き易いようにフォローしたりな。多分、俺達が気付かなかった採掘ポイントも見付けてた』


 『…それは本当ですか?です』

 ケイトだけでなく、ヒナタもケイト同様に驚いている。


 『あぁ、その証拠に採掘に夢中のになっている今もギルマス達は警戒だけは怠ってない。いつでも戦えるように』


 『…私達も、あんな風になれるのかな?』


 『『………』』

 無言のカゲロウとケイト。だが、二人の瞳にはそうなりたいと言う強い意志が込められているようだった。





 僕達は休憩を十分に取り、さらに奥へと進んでいる。休憩に入るまでは、十数メートルに一回くらいのペースで湧いていたスライム系は全くと言っていいほど出なくなった。多分、ダンジョンの中間付近のみ出現する魔物のだろう…と言う事は、出口も近いのか?


 『ストップ!ちょっと止まって』

 アキラが険しい顔で皆を止める。しばらく考え込み…


 『…多分だけど、この先は少し広い場所になっていると思う。そして、その場所を越えたら出口だとも思う』


 出口、その言葉を聞いてケイト達三人は笑顔になる。やはり、どんなに口で大丈夫と言っても身体の疲れは誤魔化せないようだな。だが、そんな報告をするだけで、アキラが皆の歩みを止めるのか?


 『…その広場にボスはいないみたいだけど、かなりの数の魔物がいる。正確な数は分からないけど、多分三百体以上』


 『なっ…!?』

 僕も確認して…いるな。


 僕も《見破》で確認してみたが、どの魔物も一体一体を相手取るならステータス的に問題は無さそうだ。しかし、今のパーティーの現状で数多くの魔物を同時に相手にするのは、どう考えても厳しい。


 『それは多分、モンスターボックスやな。どうするんや…シュン、何か良い作戦でも有るか?』

 聞き慣れない言葉が出てきたけど、言葉の感じからしてモンスターが詰められた箱…トラップみたいな物か?


 フレイが簡単に作戦を求めてくるけど、想定していないものに対しての作戦等当然有るはずもない。まぁ、思い付いた案は有るけど…


 『作戦か…それらしい物が無い事も無いけど。今の皆の状態だと、かなり無理する事になるぞ。それでもやるのか?』

 アキラ以外の皆が黙って頷いた。


 『まず、広場への入口に隊列を組んで陣取る。あの狭さなら入口を抑えたら、後衛までは攻撃が届かないと思う。だから、カゲロウは攻撃を考えなくて良いから防御に徹する壁役に専念。ヒナタはその間に範囲魔法を唱えれるだけ唱えていく。アキラは扇を装備して後衛に陣取り、遠距離からの攻撃とパーティーの背後の警戒。フレイはカゲロウの側でヒナタの魔法で削られて生き残った魔物に止めを刺す。ケイトはカゲロウとフレイの体力を優先的に回復させながら、全員のHPを回復魔法でコントロールしてくれ。あと、〈ウインドミスト〉が使えるのなら状況を見て使って欲しい』

 各々が、今指示された各々が自分の役割と連繋を確認している。ただ…


 『…シュンは、どうするの?』

 さっき、皆と一緒に頷かなかったアキラだけが気付いたらしい。この作戦の盲点と言うか欠点に…


 『最後に僕だけど、皆に必要な《付与術》を掛けたあと、あの中に突っ込み、入口とは反対側…あの少し奥まった場所に陣取って魔物を惹き付ける。まぁ、簡単に言えば囮役だ』


 『『『『えっ!?』』』』


 『そんなの絶対にダメ。また…ダメ』

 やっぱりと言うか、当然と言うか、アキラが一番最初に否定してきた。きっと、レクトパスの件を思い出しているのだろう。


 『アキラはそう言うかもと思っていたけど、いくら入口に陣取って防御を堅めると言っても、あれだけの魔物に一斉攻撃されたら、多分カゲロウ(防御)がもたない。この戦闘で、カゲロウが倒れたら…どうなるかはアキラにも分かっているよね。だから、絶対に少なくとも半分以上の魔物を惹き付ける事に特化した囮役がいるんだ。そして、この中で単独で回復をしつつ、一番回避に優れているのが誰かは分かるよね。今回は、前みたいに最初から死ぬ気は無いから大丈夫。その為にアキラにお願い事も有るし』


