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第2話

かなり時間が空いてすみませんでした><


第2話です


「なんでお前が俺のケー番知ってるんだ?」

 俺は不機嫌この上なくそう言い放った。

 不意に鳴り響いた携帯電話を手に取り、電話に出ると、数日前に出会った自称吸血鬼からだった。いきなりの事で俺は若干動揺してしまった。公衆電話からの電話は西野入からしか掛かった事がなかったからだ。

 美咲には、「友達から電話。ちょっと話してくるわ」と言って、話の内容を美咲には聞かれたくないため、ベランダに出た。別に卑しい話をしようとか、下ネタ満載な話になるからという訳ではない。単純に美咲に聞かれたくないだけだ。俺は美咲に痛い奴と知り合いだとは思われたくない。

 部屋のベランダは毎日の様に美咲が掃除しているため、実家に比べて断絶に綺麗だ。ぺたん、とベランダに尻を付けて座っても服が汚れないくらいに綺麗に掃除しているらしい。

『それはヒ・ミ・ツ。って言った方が男性は落としやすいのかな?』

 俺の問いにキモい口調で答える自称吸血鬼。いちいち気に障る女だ。しかもこいつ最初に俺の事をなんて呼んだ?恵ちゃんだと?その呼び方を許したのは西野入ただ一人だけだ。美咲にさえ許してない。まあ、あいつは口が裂けて、顎がぐらついたくらいでは絶対言う訳がない呼び名だか。

