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青春の罪  作者: 綾咲 彩希
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青春の笑顔

「殺してやる!!!!」

 そう叫んだ俺は赤子のように泣いた。

口の中が血の味で染まる。このまま喉が潰れてしまってもよかった。ただただ叫んで、泣き叫んだ。そうしてる内に自分の中で、何かスイッチみたいなもの入った。

 そこから自問自答が始まった。

「誰が殺した?」

「犯人だ」

「犯人は誰だ?」

「分からない」

「犯人は人か?」

「人だ」

「友人をこんなめに合わせた奴は?」

「殺すべきだ」

「犯人は?」

「殺すべきだ」

「自分は?」

「殺すべきだ。守れなかったんだ。当たり前だ」

「犯人が分からない。なら、手当たりしだい殺そう」

「そうだね」

 

 膝が震える。逃げないといけない。だが、

「なんなのよ!」

 小人が震えている。例え、武器を持っていたとしても役にはたちそうにない。奇人にいたっては震えて声もでず、ズボンが濡れていた。

「鬼人いける?」

「だい゛じょぶ」

鬼人一人居るだけで心強い。大丈夫、大丈夫、と自分に言いかせる。

「殺さず、動けなくするわよ。貴方は打撃で動きを止めて。私は彼の関節を外すわ。いい?最悪、腕の骨ぐらいならへし折ってくれて構わない。殺さない程度に」

「御意」

「ボクも加勢するよ」

「いい貴方は小人を守ってて。貴方が居ても邪魔なだけよ」

「で、でも!」

「小便漏らしてる奴は、黙って下がってろ!!貴方から殺すわよ!!」

 奇人を睨み付ける。本当に邪魔をするなら殺す。そうでなければ、皆が死ぬ。

「ヒッ…」

 最初っから下がっていればいいのよ。役立たずが居ていいほど、この戦いは楽じゃない。

「ぐるぞ」

 目線を、白人に戻す。

 さぁ、死なずに致命傷で済めばいいな。


 鬼人が居なければ死んでいた。私は、床に勢いよく腰を下ろした。

精神がおかしいせいか、白人の力は恐ろしく強かった。だけれど、強いだけだった。力が入ってるせいで動きが単調で読みやすい。でも、当たれば私みたいな体の 細い女の骨なんて砕けていたに違い。現に、鬼人の腕は腫れていた。一時は使い物にならないだろう。私が軽傷で済んだのも鬼人のおかげだ。

「大丈夫?鬼人」

「ありがどう。」

「礼を言うのは私よ。ありがとう」

「終わったの?」

 廊下の片隅で、ぶるぶると震えていた小人はこちらに徐々に近づいてくる。奇人はまだ片隅で震えている。言いすぎたかな?

「で?こいつどうするの?」

 小人は白人を警戒しているようだった。当然と言えば当然ではある。

「殺そう!!!」

 片隅で雑魚が何かを言っている。

「殺そう!!!そいつが友人を殺したんだ!!こいつを殺さなきゃ、次はボク達が殺される!!誰かそいつを殺してくれ!!」

 私は深く溜め息をついた。重い腰を上げ雑魚に近づき胸ぐらを掴む。

「なら、あんたが殺しなさい」

「え?」

「何マヌケな声を出してるのよ。(誰か)じゃない。(貴方)が殺しなさい。他力本願もいい加減にして。」

「そんなこと」

「出来るわけないわよね?度胸もない。力もない。ただ、ボンボンの坊っちゃんの貴方に出来るわけないじゃない。オムツ変えてあげようか?お坊っちゃん」

「なら、離せ!!ボクの鎌で」

「別に殺しても構わないけど、そうしたら奇人。死ぬわよ?」

 雑魚の顔色が変わる。血が抜かれたように真っ青だ。

 こいつには、恐怖が必要だ。もう二度と舐めた口を聞けないようにするために。まるで、鎌でゆっくり首を切断するかの様に

「な、なんで!!?」

 声が震えている。恐怖に支配されている。私は、にこりと笑う。

 満面の笑みで。確か、詩人が昔言っていた様な気がする。



《人の笑顔は、とても気色悪いものだとは思わないかい?番人。》

 帰り道、突然詩人は独り言のように呟いた。詩人から話しかけてくることは珍しかった。

「どうして?私は好きよ?人の笑顔。友達と笑いあうのも青春の一部じゃない?君は違うの?」

《番人。君が言ってるのは好意がある人間に対してだ。例えば、君は小人と奇人の笑顔を見て好意を持てるかい?》

「知ってたの?」

 私は小人と奇人が嫌いだ。単なるボンボンがはしゃいでいる様にしか見えない。詩人の言う通り、私はあいつらの笑顔が嫌いだ。

《君は作り笑顔が下手くそだね。君はきっと役者には向かないよ。嫌悪してるのに、近くに親友が居るから露骨に嫌顔が出来ないだろう?》

「……」

 詩人は的確に当ててくる。正直、こういう時の詩人は嫌いというより怖かった。口元は笑っているのに目が笑っていない。まるで、私の奥を。心の中まで見透かすようなその目

《図星だね。話を戻そう。本来、笑顔というものは恐怖してもおかしくないものだ》

「例えば?」

 それでも、私は笑顔は好きだ。鬼人の不器用な笑顔も白人の幼い少年のような笑顔も友人の乙女のような笑顔も好きだ。それを不快には思わない。

《番人。君は、見ず知らずの人間に笑われたらどう思う?なんなら、クラスメイトでもいい。君が大好きな彼らでもいい。何も可笑しくない。笑うところでも無いのに笑われたらどう思うかな?》

