青春は間違いだらけ
「さて、行きましょうか?」
「これ動きづらくないか」
俺は、番人に体の後ろで手首を拘束されている。正直、バランスが取りづらい。
「文句を言わない。また、襲われても困るし」
俺が襲ってしまったことは事実だ。本来、俺は殺されても仕方がない。
「本当にすまなかった」
「別にいいのよ。貴方が諦めなければ」
俺は今から身の潔白を証明しなければならない。出来なけば「死」。プレッシャーで息がしづらい。
「大丈夫よ。貴方なら出来るわ」
言葉一つでここまで落ち着くとは思わなかった。廊下に出ると鬼人が座って眠ってる。腕には包帯が巻かれている。この傷も俺がしてしまった罪の一つだ。
「鬼人。鬼人」
番人が何度か名前を呼ぶと鬼人はゆっくりと瞼を開く。
「おぎたが」
「あぁ、鬼人。その…」
「大丈夫だ。ぎにずるな」
鬼人は何かを察したように言葉を遮った。
「いごう」
鬼人は立ち上がる。だが、
「待ってくれ。行きたい所がある。後、あれはどこにある。」
教室の扉を開くと、小人は教室の端の椅子に座り奇人は教卓に座っている。奇人はまるで俺を待っていたという顔と態度をしている。だが、その瞳には憎しみが宿っている。
「悪い。待たせた。」
「あぁ、待ったよ。犯人」
「最初に言っておく。俺は犯人じゃない。今からあったことを説明する。皆座ってくれ。」
鬼人も番人も席に着いた所で、俺は、奇人たちと別れた後の話を説明した。番人から手首の拘束も解かれているので、俺は身振り手振りをし、じっくり、ゆっくり、間違いがないように。正確に、繊細に話した。話すことにより皆の印象や考えや立場がよくなると思ったからだ。そして、奇人の答えは
「やっぱり、お前が犯人だね。そうとしか考えられない。」
「なにか、おかしな所があったか」
自分で振り返っても、これと言っておかしいことは言ってないつもりだ。
「友人の助けてという言葉を聞いて君は振り返ろうとしたら殴られたんだよね。つまり、友人と君。最低二人居たということになる。だけど、それが本当の話だった場合の話だ。」
なるほど、奇人は話事態を疑っている。こうなってくると討論のぶつかり合いだ。討論の勝ち負けは簡単だ。奇人が納得するか、俺が説明できなくなるか。
「なら、説明してくれ。俺も現場を見てきた。まず、俺がどうやって殺したか。そして、どうやって放送室の前に足を置いたのか。職員室と放送室の間の廊下に血の跡を残さずに置いたのか。」
先ほど、現場を見てきた。そこにあった違和感。俺が倒れていた職員室。右足が置いてあった放送室。その間の廊下には血痕が全くなかった。血が渇いて見えないわけでも見過ごしているわけでもない。俺、番人、鬼人、三人でくまなく探したがどこにもなかった。職員室や放送室にはべっとりと血が付いている。これは、明らかに不自然だった。
「まず、約束してもらおう」
奇人はにやりと笑う。何を考えているか想像も出来なかった。
「何をだ」
「簡単だよ。これは、ボクと君の討論だ。部外者に助言求めるのも、部外者が助言することも許さない。ただし、質問等は許すとしよう」
「いいだろう。皆もいいか」
「構わないわよ。さっさとして」
「わがっだ」
「了解したわ。」
全員が了承を得た所で奇人は推理を始めた。
「ボクの考えるはいくつかある。今から話すのはその一つだ。君は友人を襲い殺した。この時は、鎌を使わず絞め殺すか、声が出ない殺し方だ。そうしないと大声で叫ばれてしまうからだ。そして、殺したらまず、友人から放送室の鍵を奪い、放送室に入り大きい袋を二枚ほど取ってポケットかどこかに突っ込んだ。そして、君は死んだ友人を鎌で解体し両足を取り外した。」
ここでおかしなことがあるが、あえて俺はスルーする。まだ、奇人の話は終わって居ない。結論を出すのは聴いてからでも遅くない。
「解体し終えた君はまず、身体と左足を袋に入れたんだ。袋には、血が付かないように細心の注意を払ってね。そして、君は地面が血で濡れているか濡れてないかの境で靴を脱ぎ放送室に持って行ったんだ。こうすれば、廊下に血は付かない。これをもう一度し右足を放送室前に置く。後は、放送室の鍵をどこかに隠して教室の前の血だまりに寝転がるそうすれば、解体した時の血しぶきもごまかせる。」
