第17話 通じ合った想いと葛藤
次の日の昼休み、また私たちは屋上にいた。
やや人目につかない場所を選んで。
昨日はゲームで会えなかったけど、電話で話せた。
だから寂しくはなかった。
羽山さんは真剣な顔をしている。
「俺達、ちょっと関係が複雑だから、ちゃんとはっきりさせてなかったけど」
羽山さんは少し深呼吸した。
「俺は天川が好きで、"あまる"も大切で。だから、こっちでも、あっちでも、俺の恋人でいて欲しい」
羽山さんの恋人……。
恋人!?
「リアルではまともに会えないかもしれないけど」
う、嬉しい……!
「私も羽山さんも"ハヤテ"も好きです」
こんな事になるなんて、ゲームを始めた時は想像もしていなかった。
ただ、ゲームがやりたくて、他のプレーヤーと遊ぶ事とかもあまり考えていなかった。
あの時ハヤテに出会って、一緒に旅をして、
羽山さんが"ハヤテ"で、私が"あまる"だとお互いわかって、そのまま二人で旅を続けて──
会えない間に羽山さんが好きだと気づいた。
ゲームでは一緒の家に住んでいるのに、リアルではまともに会話することも、会う事もほとんどしていない。でも──
「不束者ですが、これからも宜しくお願いします」
こういう形であっても、私は幸せだ。
「あの、なんで羽山さんは私を好きになったんですか……?」
羽山さんは少し言うのを躊躇っている感じがした。
「俺、前から天川の事気になってた」
え?
「そんなの全く気が付かなかったですよ!!」
でも、よく考えたら羽山さんは私が困っている時、何度も助けてくれた。
「じゃあ、天川は俺のどこが好きなの?」
それは──
「ゲームを始めた時、ハヤテがすごく優しくしてくれて嬉しかったんです。そして、羽山さんも」
私を優しく支えてくれてた。
「俺は天川を見てると安心する。それは"あまる"にも感じていた」
安心。自分ではよくわからなかった。
「あ、ずっと思ってた事があるんです」
ずっと疑問だった。
「羽山さん……ハヤテって、結構積極的ですよね?色々。あれはなんでですか?」
羽山さんは恥ずかしそうにしている。
「なんか、ゲームだと距離感バグるんだよ」
不思議だ。
あまり感情を出さない羽山さんと、感情をはっきり出すハヤテ。
両方が同じ人間……キャラなのか。
「あ!羽山と天川さんがイチャついている!」
後ろから鈴木さんの声が。
やばい、見られた!
「だから違う」
羽山さんは元のポーカーフェイスに戻った。
「でも二人、距離近くない?雰囲気とか」
鈴木さんはニヤニヤしてる。
鈴木さん、やっぱり気づいてる?
「あ、天川さん、俺ともフレンドになってよ!困ってるんでしょ色々?一緒に助け合おうよ〜」
その時羽山さんの目が少しピクッと動いた。
羽山さんが何て鈴木さんに言って誤魔化したかはわからないけど、あまり関わりたくない。
「今はもう大丈夫です」
適当に答えた。
鈴木さんはその後適当に話して去って行った。
「油断できないな…」
「はい。でもあれ、勘付いてますよね……」
羽山さんはじっと考えていた。
「やっぱり、会社では特に気をつけないとな。誰がどこでいつ見ているかわからない」
恋人になれた事は嬉しかったけど、堂々と付き合えない。
それでも私は、羽山さんとの関係を大事にしたかった。




