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青春の罪  作者: 綾咲 彩希
9/12

青春と恋人と同じ

第九章 青春の友情


 ボクは、バスケットボールをしたことがない。この××年間ずっとだ。興味はあった。だが、バスケットボールというものは相手と道具が無ければ出来ない競技だ。初めてするボクが、まず勝てる訳がない。なら、どうするか?簡単だよ。ボクがサポートになればいい。ボクは試合が始まる前に作戦を一人一人に伝える。皆、理解が速くて助かる。

 鬼人にはディフェンスを

 白人、番人にはオフェンスを

 ボクは、白人と番人にパスをする。

 友人には特別なお願いをしていた。

「彼女を騙してくれないかい?残り五分に本気出してくれて構わないから」

 友人は小動物的だが、ある一つ特技を持っている。

 ボクは白人と番人の位置を頭に叩き込む。その後、彼が動きそうな所も予想する。敵の位置も確認して、鬼人からボールを渡された瞬間、パスをする。ボクに出来ることはこれだけだ。

 鬼人は身長が高いが、スピードは遅い。なら、ほとんど動かなくてすむディフェンスを任せている。彼女達がボールを投げても、鬼人はそれを軽々とcatchしてくる。

 白人はシュートは確実に決めてくれる。だが、どうやらフェイントやディフェンスを突破する力がない。

 番人はオールラウンダー何でも出来ている。シュートは数本に一本外しているがそれでもボクより入れている。

 彼らに対してボクが出来ることはただ一つだけ。

 確実に繋げる。敵味方の位置の確認。その後どうやって動くかの予想。ボールの速さの調整。ボクにはそれしか出来ない。後は、友人に任せよう。きっと、彼女も驚いてくれる。




 なるほど、素人とは思えないわね。

 普通、素人だったら切羽詰まってボールを適当に投げている状況でも判断し理解し行動している。仲間の特性も確実に生かせてる。なら、××をマークすればいい話だ。パスは出させない。最低二人でマークすればいい話よ。残り時間五分。思いの外、時間が経っていて驚いたけど大丈夫。点数はこちらが十点こちらが上回っていいる。マークとディフェンスに徹すれば私達の勝ち。五分後、私に下僕が出来る。そう考えるだけでぞくぞくする。

「い、行きます‼」

 小動物が何かを叫ぶ。思いっきり全速力でゴールまで走る。ボールは持っていない。小動物は、大きくジャンプする。ゴールより高く。

「はぁ!?」

 ゴールは三百五センチメートルある。小動物の身長は見た感じ、百七十前後。驚異のジャンプ力だ。

「行くよ?友人」

「お願いします。」

 ××の声と共に、ボールが小動物の掌に収まりそのままシュート、ダンクを決めた。

「の、残り八点。」

 小動物がぼそりと呟く。そうだ、まだ試合は終わってないんだ。だが、

「残り五点よ」

 小動物のインパクトが私達の脅威になっている。小動物が突っ込むかと思えばあいつにパスを渡たし、××はそのまま堅物にパスをする。

「おし、残り二点。」

 焦りが止まらない。ボールがまず私に回らない。ボールが回れば一気にゴールまでボールを持っていけるのに。モブ達ではボールを奪われる。シュートをしてもデカブツに阻まれる。悪循環。

「さて、同点だね。残り十五秒」

 なら、その十五秒で取り換えすまでよ。まだ、私は勝ちを諦めてない。

「行くよ?」

「来い‼」

 そう言って××はパスを出した。フリをした。油断した。考えてなかった。こいつはそのまま私を抜いて、ボールを投げた。まるで、約束されていたかのように。ボールはゴールに吸い込まれていった。

 そうして、終わりのホイッスルが体育館に響いた。





「よし」

 放送室に置いていた鎌を回収した。これで準備は整った。

「友達を疑いに行くの?」

「あぁ、今から俺は友達を疑いに行く」

 俺は迷わずに言った。どうしても信用が欲しい。もし、俺の考え道理なら俺は友達の罪と命を刈り取らなけばならない。そんな考えからだろうか?

 君は友達を殺せるのかい?

 殺さないといけない。

 怖いだろう。

 あぁ、怖い。

 別に俺がしなくてもいいだろう?

