表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/77

1. 転生は命がけ

俺、山瀬恭一やませきょういちは異世界に転生した。

その過程やら何やらが知りたい諸君は、前世で俺が愛読していた「小説家になろう」に上がっているケータイ小説でも読んでみてくれ。適当に人気がある転生物ならどれでもいい。俺のは大体テンプレだから。


細かいとこははしょる。


テンプレでは『死ぬ→神様登場→チートつき転生→俺の時代キター』というのが一般的な流れである。

俺のも例にもれず、大体そんな感じだ。

大体、というのはその最後の部分、起承転結で言う『結』の部分が大幅に違う事ぐらいであろう。


――昔の人は言った。“終わりよければ全てよし”と。


俺は初めてそう言った人にささやかながら賛辞を贈りたい。何故なら、それは裏を返せば“終わりが駄目じゃ他がどうでも駄目だ”という事をも、暗に示してくれているからだ。


はっきりと、俺は「小説家になろう」読者諸君に言いたいのだが、チートなんて言うほどいいものじゃない。

何せ今俺はそのチートのせいで、


「ゴァァアァアアアア!!」


ドラゴンに追われている。

こいつもテンプレ乙なやつで、大きさ的には二十メートルぐらいだろう。正直もうどうでもいい。

先ほどから大体二十分ほど追いかけられ続けているのだが、どう頑張っても逃げ切れなさそうだ。


「うしゃぁぁあああああ!!」

「ホァアアァアア!!」

「ゴガァアアァア!!」


……だって、十頭ぐらいいるからね?

誰が一頭つったよ?


あとどうでもいいけど叫び声統一しろや。


こいつらはテンプレを踏襲していて、クソ強くて凶暴で火を吐く。

普通の人間じゃ相手が一頭だとしても勝てねぇよ。


そうこうしているうちに、奴らは俺を取り囲み、そのうち一頭が足が止まった俺に火を吐いた。

火だるまになって倒れる俺。

ああ、死ぬなと思う。


「つっても、今日だけで二十回・・・くらい(・・・)死んでるが、な」


そう言った俺は、既にドラゴンの背後に回っている。どうしてって、これが俺の得たチートだからだ。


『リスタート』と呼ばれている。

……呼んでいる、じゃないところが重要だ。俺がそう呼んでたらただの中二だからな。


効果は簡単で、『死んだら任意の場所からやり直せる』というもの。

つまるところ、俺の得たチートとは不死身であるという、ただそれだけのものだ。


そう思っている間にも、こちらに気づいたドラゴンの爪で体を貫かれ絶命する。

不死身であっても、痛いものは痛い。それに、身体能力は常人クラスなので、正直死なないだけで勝ちようがない。

そもそも、今回受けた依頼の目的はドラゴンの討伐などではない。ドラゴンの卵の回収だ。


つまり俺はただのおとりなのである。


「キョーイチ、卵は無事回収したぞ」


復活した俺の頭に女の声が直接響く。……これもこれでテンプレな魔法だな、と思いながら、俺は返事をした。


「それじゃ、適当にぶっ放せ」

「了解」


言った直後、空からいくつもの雷が落ち、十頭ぐらいいたドラゴンに直撃した。

あ、あと俺にも。


「あっんのババア面倒だからって俺ごと範囲攻撃してんじゃねぇぇぇええええええ!!!」


俺はそんな事を叫びながら再び絶命した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