「知らん。ちなみに今ので吐きそうになった。どうしてくれんだ。死んで詫びろ」

 猫撫で声と故意に色っぽくした声は嫌いなんだ。西野入以外の奴のな。

『相変わらず冷たいなぁ…。泣いちゃうぞ?ぐすん…』

「やばい、またも吐きそうになった。いますぐ死ね。そして詫びろ」

『あのね、さすがにそんなに冷たいと傷付いちゃうよ…?心に大ダメージだよぅ…』

「はっ!知るか。で、挨拶はここまでで、何の用だ?」

 さすがに本当に泣きそうになっていたので、俺は冷たく話題を切り合えあげた。やさしいなぁ、俺。

『ぐすっ…あ、あのね…ぐすっ……えっとね……』

 手遅れだった。まぁ、なんだ。ひとまず、「ざまぁ」と言ってみた。

『え?なんで感謝されたの?』

「してねぇよ!?」

 それは「あざまぁ」だろがっ!あぁ、そう聞こえたのか。前向きな奴だなこいつ。

『恵ちゃんてあれかな?サディストなの?』

「あ〜、かもな」

 テキトーに答える

「で、用件は何なんだ?いい加減話さないと、金勿体ないぞ。軽く八回くらい金を入れる音が聞こえるぞ」

 くそっ、自称吸血鬼のお財布事情を心配してしまった。何やってんだか…。あと、こいつからけなされたな。さっき。

『あ、うん。普通の十円玉はあと一つしかなかったんだ。話が長引くと、百円玉使うところだったよ』

 またも金を入れる音がした。という事は次は百円玉を使うのか。ていうか、『普通の』て、偽物もあるのか?まあ、それはさておき、

「で?用件は何なんだ?全く意味のない話をすると切るぞ?」

 早く話を終わらせよう。

『ごめんなさい…。でもでも、ちょ〜っと話が長くなりそうだから、今から言うよりも直接話さないかな?』

「嫌だよ」

『……えっと、場所は駅ま──』

プツン。ツーッ、ツーッ、ツーッ

 切れた。と思った瞬間にまた携帯が鳴り出した。当然公衆電話から。ボタン打つの速いな。

「ざまぁ」

 電話に出てからの第一声。

『もぅ、酷いなぁ…。で、待ち合わせ場所は、東駅前の東◯の近くの公園ね』

「はいはい、んじゃ切るぞ」

 まったく、『嫌だ』て言ったのに無視しやがって。わがままな奴だ。……いや、わがままなのは俺か。

 俺は電源ボタンに指を掛けた。

『待って待って待って待って待って待ちなさーい!!』

「何だゴミ」

『ひどっ!私、百円玉使って電話掛けたんだよ?少しは無駄話しようよ!』

「………」

 俺は無言で電源ボタンを押して通話を切った。

「やっぱりあいつは嫌いだ。まじでウザい」

 そう呟いて俺は部屋に入った。

「お待たせ」

 ベランダから帰ってきた俺を待ち受けていたのは、明らかに不機嫌そうな顔でこっちを睨みつけている美咲。

「遅い。何十分待たせるのよ」

「七分くらい?まあ、眠気もすっかり覚めちまったし、どっか行くか?」

「えー。どこ行くのよ。」

「お前が言ってたんだろ!?行く気のなさにびっくりだわ!」

「じゃあ、西野入さんのとこ行く?」

「明後日退院するのに?」

「恵が女の子と楽しそうにお話してた、て報告しなきゃ」

「なん……っ!」

 聞かれてただって?いや、あの状況を楽しそうて何だよ。俺、めっちゃ不機嫌だった気がしたが…。

「え?図星?恵、西野入さんて人がいながら、浮気でもしたって言うの?」

「いや、違う!断じてあんなゴミみたいな奴に俺が恋心を抱くなんてありえない!理論的に、生理的に、常識的にありえない!俺は西野入一筋だ!西野入が大好きなんだ!!」

「うわー…。これはドン引きだわ…」

 美咲にドン引きされた。いや、もし俺も逆の立場ならドン引きするだろう。そう思うとだんだん恥ずかしくなってきた。

「とりあえず、西野入さんのとこ行かない?」

「はいはい、わかったよ。準備するから少し待て」

「じゃ、私は連絡するね」

 洗面所へ向かい、ふと3日前の出来事を思い出した。自称吸血鬼と出会って、何かが起きてからの記憶がない。その何かが何だったのかも思い出す事が出来ない。気付いたら寝室のベッドで寝ていて、しかも時計のアラームは午前5時を知らせようと鳴り響いていた。俺に何が起きたのだろうか。俺は5分程呆然としていたが、従妹が「うるさい。死ね」と言われ我に返ったのだった。

 それからはあまり気にしせず過ごしていたが、先程の電話で一気に眠気が覚め、今に至る。「お従兄ちゃん、西野入さんに今から行くって連絡したよ」

「あ?」

 今この従妹は俺をどう呼んだ?お従兄ちゃん、だと?気持ち悪。

「ごめん。今の忘れて。昔のが出ちゃっただけだから。恵の事はもうお従兄ちゃん呼ばわりしないから気にしないで」

「あ、ああ、そうかい」

 あからさまにそこまで否定されると実際結構傷付くのだが…。しかし、今の美咲には決してありえない発音であった訳だから、納得はした。美咲に『お従兄ちゃん』は似合わない。

「西野入に会うなら、シャレた格好しなくちゃな」

 顔を洗い、しゃきっとした俺は自室へ戻り、部屋着から少しチャラけた服に着替えた。白いドクロを基調とした黒い服だ。クローゼットからお気に入りのコートを引っ張り出した。季節は春だと言うのに、今日の最高気温は12℃にも及ばないらしい。外は今、北風が少しだけ吹いていて寒そうだ。

 コートを羽織り、いざ出発と意気込み部屋を出た。

「恵、準備出来た?」

 部屋を出ると、すぐ近くで美咲が待っていた。

「おう。んじゃ行くか」


・・・・・・・・・・・


 さて、ここで西野入 晶希(しょうき)について少しだけ話して置こう。

 俺にとって彼女は幼なじみであり、恋人でもある。告白は俺からした。今考えると、あんな告白のしかたはありえない。ドン引きであったはずだ。俺みたいな奴からは決して聞くことはないだろうもの凄く青臭い言葉だった。それでも彼女はその言葉を受け入れてくれ、「ありがとう。恵ちゃんからそんな事言ってくれるなんて嬉しいよ」と返してくれた。

