第二話:だから吠えるなって
ワンと甲高い声を上げて立ち上がり僕が手に持っていたコンビニのビニール袋に興味津々だ。
「なんだお前お腹がすいているのか?」
ワンと返事をする。
「そうかちょっと待ってろよ」
僕はビニール袋から弁当を取り出して半分わけてやった。
それをペロリとたいらげてワンと吠える。 おそらくもっとくれと言っているのだろう。
僕は渋々残り半分もくれてやる事にした。
腹が満たされたのか今度は僕に飛びついて来た。 多分、遊んでほしいのだろう。
しかし、こちらは残業までしてきたうえに部長に怒られて心身ともにボロボロだ。
だが、そんな思いを知るはずもなく必死に飛びついてくる。
よく見ると赤い首輪にはラッキーと書かれている。
「もしかしてお前の名前はラッキーって言うのか?」
ワンと返事をしながら飛びついてくる。
「じゃあ、お前は主人のところに戻らないと駄目じゃないか」
急におとなしくなるラッキーその背中からは哀愁が感じられる。
「何だ? けんかでもしたか?」
僕の問いに無言のラッキー どうやら図星のようだ。
「謝るなら早い方がいいぞ、そういうのは時間が経てば経つほど言い出しにくくなるからな」
クゥ〜ンと鳴いて頭を垂れるラッキー 少し言い過ぎたかも知れないが、ここは心を鬼にして対処するべきだ。
じゃあなと言って階段を昇り左に曲がって、手前から二番目のドアの鍵穴に鍵を差し込んで回して引き抜く。
ドアノブに手をかけて回し、子供一人が通れるくらい開けた時、階段から疾風怒濤の勢いでこちらに向かってくるものがいる。
そいつは階段を昇りきり、九十度ターンを華麗に決めて僕に迫ってくる。
僕は襲われるのではないかと思い、身を固めたがそいつは足元を抜けて行き、ドアの隙間えと消えていった。
恐る恐る中を覗いて見ると、そこには尻尾を左右にフリフリさせるラッキーの姿があった。
「あのな、ラッキー ここは動物を飼ったりしたら、いけないんだよ。 意味解るか?」
ワンと返事をするラッキー
「バカ だから吠えるなって」
そう言いながらドアを閉める僕、どうやら鬼になりきれそうにない。
ラッキーはバゥと小さく返事をした。
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