第14話 二人の空間
次の出社日、羽山さんに会える嬉しさと、ハヤテとの二人暮らしの恥ずかしさで、心がムズムズしていた。
そういう時に限って、朝からエレベーターで一緒になってしまう。
他の社員も沢山いるからお互い何も言わなかった。
「羽山どこまでゲーム進んでるの?俺全然わからないんだけど」
鈴木さんの声が聞こえた。
「自分で攻略サイト見ればいいだろ……」
羽山さんの声が聞こえる。
羽山さんの声。
ゲームでは聞こえない。
ここでしか堪能できない。
私は幸せだった。
「今度奢るから、今日教えて色々!」
鈴木さんの必死なお願いが聞こえる。
「……わかった」
鈴木さん!!
私と羽山さん……ハヤテとの時間を奪わないで!
私の一日のご褒美タイムなのに!
半泣きになってエレベーターから降りようとしたら、羽山さんに声をかけられた。
休憩スペースで少しだけ話すことに。
二人きりになって、また感情が溢れてくる。
言葉が出てこない。
「鈴木との話聞いてた……?」
「はい」
なんだろう、この、リアルとゲームがごちゃごちゃの状況。
「とりあえずああ言ったけど、"あまる"優先だから、気にしないで」
羽山さんは少し恥ずかしそうにそう言って、行ってしまった。
羽山さんと話せた事が嬉しくて、鈴木さんの事がどうでもよくなった。
◇ ◇ ◇
──エタクエ同居一日目
羽山さんが残業っぽかったから、のんびりとログインしてみた。
まず広がるのは一緒に住んでいる家の中。
ここで私とハヤテは暮らすのか。
二人で。
二人で……?
あまるとハヤテは女と男で、羽山さんと私は男と女。
住むのはゲーム内だけど、色々意識しだすとしんどい!
とりあえず先にワールドに出て毎日のルーティンをこなす事にした。
武器防具を作って、売って、お金を稼ぐ事もできるようになったから、段々と充実していくエタクエライフ。
待ってる間はひたすらお金と経験値を稼ぐ。
しばらくすると──
ハヤテ『ただいま』
ハヤテからチャットがきた。
きたあああー!!
あまる『おかえり!』
でも、今日はハヤテはスズキさんとゲーム。
今日は一緒に住める喜びを噛み締めていよう。
私を優先してくれようとしてくれる気持ちを聞けただけで嬉しい。
すると、
ハヤテ『今から家来れる?』
とハヤテからチャットがきた。
ちょうど暇になったし、ハヤテに会いたかったから速攻であまるは家に帰った。
家の中に入ったら、ハヤテが立っていた。
あまる『お疲れ様!』
と言うと、ハヤテが抱きしめられた。
『今日はあまるとずっといたいから断った』
む……胸が苦しい!!
そのまま動けず、ずっと二人の空間にいた──