確かに、それなら可能だろう。だが、それには大きな欠点がある。
「奇人。まず、これを見てくれ。番人。あれを」
番人から右足を手渡される。
「ありがとう。」
「いいえ。持っていてよかったわ。これになにかあったら大変だもの。さ、続けて」
「では、これを見てくれ。」
皆に右足の断面を見てもらう。
「この右足の断面を見て、どう思う。奇人」
奇人は、嫌顔しつつも確認する。
「気持ち悪い」
「いや、そうじゃなくて」
「吐きそう」
「じゃなくて」
奇人は口元を抑えている。いや、確かにあれだが俺が言ってほしいのは、そういう感想じゃなく
「おえぇぇぇぇ」
奇人が後ろを向きいきなり吐き始める。
「うえ…ぇ…ぇ…うぇ」
胃袋の中が空になったのか。吐くのは収まったが一気に顔面が真っ青だ。
「続けてくれ…お…ぇ」
「続けるけど、場所を変えないか。匂いが」
教室という空間は案外広いが、それでもゲロの匂いが籠るまで時間はかからない。しかも、窓は開かないので換気のしようがない。扉を開けたとしても換気は追い付かないだろう。もう、俺と奇人を除く皆は教室の外に出て鼻を押さえている。
「大丈夫か?」
「あぁ、すまない。」
教室を変えて仕切り直す。
「俺が言いたいのは、断面が綺麗過ぎるということだ。人間には皮があり、脂があり、筋肉があり、骨がある。それを鎌で。しかもこんなに綺麗に切断するなんて不可能だ。例え出来たとしても、時間がかかる。両足とならば更に時間がかかる。時間をかけるという事はそれだけ手間取っているということになる。そんなことをしたらお前たちが集まって来て犯罪がバレてしまう。」
もともと、今回の犯罪はほぼ不可能に近いのだ。右足の切断。残らない血痕。俺と友人の同時強襲。明らかに二人。しかも、プロが必要だ。プロでも綺麗に切断出来るか分からない。もしかしたら、特殊な機材を使ったのかもしれない。真実は分からないが、俺が殺ってないという事実は証明出来る。
「あぁ、それも考えたさ。鎌は、あくまで例だよ。なぁ、白人。君、放送室開いてないよね?」
「あ、あぁ」
なんだ、いきなり。奇人はいきなり何をしようとしてるんだ。
奇人はにやりと笑う。
「なら、放送室に行かないか?」
「でも、放送室の鍵は…」
「あぁ、開いてないね。ボクも確認した。でも、一つ違和感を感じたんだ。」
「何をだ。」
嫌な予感がする。俺は決して友人を殺して入ない。だが、もし犯人が奇人の言う犯行が行われて居たとしたら、俺は容疑者から外れなくなる。
「あそこの扉、多分開くよ。」
「なんで、そう言い切れる‼」
「さっきね、ボクと小人が討論になってね。ボクは、イラつきの余り廊下側の窓ガラスを殴ったんだ。そしたらね。小さな本当に小さなヒビが入ったんだ。教室の後ろ扉のすぐ横の窓ガラス。嘘だと思うなら見て来るといい。」
俺は教室に出てすぐに確認する。確かに、ヒビが入ってる。教室に戻ると奇人が仮説を立てる。
「多分、この学校は外には出るための扉や窓は壊れないし開かないけど、内扉や窓は開くし壊れるんじゃないか?」
だからさ、確認しにいかないか?真実を
放送室の扉前に来た。奇人が取っ手に引くが開かない。
「鬼人やってくれるかい?」
鬼人は身体を扉にぶつける。俺のせいで腕を怪我してるせいで殴れないからだ。殴ればもっと速く終わっただろう。鬼人の息が切れて始めた頃。ようやく、扉が破壊される。
「さぁ、これが真実だ。」
放送室は真っ暗で何も見えなかった。
「真実は暗闇の中ってことね」
番人がぼそりと呟く。誰がそんな上手いことを言えと言った。
「う、うるさい!」
どうやら聞こえていたらしい
「灯り、灯りは・・・」
奇人が先に入り手探りで灯りを付けるスイッチを探す。
「あ、あった!」
灯りが放送室を照らす。
俺たちは、放送室に入り中を見渡す。普通の放送室だ。特別な器具も死体もない。椅子が机があってマイクがある。これと言っておかしい所がない。そんなことにどこかホッとした。
「嘘だ!!こんなのは嘘だ!!」
恐らく、この放送室にかけていたんだろう。それがこんなにも外れるとは思っていなかったはすだ。
奇人の推理は的はずれも良いところだったことが、この放送室が証明していた。




