第11話 ハヤテの彼女
私と羽山さんは、仕事中は上司と部下として、仕事以外の事は話さず、業務に集中していた。
でも、家に帰ってゲームにログインすると、一緒にイベントで遊んだり、ストーリーを進めて、ワイワイしていた。
ハヤテ『さっきのボスって、エタクエⅢのデスワルドに似てなかった?』
ハヤテ『俺、エタクエⅦの花嫁なかなか決められなくてつらかったんだ』
ハヤテ『前作のバトルシステム、こっちでも実装してほしいよね』
羽山さん、ハヤテだと凄い喋る。
こんなに色々感じたり、思いを伝える事ができるのか……。
ゲームを同じ目線で楽しめる人が近くにいることに、喜びを感じていた。
ハヤテと冒険する事、羽山さんとゲームをする事が、私の生活の中で欠かせなくなっていた。
そろそろゲームから落ちようとした時──
また突然転移魔法で現れた"スズキ"
これはきっと、というか鈴木さんだ。
スズキ『疲れ〜』
心なしか、ハヤテが身構えている。
スズキ『あ、また"あまる"ちゃん!羽山といつも一緒なの?俺も一緒に遊びたい』
鈴木さん、オンラインゲームで名前言っちゃダメだよ!
ハヤテ『あまるは俺の彼女』
──え?
スズキ『え、羽山彼女いるの!?』
びっくりしすぎて何も言えなかった。
ハヤテ『そういう事だから』
ハヤテはスズキにそう告げて、私達は別の場所に移動した。
ハヤテ『ごめん!』
その後ハヤテが謝ってきた。
ハヤテ『ああ言わないとずっとついてくると思って』
確かに、鈴木さんはグイグイくるからはっきり言わないとダメなんだけど、”彼女”って……。
ハヤテ『嫌だったらごめん』
でも──
嫌じゃなかった。
あまる『大丈夫です。私は一緒にまたゲームができればいいので』
ハヤテ『これからログイン状態隠しておく』
ハヤテの言葉に安心した。
これでまた二人でストーリーを進められる。
でも、もうかなり遅い時間だから、今日はこのへんで寝る事にした。
あまる『もう寝ます』
その時またハヤテがまたあまるに近づいてきて──
もうあまるにくっついている。
ハヤテ『今日もありがとう。おやすみ、あまる』
ハヤテのこの行動をどう受け止めればいいの……?
画面いっぱいに映ったその情景を見ていられなくて、すぐにログアウトして、眠りにつこうとベットに潜った後、心臓が煩くて全然寝付けなかった。
『"あまる"は俺の彼女』
この言葉が頭の中で響いていた。
鈴木さんを追い払うための言葉だとしても、特別にしてもらえたみたいで嬉しかった。
◇ ◇ ◇
次の出勤日、オフィスに入って、まず羽山さんのデスクを見たら、居なかった。
この時間にはいつももういるのに。
自分のデスクについてパソコンで羽山さんの予定を見てみた。
『出張』と書いてあった。
え?知らなかった……。
いや、そういえばこの前仕事の時言ってたかも。
出張って事は、ゲームは持って行ってないはず。
出張は三日間になっている。
三日。
三日も会えないのか。
ほぼ毎日会ってたのに。
会社でもゲームの中でも会えない。
家に帰ってゲームにログインして、ストーリー以外で何かしようと思っても、何もやる気が起きない。
試しに他のプレイヤーと交流してみようと思い、募集をかけてみた。
momoka『こんばんは。今そっちにいきます』
その後、直ぐにパーティーメンバーは集まった。
とむ『じゃあ今から転移して神殿にいって一周しましょう』
パラディンの男キャラが言った。
全員で神殿にいって、レベル上げのため、黙々と敵を倒していく。
会話は一切なかった。
私は他のメンバーに迷惑をかけないように必死だった。
ボスを倒して神殿をでたあと、
『ありがとうございました!』
といってすぐに解散になった。
レベルは上がった。
でも虚しさが残った。
──ハヤテと会いたい。
早く会いたい。
そんな気持ちが込み上げてきた。
私をいつも気にかけてくれて、話しかけてくれて、それが当たり前になっていた。
この時、一緒にいた毎日で少しずつ私の中で育っていたものに気がついた。
私はハヤテが戻ってくるまで、ゲームにログインはしないでおく事にした。




