第三話:コロコロ
ラッキーが来てから僕は変わった。
正直、辞めようかすら思っていた仕事も、企画書がいくつかとおり部長に褒められてやる気がでてきたし、プライベートでも前から気になっていた経理の田中さんと二人で食事に行くことも出来て、今は良い友達関係を築けている。
そして、何かいいことがある度にラッキーにプレゼントを買ってきて、日に日にラッキーの私物が増えていった。
そんなこんなで、三カ月が過ぎようとしていたある日の日曜、ラッキーと近くの公園に出かけた。
この公園は一面芝生で真ん中に大きな木が生えていて公園というよりは広場に近い感じがする。
公園に着くと、家からもってきた野球ボールぐらいのゴムボールを僕が公園の端から思いっきり投げてラッキーが取りに走る、ただそれだけのことを何回も繰り返す。
でもそれが楽しくてしょうがなかっ。
しかし突然、ラッキーが戻って来なくなった。 心配になった僕は公園の真ん中、大きな木があるところまで行ってみる。
すると十メートルぐらい先にボールをくわえているラッキーがいて、小学校高学年くらいの女の子に泣きながら抱きしめられている。 ラッキーの気まずそうな顔が見えた。
僕は全てを察した。 来るべき時が来たのだと…‥
ラッキーは僕の姿を見つけると女の子の手を振りほどいて、ボールをくわえたまま駆け寄って来る。
僕はとっさに木の裏に隠れて、大きく二回深呼吸をした。
「来るな!」
僕は叫んだ。 一瞬、静寂が流れる。
ラッキーは歩みを止め、くわえていたボールを落とした。 そして、その場に立ち尽くす。
ラッキーとの距離はおよそ一メートルから二メートル程度だ。
ボールはコロコロ転がってちょうど僕とラッキーの間ぐらいで落ち着いた。