正体
場がざわついた。
「嘘だろ・・・」
「何てことだ・・・」
赤髪の少年が血相を変えて問いかけてきた。
「神崎弥生! お前両親はどうしてる!」
「両親はルークタウン発足の際に生き別れました。」
実はルークタウンは10年前に発足したものであった。
少年はその時に両親と生き別れた。
「生き別れたか・・・ 両親の名前は知っているか?」
「えぇ、神崎進と神崎照子です。」
場がさらにざわついた。
「神崎進・・・」
「神崎照子・・・」
赤髪の少年が深呼吸を1度した後こう続けた。
「お前の両親はいわゆるマッドサイエンティストだ。 人を改造人間に変える非道な奴らだ。 そして・・・」
赤髪の少年が神妙な顔でこう続けた。
「アンドロイドの実験の最初の被験者、それがお前、神崎弥生なんだ!」
少年はショックを受けた。
いまいちアンドロイドについて理解ができなかった。
しかし自分の両親がマッドサイエンティストで、自分はその実験の被験者だということが少年を傷つけた。
「嘘・・・ですよね?」
「お前、首元を見せてみろ。」
首元を見せた。
「首元に彫られたその刺青・・・それこそがアンドロイドの証明だ。」
「そんな・・・そういう嘘はやめてください。」
「お前が信じる信じないは勝手だ。 だが、この現実は嘘ではない。 動揺するのもわかる。 でもそんなのでへこたれる奴か?」
確かに傷ついた。
でもそんな不確かな情報でへこたれるような人間じゃない。
「いいえ。 ゴミ山で過ごしてきたんです。 辛いことばかりでした。 今さら自分がアンドロイドだとか言うおとぎ話でへこたれるようなそんな人間ではありません。」
「ふん、いい根性だ。 人間ではなく改造人間だが・・・」
赤髪の少年が手を伸ばした。
「俺の名前は黒木 月だ。 ルークタウンに俺の一族は殺された。 そこからずっとスレブタウンで奴隷として生きてる。 で、本題に入るがお前に提案がある。」
「提案?」
「ここを一緒に脱出しよう。」