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66. 邂逅は命がけ

「!!?」


俺は神様の手を払いのける。

記憶の最後のアウルと、神様の顔が二重写しに見えたせいか、思わず身構える。意識が混乱し、息も荒い。


「思い出したみたいだね」


神様は相も変わらず人形のような笑みをたたえて俺の方を見ていた。


「これで君がどういう状況にあるのか、少しは理解できたかな?」


俺はうなずく事も出来ずにしばらく立ちすくんでいた。

アウルが俺を召喚した――『リスタート』の真実――アウルの弟子――不死の実験――記憶の混乱――妹と映画を見に行く約束――帰還条件。

いろんな事が断片的に渦巻いて、頭が混乱する。


どうして気づかなかったんだろう。


モニカの例を考慮すれば、彼女以外に不死の実験を行っている可能性はあった。そして、俺自身不死身と呼ばれる『リスタート』というチートを所持していた。

思えば、精霊の森でアウルと出会った時も、俺を見て妙な反応をしていたではないか。


嘘だと思いたいが、ルトの悪霊を斬るという剣で、俺の『リスタート』は破られかけた。あれは俺が死なないのではなく、死んで復活しているという現象的確に示唆している。思い出したアウルの話が、正しいのだという証左になっている。


そして、俺は目の前の神様を見る。


(ああ、そうか)


混乱の中で、だからこそ俺は一つ納得した。


(あの妙な引っかかりはアレ(・・)だったのか)


永訣の庭で感じた矛盾を、偶然にもその時気がつく事が出来た。同様の中で俺の頭蓋骨の中からぶちまけられた記憶の残骸に、俺はそれを見つけた。

だが、それは覚えておくとして、俺はまず落ち着く事に努めた。その傍らで現状を分析する。


アウルからもらったチートだとして、『リスタート』の運用は今までと変わらない。

俺がアウルに召喚されたからといって、帰れる保証はない。アウルが嘘を言っている可能性もあるし、例えばルトの悪霊を斬る剣とかで斬られたら、魂が真っ二つになってそもそも俺と言う存在自体が消滅する可能性すらある。

日本への帰還についてはおいおい考えればいいし、家族が無事っぽいとわかったのだから、むしろ儲けもの程度の認識でいいだろう。


一応帰ったらコリスに確認しておきたいのは、俺の『リスタート』とコリスとの出会いの関連があるのかどうか。

それはコリスが後ろ暗い事をしているかどうかという事でなく、薄々俺の『リスタート』がアウルの干渉によって得たものと勘繰っていたのではないかと言う事。

それがきっかけでコンビを組むなんて言い始めたのだとすると、少し複雑な気分になるので確認しなくてもいいかもしれないが、興味が湧かないと言ったら嘘になる。


これら以外に今の情報から自分の立場の変更点、行動の指針、対応や検討の余地を一考していたところに、轟音が響いた。


例えるなら、それはガラスが割れるのに似た音で、けれど音の規模はその比ではない。頭上から目に見えないハンマーを振り下ろされたかのような、物理的な衝撃すら感じる。

あまりの事に膝が震え、背筋が凍る。


「あーあ、来ちゃったか」


呆れたように、けれどどこか楽しげに神様は言った。なんだかこうなる事が分かっていたような口ぶりでもある。

そして俺の背後、つまりは俺から見て神様とは反対側に何かが下り立つ音が聞こえた。




「妙な転移をすると思ったが、まさか神とはな」




刹那振り返り、ナイフを投げた。

しかしそれは銀色の刃を孕んだ、黒い炎(・・・)に呑み込まれる。


「何を驚いているんだね?」


そこにいた男はオールバックの黒髪に鋭い漆黒の双ぼう。

黒一色の服と黒い炎に銀の刃。


「……アウル!!」


俺はあまりに早すぎる邂逅(かいこう)に身構え、


「さて、どうなるかな」


神様は残酷に酷薄に薄情に、笑った。


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