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トトラ  ~方舟読んだ方おすすめ~ ~ホラー好きな方おすすめ~  作者: るらべー


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7/10

enjoyその3

ホテルの中に入ると、木のいい匂いがした。


木の床が、足を踏み出すたびに小さくきしむ。


入口のすぐ横に、小さなカウンターのような机が置かれていた。


その上に、一冊のノートがある。


管理人はそのノートを軽く押さえながら言った。


「こちらに名前を書いてください」


「宿泊名簿です」


僕たちは机の周りに集まった。


こばが最初にペンを取る。


「じゃあ俺から書くわ」


さらさらと名前を書く。


次に大樹。


ウッチーが言う。


「なんで海外って紙に書かせるんだろうな」


「知らね」


大志がペンを取りながら言う。


海外ではチェックインをするとほとんど必ずパスポート番号と名前,生年月日を書かされる。


最後に僕がペンを取った。


世一。


自分の名前を書きながら、ふとページを見た。


このページだけじゃない。


前のページにも、名前がいくつも並んでいる。


思っていたより、宿泊客は多いみたいだった。


こんな湖の奥にあるホテルなのに。


「結構人来てるんだな」


僕がつぶやくと、管理人が静かに言った。


「ええ」


「観光シーズンは特に」


僕は軽くうなずいた。


そしてペンを置いた。


「はい、書きました」


管理人はノートを閉じる。


「ありがとうございます」


管理人は宿泊名簿のノートを閉じると、机の横に置いてあった小さな箱を手前に引き寄せた。


「それから」


静かな声で続ける。


「こちらの宿は前払い制になっています」


「前払い?」


大樹が聞き返した。


管理人は軽くうなずく。


海外ではよくあることだ。


「カード使えます?」


ウッチーが聞く。


管理人は少しだけ申し訳なさそうに首を振った。


「申し訳ありません」


「現金のみになります」


「危なかった」


大樹が笑う。


「カードしか持ってなかったら詰んでたわ」


「いや持ってるだろ」


こばが呆れたように言う。


僕たちはそれぞれ財布を取り出した。


こばが予約確認のメールをスマートフォンで確認する。


「えっと……一泊でこの金額ですね?」


「はい」


管理人はうなずく。


「安くね?」


「夕食と朝食込みです」


僕たちは順番にお金を出して、こばに渡した。


「はい、これ」


「俺も」


「ウッチー足りてる?」


「大丈夫」


大志は財布をひっくり返しながら言う。


「小銭めっちゃある」


「お前それ数えられるのか?」


大樹が笑う。


「できるわ!」


こばはそれをまとめて管理人に渡した。


管理人は静かに紙幣を数える。


ロビーには、紙の擦れる音だけが響いていた。


「……はい、確認しました」


管理人はそう言って小さくうなずいた。


そのとき、ウッチーがふと思い出したように言った。


「あ、ちなみに」


「Wi-Fiって使えますか?」


僕たちは顔を上げた。


確かにさっきからスマートフォンの電波が入らない。


「圏外なんですよね」


ウッチーが続ける。


「携帯ちょっと使いたくて」


管理人はこの部屋を指差した。


「ここの棟でのみ使えます」


「部屋にはありません」


「なるほど」


こばがうなずく。


そのとき大樹が笑った。


「いいじゃん」


「デジタルデトックスってやつだろ」


「たまにはスマホなしもいいかもな」


大志も笑う。


「確かに」


「一日くらい余裕だろ」


そのとき僕は、ふと気になったことを聞いた。


「そういえば」


「このホテルって……」


「誰もいなさそうですけど」


「今回は僕たちだけですか?」


管理人は少し間を置いてから答えた。


「はい」


「今日は皆さんだけです」


僕たちは顔を見合わせた。


「貸切じゃん」


大樹が笑う。


「最高だな」


ウッチーものんびり言う。


「静かでいいね」


管理人は鍵を取り出した。


「では」


「お部屋をご案内します」


僕たちは荷物を持ち直した。

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