奴隷狩り
エンドタウンの雑居ビルの寂れた商店街。
そこを歩く二組の大柄の男。
彼らは和気藹藹としゃべっていた。
彼らと一人の少年がすれ違う。
ただ、二人と一人がすれ違っただけだ。
少年がにやりと笑った。
少年の手には二つの財布があった。
僕には、何もない。 あるのはこの盗みの技術だけだ。
少年は商店街を抜け、ゴミ山へと向かった。
ゴミ山をしばらく歩く。
汚れた服装をした人々が必死にゴミを漁っている。
人々は皆、髪や髭は伸びて荒れている。
頬は痩せこけ目に生気がない。
その中にスーツを着た男性がいた。
男性が少年に向かってくる。
少年は男性に言った。
「この財布をやる。 かわりにナイフをくれ。」
少年は取引をした。
そして鞘付きのナイフを手に入れた。
「礼を言う。 ところで次の奴隷狩りはいつだ。」
「残念ですが、今日が奴隷狩りです。 避難してください。」
「そうか・・・」
奴隷狩りとはルークタウンの警察がエンドタウンにやってきて<浄化>をすることだ。
警察と言ってもエンドタウンの治安を守ってくれるわけではない。
エンドタウンはルークタウンのゴミ捨て場だ。
そこに住まう者もゴミ。
ゴミも人も焼き払う。
彼らは週に一回やってくる。
先ほどのスーツを着た男性はルークタウンからくる商人。
商人から奴隷狩りに関する情報を得る。
奴隷狩りというように<浄化>で焼き払うだけではない。
人間を拉致してルークタウンの奴隷としてこき使う。
奴隷を狩る。
その目的のために警察は来る。
警察がルークタウンに戻るまで逃げ続けなくてはいけない。
「逃げろー! 警察だー!」
どこかでそのような声がする。
そして発砲音が鳴り響く。
少年はゴミ山の先の工場地帯に潜んでいた。
工場地帯は<浄化>されない。
現に、エンドタウンのたくさんの住民が工場地帯に集まっていた。
ゴミ山のほうから悲鳴が聞こえる。
まさかここまで来ないだろうという慢心が人々にあった。
パーァン
また発砲音がした。
今回はかなり音が大きい。
いや、違う。
発砲場所との距離が短いのだ。
かなり大きい音だった。
ここまで大きいということは発砲場所はそう遠くない・・・
少年ははっと正面を向いた。
確かに、先ほどの予測はあっていた。
発砲場所はそう遠くない。
それもそのはず・・・
「慢心は人を殺す。 いかなるケースも想定して動けないとはさすがはエンドタウンの住民。」
銃を構えた警察が目の前にいた。
なすすべもなく捕まった。
トラックのコンテナに乗せられた。
コンテナにはエンドタウンの住民がたくさん乗っていた。
そして少年は、ルークタウンに入った。
といってもルークタウンの地下「奴隷地区」だが・・・
「ボス、今日は奴隷狩りだそうです。」
「そうか・・・ なぜだろうな、今日の新入奴隷に期待してしまう。」
「ボスが期待するなんてよっぽどじゃないですか。 まぁ前回の新入奴隷はがクズでしたからね。 ましなのを期待されるのはわかります。」
「さぁ、準備をしておけ。 新入奴隷が来るぞ。」