表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/49

第三話 勿朽流華

 宙飛が目を覚ますと、視界は白い天井に覆われていた。

「……ここは?」

 ぼんやりとした頭で僕が呟くと、すぐ傍で静かな声が答えを返した。

「保健室だよ」

 声の主を見ると、椅子に腰かけて文庫本を読んでいる勿朽流華(くちなりゅうか)の姿があった。

「授業中に倒れた君を、保健委員の私がここまで運んだの」

 彼女は本を閉じ、淡々と続ける。

「あ……ありがとう」

 戸惑いつつ礼を述べる僕を、勿朽は不機嫌そうに眉を顰めじっと見つめた。

 何かまずいことをしたのかと一瞬思ったが、彼女は素がこれなのだ。一週間、同じ班で行動して気付いたのだが、彼女は誰に対してもこの視線を向けていた。

「授業っていうと、竜胆先生が……」

 僕は朧げな記憶を手繰る。訓練中、竜胆先生が召喚した岩の鎧竜――あれに対して僕は竜巻を起こしたのだ。

「じゃあ、あの鎧竜を僕が……?」

「勘違いしないで」

 勿朽は鋭く僕の言葉を遮った。

「あの竜巻で壊れたのは関節部分だけ。動くのに必要な比較的柔らかい場所。骨格には傷が付いていただけだよ」

「さ、さいですか」

「あの後、恐竜は復元されたけど、授業の終わりの時刻が近づいたとかで、皆んなの拘束は解かれたよ」

 まぁ、そんなところだろう。僕に出来るのは時間稼ぎがせいぜいである。

「ねぇ、君は何?」

 彼女の問いかけに僕は当惑する。

「何って?」

「初日の出力訓練、あれは手加減していたの?今日の竜巻、比較的脆い部分だけとはいえ先生の術を打ち破った。君は一体何者なの?」

 真剣な問いに僕は息を飲み、僕は自分が術の威力を制御出来ないことを説明した。


「...だから人間相手には過剰に手加減してしまうんだ」

 僕の言葉に勿朽は少し考えるような素振りをしてから告げた。

「君は臆病だね、期待外れだよ」

 自覚はあるが人から言われるとキツイな。期待?僕は何を期待されていたんだろう?

 尋ねようとしたが、勿朽は立ち上がり保健室から出ていってしまう。

 僕はそれを漫然と眺めていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