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36. 神様との対談は命がけ

それは完全にコリスの凡ミスだった。

俺はコリスのステータス画面を開いてみたが、案の定、それは100パーセントになっていた。


カルマ値。


神様が介入してくる目安となる、この世界で最も気を配るべき値である。

“アンダーワールド”中級者以上ならば、一日数回は無意識に確認してしまう癖がつくほどで、本来これが100パーセントになる事は限りなく少ない。


原因としては、二つの可能性があげられる。


一つが『虚無の万雷(ナラントール)』による天空城の破壊。もう一つが、俺に対して行った拷問だ。


前者の可能性は限りなく低いが、おそらくある程度はカルマ値が上がっていたと考えていいだろう。

そこにきて俺を残虐な方法で殺したことで、カルマ値が跳ね上がったのではないか。普段なら、初めての行動をした時などはカルマ値チェックは必須であるが、コリスはアウルの事で頭が混乱していた。

魔法で精神操作をしていた事が影響した可能性もあるが、それは憶測でしかないのでおいておこう。


とにもかくにも、そういう理由で現在神様が降臨なさっている。


コリスは無意味と知っているのだろうが、雷撃を数条ほとばしらせた。

それは神様に当たるかに見えたが、直前で白い光のようなものに弾かれて地面を穿った。

お返しとばかりに、神様は人差し指をコリスに向けた。


「無駄だよ。『神の奇跡』は全てのチートを凌駕するから」


ぽん、と光の玉のようなものがコリスに向かって飛んでいく。

コリスはあまりの速さに反応すら出来ない。


俺はとっさにコリスの前に出た。

どういう原理なのかは分からないが、当たった瞬間体から力が抜けてしまった。


「何をやってるバカ!!」


コリスはそう言って、傷ついたような顔をしていた。


「気絶させるつもりだったのに、加減が難しいな」


うんうん、と楽しげにうなずく神様。


「コリスをどうする気だ?」

「うわ、しゃべれるんだ。すごいね」


神様は本当に面白そうに笑う。


「ちょっと罰ゲームを受けてもらうの。どうも君は邪魔しに来ちゃうみたいだし、彼女を転送するよ」


俺は体が動かず、憎らしげな視線を神様に送った。


それにしてもこの神様、初めて会った時は黒髪ロングなお姉さんだったのに、どうして今は金髪で水色の瞳になってるんだろう。

俺の理想の女性像が顕現しているのだから、変わるのは当たり前といえば当たり前ではある。しかし、なんだ、まあ……会うたび、徐々に外見が誰かに似ていってる気がするのだが、気のせいだと思う事にする。


「さて、」


手を振ると、コリスの下の地面が輝き出してコリスの姿を飲み込む。抵抗するそぶりを見せるコリスだが、すぐさまそれを諦め、俺の方を見た。


その表情は、とても寂しげで――


コリスは俺に向かって光の玉を打ち出した。

それは俺の体に入って、体のしびれを取ってくれる。


「……転生させたわけじゃないだろうな?」

「ううん、ただちょっと、お仕置き。転生するかどうかは、彼女次第かな」


俺は立ち上がり、神様を警戒して様子をうかがう。


「で、君はどうするつもりなのかな」

「何がだ」


俺はとある事をしらばっくれるつもりで言ったが、神様はどうやら気づいていないようだった。


「“知悉(ちしつ)の特赦”。どう使うつもりなの? 君の望みも彼女の望みも、確かにそれを使えばかなえられるけれど、両方は無理」


神様は面白そうに言った。まるで、この状況を楽しんでいるかのようにだ。

全く、性根が腐っていることこの上ない。それとも、そもそも人間とはものの見方が根本的に違うのか。


「それに、別の事に使ったっていいんだよ?」


神様はなおも、俺に言う。


「例えば、彼女がどうしてアウルに固執しているのかも知る事が出来るし、お望みなら神になる方法だって、存在しさえすれば答えるよ」


自分が答えるわけではないかのように話すな、と俺は思う。


「一体どうして、そんな事を気にするんだ?」


俺は面倒臭そうにそう言った。

しかし俺は実際には、この異常事態に驚いている。


神様は不必要な時は干渉してこない。

それは人間と神様の距離とかそういう理由ではなく、世界の管理という膨大な仕事を神様がこなしているため、時間がないからだと思われている。

少なくとも、天使や神様のような同僚を、この神様が伴っているところを見たという話は聞かない。

つまり、この神様はこの世界を一人で管理している唯一神なのである。


神様といえど、そんな状態で一人一人の事情に干渉する余裕など、あるわけがない。

結果、カルマ値や特別なイベントでもない限り、神様と話す機会は本当にまれである。


そういう事を考えた末の俺の質問に、


「この世界の人間を、幸せにするために生かしているわけじゃないから」


とんでもなく遠大かつ漠然とした、答え。


「どういう意味だ」

「そういう意味だよ」


神様はにべもなく言う。


「この世界は、そんな事のために存在していない」


じゃあどんなことのために存在してるんだよ、と俺は突っ込みたくなるが、説明されたってどうせ分からないだろう。


「とはいえ、例えばだけど」


神様はそう言うと、俺の目を見て言った。


「彼女の居場所も、“知悉(ちしつ)の特赦”を使えば分るんだよ?」


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