 『何!?』

 アキラから怒気のこもった一言が返ってきた。


 ちょっと怒っているらしい。それでも根の優しさからか、一応僕の話を聞いてくれるみたいだけど。


 『扇で使うアーツは〈紫雷扇〉に限定して欲しい。それも僕が魔物に囲まれた時だけ限定で。これを幸いと言って良いのか分からないけど、魔物はゴブリン系が多いから多少の属性間違いは無視出来るし、【雲水】と【霧氷】を交えたコンボにも使えると思う。ぶっつけ本番だけど、一番長く一緒にいるアキラになら、タイミングを含めて全てを任せられるからね』

 説得と言う名の説明をしながら、各々に必要な《付与術》を施していく。


 何の抵抗も無しに《付与術》を掛けられるところを見ると、取り敢えずはアキラも理解はしたらしい。納得したかは別問題だけどな。まぁ、戦闘が終わったあとのアキラの方が今から戦う三百体以上の魔物の群れよりも怖いのだけど…その時、カゲロウ達は僕を助けてくれるのだろうか?ソノトキハ本当にお願いしますよ。


 『カゲロウ、フレイ、あと(・・)の事は頼むね』

 僕は色々な意味であと(・・)の事をカゲロウとフレイに託し、両手に銃を持ち静かに息を調え集中していく。


 『まずは、ヒナタ。全力の先制攻撃(魔法)を魔物の中心にお願い。そのヒナタの魔法で開戦だ』

 僕の言葉にヒナタ以外が無言で頷いた。


 当のヒナタは無言のまま一息調えて魔法の詠唱に入っている。


 『皆さん、いきますよ。〈レイニングボルト〉』


 僕の予想した通り、ヒナタの〈レイニングボルト〉はかなりの数の魔物を巻き込み、多大なダメージを与えていた。倒せていなくても、瀕死なのは見ただけで分かる。それを確認するのに《見破(スキル)》を使う必要はない。


 こう言う魔物達が固まっている状態だと範囲魔法の効果は絶大だと思う。


 『じゃあ、行ってくる。またあとでな』

 僕は進行方向に向かって射撃を繰り返しながら、ヒナタの魔法で開いた空間を利用して広場の反対側を一気に目指した。


 魔物の近くをすれ違う時に〈ウインドミスト〉を連発し、魔物達の命中力を下げる事も忘れていない。


 これが、有るのと無いのでは今後の戦局が大きく変わってくるだろう。こちら側の戦力が、相手の戦力よりも劣っている時は、まず受けるダメージの絶対値(または、相手の攻撃回数)を減らして、必要な回復回数を減らす。相手の戦力()を減らすのも大切だと思うけど、こちらの攻撃の手数(戦力)を減らさない事の方が重要だろう。ちなみにこれは、全てアクアからの受け売りだ。


 移動中はアキラの〈紫雷扇〉での援護を受けた事も有り、素早く反対側のベストポジションに陣取れた。僕自身が壁に背を向ける事にもなるので逃げ場は無いけど(まぁ、実際のところ、逃げる事も考えてないけど)、背後からの攻撃の事を考えずに前からの攻撃だけに集中出来るのは重要なポイントだな。


 魔物達の注意を僕に惹き付けながらも、近付いてくる魔物に対しては射撃で牽制して行動を制限し、ヒナタの魔法によって瀕死になった倒せそうな魔物に対しては銃を持ち替えて〈零距離射撃〉を繰り出し倒していく。少し余裕が出来た時には、カゲロウ達に近付こうとする魔物へ遠距離からの魔法で対処もしていく。


 この場所からは、戦場のほぼ全てが見渡せる。


 カゲロウが自分を犠牲にして皆への攻撃をまとめて受け続けているのも、ヒナタからの〈レイニングボルト〉が定期的に放たれて一ヵ所に固まっている魔物を殲滅していくのも、そこで取り逃した魔物に対してフレイによる追撃が綺麗に決まっているのも見えた。勿論、ケイトやアキラが皆をフォローしているのもしっかりと見えている。


 全員の協力プレイで数を減らし続けていた。小数で多数を葬る…その光景はまさに、全員の協力によってのみもたらされるちょっとした奇跡。


 その一方、僕はすでに攻撃を当てる事よりも牽制や回避に全力を尽くしていた。とにかく、一匹でも多くの魔物の注意を僕に惹き付けなければ、このギリギリで保たれている奇跡的な局面が崩壊しかねないからだ。


