OOPARTS
「これはなんだ」
朝食もまだ並んでいないリビングに響く低い男の声。その声に台所でフライパンを操る男は
ちらっと振り向いてまたすぐに顔を背けた。
「さあ、知らない」
騒動の現況はテーブルに何の脈絡もなく現れた一つの小さな花瓶。ご丁寧に一輪の生花まで活けられている。
昨日の就寝時にはいなかった言葉を発さない侵入者にこの部屋で生活を共にする
男4人の興味は注がれる一方。
「なんでまたよりによってヒマワリの花なんだ」
「それはあれでし、この部屋には明るい女成分が足りませんよ、的な意味じゃない?」
「タケル先生!ヒマワリイコール明るい女、の意味がわかりません!」
「まあイメージとしては連想できるけど」
よく言えば生真面目、悪く言えば堅物な小林憲吾、家事が一切ダメな他3人に代わって
その手の事を一手に引き受ける中條猛、軽薄な面とややドライな性格で今時の若者を
体現しているようだ、と評された磯崎信光、のんびりマイペースで口数の少ない田倉陽太。
職業もプログラマー、ゲームセンター店員、大学生兼読者モデル、美大生とてんでバラバラ、
共通点は性別が男である事ぐらい。そんな4人の同居生活以上に奇妙な出来事が
この部屋で起こっていた。
「で、どうするのこれ」
「このまま飾っておきたいな。なんかかわいいよ」
「誰が持ち込んだのかも分からない物を部屋に放置するのか?」
「うわっ、憲吾さんの捨て魔がもう発動しそうだっ」
文字通りヒマワリ娘を思わせる一輪の花によって男4人の朝食にはわずかな変化が出た。
いつもは憲吾や陽太辺りがネックになってどこか淡々とした風景となってしまう
日常の1ページ。誰がどうやって、何の目的で持ち込んだのか。その辺を突っ込めば
キリがない。堅固に至ってはほとんど同様に近い感情が見え隠れする始末
「というわけで、あなたはめでたくここの5人目の家族に認定されました~」
憲吾が仕事に、陽太が学校に向かった後、その5人目の家族は猛によって改めて正式な歓迎を受けた。
花瓶には水が入れられ、それが太陽に照らされ部屋に光を満たす。居場所は相変わらずテーブルの上。
もう個室ができたよ、とおちゃらけて猛が言った。
「キレイじゃん」
「でしょでしょ」
信光も興味を持ちそれを覗き込む。
「猛じゃないけど、なんかホントに女の子が来たみたいだ。急に妹が出来ましたって感じ」
「変な4兄弟だなー」
「こんなお兄ちゃんですが、これからもよろしくお願いしますってか?」
「そっ。俺たちに初の女の兄弟ができた事を祝して、ってね」
「俺1日で一人っ子から兄弟増えちゃった」
「俺も男兄弟しかいないのに」
男4人のどこか味気ない生活に加えられた輝かしささえ放つスパイス。
それがこの先どんな変化をもたらすのかは誰にも分からない。




