第12話 会えない時間
やっと──
羽山さんが出張から帰っきて、明日から出社してくる。
ハヤテも帰ってくる。
たった数日だったのに、何ヶ月も離れていた気持ちになっていた。
明日からまたハヤテに会えると思うと嬉しくて、ログインして、色々冒険のために準備をしようとしていた。
すると──
ハヤテ『ただいま』
ハヤテから突然チャットがきた。
──え?
明日から羽山さん出社では?
あ、でももう帰ってきてるのか!
私は嬉しくて会いたくて、いても立ってもいられなくなって、ハヤテがいる場所まで飛んで行った。
ハヤテはログインしたばかりだった。
あまるが走る、全力で。
あまる『ハヤテおかえり!』
嬉しさのあまり、あまるはハヤテに思い切りアタックしてしまって、すり抜けて行った。
久々に会ったハヤテが、あの時とは違って見えた。
とても大切な人が帰ってきた感覚だった。
色んな気持ちが込み上げてきて、思わず涙が溢れそうになった。
嬉しさのあまり、あまるはハヤテに抱きついていた。
正確にいうと、ハヤテのキャラに少し重なっている程度。
あまる『ハヤテ会いたかった!』
ハヤテは──羽山さんはきっとびっくりしているだろうけど、そのままでいてくれた。
ハヤテ『俺もあまるに会いたかった』
ただ画面であまるとハヤテが寄り添ってるのを見て、胸がいっぱいだった。
自覚してしまった。
私は、ハヤテが好きなんだと。
その日はハヤテに会えた嬉しさと余韻にずっと浸っていて、そのまま特に何もせず、ゲームを終えてしまった。
◇ ◇ ◇
──次の日
あんな行動をしてしまった事を恥ずかしく思い、羽山さんと会うのが怖かった。
エレベーターのドアの前でモタモタしてると、後ろから誰かが来た。
「おはよう」
振り返ったら羽山さんだった。
いつもと変わらない雰囲気だけど、目はとても優しかった。
「おはようございます……」
羽山さんを見たら、ハヤテに会えた時の気持ちがまた湧き上がってしまった。
でもここは会社。
仕事場だし、羽山さんとはそういう関係ではない。
あくまでゲームの中の、バーチャルな二人が寄り添ってただけだ。
そのままオフィスに入ろうとした時、羽山さんに呼び止められた。
「ちょっとこっちに来て」
なんだろう。
羽山さんについて行って、フロアの非常階段の扉の向こうまで行った瞬間──
羽山さんに抱きしめられた。
びっくりして、声が出なかった。
耐えようとしていた想いが込み上げてくる。
「会いたかったです」と言ってしまった。
「俺も」
幸せだった。
羽山さんが、私に会いたいって思っていてくれていた事が、凄く嬉しかった。
私は羽山さんの事がたぶん好きなんだ。
あまり知らないのに。
「私、羽山さんの事、よくわかりません。でも好きになってしまったかもしれません」
馬鹿正直に言ってしまう。
「俺も、天川の事よく知らない。だけど、俺もそうかもしれない」
よく知らないのに、羽山さんと私は抱き合っている。
「私、今まで羽山さんの事、ずっと何考えてるかわからなくて、ちょっと距離置いてたりしてました」
「……あまり考えてる事言わないからな」
表情がなくて、心が読めなくて、距離を置いていた。
今は違う。
わかりたいって思う。
知りたいって思う。
もっと一緒にいたいって。
このままずっとこうしていたかったけど、流石に仕事が始まってしまうから、別々に歩いて席についた。
この関係をなんて呼べばいいかわからないけど、"あまる"と"ハヤテ"はゲームの外でも触れてしまった。
私はハヤテだけじゃなくて、羽山さんも好きになってしまった。
これからどうなってしまうんだろう。
羽山さんを遠目に見ながら考えていた。




