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青春の罪  作者: 綾咲 彩希
8/12

青春の恋と疑い

 ≪犯人は君達の中に居る。探して?この子守唄が終わる前に。犯人と罪と心臓を刈り取ってくれ≫

 手紙には、はっきりとそう書いてある。だが、罪とはなんだ。犯人が俺たちの中に居る。書いてあることが理解出来なかった。もしかしたら、単純に目をそらしたかったからかも知れない。もし、犯人が本当に俺たちの中に居るのならば、容疑者は二人だ。小人と鬼人。この二人のどちらか。いや、両方かもしれない。俺と友人を襲った連中は二人だ。人数は合ってる。

「ねぇ、小人か奇人。一つ聞いていいかしら。」

「なによ!私たちを疑ってるわけ?!」

「最後まで話を聞いてくれないかしら?奇人のゲロを片付けたのは貴女達?」

 教卓に目線を移す。確かにここには奇人が右足を見た際にゲロがあるはずだ。だが、教卓にはそれがどこにもない。あの酷い悪臭もしない。

「ッ‼」

「その顔を見るにしてないようね」

「犯人は何がしたいんだ」

「さぁ?」

 番人は首を傾げる。

「貴方が私に聞くことは犯人が何をしたかったのかではなく、小人と番人に何があったのかを聞くことじゃない?」

 違う?番人は再び首を傾げた。

「やっぱり、私たちを疑って!」

「私は二割程度よ。白人はどの程度か知らないけど」

 小人がキッと睨む。

「待て、待て、待て、そんなに睨むな‼俺はまだ疑ってない」

「まだってことは、疑うんでしょ」

「それは、その~」

「話さず疑われるより話して疑われた方がよくない?」

 番人がフォローに入ってくれる。普段なら感謝していいのだが、こうなったのもお前のせいだからな?それを俺はぐっと我慢する。

「なんでよ?」

「知ってる?沈黙は固定。返答は否定よ。」

 これが大人のルールよ。

「こんな時ばっかり大人の真似ね。」

「でも、真実よ。貴女がここで黙秘をするなら私は貴女が貴女自身で犯人と固定したと認識するわ。そしたら殺すわ。」

 番人の唇が弧を描く。番人はそのまま言葉を続ける。

≪ゲームをしよう。犯人を当てるゲームだ。簡単だろ?≫

《犯人はここに居る》

≪犯人は君達の中に居る。探して?この子守唄が終わる前に。犯人の罪と心臓を刈り取ってくれ≫

「この二つが犯人が私達に伝えたいことよ?なら、叶えてあげなくてはならないわよね。犯人が貴女達なら私は、子守唄が終わる前に犯人の、この場合は貴女達の罪と心臓を刈り取るわ。子守唄と罪は何か分からないけれど、犯人を殺したらゆっっっくり探しましょう。犯人は死んだのだから安心して探せるわね。」

 寒い。寒さで肌がピリピリする。肌を摩っても暖かくならない。いや、肌が寒いんじゃない。身体の内側。例えるなら心。凍えてしまいそうな寒さだった。

 番人は変わった。ここに来てガラリと変わってしまった。人には雰囲気がある。優しい雰囲気。怒ってたりする時に感じるピリピリとした雰囲気。いろいろある。番人は言わば優しい、母親の様な雰囲気。母性を感じる雰囲気だった。子供に手を焼くがそれでも面倒を見てくれるような母親の雰囲気を。今はどうだ。

 そんなものは感じず、まるで狂気。番人の一言、動作、表情。全てが狂気に感じる。息がしずらい。刃物を首に、いや、鎌だ。鎌を首に当てられているようなそんな感覚。

 小人は涙目になり、番人も表情が硬くなっている。

「わ、分かったわよ。」

「それぐらい、素直だったらモテるのにね」

「うっさい‼」


 私は女王だ。

 誰にも負けない女王。

 母はピアニスト。父はバスケット選手だ。私は二人の血を継いでいる。故に女王だ。欲しいものは努力で掴み取る。誰にも負けない。中学では敵なしだった。成績優秀。スポーツ万能。特にバスケでは誰にも負けない。そう、この高校に入るまでは思っていた。

 私が通っている高校は特別な存在だった。各分野の優れた者達が入れる高校。そんな高校は数は少ないけど存在はする。私は女王だから、この高校を紹介された瞬間にこの高校に決めた。そこで、またトップを取れば更なる高みへ登れる。そう期待した。だが、勉学では十位にすら入れない。スポーツもバスケ以外では勝てない。スタイルですら他の女子に劣る。

 私は必死に努力した。毎日勉強を欠かさずにした!毎日過酷な練習にも耐えた!牛乳だって沢山飲んだ!!なのに、勝てない。勉強では十位になれるかどうか。スポーツ競技の陸上ですら勝てない。身長も胸もほとんど変化が無かった。だけど、そんな私にも譲れないものがある。バスケだけは誰にも負けなかった。低い身長を活かしてドリブルで相手のゴールまで行く。誰も私のボールは取れない。

三年に上がるとクラスが変えられ、また新しいクラスになる。

 少人数のクラス。クラスメイトは私も含め僅か十一人。何かに特化させたクラスなのだろうか?

