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67. 再戦は命がけ

どうしてアウルがここに来たのかは定かではない。

だが状況を考えると三つの可能性ぐらいは提示できる。


一つは偶然。

アウルは俺やコリスに逃げられた後、精霊の森を離脱。その後データは集まったので次は神様のところに行こうと、あらかじめアタリをつけていたルートから神域に侵入、俺と邂逅かいこうを果たした。


二つ目は必然。

コリスと組んでいる俺の危険性を考えたこいつは、精霊の森から出た後もしばらく追って来ていた。コリスが神様に転移させられた時俺に託した魔法ように、俺たちの居場所については魔法で何とかした。または、『リスタート』はアウルからもらったチートなのでそもそも位置を把握する(すべ)があった。

そして俺が一人でいるか、俺しか位置が分からず追ってきたところ神域に到達した。


三つ目は偶然と必然の両方。

俺の位置が分かっていたアウルは俺が奇妙な場所に転移した事に気づき、そこがかねてから探していた神域ではないかという仮説を立てる。そして俺と神様両方に接触出来る可能性があるこの場所にやってきた。


確かめる気もないし答えてもくれないだろうからどれでもいいが、とにかく俺が平穏な毎日を送るためには、アウルを倒さなければいけない事だけはよく分かった。


「にしても、どうしたもんかね」


俺は割と真剣にため息をついた。

アウルは完全に俺を排除する気らしく臨戦態勢だし、今は前と違って仲間がいない。勝てるとは思いにくい。

無論逃げるという選択肢は増えているが、問題の先送りにしかならない。


何よりここで倒しておかないと、今度会う時俺の隣にはコリスがいるだろう。


「嫌そうな口ぶりだが、逃げないのかね?」


俺が腹をくくったのを見てとったのか、アウルが興味深げに俺に問いかける。


「生憎と、“どうせ死なない”身なんでねっ!!」


俺はナイフを二本、連続で投げつけた。


(ナイフはどうやっても効かない。あのコインはストックが後二枚。それ以外に打つ手はないから、コインを全部ぶち込んで、無理なら逃げる!!)


俺は絶命してすぐ、アウルの背後に回り込んだ。

突き出すナイフは当然のように、その黒い炎が喰らいつくす。


「何度やっても無駄だ」


そう言うアウルは、先ほどから妙な攻撃をこちらにしかけている。

どうしてだか殺すための攻撃ではなく、まるで足止めのように手足を攻撃してくるのだ。

俺を無視して神様のところに行く気か、何か別の攻撃を仕掛ける時間稼ぎか。どちらにしろ当たるわけにはいかないし、当たったら当たったで自害する。


だが、ルトの時とは違って俺にはソーイチ君謹製レール○ンコインを中々放てない理由がある。

このコインの動きは、いわばビリヤードだ。


何らかのエネルギーを与えられると、その方向に向かってレール○ンを放つ。

だからアウルを攻撃するには、アウルの方向に向かっていく攻撃をコインで防ぐのが一番なのだが、彼の魔法は彼の体を中心に展開されている。

つまり、アウルの魔法を起爆剤にレール○ンを放つ事が非常に困難なのだ。

かといって、俺にレール○ンへ与えられるエネルギーなど腕力以外にないしそれではまともに飛ぶまい。


(と言いつつ、投げやり気味な解決の一手を思いついてる俺がなんか嫌だな)


出来るかどうか分からないけど、とは思いながらも思考を中断し回避に専念する。

銀の刃の雨をかいくぐり、黒い炎をまとう男に肉薄。


「おらぁ!!」


ナイフをアウルの顔めがけて投擲し、自害。

即座にアウルの背後に回る。


「猪口才な」


アウルが振り返りざま、羽虫でも払うかのように腕を振るうと、俺に向かって黒い炎が殺到した。


「ここだ!!」


俺は黒い炎を抱きかかえるようにしてコインに接触させる。

攻撃の方向としては俺の方に向かっていても、逆側から炎に触れさせればレール○ンはアウルに向かって飛ぶ。


「!?」


そう思っていた。

しかしコインに何も起きないどころか、俺の体を炎が焼き尽くすことすらなかった。しかし代わりに炎に触れている部分全体で、数千本の針で突き刺されたかのごとき激痛が、俺の体を走った。


「ようやく捕まえた」


黒い炎は俺の両手を拘束するように巻きつく。


「これは……面白い魔法具だな」


アウルは自らの黒い炎に取り込まれたコインを見て言った。


「だが、私の炎は対象を“侵食”し“分解”し、“破壊”する。コインのこの風変わりな性質自体が無効だ」


俺は激痛でかすむ意識を必死につなぎとめながら、自分の両手の状態を理解した。

黒い炎が根を張るように、俺の体内に侵食しているという事か。


「さて、と。しかし君は私に勝てるとでも思ったのか?」


アウルはそう言うと俺の額に手をあてた。俺は腕の激痛で上手く抵抗が出来ない。


「そして、」


アウルの手がうっすらと光った瞬間、俺の中から決定的な何かが抜け出た事を理解した。






「与えたチートを、私が回収できないとでも思っていたか?」






この日、俺は『リスタート』を失ったのだ。



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