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うたたね
ただやみくもに走ってた。
前しか見ないで、足元すら見ないで、
何も考えずに走ってた。
そしたら躓いた。
まるでつぶれたかえるみたいに。
アジの開きの干物みたいに。
何に躓いたのだろう……?
ふと気がつくと、いつの間にか自分は闇の中にとりこまれ、
自分の手元すら照らしてくれる光はない。
――ひとりぼっち。
突然、孤独に襲いかかられ、
闇の中で私はもがいた。
追いすがる手を払いのけても、
闇の中から無数の手が伸びてきて、
私の体をがんじがらめにしようとする。
――だれか……、
――だれか……、
――だれか明かりを……!!
全身がはり裂けるような悲鳴で助けをよんだとき、
パッと目の前が明るくなって、
私は自分が今まで転寝していたことに気がついた。