 そして、同じ高校に彼女と受験し、合格した。もちろん彼女も。

 彼女が入院したのはこちらへ引っ越す前の日だ。彼女は肺炎を患った。病院に行く4日前から具合が悪く、少し熱があった。ただの風邪だと思っていたが、一向に治まる気配がなく、心配した両親が病院へ連れて行ったら案の定である。

 現在、俺は『西野入 晶希』という表札の病室の前にある長椅子に座っている。病室のドアをノックしたのだが、返事がなかったので西野入は寝ているか、どこかへ行っているらしい。なので、美咲を待つ事にした。美咲は途中で友達と会ったらしく、「先に行ってて」とのことだ。

「すまないが、ちょっと時間を頂いてもよろしいかね?」

 突然声を掛けられた。日本ではあまり見かけない、英国紳士と言うのだろうか、黒いスーツ姿の外国人に流暢な日本語で話してきた。

「はい。なんでしょうか?」

 条件反射だろうか、返事を返してしまった。仕方ないから長椅子から立ち上がり、英国紳士風の男に目線を合わせ──られなかった。背が高いな。190?は越えているだろう。どちらにしろ見上げる形になった。

「突然すまないね。『朱耶維莉也』という方をご存知かな?こういう子なのだが…」

「いえ、見た事のないですね」

 写真を見せてきたが、見たことのない子だった。中学生だろうか。見た目は14〜15歳くらいで、とても奇抜なファッションをしている。ヴィジュアル系男子

「そうでしたか。いえ、おかしな事を聞いてしまって申し訳ない。最近こちらへ越してきた者で、院内も良く知らないので迷ってしまってね」

「お見舞いですか」

「いかにも。私の親戚が入院していると聞いたもので、見舞いに来たのだが、部屋の番号を忘れてしまって…」

「そうだったのですか。力になれず、申し訳ありませんでした」

「いや、こちらも貴方の大切な時間を浪費させてすまなかったね。では」

 そう言って英国紳士風の男はその場から去っていった。あの人は何だったのだろうか。何がしたかったのだろうか。部屋を聞くなら、普通は受付カウンターとか、職員に聞くだろう。ていうか、写真持ち歩くってドラマとかアニメだけの話じゃないのか。

「まあ、外国人だから仕方ないか」

「何が仕方ないの?というか、えいっ」

「…っ!」

 突然、左頬に冷たい刺激を与えられ、びっくりした。心臓に悪い。

 後ろを振り向くと、そこには西野入がいた。今は入院している人全員が着用している白いパジャマを着ている。見た目が実年齢より幼く見えるのは背丈の低さと子供の様な幼い顔つきのせいだろう。髪は黒くさらさらしていて、その髪の長さは背中に届きそうな勢いだ。

「あはははは!!恵ちゃん面白ーい。はい、恵ちゃんの大好きなミルクティー(COLD)」

「春真っ盛りの肌寒いこんな時期に冷たい物を渡すとは、相変わらずだな。久しぶり西野入」「久しぶりだね恵ちゃん。一週間ぶりくらい?」

「だな。で、今までどこ行ってたんだよ」

「それは、美咲ちゃんから『恵ちゃんが来る』て連絡来たから、飲み物買いに行ってたの。思ったより早く来ててびっくりしたけど、美咲ちゃんはどこにいるの?温かいミルクセーキがあるんだけど…」

「美咲は来る途中で友達と会って先に行っててとの事だから、また後で来るらしい。」

「そか。じゃあ、私の病室に入ろっか」

「そうだな」

「そういえば、恵ちゃんてさ、吸血鬼て信じる?」

 病室のドアノブに手を掛けていた手を止めて、西野入は言った。

 吸血鬼って最近ブームなのか?

「私ね、恵ちゃんが来る少し前に吸血鬼に会ったんだ」

「え?」

「なんか、男の子を探してる英国紳士風な人だったんだけど、何だったんだろうね」


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