 目立つのは、デカブツ、ボンボン、堅物、馬鹿、小動物。だいたいこの五人。あぁ、後一人忘れてた。

 私の隣でほとんど授業に参加せず、本を読んでいる本の虫。話しかけようとしたらいつの間にか居ない。机の上にあった本を開いてみると、詩が書いてあった。内容はとても興味深いものだった。私も欲しくなって作者、題名、出版社を探して見たが、作者は書いていない!題名も書いていない!出版社する書いてない!必要なことは全部書いてない!仕舞いには、最後のページに

《人の本を勝手に見るからさ(・┰・)べー》

 ほほぉ。女王の私を馬鹿にする?私の怒りのボルテージはMAXに近かった。次の授業は体育。外は雨。体育館、つまりバスケ!見てなさい。ぼっこぼっこにしてあげるわ!!


「つまり、西館に来た後。一階を鬼人が、二階を貴女が探したわけね?」

 番人が簡潔にまとめる。

「奇人どこに居るか分からないから、一応ね」

「一階にも二階にも居なかったから、鬼人と合流して三階を探したら、教室に奇体があった。間違いない?」

 番人は一つ一つ間違いがないか確認していく。後で、あ、違ったと言わせない為だ。簡単に言えば言い逃れ、退路を断っているのだ。

「えぇ、間違いないわ。」

「貴女は鬼人にここに残るように言って、二階に降りて来た。残してきたのは何故?」

 番人は追及する。俺は、番人の言葉を思い出す。

(沈黙は固定。返答は否定)

 番人は小人沈黙すれば本気で殺しにかかるだろう。それを小人も理解しているのだろう。

「犯人がまだ教室に居るかも知れないと思ったから」

「どういうことだよ」

 この回答の意味がよく分からない。その根拠はなんだ。

「一階と二階は私達が探した。でも、誰も居なかった。なら、後は三階に居ると思わない?東棟はあんた達が居るし、必然的に逃げられないじゃない」

「確かに」

 三階からは東棟には移れない。もし、二階から東棟に移って来たのだとしたら俺たちにあってしまう。一階から移れば俺たちと鉢合わせになることにならないがリスクがでかい。小人にしてはよく考えられている。

「なら、後は三階に居ると考えた上で鬼人を残したのよ。例え、相手が二人でも鬼人が相手なら負けない。それに、私があんた達を呼べば上手く行けば挟み撃ち、悪くても四対二よ。」

「貴女が戦力になるの?」

「うっさい!」

 確かに小人では戦力には…

「あんたもうっさい‼」

「俺何も言ってねぇ‼」

 心を読まれた!?

「で、番人はどうして眠っていたのかしら」


 くそ、番人め。また逃げたな。

「おで、廊下で待っでだら、急に眠ぐなっで。」

「眠くなる前、どこかに痛みを感じたり、何か食べたりしなかったか?」

「ぞういえば、首がぢぐっで」

「見せて見ろ。」

 鬼人が痛みを感じる所を見せてもらうと、やはり首筋に小さな痕が残っている。

「よく気付いたわね?」

「気付いたのは、勘だよ。鬼人の眠りは本物だった。急に眠くなったという事は、誰かからか殴られた、何かを食べた。何かを吸った。しか、あり得ないだろ?今回は、誰かに刺されただったけど」

 それに、鬼人に嘘寝が出来るほどの器用さがあるとも思えない。

「なるほど、流石ね。」

「ねぇ、私と白人の扱い違わない?」

「気のせいよ」



 ぐぎぎぎ!私の怒りメーターは既にMaxを越えた。なんで、なんで、バスケの時間に教科書読んでるのよ!これじゃぼっこぼこに出来ないじゃない。先生も先生よ。なんで、注意しないのよ。おかしいでしょ!?そして、すたすた歩いて椅子に座るな!!読むな!!余りの怒りに私は怒鳴り散らしてしまった。

「ちょっと、授業に教科書読んでるのよ!授業に参加しなさいよ」 ××は答える。

「参加したいのだけれど・・・」

「なによ!何か理由があるならいいなさいよ!」

とりあえず、目を合わせろ!教科書を読むな!!

