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14. 町の防衛は命がけ

どうしてドロシーが特攻隊に入っているのかは知らないが、想像はできる。

おそらく、最近深刻な人材不足に悩んでいた特攻隊の奴らが、適当に言いくるめて入隊させたのだろう。


ドロシーが出力が安定せず『あやふや☆ロケット』なんて呼ばれていた理由も、分かる。そりゃ、波○拳じゃ安定して飛べるわけがないだろう。


それらはさておき、ドロシーは掛け声とともに上に拳を突き出し、ドクロプテラをぶん殴った。


「ギシャァ!!」


ドクロプテラが顎を叩かれ地面に落ちる。そこにすかさず波○拳で追撃するドロシー。

衝撃波の塊のようなそれは、ドクロプテラの頭を粉砕した。中々の威力だ。


「ふぅ」


額の汗をぬぐうドロシーに、俺もソーイチ君も見とれていた。

その可愛らしさや美しさにではない。


「……チートをちゃんと使いこなしてやがる」


俺はその事に主に驚いていた。ソーイチ君のレール○ンとは大違いだ。


大体、チートを使えない奴らは二種類に分かれている。

無駄な想像力や知識を持っている奴と、最強な奴の二種類である。


例えば、前世で医者だった奴が治癒魔法なんかを覚えると、知識が邪魔して逆にうまく機能しなかったりするし、アイズのように要らない効果が付加されたりする。これが前者だ。

後者はソーイチ君がいい例で、威力が高すぎるとあのように反動やMPの関係で残念なことになる。


だから、ドロシーのように過不足ないバランスのいいチートは、本当に珍しいのだ。


「おーい、キョーイチ!」


そんな事を考えていると、アルダがこちらにやってきた。


「ちょっとヤバいぞこれ」


アルダが町を指さしてそんな事を言っているので、HPを調べてみると、既に一割を切っていた。


空ではまだ、五十体程のドクロプテラが旋回している。


「飛行能力者が少なかったのがあだになったな」

「それもあるが、前線に初心者が行き過ぎたんだ」


多分にゃんとらーが可愛かったから、それを聞きつけてそっちに流れたのだろう。


「アルダやドロシーのチートでも間に合わないのか?」


俺はそう聞いてみた。その間にも、アルダが俺に適当な銃器をよこしてきたが丁重にお断りした。扱い方を知らない俺が使っても焼け石に水である。


「俺のじゃなぁ……。地対空ミサイルとかなら何とかやれるが、銃弾だと堅過ぎて弾かれるんだ。」

「私のは、距離に比例して威力が落ちるのでどうしても……」


俺は空を見上げる。

今戦ってくれているのは、コリスと数人の飛行系チートの方々。そして、特攻隊の生き残りである。

しかし、コリスだけでどうこう出来る数じゃないし、飛行系のチートは飛ぶ事に重点を置き過ぎているので威力がない。特攻隊はあとはもう、MPオーバーキルをいつ使うかという程度にしかMPが残ってないだろう。


このままだと、ニルデアは落ちる。


俺たちの間に、絶望にも似た空気が漂い始めた。


「回復薬やるから、骨折覚悟でレール○ンぶっ放してくれね?」

「一体何回腕いくんだよこの数!?」


俺は冗談を言う事ぐらいしか出来ない。


俺のチートは自分本位だ。

死んでも生き返るという、ただそれだけの事にしか機能しない。他人の死にも関知しないし、空なんて飛べるわけがない。


“祭り”の場で――あるいは戦いの場で一番無力なチートなのである。


だからこそ俺は、別の場面で自分が死ぬようなリスクがあっても戦った。仲間を助けるために盾になる事もあったし、危険な事は俺が率先して引き受けた。

自分のチートが他人を助けられるのだと証明したかったのかもしれない。

だからこそ、あんな説教を垂れて“祭り”を勝利に導こうとしたのかもしれない。


だが、ここまでだ。

ここからはもう、俺のチートではどうしようもない。


「ちょっと聞きたい事があるんだが」


アルダがそうつぶやくように言ったのは、俺が自己嫌悪に陥りかけていたまさにその時だ。


「なんでソーイチのチートには反動があるんだ?」

「何でって……あれだけの威力があるんだぞ、当然だろ!?」

「いやまあ、そう言われりゃそうだが……」


アルダが何を言いたいのかピンときた俺は、ソーイチ君にレール○ンを一発撃つように頼んだ。

最初は渋った彼だったが、俺の剣幕に押され一発だけだと念を押しながらやってくれた。


白い閃光が、空を駆ける。


ドクロプテラの一匹を撃ち落としたが、俺は別の部分を見て驚いていた。


「コインが宙にある時に撃ってんのに……しかも何でお前の右腕だけに(・・・・・)反動が来てるんだ!?」


結果分かったのは、ソーイチ君の腕に来ている反動が、チートの反動ではなく、チートの一部(・・・・・・)である事である。

つまり、アイズと同じく彼は要らん想像力を働かせ、反動までチートとして生み出してしまっていたのである。それを今すぐ直すのは無理だろうが、これなら訓練すれば無反動のレール○ンが撃てるようになるかもしれない。


しかしそんな事より、俺は一つ気になる事が出来たので、ソーイチ君に聞いてみる事にした。


「お前、そもそもどうやってコインを加速させてるんだ?」


確か原作では、磁力を使ってコインを加速させる事であの威力を引き出していたはずだ。しかし、こいつの動作を見ているとそんな複雑な処理をしているようには見えない……というか、レール○ンを撃つ瞬間まで、一切電気が漏れ出していないのである。

それとも文系をやっていた俺には分からない原理でぶっ放してくれているのだろうか。俺がそんな事を考えていると、


「いや、あのさ」


ソーイチ君は目をそらし、言いにくそうに答えた。


「そもそも、レール○ンってどうやって撃ち出すもんなんだ?」


お前も文系かい!?


レールガンに反動はないんじゃないのか、という感想を明日太さんよりいただきました。ありがとうございます。


しかし当方調べてみても真偽が判断できませんでした。少なくともインターネットでは、反動はないという人が大部分でしたが、反動が大きいと言っている人もいないわけではありません。


けれど既存のレールガンはともかく、空中に浮いているコインならば反動がないのではと思い始め、結局こういう形で伏線として回収する事にしました。


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