第八話 雷哉と苅砥と珪晶
演習開始から二時間半が経った。陽が落ち段々と空気が冷え込んでいく。
茂みの中で真神雷哉、傷代苅砥、鹿深珪晶の三人は一度も鬼と遭遇すること無く過ごしていた。
「何かこのまま終わっちゃいそうだね」
「油断するなよ。まだ30分もある」
雷哉の言葉を苅砥が嗜める。
「退学もありえるから見つからないに越したことはないけれど、これはこれで退屈だね」
「退屈でもいいよ。このまま誰にも見つかりませんように」
珪晶の言葉に雷哉が気弱に応える。
「残念ながらそれは叶わないな」
その会話に四人目の声が割り込む。いつの間にか彼らの傍に亜麻色の髪を持つ青年が立っていた。顔には鬼の面を着けている。
「私の名は笹舟理界、元風紀委員委員長で今は唯の鬼役だ」
笹舟の言葉に雷哉は身震いし、苅砥は舌打ちをして、珪晶は目を細める。
「貴様らは中々隠れるのが上手みたいだが、私は動物が発する微弱な電磁波を感知することが出来る。この能力で何人も捕まえてきた。次は貴様らだ」
笹舟が言い終わる前に苅砥は動き出していた。笹舟に向かって鎌を振りかぶる。
「良いぞ、判断が早い」
笹舟はそれを金色の十手で防いだ。
「真神君、手前達も行くよ」
「あっ、うん」
遅れて珪晶と雷哉も武器を構える。
「影踏み!」
苅砥が笹舟の影を踏んで叫ぶ。すると笹舟の動きが途端に鈍くなる。
その隙に珪晶と雷哉が挟撃を仕掛ける。
しかしその瞬間、笹舟の周りに電撃が走った。三人は感電して動けなくなる。
「良い連携だ。私も多少本気を出さざるを得なかったよ」
笹舟は手錠を取り出し苅砥に掛けようとするが、雷哉の双剣が閃く。
「ほう、あれを喰らってまだ動けるのか」
笹舟は咄嗟に後ろに飛び退き呟く。
「電気には耐性があるんです」
雷哉は左右の手に持つ小太刀を駆使し追撃する。
「そうか、貴様も私と同じ属性なのだな」
「鹿深、動けそうか?」
雷哉と笹舟の剣戟を見ていた苅砥が言う。
「もう少し掛かるね」
「そうか、俺は真神に加勢する。お前は電撃の届かない位置から援護してくれ」
「了解したよ」
動けない珪晶を残して苅砥は笹舟に向かって駆け出した。