15. 協力は命がけ
作中で感想に対するブラックなジョークがありますが、これは作者自身に対しての戒めや皮肉であり、感想に対する批判や文句などでは決してありませんので、あらかじめご理解ください。
あれからソーイチ君と話したりして分かったのは――アホ極まる会話だったので要約するが、そもそもソーイチ君のチートはレール○ンですらなかったという、衝撃の事実である。
どうやら、これは「小説家になろう」的に説明するなら、“ゲームの技のモーション”のように彼のチートが処理されているとでも表現するべきだろう。
彼のチートの全貌は、磁力でもって金属を加速させるといった文系泣かせなものではなく単に、
“弾いたコインを電気の力でとにかく加速させる”
というものすごくあやふやなものだった。こいつのチートをこそ『あやふや☆ロケット』と呼ぶべきだと思う。
コインを弾くところから『あやふや☆ロケット』の射出、そして腕への反動までの一連の流れが、彼のチートなのである。
これがもし「小説家になろう」の小説内で起こった事だったら、感想欄は「文系乙wwwww」で埋め尽くされていた事だろう。いやはや恐ろしい。
それはさておき、どうしてソーイチ君が原理も分からないチートを選んだのかと聞いてみたところ、
「だって、神様の姿がレール○ンの○琴にそっくりだったんだよ!!」
という一言で、彼がチートを選んだ理由ではなく、ツンデレ好きのロリコンであった事が発覚した。
こいつは神様の姿が自分の理想の異性に見えるって事を知らないのだろう。
ますます残念な男である。
しかし、彼の残念さはここに留まらない。
さらにあり得ない事実が発覚したのである。
「そもそも、お前どっからコインなんて拾って来たんだ?」
都合良くゲームセンターのコインを持っている訳もないだろうと興味本位で聞いたのだが、これがまさかの結果を生んだ。
「俺も良く分かんねぇんだけどさ、ポケットからいくらでも出てくるんだ」
「!? ……アルダ!!」
それを聞いた俺は、アルダに手伝ってもらってソーイチ君の足を二人で引っつかみ、ひっくり返して揺すってみた。
するとまあ……出るわ出るわ。
「キョーイチ、つまりこれ……どういう事なんだ?」
「お前と同じ、生産系チートだって事だよ」
困惑するアルダに、俺は呆れながらも答えてやった。
そして俺は彼のチートがコインを作る事にまで及んでいる事を見て、一つ思いついた事があった。
「嫌な予感と言うか面白い予測があるんだが、ちょっと協力してくれないか、ドロシー?」
きょとんとするドロシーに、俺が頼んだのは、俺が投げたコインに向かって波○拳を撃ってくれという至極簡単な内容だった。
結果は、俺の予想が的中していた事を示していた。
なんと、コインに波○拳を当てると、レール○ンのように飛んでいったのである。
もはやエネルギー源が電気である必要すらない事が、ここに証明されてしまった!!
空にいるドクロプテラを貫いたことから、その威力が充分だと言う事も分かった。
ドロシーは抱えられるだけコインを抱えて、空にいるドクロプテラのせん滅に向かって行った。今からなら間に合うかもしれない。
「キョーイチさん。いや、むしろ師匠! どうなってんだ?」
急に俺とアルダに足を持たれて揺さぶられた事に対する怒りも忘れるほどに、ソーイチ君は困惑していたようだ。
俺は推測した事を話してやる。
簡単に言うと、こいつのチートはレール○ンを放つ事なんかじゃなく、
“電気を発生させる事”
と、
“エネルギーを与えるとその大きさだけレール○ンのように飛んでいくコインを作る事”
の二段階に分かれていたのだ。
こんな変なチートがどういう過程で生まれたものなのかは分からないが、おそらくソーイチ君があやふやにしか原理を知らなかった事、コインの精製までをチートが受け持った事が合わさって、コインの方にもチートの効果がついたのだと考えられる。
そもそも、生産系チートと電気系チートの両方を持っている事がイレギュラーなのである。どちらかに能力が偏る事はあり得なくはない。
また、生産系チート筆頭のモン○ターボール使いの方々は、何処からともなくモン○ターボールを精製し、明らかに収納できないサイズの魔物を捕まえては去っていく。
……何故かは知らないが、一人の捕獲上限数が六匹と厳しく定められているらしいが。
それはさておき、彼らを見ていると、生産系チートは本来ならばあり得ない能力を付加する事だってできると容易にうかがい知ることができよう。
というか、
「エネルギーを与えると亜音速で飛んでいく物質ってどんなダークマターだよ!?」
と俺は突っ込まずにはいられない。こいつ、どこぞの学園都市第3位を目指して、間違えて第2位の方になってやがる。
ある意味オリジナルを追い越す快挙である。
まあ、そんな事を言いつつも、今回ばかりは正直ソーイチ君のおかげで助かったと思う。
なんせ、こいつのチートを利用したドロシーの快進撃と言ったらもう、ね。
彼女のチートは距離とともに威力が落ちるものだったのだが、近距離でコインへ伝導させれば零距離射撃のような事が出来る。
反動自体も一発で後ろに吹っ飛んでしまうのだが、普通の波○拳と変わらない。
偶然の産物だが、恐ろしく相性が良かった。
それよりも俺が称賛の拍手を送りたいのは、ドロシーの健気さに対してであった。
反動で何度吹っ飛ばされても立ちあがる彼女。泥にまみれ、時にはケガをして立ちあがる彼女の姿は、知り合いでなくとも応援したくなる。
そして、その姿を見て、周囲にいた初心者たちが立ちあがった。
彼らはドクロプテラを攻撃できない近距離専門だったり、残念系チートだったりしたのだが、MPだけは残っている。
そして、あるものは炎で自らの手を焼きながらも、あるものは電気で感電しながらも、みんなでコインを撃ち上げ始めた。
それからは早かった。
コリスが巻き添えはごめんだと空から降りて来た程にその数は増え、瞬く間にドクロプテラをせん滅していったのだ。
「全く、どうなってるんだ?」
俺の横でコリスはそう不機嫌そうにつぶやいた。新しい武器を存分に振り回していたのだから、手伝ってくれたというよりむしろ、邪魔されたように思っているんだろう。
俺はコリスに苦笑いしながら、何の気もなしに彼女のステータスを確認した。
ただ、カルマ値が下がったかな、という興味本位の行動であったし、この世界で相手のステータスを勝手に見る事は失礼でも何でもない。
だが、
コリス
HP 2333(98%)
MP ???(???)
攻撃力 262(+135)
防御力 533(+328)
知力 722(-150)
素早さ 732(-100)
カルマ値 92%
……え?
「いやいや、お前の方がどうなってるんだよ!?」