 …

 何を迷う必要がある。番人でも鬼人にでも頼めばいい。二人ならきっと聞き入れてくれるはずだ。

「手伝ってあげようか?」

 何を?問おうしたが、すぐさま気付く。殺すことだ。友達を殺すのを手伝おうか?と番人は聴いているのだ。多分、願えば本当に手伝ってくれるだろう。だが、

「いい。自分のけじめは自分で衝ける。」

「そ、嬉しい答えね」

 番人は嬉しそうに笑う。いつの間にか幻聴は聞こえなくなっていた。自分の掌を見ると、汗でびっしょりだ。俺は、自分のシャツで拭った。

「なら、行きましょうか?もしかしたら、このゲームが終わるかも知れないわね」

「それは、お前ら次第だ。」

 犯人がどう逃げ延びるか。それが問題だ。まだ、証拠は持っているだろうか?現場は大丈夫だろうか。心配が降り積るが、今は…

「まず、行きたい所があるんだ。」

「行きたい所?」

 番人は首を傾げた。俺は原点。始まりの現場、屋上に向かった。俺が考えている通りなら、説明付く。



「さて、なんでも聞いてくれるんですよね?」

 私は、放課後××に呼び出された。何をされるんだろう。恐怖で身体が震える。身体だろうか、お金だろうか。こいつの笑顔が怖い。いっそ今から逃げ出そうか。私が私に語りかける。

 単なる口約束よ。逃げちゃいなさいよ。

 そんな甘い誘惑に乗ってしまいそうになるが、私は唇を噛みしめた。

 私は女王だ。女王が逃げて女王であれるはずがない。私を誘惑から救ったのは女王のプライドだった。そして、私は口を開いた。

「えぇ、なんでもよ‼」

「なんでも?」

「しつこいわね‼お金でも、それこそ身体でもなんでもいいわよ」

「なぜ、そこまでしようとするんですか」

「はぁ?」

 思わず、まぬけな声が出てしまった。意味が分からない。

「正直、こんなの学生の口約束です。反故していいじゃないですか。逃げていいじゃないですか。ボクはボイスレコーダーで会話を録音してるわけではないんですよ?なら、逃げてもいいんですよ?」

 ××はそのまま甘い誘惑続けた。

「貴女は自分の身が大事なはずだ。親御さんもきっと貴女を心配してるはずです。聞いた所。貴女のご両親は有名人ですよね?もし、大事な娘が傷ついたとしたらどう思いますかね?」

「私は親には言わないわ‼」

 私は、言い返した。それが、私に出来る強がりだからだ。××の言って来ることは私自身よりも甘い誘惑だ。逃げ道を敢えて私に提示してくる。自分の中でなら我慢は出来るだろう。でも、相手が許してくれるのだ。言い返さなければ、私は…

「例えば、暴力。貴女の顔が傷ついていれば、ご両親は貴女が言わなくても気付くでしょう。例えば、強姦。貴女が強姦されたことをマスコミに伝えれば、ご両親の立場は少なからず悪くなるでしょう。」

「親は関係ないでしょう。」

 両親には迷惑を掛けたくない。震えが自分でも分かる程震えている。この場からすぐさま逃げ出した

「なら、逃げればいいじゃないですか。」

 ××はにっこりと笑う。その笑顔は何よりも不気味で怖い。狂気だ。

「ボクはさっきから逃げていいと行っています。なら、逃げるべきだ。いいと思いますよ?逃げても」

 そうだ、逃げていいんだ。こいつが認めてくれている。なら、逃げてしまおう。そうすれば、誰も傷つかない。平和的解決だ。逃げようとしたその時。

「負け犬の敗走は、昔からあることです。」

 ・・・今なんて言った?負け犬?私が?ふざけんな。

「私が逃げるわけないじゃない。」

 ××はにっこり笑う。先ほどの狂気染みた笑顔ではなく、優しい笑顔

「私が、女王だからよ‼女王は約束を反故しない。それが例え口約束だったとしても。女王は負けても逃げたりしない。そこで、逃げたら女王ではなくなってしまうからよ‼」

 これが私の中での女王。私が私で居られる理由。

「そうかい。なら、言わせてもらおうかな」

「なんでも聞いてあげるわ‼」

 ××は一つずつ条件を言っていく。

 一つ、ボクの事は詩人と呼ぶこと

 一つ、ボクらのグループに入ること

 一つ、ボクにバスケを教えること

 ・・・は?

「本気?」

「本気だよ?」

「あそこまで脅しておいて?」

「いや、単に君の反応や表情を楽しんでいただけだよ?」

 私の覚悟は一体なんだったのだろうか。

「君が残っても逃げてもどちらでもよかったんだ。ボクはそれだけで楽しいからね」

「あんた、性格悪いのね。」

「そんなに悪いかな?」

「最悪よ」

 詩人は無邪気に笑う。罪悪感なんて全く感じていない。いっそ、清々しい。

「ボクはね、バスケをしたことがことがなかったんだ。さっきまでね。ゴールを決める瞬間があんなにも楽しいとは思わなかった。ねぇ、君は試合中人を抜くのが上手いね。」

「ま、まねぇ」

 急に褒められると照れてしまう。

「どんな気分なんだい?どんな感じなんだい。爽快?それとも焦り?」

 詩人の言葉がどこか痛く感じた。

「そうね、爽快ではあるわ。フェイントを決めた時なんか最高よ。ねぇ、詩人」

「なんだい?」

「あなた。サッカーってしたことある?」

「ないよ」

「野球」

「ないよ?」

「バレー」

「ないよ?」

「卓球」

「ないよ?」

「テニス」

「ないよ?」

「ドッチボール」

「ないよ?」

「陸上競技」

「かけっこなら」

「水泳競技」

「泳ぐことなら」

 絶句する。詩人は本気だ。本気で言っている。普通なら冗談として笑い飛ばせるだろう。だけど!!

