7/98
007⚫️相談はデザートのあとで
「シモフリのボイル、特製ジュレ添えです。エイミーさんには濃厚なソースを。お嬢さんの分は脂を落として細かく叩いてあります。ゆっくり噛んでください。」
差し出された皿は同じ食材でありながら、一方はエイミーを唸らせる美食、
もう一方は衰弱した胃を労わる滋養の一品だった。
一口ごとに温かさが広がり、少女の凍えていた心が静かに解けていく。
「家と工場が・・・知らない人たちに。事故のあと、すぐに来たの。カギも変えられて・・・友だちも頼れないし、親戚もいないし・・・どこへ行ったらいいのかわからなくて。」
震える声が、静かなリビングに落ちる。
「なるほどな。火事場泥棒よりタチが悪いぜ。なあ、エイミー、どうなってる?」
エイミーの指先はすでに端末の上で踊っていた。
「ビンゴ。真っ黒ね。事故の翌日に資産譲渡の書類が受理されてる。受取人はヘッジ・アセット・ホールディングス。最近セキュリティ・コアがマークしてるフロント企業よ。法的にはギリギリ。手強いわ。」
ジンは最後のデザートをそっと置き、少女に向き直る。
「尾石さん・・・美佐世さんでしたね。ご両親は何を作っておられたか、ご存じですか?」
「ううん・・・むずかしくて、よくわからなかったの。」
外は依然として寒空だったが、
部屋の中の三人は、すでに熱く燃え始めていた。