「不快ね。」

 確かに彼らでも突然、笑われたら戸惑ってしまう。そのまま笑われ続けたら不快に感じてしまうだろう。

《友達と同じ笑顔なのに、まったく違う笑顔。唇を変えクスクスと笑うその顔は気持ち悪いものだね。恐怖すら感じるよ。人間にとって笑顔とは恐怖を感じる対象だよ。キツいとき、怒っているとき、悲しいときに笑えば相手は必ず恐れるよ。》

《《笑顔は人に恐怖を植え付ける。まるで花のようにね》》

 心臓を握り潰されたような感覚が全身を駆け巡る。

 でも、そこで私はある疑問が生まれた。

「なら!愛情は?愛情も同じなの?」

 自分が何を言っているのか分からなかった。

 だが、どうしても聞いておきたかった。

 笑顔が恐怖だと言うのなら、青春の恋は一体何なのだろうか?

《驚いた。君からこんな言葉を聞くなんてね。》

 詩人は笑う。空は赤く夕日が詩人を照らした。

《愛は恐怖ではないよ。》

 詩人は断言する。私が求めた答え

《愛は……だよ》


 そうだ。笑え。怒りを表情に出さずに笑え。

 心の中で詩人の言葉を復唱する。

(《笑顔は人に恐怖を植え付ける。まるで花のようにね》)

「白人を殺してもいいけど、そしたら私は貴方を本気で殺すわ」

「お、お前そんなことしてただで済むと思うなよ!!」

「えぇ、そうね。ただでは済まないわ。犯人を探して元の世界に帰れば私は捕まるでしょうね。でも、今、白人を殺されて被害者が増えるよりずっといいわ。例え犯人が白人だとしても(今)殺さなくていい。殺すのは(後)よ。この違い貴方に分かる?お坊っちゃん」

 淡々と話す。だけと笑顔は笑顔は崩さない。雑魚から見て私はどのように見えているのかしら?

「……」

 雑魚の歯がガチガチとなっている。どうやら効果は絶大らしい。横から口出し出来ないようにするためには、もう一押し必要。私は、本音を吐き出した

「分からないでしょうね。分からない内は貴方に彼を殺す資格なんてないわ。それに、今、私、」

 一拍置いて笑顔で言った。言ってやった。

雑魚あなたを殺したくて仕方がないの」

だから、ね?これ以上、言葉を話さないで?

大丈夫よ?彼の疑いは彼が晴らすから。もし、彼が犯人なら。

その時は、そうね、貴方が殺していいのよ?


 俺は、番人の話をまとめる。

「要するに、お前と鬼人に負けて気絶した。その後、奇人が俺を殺そうとするけどお前が庇ってくれた。奇人は俺が俺の潔白を証明する機会をくれた。間違いないか?」

「えぇ」

 道理で体が痛いわけだ。番人の関節技と鬼人と怪力を食らったのだ。生きている方が不思議だった。しかし、俺の体が痛いのにはもう一つ原因がある。

「そろそろ退かないか?」

 奇人は俺の腹の上に座ったままだ。俺が呼吸するにつれ腰を上げたり下げたりしてくれるのはありがたいが、少しは体重が乗ってる。つまり、俺が言いたいのは

「重い!痛い!」

「我慢しなさい。私は怒ってるの。これぐらいの恨み受け入れなさい」

 番人は体重を徐々に乗せてくる。これ以上は本気で辛い

「分かった!分かったから!」

「解ればいいのよ?馬鹿」

 誰が馬鹿だ。馬鹿

「で、話を戻すが揉め事とかは、起きなかったのか?」

「穏便に解決させたわ」

 本当だろうか?今のこいつの笑顔は少し恐怖を感じた。何かむかつくことでもあったのだろうか?

「そうか、他の皆は?」

「鬼人は廊下。小人と奇人は教室よ。多分」

 まぁ、容疑者と居たくもないだろう。だが、どこか心が痛む。

「そろそろ行きましょうか?」

「待ってくれ。」

「なに?」

「包帯。もとい拘束を解いてくれないか?起き上がれない。」

「あぁ、それもそうね」

「後どけ。重い」

「……………」

「待て!そんな顔で見るな!止めろ!体重をかけるな!」

 わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!

「痛ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

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