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3. 応用系のやつらは命がけ

この世界に転生した時、神様は俺に言った。


「“アンダーワールド”では不老。死ぬと次の世界に転生します」


これが、“アンダーワールド”を端的に表した神様の一言だった。


この一言がなければ、おれは『リスタート』を選んでいなかっただろう。不老という言葉からマジカルなバナナを――つまりは連想してしまったのだ。

そして適当にノリで言ったが、どこぞのるーさんのなんちゃって英語みたいだなこれ。


ちなみにこの神様は女性で、清楚な雰囲気の黒髪ロングな女性だった。あまりにドストライクなので呆けていたら、何でも、見た相手の理想の異性を体現しているらしい。

……神様なんでもありだな。まるで「小説家になろう」のテンプレだ。


「この世界には“恩典”が散らばっています。これはこの世界で神に益する事をした人へのいわばご褒美だね。“恩典”の中には一定の特典が来世へと追加されるものもあるよ。その手の“恩典”の効果は様々だけど、持ち主が死ぬと自動発動するので心配はいりません」


まあ、大体が身体能力強化とか、回復薬とかだけどね、と付け加える神様。


「そして、いわゆるチート能力という奴を一つ、君にプレゼントしてあげるよ。何でもいいから言ってみな」


そして俺は得た。『リスタート』という、世界で一番要らないチートを。






この世界のチート能力は主に三つに分かれる。

通常系と応用系、そして先天系である。


通常系とは所有者が本来想定した使用方法で使われているもの。こいつは大体全体の二割程である。幸いというべきか、俺はここに属する。

先天系は全体の一割程度で、コリスのように前世の時点から持っている能力の事だ。前世からの運用のため、非常に安定していて、総じてスペックが高い。


そして残り七割、圧倒的大多数を占めるのが応用系――通称残念系チートである。


「マジですいませんしたぁ!!!」


そう言って目の前で土下座した“アンダーワールド”初心者も、その一人である。


応用系チートの唯一の共通点は、先に説明した『カメハメロケット特攻隊(笑)』のように、本来想定されていた使い方と違う方法で利用されるチートの総称である。

その原因は、こいつのように反作用の力を想定していないといった物理法則の問題だったり、攻撃範囲に自分を含めてしまうアホな能力だったり様々だ。


共通しているのは、とにかく残念な使い方しかできないという事だろう。

……こいつも、数ある発電能力者とともに、町の発電に貢献する事になりそうだ。


電気系の能力者は大抵、発動と同時に自分が感電するというアホな理由で戦えず、大体が町の発電に貢献している。

その原因は、おそらく自分の周りで電気がバチバチするのをカッコイイと思って想像してしまい、チート能力に反映されるためだと考えられているのだが、詳しくは分からない。


「ふん、今度同じ事したら、私の最強の魔法ぶっ放してやるからな」

「いや、下手すると町一つ吹き飛ぶからやめろな」

「ひぃぃ! やっぱ恐ぇぇぇ!!」


再び頭を地面にこすりつける男。一応名前を聞いたが、ソーイチ君というそうな。

……微妙に名前が似ている事に何故かむかついてしまった。

前世はやはり日本だったが、俺の欲しい情報は持っていなかった。日本についての情報収集は、俺の“アンダーワールド”での目的でもあるのだが、それについては今後話す事になると思う。


「まあまあ、コリスももうそれぐらいにしといてやりな」


そう言って笑ったのは“アンダーワールド”では珍しい三十歳ぐらいのヒゲ面の男だ。

この世界では不老ゆえか、転生時に任意の年齢の姿で“アンダーワールド”に放り出される。

つまり、中年に入ってしまうような容姿を選ぶ奴は稀なのである。

……まさか、「小説家になろう」的なギルドマスターを目指した結果なのだろうか?


この男は俺たちが拠点にしている町、ニルデアのギルドマスターである。ギルドで一番偉い人である。

決してコリス目当てのロリコンではない事を、彼の名誉のためにここに記しておく。


「そうだな、ここはアルダさんの顔に免じて、ゆるしてやろう」

「そりゃどうも」


ギルドマスター、アルダは苦笑すると安心しきった顔のソーイチ君を見て、


「お前、発電機の刑な!!」

「何だか分からねぇけどすげぇ不穏な響き!!」


憐れなソーイチ君は、何処からか現れた坊主マッチョたちに、ギルドの奥の部屋へ引きずられていった。

……やっぱそうなるのな。


「南無阿弥陀仏~」


俺は生前の宗派のお経を唱えてやる。もっとも、ばあちゃんからここしか聞いていないので、この先を知らない。あるのかも分からない。


ソーイチ君が課された刑は、『発電機に可能な限り電力を送り続ける』というもので、この世界ではポピュラーな一定時間対象を拘束しつつ、町の利益になる労働を課す刑罰である。

同時に、ギルドマスターであるアルダは性格強制プログラムなるものも持っていて、それをあのソーイチ君に課すのだろう。

俺はソーイチ君の矯正ではなく、冥福を祈った。

ニルデアのギルドマスター、アルダもまた、相当なドSである。


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