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浄化
一昨日の帰り道 灰まみれの心を抱えていた。
くすんだ色の塵と一緒に
私の身体の半分を埋め尽くした。
玄関の戸を開けるとき
道端の石を蹴飛ばした。
昨日の帰り道
煤まみれの心を抱えていた。
灰と混ざり合ったその物質は
黒とも茶とも見分けのつかない色だった。
玄関の戸を開けるとき
道端の瓦礫を蹴飛ばした。
前の家の窓が 鈍い音を立てて割れた。
泥だらけの心が 私の中を流れている。
今にも流れ込もうとはけ口を求め
灰や煤や塵、あくたを飲み込んで
全身をほとばしっている。
――外に出ると、雪だった。
一面真っ白な空間が
音もなく一瞬で私を飲み込んだ。
やわらかい感触。
無音の――真空の世界。
私のなかの汚いものは
いつの間にか雪が持ち去っていた。
身体が、軽くなっていた。
玄関の戸を開ける前に
雪をかぶったパンジーの写真を撮った。