第30話 ほろ苦くて甘いバレンタイン
最近まともにやっていなかったエタクエ。
バレンタインイベントが始まった。
私はバレンタインのコスチュームが欲しくて、必要なアイテムを集めるために久々に必死にゲームをやっていた。
羽山さんは休みの日にゲーム機持参で私の家に来た。
二人で隣に座ってオンラインゲームイベントをやっている。
「あまるとハヤテを一緒に見ているって、不思議な気分です。」
「……そうだな」
最近私達は関係を隠すようなそぶりも見せなくなって、会社から出たら二人で並んで歩いている。
「羽山さん、私たちの関係もう会社にバレちゃってますよね……」
仕事中はあまり会話をしないで過ごしているけれど。
羽山さんは表情を変えず、ハヤテはひたすら敵を無双している。
「なんか言われたらその時考えればいいだろ」
そのまま二人でアイテムを収集して、落ち着いたらご飯食べ、私の好きなアニメを一緒に見てのんびりする休日。
幸せだった。
◇ ◇ ◇
──バレンタイン当日
羽山さんにチョコをあげるつもりでいた。
でも──
あげる隙がない!!
仕事が終わるまで待つしかない。
私たちは会社以外でも会えるから、ここで渡す必要もない。
と思っていた矢先、フロアの片隅で見てしまった。
羽山さんと葉月さんが一緒にいるのを──
どうしよう……。
あんな可愛い子に本命チョコを渡されたら、彼女がいたって心が動くよ。
何を話しているかはわからなかったけれど、彼女がチョコを出した瞬間、いてもたってもいられなくてその場を離れてしまった。
仕事終わりに渡そうと思ったのに、そんな気持ちになれなくなって、定時に黙って帰ろうとしたら──
「おい」
見つかってしまった。
「なんかあったんだろ」
あなたの事です……!!
「いえ、ちょっと調子が悪くなったんです……」
そのあと、非常階段に連れていかれた。
「具合悪いのか?」
本気で心配されると、これ以上嘘はつけない。
「いえ。実は見てしまって。羽山さんが葉月さんにチョコを渡されているのを……」
羽山さんはため息をついた。
「そうだと思った」
「嘘ついてごめんなさい」
情けない。
その時、羽山さんに引き寄せられて、キスをされた。
「そんなに自信がないなら、教えようか」
羽山さんの怪しげな笑みに、嫌な予感がした。
「羽山さん、見つかったら終わりですよ私たち!」
「冗談だよ」
その余裕の笑みはなんなんだ。
前はあんなに無表情だったのに。
まるで別人だ。
私はその場でチョコを渡した。
「これ、いつものお礼です!」
「え、義理チョコ?」
またいじわるをしてくる。
「からかわないでください!」
いい加減腹が立って帰ろうとしたら、捕まってしまい、そのまま羽山さんの家へ──
羽山さんは私を沢山抱きしめてくれた。
食べられたのはチョコではなく、私の戸惑いや不安だった。
「ちゃんとわかった?」
「はい……」
わかったのは、私が羽山さんのことが大好きなんだって事。
羽山さんも私を大切にしてくれている事が伝わって、嬉しかった。
「羽山さん、チョコ食べてくださいね!すごい並んで買ったんで」
羽山さんはチョコを私の方へ持ってきた。
「じゃあ一緒に食べよう」
羽山さんは一つ食べた。
「あ、美味いこれ」
そして私にも食べさせてくれた。
「あ!本当だ!美味しい!」
並んで買ってよかった……!
止まらなくて半分くらい食べてしまい、手にチョコレートパウダーが沢山ついてしまった。
「すみません。美味しくてつい……」
その時、羽山さんが私の指についたチョコレートパウダーを舐めた。
「何してるんですか!?」
羽山さんの行動にびっくりしすぎて心臓が止まりそうになった。
私の指を咥えながら、「こっちの方が美味しい」と、またいたずらな目線で私をからかう。
「最近、羽山さん変わりましたよね……」
「そうかな。留美のせいだな」
「私何もしてませんよ!」
羽山さんの色んな一面を知るたびに一喜一憂してしまう私。
やっぱり羽山さんが大好き。
そう自覚したバレンタインだった。




