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第1章◇高校入学と導入<1>

投稿の目安は何文字くらいでしょうか?


後半読みづらいですが勘弁願います。

「起きろーいお兄ちゃーん」

「ばぶぁぁぁァぁ!!?」

早朝の日本に響きわたる轟音と絶叫。これが流日玄人の日常だった。

「いや、そんな日常を打開したくて、目覚まし買ったんじゃなかったの俺!!?」

「チッチッ、甘いぜ兄ちゃん。電池は昨日の内に抜き取ったぜ!」

「目覚ましと俺に何の恨みがあるんだよ!?」

…美しき兄妹愛である。まぁもっとも、彼女、笹野楓は、血が繋がらない所か義妹ですらないのだが。上の中以上はある可愛いらしさに、短めに揃えられた茶髪が印象的。流日とは似ても似つかない。

「こいつの親と俺の親が、小学校時代からの親友だったからなー。両親が死んで俺を引き取る時にも、義父が『アイツの名字は絶やさん!』とか言って、現在に至ると」

「えと、台詞があからさまに説明口調だよね?」

「作者の描写力が無いからだ」

…スミマセン。

私の描写力はさておき、一階の居間に向かう二人。築四十年の木造家屋、その階段は軋んだ音をたてた。

「でも、ダメだよあの程度で音をあげちゃ。ギャルゲとかじゃお決まりの展開なんだから」

と、楓が言えば

「あの攻撃はホントに洒落にならんって。下手したらそのまま二度寝(無期限)だぞ…」と返す流日。仲の良い兄妹の標本に使えそうだ。

が。

「それにギャルゲ?安心しろ、妹キャラは攻略対象外だ。お前に手ぇ出す訳ねーだろ」

「………」

「?」

何も言わない妹分(攻略対象外)を怪訝に思う流日。結構おしゃべり好きな奴だし、話を振られて何も返さないはずが…

そう思い振り返ると。

泣いていた。


「ッはぁ!!?」

笹野楓。12月3日生まれの15歳。AB型。好きな食べ物、甘い物全般。嫌いな食べ物、酢豚。弱点−

−感情の起伏が激しい。

そしてコイツ、流日玄人。

「わぁー!! え、何泣いてんのお前!!?(流日、自らの台詞を精査する。)あ、そっか!女の子に攻撃力がどうの言うのは失礼か!」

6月25日生まれの15歳。A型。好きな食べ物、焼肉。嫌いな食べ物、特になし。弱点−

−壮絶に鈍い。人類が滅ぶレベルの。最強のラブコメ主人公体質とも言える。

案の定、

「そこじゃねぇよ!お兄ちゃんの馬鹿ぁー!!」

楓の右フックが炸裂。

「ごぶはァ!!?」

吹っ飛ぶ流日。グシャッ!!という音を奏でながら、彼は朝の食卓に突入。

(てか、第1章から暴力受けすぎだろ俺!?こんなのが日常って、よく15年も生きられたなぁおい!)

まだ終わりではない。

「な…なんだと…!?そんなん俺の身がもたブッ!」

言いきる前に顔面に拳を叩き込まれた。食卓(本来家族団欒と同義のはず)を抜け、流日は再び階段の下まで飛ばされる。

発生源は笹野宗乱。

楓の父であり、流日玄人の養父でもある。

彼は言う。

「テメこのヤロ家の娘何泣かしとんじゃコラァぁぁぁ!!!大丈夫かい楓ちゃん。そこの野獣系ゲス兄貴に何か乱暴でもされたのかい…?」

40過ぎムキムキオヤジの猫なで声である。話しかけられた方はたまった物ではない。

「だ…大丈夫だよ、お父さん。何も乱暴なんてされてないから…」

若干引きぎみに答える娘。それでいいのかお父さん。あと先程から乱暴されているのは兄貴の方。

この娘に甘過ぎ息子に厳し過ぎる父親に反抗の一つでもしてやりたい流日と楓だったが、流日が反抗した場合リアルに庭の肥やしにされ、楓が反抗した場合真剣に自殺を検討してしまう恐れがあるため、目下保留のままである。

「よーし、じゃあ楓ちゃんと他一名はとっとと飯食って学校行ってこい!俺は会社に行ってくるから」

「仮にも親友の忘れ形見を他一名扱いかよ!?あとテメェは寿司屋の板前じゃねぇか見栄張ってんじゃねーよコラ!!」


多少(?)暴力が含まれていようが、家族同士の会話は楽しげだ。


それは、私達の住む世界とは一線を画し、一般法則に囚われないこの世界においても、当然の事項なのだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