 詩人に何があったのか分からない。私には分かる。いや、私ではなくても分かる。詩人は嘘をついていない。詩人は無知なのだ。仲間が必要なスポーツ。相手が必要なスポーツ。本来なら、小学生、中学生でしているはずの運動競技を何一つしていない。それが、なにより残酷に思えた。

 辛くはなかったのだろうか。

 悲しくはなかっただろうか。

「ねぇ」

「はい?」

 今までの人生辛くなかった。という言葉をぐっと堪える。これは聴いてはいけない事だ。触れてはいけない出来事だ。

「バスケ、やるわよ。」

「いいですよ?ご指導ご鞭撻よろしくお願いします。」

 これが、今の私が口に出来る最大の言葉だった。

 それから毎日。詩人とバスケに打ち込んだ。最初こそ、下手くそ中の下手くそだった詩人が一カ月後には上達した。詩人とバスケをしている時間は私にとっても心地よい時間となっていき、この胸の奥にある感情に気付くのに時間はいらなかった。詩人とバスケをしていると詩人の周りのモブ…じゃなく、友達の白人、鬼人、番人、友人が集まって来て自然と試合をするようになった。私のこのグループに馴染んできた。

「詩人」

「なんだい?」

 ありがとう。

「よく聞こえないよ?」

「なんでもないわよ‼」

 近々、告白してあげる。詩人は私のパートナーよ。


 

 これはきっと夢だ。目の前に詩体がある。違う。あれは詩人だ。私は膝から崩れ落ちた。

 これは悪い夢だ。現実ではない。夢ならさっさと覚ましなさい、私。

 いつまで寝てるの?早く起きて。

 遅刻するわよ?早く起きて。

 真夜中だろうと起きなさい。

 さっさと起きろ‼

 疲れているとか言い訳なしでさっさと起きろ‼

 目を覚ませ‼私‼

「あ、あれ」

 友人が詩体を指さす。

「何もないじゃないか」

「待て、奇人。詩体の下」

 何かある。私は、膝に必死に力を入れ立ち上がる。一歩、一歩前へと歩く。あったのは、両手両足。それに手紙と花だった。両手両足、それに手紙と花を持って戻ることは無理だと考えた私は、手紙と花を持って、皆の所へ向かった。手紙には名前が記されている。それを一人ずつ花と一緒に渡していく。花は手紙の横に添えられていたので、これも一人一人に渡していく。

 手紙を見た瞬間、涙が溢れてきた。

 ねぇ、詩人。私は女王なのよ?その隣に詩人が居ないと何も出来ない。出来損ないの女王。

 どうか、もう一度。もう一度だけ見せて。詩人の笑顔。手の温もり。その為になら私、なんでもするから。



 俺は思わず舌打ちをした。遅かったか。

 俺たちは屋上の扉の前に居る。一度は開いたこの扉がもう開かなくなっている。誰かが閉めた?もしくは、奇人の外の扉が開かない原理が発動したか?どっちにしろ、これで証拠はなくなった。でも、まだチャンスはある。次のチャンスが必ず。

「残念だったわね」

「あぁ、本当に残念だ。」

 俺が考えていることが合っているなら、この扉の先に証拠と答えがあったはずだ。だが、扉は開かない。番人と俺。二人がかりでも開かない。恐らく鬼人を呼んだ所で同じことだろう。

「はぁ、教室戻るか」

「そうね、二人が痺れをきらしてしまうわ。」

 教室に戻ろうとした時、教室の方から大きな鈍い音がした。俺と番人は急いで教室に向かう。その間にも鈍い音は続く。教室の扉を開けた瞬間。息を飲んだ。

 小人の顔が潰されていた。まるで詩体の様に。

「鬼人。」

 俺は鬼人を凝視する。鬼人の拳は真っ赤に濡れていた。それは紛れもない小人の血だ。教室の床は血で真っ赤に染まり、小人の手足は力を無くしてだらしと揺れている。鬼人に胸倉を掴まれている小人。いや、小体の顔は、やはり潰されている。歯は折れ、鼻は潰れ、顔の形自体変わっている。

「鬼人、お前が殺ったのか?」

「あぁ、おでが殺っだ」




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