第35話 私の愛の証明
新幹線のホームに降りて、やっと東京の空気が吸えた。
私は東京の空気の方が好きだ。
自由を感じる。
そして羽山さんがいる。
今日は土曜日。
羽山さんは『駅で待ってる』ってさっきメッセージをくれたけど、どこだろう。
改札前でキョロキョロしていた。
「瑠美」
後ろから聞き覚えのある声が。
羽山さんが立っていた。
たった一日会えなかっただけなのに、まるで何日も離れ離れだったみたい。
「羽山さん!」
私は羽山さんの側までダッシュで行った。
羽山さんはゆっくり頷いた。
──でも何も言ってくれない。
その後二人で電車に乗った。
電車は空いていて、車両に二人だけポツンと座っていた。
羽山さんはあれからずっと無言で、何を考えているかわからない。
まるで出会った頃のようだ。
「……あの男何?」
羽山さんがやっと話してくれた。
「あの人は地元の幼馴染みたいなものです」
幼馴染っていうほど仲良くないけど。
「幼馴染……なんか起こりそうだよな」
──何が?
「あの、あの人はもう結婚するみたいなので安心してください!」
羽山さんは相変わらず表情が険しい。
「俺は……もっと、もっと、俺を必要として欲しい」
へ?
「どういう事ですか?」
既に私は羽山さんがいないと生きていけないレベルなのに。
「ごめん……。昔の事、少しフラッシュバックして」
羽山さんが手を強く握っている。
「もう裏切られたくない」
今まで聞いた中で一番強い言葉だった。
驚いて暫く言葉が出てこなかった。
「……どうすれば信じてくれますか?」
羽山さんは悩んでいる。
私はいい事を思いついた。
「羽山さん、会社の人たちに私たちの関係、言うのはどうですか?」
「は!?」
結構いい案だと思ったが、羽山さんは困っている。
「だって、みんな知っていれば安心かなーと」
って、自分からみんなに言ってどうするだよ……と自分でツッコんだ。
「流石にそれはぶっ飛びすぎてるけど……」
羽山さんが私の手を握った。
「その言葉でなんか安心した」
羽山さんが少し落ち着いてよかった──
と思っていたのも束の間、私の家に着いて二人でのんびりしようとしたら、私はまた羽山さんに追い詰められてしまった。
「俺の事どのくらい好きなんだよ」
さっき落ち着いたはずなのに、なんでまたこうなってしまったの?
「羽山さん落ち着いてください!私は羽山さんの事しか考えてないです」
どうしたら羽山さんを安心させられるんだろう。
「羽山さん……じゃあ私証明してみせます」
私が思いつく単純で精一杯の愛情表現──
私は全て曝け出して、羽山さんを抱きしめた。
「羽山さん、私はあなたが大好きです。あなたになら私の未来をあげます」
二人で重なり合たあと、私は羽山さんの全てを受け止めた。
それが信頼の証になるかはわからないけれど、私は覚悟の上だった。
横たわる私を羽山さんは抱きしめていた。
「ごめん。ちゃんと信じることができなくて」
「大丈夫です。これで羽山さんが安心できるなら」
羽山さんが私のお腹に触れた。
「病院行く……?」
「いえ、私は大丈夫です。羽山さんがそばに居てくれるなら、どんな未来でも受け入れます」
「ありがとう」
羽山さんの今までに見た事がないような、とても優しい笑顔。
大丈夫。
私は幸せだ。