「恥ずかしながら、バスケのルールが分からないんだ。」

「はぁッ!?」

私は目眩を覚える。バスケを知らない人間が、高校生にもなって知らない人間が存在するなんて・・・

「何の冗談?」

「本気だよ。だから、今ルールを覚えてる所なんだよ。」

××は、教科書を見せてくれる。そのページは確かにバスケのルールについて書いてある。

「もうすぐ、覚えるからちょっと待っててくれるかな?」

××は、ページを捲る。

「あぁ!!焦れったい」

私は教科書を取り上げた。

「こういうのは、勘よ!感覚よ!考えて感じるのよ!」

 スポーツってのは、特にチームワークを必要とする競技なら筋肉、知識、経験が必要になってくる。どれかが一つでも欠けてはいけない。

「はは、酷いね。まぁ、大方は覚えれたから、出来るかな?」

「なら、まず試合よ。試合の緊張感、空気、プレイ。全てが詰まってるわ。投げた方もそこで学びなさい」「今日人数は足りているのかな。」

「一人欠席だけど、問題ないわ。十人。丁度だわ。」

ボンボンが休んでくれて助かった。これで、選手交代で逃げられることもない。完璧よ。

「チーム分けはどうするんだい?先生。どっか行ってしまったよ?」

 周りを見ればもう既にいない。教師、いや、人間失格よ。でも、これはこれで好都合。私の好きに出来る。

「そうね、チームはあなたが決めていいわよ。ただし、私とあなたは別ね。」

「ふむ、なら、あの四人を組ませてもらおうかな?」

 ××が指を指したのは、デカブツ、堅物、馬鹿、小動物。

 なるほど、なるべく身長が高い面子で来たわけね。でも、甘い。甘いわ。私は、思わず笑みがこぼれてしまう。

「いいわ。なら、私は残った面子であなたに挑むわ。後、どうせなら」

 賭け事しない?私は、耳元で小さな声で呟いた。

「あなたが勝ったら、なんでもいう事を聞いてあげるわ。なんでも」

「ふ~ん、で、ボクが負けたら?」

「私の奴隷なれ。ずっと永遠に。未来永劫」

 だって、私は女王だもの。あなたを奴隷に眷属に従僕にする権利がある。

「いいだろう。なんでも、なんだね?」

「えぇ、なんでもよ」

「反故は?」

「しない」

「根拠は?」

「プライド」

「…」

 ××は少し考え笑う。

「はッ。分かりました。ただし、ボクと貴女だけの契約で」

「契約成立よ‼」


 俺と番人は放送室に忘れた鎌を取りに行ってる。小人と鬼人には教室で待機してもらっている。今だから聞ける。

「なぁ、正直。どう思ってるんだ。」

 俺は、番人に率直に聞いた。

「どう?って」

「小人と鬼人」

 黒か白か。犯人か犯人じゃないか。

「なんとも言えないわね。グレーよ」

「そうか」

「なにか、気がついたの?」

 気付いた程ではないが、俺は皆に聞いてないことがある。

「なぁ」

「なに?」

「教室に戻った後。俺。皆を疑っていいか?」

 多分、信頼関係全部壊れるかも知れない。だが、俺は聴いてない。こいつらの口から。アリバイを。そして、俺の頭の中である一つの推理が生まれている。根拠も証拠もない。ただ、疑うだけの行為。最低だ。

「いいわよ?」

 だって、私。犯人じゃないから。全部論破してあげるわよ?

「ありがとう。俺は皆を疑わないと、皆を信用できない。最低だ。」

「必死に足掻いてるのだから最低かもしれないけど最悪でも最凶でもないわ。それで、私は信用を得られるなら安いものよ。」

 番人笑う。あの狂気を駆られる笑いではなく、優しい笑顔。番人の笑顔がとても嬉しかった。



 おかしい。なんで?なんで!点数が切り離せないのよ。

 授業が始まって三十分が経とうとしていた。高校では準備運動なので十分は使う。なので、試合を始めて二十分が経っている。本来なら、点数が離れてもおかしくない時間帯である。あっちとこっちのチームでは、力の差は歴然。デカブツは鈍い。小動物はビビり。馬鹿はシュートは出来る方だけど抜く力が余りない。堅物はバランス。××は素人。対してこっちは、基本に忠実。これと言った下手くそは居ない。ちゃんとシュートも決めている。なのに、どうして

「ごめん、ちょっと前に出て。」

「でも、」

「お願い」

 私は後方に下げてもらう。モブには悪いことをした。私は身長が低いから心配なのだろう。でも、前に居ても気付かない事がある。なら、後ろに下がって様子見。授業が終わるまで残り十五分。まだ、慌てる時間じゃない。

 プレイを観察する。よく見ろ。何か。何かあるはずだ。私は女王だ。気付かないはずがない。見てろ。私は、心の中で叫ぶ。

「あなたは私の物だ‼」



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