enjoyその1
どれくらい経っただろうか。
携帯を確認すると圏外になっていた。
正確な時間は分からない。
けれど体感では、もう一時間は過ぎている気がした。
長い移動のせいか、大志とうっちー、そして大樹はいつの間にか寝てしまっている。
大樹なんて、腕を組んだまま完全に船の揺れに身を任せていた。
「……こいつら寝すぎだろ」
こばが小さく笑う。
僕もつられて笑った。
周りを見渡して、違和感に気づく。
さっきまで湖の上にたくさん見えていたウロスの浮島が、いつの間にか見えなくなっていた。
あれだけあった浮島の群れが、今は湖の向こうに小さく見えるだけだ。
時折、住民の人が漕ぐ小さなボートとすれ違うこともある。
でもそれも、さっきよりずっと少なくなっていた。
湖の上には、ほとんど何もない。
静かすぎるくらい静かだった。
風の音とボートの音だけが、やけに大きく聞こえる。
僕は少しだけ不安になって、隣に座っているこばに声をかけた。
「……なんか遠くね?」
こばは一度湖を見渡してから、静かに言った。
「まぁな」
そして、少し笑った。
でも心のどこかで、思っていた。
さっきまでいた湖とは、まるで別の場所みたいだ、と。
それからさらにしばらく進んだときだった。
湖の先に、島のようなものが見えた。
でもボートが近づくにつれて、それが島だと分かる。
「あれ……?」
僕は思わず身を乗り出した。
湖の真ん中に、小さな島が浮かんでいる。
そのときだった。
今までほとんど話していなかった管理人が、前を見たまま口を開いた。
「もうすぐです」
低い声だった。
「ホテルに着きます」
僕はその言葉を聞いて、ふと考えた。
そういえば――
この人の名前、なんだろう。
港では挨拶はしたけれど、名前までは聞いていなかった気がする。
まあ、どうでもいいか。
僕は肩をすくめた。
「おい、起きろ」
僕は大志の肩を軽く叩いた。
こばも大樹を揺さぶる。
「おい、着くぞ」
「……ん?」
大志が目をこすりながら顔を上げた。
その瞬間、島が目に入ったらしい。
「うおっ!」
いきなり立ち上がる。
「島じゃん!」
さっきまで寝ていたとは思えないテンションだった。
「マジで藁の島だ!」
ボートの先に見える島を指差して、大志は完全に目を覚ましている。
「テンション上がるわこれ!」
「お前元気だな……」
こばが呆れたように言う。
でも、僕たちも同じ気持ちだった。
湖の真ん中に浮かぶ、小さな島。
その上に建っている建物。
あれが――
僕たちの泊まるホテルだった。




