34. 結果的に命がけ
コリスと話し合って分かった事がいくつかある。
まずアウルという男も不老であった事。
コリスに魔法を教えた事。コリスが父のようにアウルを慕っていた事。コリスを不老にしたのが彼で、不死を得ようと研究をしていた事
そして何より驚いたのが、アウルの目的だった。
アウルは神になろうとしていたのだ。
不老の魔法を作り上げたアウルは、だからこそ次に不死の魔法を組み上げる事に熱中していた。
そしてその過程で生まれた魔法の一つが、モニカにかけられたのだろう。
しかし足が動かなくなることや、細胞の一かけらも残さず消し飛ばせば死んでしまう事などを加味すると、おそらくあれはまだ研究途中と推測できる。
不老と不死。
神になるための二つの要素とアウルは考えたのだから、不死の魔法は本当に何をやっても不死な完璧なものでなければならない。
例え溶岩に落ちようが宇宙にぶっとばされようが考えるのをやめるような事態になるようでは駄目である。
そういう意味で、当時のアウルの魔法は完成していたとは言えない。
それを考えるとアウルがまだ“アンダーワールド”にいる可能性はゼロとは言い切れない。
何より、神様がこれだけ近いこの世界は、アウルにとっては神を観察するにあたって理想的な環境と言えるだろう。
だがあてもなくアウルを探すには、“アンダーワールド”は広大すぎるし、この世界にいるという確証もない。
コリスが言うには、アウルは異世界間を渡ったり異世界の存在を召喚したりする魔法も使えるそうで、そのことを考えると“知悉の特赦”は必須だと言えるだろう。
異世界がいくつあるのかなんて問いは、宇宙にいくつ星があるのかという問いにひとしいのだから。
だから俺とコリスの目的は、どちらか一方しか果たされない。
「どうしてアウルを殺す必要がある?」
俺の最後の質問に、コリスはこう答えた。
「奴は外道に落ちた。あんな奴を神になど、ならせてはいけない」
コリスはそう言うと、ついに、俺の首を容赦なく、はねた。
「はっ、その言い方だと、外道とはいえ腕は確かなんだろうな」
少なくとも、神になるなんて夢物語をかなえてしまうと、コリスが信じるくらいには。
俺は『リスタート』で復活して、コリスと距離をとった。
しかし、コリスはどうするつもりなのだろう、と思う。
『リスタート』がある限り、俺は不死身だ。だからコリスがいくら俺を殺すと脅そうとも俺は“知悉の特赦”を渡さない。
だが、俺が渡そうとしない限り、“知悉の特赦”は俺のアイテムボックス(と勝手に読んでいる“恩典”収納空間)から出てこない。
かといって、コリスは自分の事情に他人を巻き込むことを嫌う。アルダや博士なんかを人質にしなかったのはそのためだ。
コリスはコリスなりに筋を通している。
それはアウルと外道と呼んだ、プライドの高い彼女らしい、潔白な意志だ。
それを俺は評価したいし、どこか安心している部分もあるのだが……先ほどから五六回ぐらい絶命させられているのでそろそろ話し合いと行こうと思う。
「諦めたらどうだ? 俺はどうやったって死なないんだ」
「そうだな、だが」
コリスはそう言うと大鎌を振るった。
俺の右足がとぶ。
「“死なないだけで痛い”んだろう?」
……嫌な予感しかしないんで、とりあえず誰か早く俺の足をもってきてくれ。
ファーストクラスの客に、酒とキャビアをサービスする感じじゃなくていいからさ。
まあ、持って来られたってくっつけようがないんだけど。
ついぶち込んだけど、ジョ○ョネタわかる人って日本人口の何割なのだろう……。
わからない方すみません。