魔法界。

一般法則の支配する現実世界と違い、魔法が支配するパラレルワールド。


魔法界と現実世界は、基本的に全てが同じだ。魔法界にも現実世界にも地球があるし、魔法界にも現実世界にも日本があるし、魔法界にも現実世界にも東京都があるし、魔法界にも現実世界にも、『ほぼ』同じ人間が存在する。

ほぼ、と表記したのは、魔法界と現実世界、二つの世界に一人ずつ存在する『同一人物』の間に、ある1つの違いがあるからだ。

それが魔法。

魔法界の住人が、身体能力の他に1人に1つずつ所持している、特殊な才能だ。

「炎を出す」「相手の脳を支配する」「筋力を強化する」などタイプは様々。『似た魔法はあれど同じ魔法は無い』―これは魔法界では万国共通の理念で、魔法はその人の個性そのものと言える。

しかしそうは言っても、学校、会社など複雑化した現代の社会では、個人個人を比べてより良い人材を確保せねばならない。そのため魔法界では、魔法の特異性、実用性、応用性、そして魔法を作動させるのに重要な『原料』、魔力を、AからEの五段階で評価する方式がとられている。

魔法自体の評価は−非常に稀なケースを除いて−変化する事はないが、魔力は、基本的に体力と同じく、魔法を使いこめば『鍛え』られ、逆に長年使わなければ『鈍って』しまう。

さて、魔法界の住人の人生を左右する2つの要素、「魔法」と「魔力」についてはお分かり頂けたと思うが、実は、高校進学者にのみ与えられる「もう1つの要素」がある。

「魔道具」だ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


朝食を食べ終え、流日と楓は通学路を歩いていた。

彼らが通うことになる真楼学園は(ちなみに、流日の志望校に楓が完全に合わせてきた。試しに男子校を志望校にいれたら、本当に受けかねなかったのでやめた)、近隣ではそこそこの進学校として有名である。広めの校舎とレベルの高い食堂が売りで、全校生徒数は800人ほど。剣道部が強豪で全国大会出場経験あり−

「−とまぁ、結構良い高校みたいだよ、お兄ちゃん。」

「ふぅん。良く知ってんなぁ、お前…」

「自分の通う高校なんだから、気になるのは当然でしょ? エヘヘ、汚いコネとかいっぱい使っちゃったよっ!」

「………」

聞けば何でも答えてくれる妹だったが、その交友関係に関しては尋ねる気にならなかった。

「…まぁ俺は、魔道具さえ手に入りゃいいんだけど」

「夢が無いなぁ、お兄ちゃんは。高校行けば友達増えるんだよ?」

「うーん…。まぁ、友情も大事だけどさぁ、どうせなら彼女とか」

「作ったら殺すからね?」

「さっきから台詞の端々が怖えよ!! 何、俺は彼女を作ったら死ぬ体なのか!!?」

「? 何を勘違いしてんの、お兄ちゃん? 私がお兄ちゃんを手にかける訳ないじゃん。殺すのは彼女さんのほうだよ」

「何も安心できない!」

「お兄ちゃんは半殺し×2で許してあげる」

「死んでるじゃん!」

…この妹は、どうも兄の男女関係に厳し過ぎる気がする。怖い女に騙されないよう気を使ってるのだろうか。

(…俺のことばっか気にしてて、自分自身の恋はちゃんと出来てんのかなぁ)

なんだか不安になってきた流日は、楓に聞いてみた。

「なぁ楓、お前好きな人とかいんのか?」

「えっ!? どっどどどうしたのいきなりそんな!!?」

「いや、ちょっと心配になって」

「しっ…心配…?」

急に顔が真っ赤になる楓。

(そっそれはつまり、私が他の男に取られないか心配とか、そういう事ですかぁー!!?)

「……好きな人なら、いるよ…」

やっばりいたのか。申し訳なさでいっぱいになる流日。

「…いつも、私のそばにいてくれて、」

ご近所さんなのか。

「…いつから好きなんだ?」

「ッ! わ、私、お兄ちゃんが、私の家に来た時から…す、すすす好きなの!!」

なんと。

そんな昔から、自分は妹の恋路を邪魔していたのか。

うわー何だよそれもう死んだほうがいーじゃんどこのゴミ兄貴だよー、と自己嫌悪に陥った流日は、

「楓!」

「はっ、はい!」

「本当にスマン!」

「!(フ、フラレた…)」

「もう俺の事なんてほっといて、ソイツと素敵な恋をしろ!」

「…………へ?」

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