青春は諦めたら終わり
第三章青春は諦めたら終わり
さてはて、子守唄もようやく序盤に入って来たね。
え?話がベタ過ぎる?君は、日本昔話を知っているかな?これは、ボクがボクではない。ボクが生まれ変わる前の話だけれど。ボクの知人の話なのだけれど
ある釣人は亀を助けた。
ある桃人は三匹の動物。いや、三人の人間を助けた。
ある老人は雀を助けた。
子守唄も同じようなものばかりさ。これは、単なる子守唄。
さ、寝たまえよ。
気付けば、保健室で俺は縛られていた。手足を結ばれ寝かされている。身体中には治療が施されていた。だが、動こうとするならば、体の筋肉という筋肉が悲鳴をあげた。
「あら、起きたかしら?」
ベッドサイドから話を書けてきたのは、番人だ。
「俺は…」
「私達に襲いかかったのよ。まるで、手負いの獣だったわ。私と鬼人が本気になって貴方を止めたのよ。もう?大丈夫?精神はしっかりしてる?もう、あんなことならないでよね。次は打撲だけでは、すまないわよ?」
声に殺意が込められている。俺が襲った?お前らを?
「信じられない。という顔をしてるわね。もしかして現実逃避をしているのかしら?それとも、無自覚?心が精神を守るためにしてることなのかしら?」
「なに、言って」
「白人。一つ聞いていいかしら?」
「何だよ、改まって」
「友人のこと、好き?」
「な、なんだよ。いきなり」
「いいから、答えなさい」
悪寒が走った。ここで、答えなければ殺される。そう、直感した。こいつは本気だと。俺は渋々答えることにした。
「あぁ、好きだ。」
「そう、それでもいいわ。」
質問を変えるわ。白人
空気がガラリと変わる。駄目だここから先は聞いてはいけない。だから、言うな、聞きたくない、黙ってろ、喋るな、息をするな、俺の前から消えろ、友人は…
〈友人は死んだわ。〉
…はは。
何かが壊れる音がした。
「番人。馬鹿を言うなよ。悪い冗談だぜ。友人は生きてる。どこかでピンピンしてるさ。友人が死ぬわけないぜ?そうだろ?あいつは小動物みたいな奴さ。小動物は弱いかもしれないが生きる術を持っている。」
「よく聞きなさい。白人。私は今怒っているわ。」
番人は、靴を脱ぎベッドに乗り上げ俺の腹に座る。
――ぐッ!!
痛みを噛み殺す。
そのまま顔を近付け頭を固定させられる。番人の瞳が俺を見つめた。まるで、獲物を狙う目だ。だが、どこかそこには悲しみが感じられた。
「貴方の大好きな友人は死んだわ。」
友人が死んだ?
「お、おい。そんな嘘」
ゴンッ!!と鈍い音が頭の中に響く。番人の頭突きが炸裂したのだ。
「目を背けるのを辞めなさい!!」
「友人は死んでない!!」
右頬を殴られる
「現実を見ろ!!」
「あぁ、見てるさ!!友人は生きてる!!」
左頬を殴られる
「右足を確認したわ。あれはあの子の体の一部よ!!それにあの出血量は既に致死量よ!!」
「あれは、ペンキだ!!廊下に書いてあったのと」
左右殴られる。俺が何かを言う度に番人は俺の方を殴った。ここで、認めたくはなかった。認めたら本当に友人が死んだという現実を見なければならなかった。俺はそれが怖い。
もし、本当にもし友人が死んだというなら
「…してくれ」
「……?」
番人は殴る手を止めた。俺の言葉にようやく聞く耳をもってくれた。なら、聞いてくれ。そして叶えてくれ。
「殺してくれ」
「ッ!!」
「それが現実というなら見てやる。だから、殺してくれ。このまま殴り殺してくれ…嫌だ。あいつが死んだなら俺も死にたい。あいつが居ない世界なんて何の意味があるんだよ。」
「ふざけんじゃないわよ!!」
俺は、目を見開いた。
番人大きく息を吸い込み叫ぶ。
「逃げんな!!」
番人は俺の胸ぐらを掴み、問いただす。
「ねぇ、好きだったんでしょ。友人のことが。」
