表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/51

第七話 風切栞瑚

 演習開始後、宙飛はずっと隠れていた。

 隠れるのは得意だ。じっと動かず息を潜める。

 鬼の面を被った人が辺りを探っている。僕は動かない。

 視界の端に鬼に追われている生徒が映る。僕は動かない。

 誰かの悲鳴が聞こえる。僕は動かない。

 二時間程が経っただろうか。僕は開始位置から一歩も動くことなく過ごしていた。

(なんか地味だな。まあ忍ぶ者だし、これで正しいのかもしれない)

 そんなことを思っていると、また誰かの足音が聴こえた。

 見ると一人の女子生徒が駆けており、その後ろから手裏剣が投擲されているのが見えた。

 僕は咄嗟に苦無を投げ、彼女に迫る手裏剣を弾いた。

 普段の僕ならこんなことはしない。もし逃げ子が幼馴染だとしても、見つかる危険を冒してまで助けたりしない。まあアイツは僕の助けなんて要らないだろうけど…

 助けたのは逃げていた少女が勿朽流華だったからだろう。

(臆病者、そう言われたのを気にしたというのか?それこそ僕らしく無い。一体僕は何をしている…)

 僕の思いをよそに、彼女は振り向くこと無く駆けていった。

やつがれの邪魔をするのは誰かな?」

 そこで勿朽を追っていた鬼が僕に尋ねる。

 藤色の髪に鬼の面を被った女性。彼女の周りには幾つもの手裏剣が浮遊している。

(ふむ、逃げ切れそうも無いな。なら勿朽が逃げ切れるように時間稼ぎでもするか)

 どうせ乗り掛かった舟だ。そう思い僕は忍者刀を構える。

「お、向かって来るか。その意気や良し。やつがれの名は風切栞瑚かざきりかんこ、全力で相手をしてあげよう」

(出来れば手加減して欲しいな)

「何だ、先輩が名乗ったんだぞ。君も名乗り給え」

「…風見宙飛」

 そう言われて仕方なく僕も名乗る。

「風見ね。へぇ、そうか君が…」

 すると風切先輩は意味深に笑む。そして周りに浮かべていた手裏剣を一つ、僕に放ってきた。

 僕はそれを躱す。しかしその手裏剣は軌道を変えて迫って来る。

 僕はそれを忍術刀でなんとか弾く。

(さてどれだけ粘れるかな?)


 5分後、僕は憔悴していた。

 風切先輩の手裏剣操作の練度は恐ろしく高く、的確に僕を追い詰める。

「回避の腕は中々だけど、避けるばかりじゃあね。やつがれの相手をするには程遠い」

 風切先輩は余裕の表情で言う。

(そろそろ潮時かな)

 僕は反転し全速力で逃げ出した。 

「今更そんなことを許すと思うのか?」

 風切先輩がそう言って浮かせていた手裏剣を全て僕に放って来た。

 そこで僕は立ち止まり、また身体を反転させ、全力で風を巻き起こした。

 制御を失い手裏剣が落ちていく。

(期待外れか…そんなのは誰よりも自分自身が痛感しているんだよ)

 そんな事を思いながら僕の意識は急速に遠のいていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