43. 怒れるアイズは命がけ
俺はトラックの方に急いで移動する。
最悪の事態が起きていた場合、作戦を変更する必要があると思ったためだった。
このまま陽動に徹していても、アイズの魔法がなければ作戦は成立しないし、なにより残りのメンツでチー産物の精霊をさばき切れるかは分からない。
俺は自分のミスに焦りながらも、ありえないぐらいの迅速さでトラックを発見した。
トラック自体は前の部分が盛大に焼け焦げて止まっていたが、アイズ達は無事だった。
おそらく先に降りて詠唱を始めていたのだろう。
しかし、空に座す炎の精霊は、今にもアイズ達に向かって魔法をぶっ放しそうだった。
ロティはともかく、詠唱中のアイズと足が動かないモニカはよける事が出来ない。
「地獄の業火に焼かれて死ぬがいい!!」
精霊はそう言うと、巨大な火球を三人に向かってぶっ放した。
俺は助けに入ろうとするが、間に合わない。
「ちっ」
ロティがとっさに、アイズを突き飛ばした。
彼女自身もアイズを押したのとは逆の方向に跳びのき、難を逃れる。
「あ――」
しかし、モニカだけはまともに火球を受け、その体が炎に包まれる。
アイズもあまりの事態に集中が乱れたのか、詠唱を止めてしまった。
「フハハ! まずは一人!!」
俺はまあ、特に何も思っていなかった。
俺が恐れていたのはアイズやロティがやられる可能性であって、モニカの事はあまり心配していない。
そりゃ痛いもんは痛いが、いや言いたくないが、俺と一緒で彼女は死にはしないのである。
モニカが不死身だと、精霊は知らない。
そして、もう一人知らないバカがいた。
「お前……」
アイズ、その人である。
その瞳は怒りに燃え、歯を食いしばり、喉からは低い声を絞り出す。
「よくも俺のモニカを……」
……いつの間にモニカがこいつのものになったのかは知らないが、あいつの脳内では確定事項なのだろう。
「ハハ! すぐに貴様も後を追わせてやろうぞ!!」
炎の精霊はそう宣言すると、魔法の詠唱を始めた。
「……許さない」
アイズは精霊のセリフを無視して、勝手に怒りに燃えている。
「お前は、俺が倒す!!!」
アイズがそう言った途端、アイズの周囲を白い靄のようなものが漂い始めた。
それが空気が冷やされたことによって生まれたものなのだと気づいた時には、アイズの背後に青い巨人がいた。
二メートルくらいはある巨人はしかし、髪の長い女の姿をしていて、額から角を生やし、耳はとがっていて、全体的につやつやしている。
よく見ると、どうやらスライムみたいに、水が女性をかたどっているのだという事がわかった。
「喰らえ!! エター○ルフォースブ○ザード!!」
アイズが詠唱もなしにそう叫ぶと、背後にいたその巨人が精霊に向かって腕を振り下ろした。
途端、極低温の吹雪が精霊を襲う。
チー産物の精霊は悲鳴を上げる間もなく、氷漬けにされてしまった。
「って、そのスタ○ド何だよ!!」
俺は思わず突っ込んだ。
いや、スタ○ド使いじゃない俺にも見えているという事はスタ○ドじゃないのか。スタ○ドバイミーしてるだけで、別の存在という事か。
……いや、この場合ミーじゃなくてヒムか? やばい、英語なんて大分使ってないから、アイマイミーマイが曖昧な状態である。
っていうかどうでもいいが、こいつエター○ルフォースブ○ザードを詠唱破棄で使えるんだな。
と冷静なのか混乱しているのか分からないめまぐるしい思考を展開していた俺を尻目に、アイズは自らの背後に立っている巨人に向かって言う。
「まさか、氷雪精霊ヴィン・イル・パードット……?」
……クソ、説明するどころか余計に訳の分からない設定を盛ってきやがった。
ヴィン・イル・パードットとは、またすごい名前ですね(笑)
ところで、エター○ルフォースブ○ザードの出典はVI○PERでいいんですかね?
アンサイ○ロペディアではそうなってたけど、どこまでも信用できないからなぁ……。