「あぁ」
「どこが好きだった?」
「優しい所が好きだった。小動物みたいな可愛さが好きだった。小動物みたいなのに身長は俺たちみたいな所に萌えた。支えてくれる所が好きで助けられた。何もかもが好きだった。」
「うん」
「俺、まだあいつに恩返しも出来てねぇんだぜ?」
「うん」
「好きとか、告白も出来てねぇんだぜ?」
「うん」
「なのに、なんで。なんで」
目の奥が熱い。心が痛い。
「だから、現実を見なさい。守れなかったことを後悔しなさい。その後悔で生きなさい。辛い生き方になるでしょう。死にたくなるでしょう。それでも、貴方には生きる義務があるわ。下心でグループを作り、友人を死に至らしめた責任があるわ。そんな貴方がのうのうと生きるなんて許さないわ。犯人に殺されても許さないわ。そんな事をしたら私が貴方を殺すわ!犯人に殺される前に殺すわ。貴方は足掻いて足掻いて足掻いて、命を張っても犯人を探さなければいけない。それが、貴方の友人に対する贖罪よ!!!!」
だから…
「生きなさい!!!!!!」
あぁ、何て情けないんだ。自分が情けなさ過ぎて涙が止まらない。なぁ、番人。お前。そんな熱い奴じゃねぇだろ?そんな優しい奴じゃねぇだろ?そんなお前がどうして…どうして
「…なんで、お前が泣いてんだよ」
「貴方が泣いてるからよ。馬鹿」
番人に涙を拭ってもらい、俺は現在の状況を聞く
「小人と奇人は貴方のことを疑ってるわ。」
「だろうな…」
当然と言えば当然だ。何一つおかしいことはない。
「私と鬼人は貴方の味方よ」
「どうして…」
どう考えても俺は容疑者だ。現場にも居たし、証拠も揃っている。
「不可能だからよ」
意味が分からなかった。もうちょっと分かるように説明してくれ
「まず、あの足。あれは、間違いなく友人のものよ?」
「何故そう思ったんだ?」
俺はあの時、混乱していてあれを友人の足だと思った。だが、あれが友人の足だと何故分かったのだろうか。
「ホクロよ」
「ホクロ?」
「あら?知らないの?彼女、太ももに三つホクロがあるのよ?」
「待て」
「何かしら?」
「なんで、お前がそんなことを知っている」
太ももなんて普通は見せないだろう。ギャルなんかは短すぎるスカートを穿いてるからたまに見えるが、友人は断じてそんなスカートなんて穿かない。穿いている姿を見たことがない。
「修学旅行で見たのよ。私達同じ班だったし。ほら、覚えてないかしら、小人だけ別の班になって学校休んで一時拗ねてたじゃない」
あぁ、確かに。そんなこともあった。
「同じ班だから。お風呂も一緒よ?友人の裸体なんて何回も見てるわよ」
「何でだよ!」
修学旅行は二泊三日。見れて二回だろ!
「お泊まり会をしたからよ。勿論、小人も一緒よ?小人が詩人を誘うとしたのは驚いたわ」
「お前が友人の裸を見たのが驚きだよ」
なんだよ、それ。羨ましいだろ!!!!俺も見たかった!!
「貴方が童貞なのはどうでも言いとして。さて、話を戻すわよ」
番人はしれっと、俺を馬鹿にした。だが、反応すれば思う壷だ。
「貴方がすることはまず自己の潔白。要するに容疑者から外れることよ。でないと、小人や奇人は貴方を疑ったままよ。下手したら殺しにかかるかも」
「………」
「だから、死ぬ気で潔白を証明しなさい。諦めたら終わりよ。」
貴方の人生…そのものが私に奪われるわ。
「あぁ、分かってる…」
こいつは本気だ。もし、潔白の証明を諦めてしまったら俺は殺されてしまうだろう。7
「そ、分かってるならそれでいいわ。」
番人は、溜め息を吐き言葉を付け加える。
私を犯罪者にしないでね。親友を殺すのは気が引けるわ。
「分かってる。必ず罪滅ぼしをする。だから、教えてくれ。その時の状況を」
番人はくすりと笑う。
「いいわ。説明してあげる」




