35. ×××は命がけ
あれから、コリスによる放送コードに載せられない攻撃が続いた。
手の指を一本一本×××したり、内臓を一つずつ×××したり弱めの雷撃で×××したり、死にかけの俺を×××したり×××したり×××したり――極めつけに×××したりである。
思い出したくもないので、覚えている事すら省略するが。まあ、大体、概ね、そんな感じである。
足先から一センチずつ大鎌で×××されていったときは思わず時間が消し飛べばいいとか思ったり思わなかったりしたが、そんな事を言っている場合じゃない。
コリスは『リスタート』の特性を理解している。
俺は何度でも蘇るドラ○エ勇者仕様だが、それでも死ぬまでの苦痛を無効化できるわけではない。
それにしても、「小説家になろう」内でこんな事がなされたら、「残酷な描写あり」のタグがついている事は間違いないだろう。つけずにこんな内容のものが乗せられていたら、その作者の勇気というか無謀は称賛に値すると俺は思う。
と、現実逃避が迷走し始めたあたりで、俺は一度死んだ。
復活と同時身を隠して走るが、そんな行為は意味をなさない。
対象の探査や身体強化なんてテンプレ魔法、コリスには標準装備である。
振り向きざまに放たれたコリスの雷撃が、俺の背を撃った。
俺は糸が切れた操り人形みたいに、倒れる。
背中の皮膚を焼く悪臭が、俺の鼻を突いた。
「意外に強情だな」
「これでも精神的にタフなんでね」
そう答えつつも俺は頭の中で逃げる算段をつけていた。
コリスは強い。
俺など足元にも及ばないくらいに。
ただ、実力だけの差ならば『リスタート』でどうとでもできるのだが、問題は俺がコリスを殺したくないという事だった。
それどころか正直言って、ケガをさせる事だってできれば避けたいと思っている。
「そろそろ降参しないか?」
そう言ったコリスの目に、迷いはない。
初めはアウルに固執するあまり俺を容赦なく攻撃できるのだと思っていたのだが、よく見ていると違うのである。
これは勘だが、コリスはおそらく自分に何らかの魔法をかけ、俺を攻撃できるように精神的な操作を行っている。
これは俺のうぬぼれではなく、彼女の挙措や発言が意識的に残酷になっていることから推測している。コリスらしくない、やり過ぎている感があるのである。
そしてそれゆえ、これだけのことをされても俺はコリスを完全には憎めないでいる。
むしろ、彼女にここまでの行動を起こさせるアウルという存在に対して、怒りを感じてすらいた。
「残念ながら、降参する気はさらさらないな」
俺はそう言うとコリスに背を向けて走り出す。
俺の敗北条件は俺の降参だけだ。
逆に俺の勝利条件はというと、コリスから逃げ切る事である。
これはかなり困難を極めるが、ひとつだけ俺にとって有利に働くことがある。
それは、コリスの魔力切れである。
今日『虚無の万雷』を使用したコリスは、すでに魔力を半分以上、場合によっては二三割ぐらいまで消耗している。
これを考えれば攻撃をかわし続けて魔力切れを狙うというのが、俺にとって一番現実的と言えるだろう。
むろん、『リスタート』はカルマ値依存のチートだ。
だから俺のカルマ値が100パーセントになる前にカタをつけなければならない。そう思ったところで、俺は違和感に襲われた。
俺は何か、大事な事を忘れていないか?
それが何かという事に気づいたのは、再び『リスタート』で復活した後だった。
突然響いた間の抜けた声が、コリスらしからぬミスを俺に悟らせてくれた。
「やっほー元気? 神様だよー」
俺たちの前に現れたのは、正真正銘の神様だった。
エターナルフォースb(ry
……はい、短い回が重なりすいません。
主人公とヒロインの二人だけだと、やっぱり凄く書きにくい。
シリアスパートばっかなんで、コメディを早くぶち込みたいです。




