11. 説教は命がけ
「あー、動物愛護団体のチャラチャラした奴らー。今日はお前らに言いたい事があるぅぅぅ。よぉーく聞――」
「本家ですら最近やってねぇネタ異世界で試すなぁぁあぁああ!!」
俺の突っ込みが戦場全体に響き渡った。
「……おい、私の魔法をアホな事に使うのなら、協力しないぞ?」
「すまん、つい」
コリスに言われて俺はアイズからそれをひったくった。
俺のセリフで張り切ってくれるのはいいが、暴走は困る。
アイズからひったくったのはただの石のようなものだ。というか、元はただの石だ。
コリスがこれに魔法をかけてマイクのようなものにしてくれた。
大体、さっき俺が突っ込んだのだって、これを使って本家並みのマイクパフォーマンスをされたら、石が砕け散るんじゃないかと懸念したからであって、決してツッコミ魂に負けたからではない。ここ重要な。
「にゃんとらー愛護団体の諸君、俺から二三言いたい事があるので聞いて欲しい」
前線と魔物の間に立っていた奴らが一斉にこちらを向いた。
恐らく真面目に議論する相手が来たと思ったのだろうが、そのつもりは俺にはさらさらない。
説教相手に正論は意味がない。まずは、揺さぶりをかける。
「お前らのやってる事は無意味、どころか逆効果だ」
ざわつく愛護団体側。
俺がやる事なんて詐欺師と同じだ。とにかく一旦驚かせて動揺させ、思考を止める。
せっかくなので、反論が出る前に続きを言ってしまおう。
「お前らが介入したせいで、にゃんとらーが俺たちに圧勝してしまえばどうなると思う?」
静かな湖面に石を投じれば、波紋が広がる。当然、荒れた湖面よりもはるかにスムーズに。
「神様に、にゃんとらーが強力な魔物として認識されて、個体数が減らされるだろうな。最悪、二度と生み出されないかもしれない」
石が投じられた意味を、石が湖に沈むかのごとく、深く理解させる。
「それはお前たちにとっても不利益じゃないか?」
そこからは、爆発したかのように動物愛護団体内での議論が始まる。
しかし、ゆっくりと話し合って他の答えなんて見つけさせてやるもんか。
「だからって殺せって言うの!? 酷い!!」
真っ先に帰って来た反論は、幸いにも俺の想定内の言葉だった。むしろ、今から説明する内容の核心をついていて都合がいい。
「もし、殺さずににゃんとらーを倒す事が出来るとしたらどうだ?」
さらにざわつく彼ら。
「そんな事……出来るわけがない!」
「騙されるな。モン○ターボール使いの人でも、“祭り”の魔物を生け捕りには出来ないんだぞ!」
「モフーッ!!」
「どうすんのか言ってみなさいよ!?」
ざわつく彼らに、隣に立つアイズを示してやる。
「こいつのチートを使う」
一斉に愛護団体の視線にさらされるアイズ。しかし心なしか、その表情には余裕のようなものが見え隠れしている。
「何よそいつ? モン○ターボール使い?」
「違うな」
どちらかと言うと邪気眼使いだが、言わないでおいてやろう。
俺はアイズにマイク代わりの石を渡した。ちゃんと決めろよ、と言って背中を叩いてやったら、いつにもまして真剣な顔で静かにうなずくアイズ。
今までの彼とは違う。
今回の事で成長したのだろう。その姿は確実に、落ち着いた大人の雰囲気に近付いている。
その証拠に、アイズは敵意をあらわにする愛護団体の奴らを前にしてなお、堂々と胸を張り、臆する事なく口を開いた。
「俺のチートは、エター○ルフォースブ○ザードだ!!」
空気が死んだ