 牽制に使っている【雲水】を利用して辺り一面を濡らし、【霧氷】を使って濡れた地面を一気に凍らせる。そして、その凍り付いた魔物を定期的にアキラの〈紫雷扇〉が止めを刺していく。本当にこれ、即席で考えたにしては良い連繋だよな。


 『〈ウインドヒール〉』


 この場にいる魔物の数が数なので、いくら回避に特化した僕が回避する事に専念しても完全に避けきる事は出来ていない。徐々に(じわじわと)HPも削られてきている。


 この僕が〈ウインドヒール(回復魔法)〉を唱える時間を、アキラの〈紫雷扇〉による援護と僕の〈跳弾〉連発による銃弾の弾幕で稼ぎだす。


 この弾幕に巻き込まれた事で魔物の数も確実に減っているはずだが、僕の目の前には最初と変わらない(ようにも思える)くらいの魔物がいる。やっぱり、今は少しでも多く数を減らすしかないのか?仲間が助けにくるのを待って…


 『あと百体!落ち着いて一体ずつ、確実に…』

 アキラから、嬉しい知らせと指示が同時にきた。


 それでも、あと百体か…う~ん、そろそろ銃弾の残りが心許なくなってきた気もする。


 少し考えた僕が【霧氷】を【魔銃】に持ち変えた時、救いの女神からの一言が僕に届いた。


 『シュン、お待たせや。ここを手伝いに来たで』


 魔物の数が少なくなった事も有り、フレイが僕の側までやって来た。これは、正直助かったな…フレイが援護に来てくれたなら、ギリギリのところで銃弾も持ちそうだ。僕は改めてフロア全体を確認した。


 フレイが僕の側に来る時に弱っていた(瀕死の)魔物を間引いたり、遠くの魔物の注意を惹き付けながら来た為、カゲロウの負担も減っている。そして、さっきまでフレイが担当していたポジションには杖を構えるケイトが収まっている。こちらも、さっきまでのフレイに習い〈棒術〉を駆使して瀕死の魔物から順に止めを刺している。背後にいるアキラからのフォローが有るので安心して前に出れるようだ。ヒナタは範囲魔法の連発ですでにMPが尽きて入るらしく、アイテムを使っての擬似的な回復役をこなしている。


 『フレイ、助かった。ありがとう』

 僕が射撃で削って、フレイが止めを刺していく。単純だけど、これはこれで良い連繋だと思う。


 牽制に費やす無駄弾の数が減った事もあってか、殲滅速度が格段に上がっている。数が減った事でカゲロウもフロア内に入って攻撃する余裕も生まれている。こうなれば、あとは時間の問題だろう。





 程なくして、全ての魔物を倒し終わった。誰一人として、戦闘終了に関する言葉を出さないくらいには皆は疲れていた。


 『ドロップが、えげつない事になっとるで』

 誰よりも早くドロップを確認していたらしいフレイが口を開いた。確かに、ドロップの量はかなり有るのだけど、戦闘後の第一声がドロップの話とはフレイに全くブレはない。


 …と言うか、もしかしてフレイが無言だったのは疲れからではなくて、ドロップアイテムの確認をしてたからなのか?それとも皆同じなのですか?えっ、本当は疲れてるの僕だけですか?


 『皆、お疲れ様。お陰で助かったよ』

 本当に疲れきった表情のアキラが皆を労う。どうやら、ドロップの確認をしていて無言だったのはフレイだけらしい。フレイらしいと言えば、それまでだけどな。


 『そして、シュン。次にこんな無茶したら絶交だからね』

 だが、アキラさんのお怒りは全く収まっていないようだ。ここは…


 『はい。分かりました。ごめんなさい。本当に二度としません』

 謝り倒す作戦しかない。やっぱり、誠心誠意謝る。これが一番だろう。


 だが、同じような事が有ったとしたら、僕は間違いなく自分を犠牲にするだろう。多分だけど…


 『…分かったなら、もう良いよ。次は謝っても本当に許さないんだからね。でも、シュンが無事で本当に良かった』

 そう言い放ったアキラに皆が見ている中、ギュッと抱き締められてしまった。


 うん。これは恥ずかしい。それに…


 『…あぁ、それは狡いです』


 『アキラ、それは反則やとウチは思うで』


 『私が代わりますです』

 

 ヒナタ、フレイ、ケイトの三人から嫉妬の込められた表情で見られる僕。アキラ、大人気。


 正直なところ僕も代わって欲しい。アキラが抱き締めた相手が異性の僕相手だから三人の嫉妬の対象になっているけど、これが同姓のフレイ達の誰かが相手なら、ここまでの嫉妬は無いだろう。


