enjoyその4
管理人はレストラン棟を出ると、左側に並ぶ建物の方へ歩き出した。
僕たちは荷物を持ってそのあとをついていく。
宿泊棟は三つ並んでいた。
どれも同じような作りで、木でできた高床式の建物だ。
「こちらです」
管理人がそのうちの一棟の前で立ち止まった。
扉を開ける。
「どうぞ」
僕たちは中に入った。
「おお」
最初に声を上げたのは大樹だった。
部屋は思っていたよりずっと広かった。
木の床に、天井の高い空間。
ベッドが六つ並んでいる。
どこかバリ島のロッジのような雰囲気だった。
「いいじゃんここ」
ウッチーがのんびり言う。
部屋の奥には大きなガラス扉があり、その向こうにテラスが見えた。
大志が真っ先にそっちへ走っていく。
ガラス戸を開ける。
「うわっ」
湖が目の前に広がった。
遮るものが何もない。
ただ静かな湖と空が広がっている。
「これはやばいな」
大樹が笑いながら言う。
「景色最高じゃん」
僕たちもテラスに出た。
湖の風が静かに吹いている。
遠くに小さく陸が見えるだけで、他には何もない。
ウッチーが柵にもたれながら言う。
「めちゃくちゃ静かだな」
「ほんとだな」
こばもうなずく。
「さっきまで観光客だらけだったのに」
そのとき、部屋の中から大志の声が聞こえた。
「おい!」
大きな声を出す。
「見ろよこれ!」
僕たちが振り向く。すると冷蔵庫を開けた大志が子供のようにはしゃいでいた。
冷蔵庫の中には――
ビールがぎっしり入っていた。
「最高じゃん!」
大樹が笑う。
「南米最後の夜はこれだな」
ウッチーものんびり言う。
「もう飲む?」
「まだ早いだろ」
こばが笑った。
そのとき、入口の方から管理人の声が聞こえた。
「夕食は19時です」
僕たちは振り向く。
管理人は静かに立っていた。
部屋の時計を確認すると15時半だった。早く港を出ていたことからここまで2時間かからないくらいでついたのだと僕は思った。
「レストランで用意しています」
「わかりました」
こばが答える。
管理人は小さくうなずいた。
「enjoy」
そう言って静かに部屋を出ていった。




