棒高跳び
今まで跳び超えられたはずのバーに 昨日つまづいた。
きっと運が悪かった
そう言い訳して 今日もう一度挑んだけど
今日も体が引っかかって、バーとともにむなしく落ちた。
きっと、きっと運が……
どんなに一生懸命助走しても、
どんなに強く地面を蹴り上げても、
何度やっても 目の前でバーが落ちていく。
マットに打ち付けられた体の痛みが、
心の奥まで侵食する。
自分の体が自分で思い通りにならない腹立たしさ。
握り締めた拳で、何度も地面を殴りつける。
視線は鋭い光線を放ち、目に映るものを片端から焼ききっていく。
下手になった……そう認めた瞬間、敗者になるような気がして、
もうこれ以上自信を潰されたくなくて――挑むのをやめた。
時間が経てば、また……
ふと隣をみると、
自分より低い高さのバーに必死に挑んでいるヤツがいた。
髪は乱れて、衣服は汗でよれよれ、
それでも諦めずにバーに向かって走っていく。
走って、落ちて、走って、落ちて。
もう何度失敗しているんだろう。
でもヤツの表情に"失望"の文字はなかった。
……美しかった。
輝いていて、眩しすぎて、
自分はヤツの光に飲み込まれそうだった。
アイツは、諦めない。
自分を、諦めない。
ヤツよりも早く跳んでやろう
勝手にそう決めてまた走り出す。