 だが、かなり心配をかけた事は事実みたいだな。それだけは確実に伝わってきた。それはアキラからだけではなく、全員から…これについては本当に反省する必要があるようだ。その事実がなければ、僕はフレイ達から袋叩きにあっていたかも知れない。


 しばらくして我に返ったアキラは、耳の先までが真っ赤だった。そんなアキラの顔をまともに見れない僕も多分同じように真っ赤になってるんだろうけど。


 『じ、じゃあ、皆でダンジョン出よ。きっと、待ちに待った海だよ』

 このフロアの中まで潮の匂いがしているので、間違いない無いだろう。この先が港湾の街【ポルト】か…やっと来ることが出来た。


 皆で一斉にダンジョンを出た。


 『うわっ!すっげ~、夕陽じゃんか』

 カゲロウは反応する事が出来たみたいだが、僕には無理だ。何も言えない…いや、言葉にする事さえもを躊躇してしまう…そう言う気分だ。


 僕達が洞窟ダンジョンを出た時が、たまたま水平線に夕陽が沈む瞬間。現実でも見た事が無い素晴らしい光景に、我を忘れて夕陽が沈みきるまで僕達は見入ってしまった。


 ダンジョンをクリアした事よりも、【ポルト】に着く事よりも、この水平線に沈む夕陽がギルドの最初の活動に対する一番の報酬だったのかも知れないな。


 『取り敢えず、ギルドの最初の活動は大成功だよね。そろそろ街に行こうか?多分あそこに見えてるのが街だよね』

 アキラの一言で意識が戻ってきた。


 その言葉と同時に、夕陽が沈みきった事による消失感とスクリーンショットを撮れば良かったと言う後悔も同時にやって来たけど、ギルドの活動は大成功と言えるだろう。


 こんな光景に、気の許せる仲間達と一緒に出会えたプレイヤーは数少ないのだろう。トリプルオーを初めて本当に良かったよな。


 そのあと、僕達は無事に【ポルト】まで辿り着き、ゲートの登録だけを済ませてログアウトした。街の探索は後日、各自で適当に行う事になった。誰もが、このあとに街を楽しむ力が残ってなかったのだから…それもまた仕方が無い事だろう。

装備

武器

【雲水】攻撃力50〈特殊効果:銃弾に水属性が追加〉

【霧氷】攻撃力50〈特殊効果:銃弾に氷属性が追加〉

【雷鳴】攻撃力50〈特殊効果:銃弾に雷属性が追加〉

【銃弾3】攻撃力+15〈特殊効果:なし〉

【魔銃】攻撃力40〈特殊効果:なし〉

防具

【ノワールブレスト】防御力25〈特殊効果:なし〉〈製作ボーナス:重量軽減・小〉

【ノワールバングル2】防御力15〈特殊効果:回避上昇・小/耐水〉〈製作ボーナス:命中+10%〉

【ノワールブーツ】防御力15〈特殊効果:速度上昇・中〉〈製作ボーナス:跳躍力+20%〉

【ノワールクロース】防御力20/魔法防御力15〈特殊効果:なし〉〈製作ボーナス:耐火/重量軽減・小〉

【ノワールローブ2】防御力15/魔法防御力20〈特殊効果:回避上昇・中〉〈製作ボーナス:速度上昇・中/〉

アクセサリー

【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉

【ノワールホルスター】防御力10〈特殊効果:速度上昇・小〉〈製作ボーナス:リロード短縮・中〉

【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉



《双銃士》Lv26

《魔銃》Lv23《双銃》Lv22《拳》Lv32《速度強化》Lv59《回避強化》Lv62《旋風魔法》Lv15《魔力回復補助》Lv59《付与術》Lv17《付与銃》Lv39《見破》Lv45


サブ

《調合》Lv19《家事》Lv52《鍛冶職人》Lv19《革職人》Lv44《木工職人》Lv8《料理》Lv24《鞄職人》Lv47《細工職人》Lv18《錬金職人》Lv15《銃製作》Lv30《裁縫》Lv1


SP 38


new魔法

〈ウインドスラスト〉範囲魔法/消費MP 20

習得条件/《旋風魔法》スキルLv15


称号

〈もたざる者〉〈トラウマの殿堂〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈自然の摂理に逆らう者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉

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