第41話 隠さなくていい関係
お互いの両親に挨拶を終え、落ち着いたのも束の間、今度は会社に報告をする番に。
羽山さんは今部長と別部屋で話している。
社内恋愛や社内結婚が会社で禁止されている訳ではないけれど、同じ部署に夫婦がいるのは難しいから、どう扱われるか不安だった。
羽山さんが遠い営業所に異動とかになったらどうしよう!
せっかく結婚しようとしているのに、また引き離されるのはいやだ!
モヤモヤしながら、羽山さんと部長が話し終わるのを待っていた。
羽山さんが戻ってきたあと、隙を見計らって二人で非常階段で話した。
「結構びっくりされたけど、おめでとうって」
嬉しい……。こそこそ付き合って辛い時もあったけど、それが私たちの心を強く結んだ。
「どうなるんでしょうね。私達」
「まあ、それはそのとき考えよう」
それから時間差でデスクに戻って仕事をした。
なるべくギリギリまでバレないようにしようと、慎重に行動した。
──数日後
「天川さん羽山さんと結婚するんだね!すごいびっくりした〜」
「意外な二人だよね」
「どうやって付き合う流れになったの?」
いつの間にか噂はかなり広まっていた。
葉月さんと顔を合わせ辛い。
ただ、葉月さんはいつもと変わらず仕事をしているように見えた。
私が廊下を歩いている時、葉月さんから声をかけられた。
「天川さん!やっぱり羽山さんと付き合ってたんですね!」
う──。
「嘘ついてごめんね……」
「大丈夫です。私もう彼氏いるので」
幸せそうに微笑んでいて、少し安心した。
「お幸せに!」
葉月さんは去って行った。
もう新人ではなく、逆に新人を教える立場になった葉月さんが逞しく見えた。
私ももっと仕事ができるようになりたい。余裕ができたら資格もとろう。
将来のキャリアについても考えるようになった。
◇ ◇ ◇
仕事がなかなか終わらなくて残業していたある日、ひょこっと職場に鈴木さんが現れた。
「天川さんおめでと〜」
ニコニコ笑顔の鈴木さん。
真っ先に私たちの関係に気づいていた。
でも言いふらしたりはしなくて、逆に応援してくれてたんだなーと、今はありがたく思う。
「ありがとうございます。鈴木さんにもお世話になりまして」
「俺から見たら丸わかりなのに、二人のことに気づく人ほとんどいなかったね。まあ羽山の微妙な変化とか気づく人いないか。あいつここにきて一年くらいだし」
一年。
羽山さんがここに来たのは一年前なんだ。
初めてここで羽山さんを見た日を思い返していた。
背が高くて、かっこよくて、でも無表情な上司。
あの時はこんなことになるなんて思ってなかった。
「結婚式いつするの?」
「まだ決めてないんです」
うちの親戚関係がややこしくて──。
その時、すっとデスクに戻ってきた羽山さん。
「あ、お帰り。旦那さん」
「言うな」
「俺帰るけど、二人とも変な事しちゃダメだよ?」
ニヤニヤしながら鈴木さんは帰った。
そしてオフィスに二人きりになってしまった。
「それ何時ごろまでかかりそう?」
羽山さんが画面を覗き込んでいる。
「もうそろそろ終わります」
「じゃあ待ってる」
もう隠さなくていい関係。
なんだか嬉しい。
その後二人でご飯を食べに行って、羽山さんの家に二人で帰った。
──入籍日はもうすぐだった。




