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トトラ  ~方舟読んだ方おすすめ~ ~ホラー好きな方おすすめ~  作者: るらべー


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enjoyその6

「……おお」


大樹が小さく声を漏らす。


思っていたのと違った。


湖の上の簡単な食堂みたいなものを想像していたけれど、そこはまるで高級レストランみたいだった。


大きな木のテーブル。


白いテーブルクロス。


その上には、ナイフやフォークがきれいに並べられている。


グラスも、ワイングラスと水用のグラスが並んでいた。


「すごくね?」


大志が言う。


「めっちゃちゃんとしてる」


ウッチーも感心したように言った。


「完全にレストランだね」


僕たちは席に座る。


湖に面した大きな窓の向こうには、夜の水面が広がっていた。


静かな場所だった。


しばらくすると、管理人が料理を持ってきた。


小さな皿に盛られた料理だ。


「前菜です」


そう言って、静かに皿を置く。


そのあと、短く言った。


「enjoy」


僕たちは顔を見合わせた。


「……これ」


大樹が皿を見ながら言う。


「もしかして」


「コース料理?」


こばが笑う。


食べ終わると,次々に料理が運ばれてくる。


「っぽいな」


大志がフォークを手に取る。


「マジか」


「これほんとに一人八千円かよ」


「安くね?」


大樹が笑う。


「南米価格バグってるな」


僕たちは料理を食べ始めた。


思っていたよりずっと美味しい。


「やばい」


ウッチーが言う。


「普通にうまい」


「最後の宿として完璧じゃね?」


大樹が笑う。


「南米旅行の締めにふさわしいホテルだな」


そのとき、大志がぽつりと言った。


「……ところでさ」


「なに?」


僕が聞く。


大志はフォークを動かしながら言った。


「さっきからさ」


「料理出すたびに言うじゃん」


「enjoyって」


「ああ」


大樹がうなずく。


「言ってるな」


大志が続ける。


「なんかさ」


「ちょっと不気味じゃね?」


その言葉に、僕たちは少し笑った。


「確かに」


ウッチーが言う。


「あとさ」


「俺、あの人が笑ったところ見てない」


こばも苦笑する。


「確かに」


「ずっと同じ顔してるな」


大樹が笑いながら言う。


「これさ」


「最後の晩餐だったりして」


僕たちは一瞬だけ黙って、それから笑った。


「やめろよ」


「縁起でもない」


大志が笑う。


「冗談だって」


僕たちはまた料理を食べ始めた。


料理は思っていた以上に美味しくて、気づけば皿は全部空になっていた。


「いやー」


大樹が椅子にもたれながら言う。


「満腹」


「最高だなここ」


ウッチーものんびり言った。


「景色もいいし、ご飯もうまい」


大志はグラスの水を飲みながら笑う。


「ほんとだよな」


こばもうなずく。


僕たちはしばらく席に座ったまま、湖を眺めていた。


外はすっかり暗くなっている。


静かな夜だった。


そのとき、大志が突然言った。


「なあ」


「この島、探検してみない?」


大樹が笑う。


「出たよ」


「大志の冒険モード」


「だってさ」


大志は窓の外を指差す。


「昼に見たとき、結構広そうだったじゃん」


「確かに」


ウッチーが言う。


「他にも建物ありそうだったよね」


僕も思い出していた。


レストランや宿泊棟のほかにも、いくつか建物が見えた気がする。


「ちょっと見てみる?」


大志が言う。


こばが少し考えてからうなずいた。


「まあ、少しだけなら」


「どうせ他にやることないし」


「決まりだな」


大樹が立ち上がる。


僕たちはレストランを出て外に出た。


湖の夜風が、少し冷たかった。


空を見上げると、雲が広がっており,遠くの方で雷の光が見えた。


「……なんか雨降りそうじゃない?」


ウッチーが言う。


確かに、さっきまで見えていた星がほとんど隠れていた。


湖の向こうから、重たい雲が流れてきている。


大樹が肩をすくめた。


「まあ降っても島だしな」


「すぐ部屋戻れるだろ」


大志はもう先に歩き出している。


「よし」


「冒険開始!」


僕たちは懐中電灯を持って、夜の藁島を歩き始めた。

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