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第二話 実戦と旋風

 宙飛が戸隠学園に入学して一週間が経った。

 幸い忍術の授業(忍具の取り扱い等)はどうにかこなすことができた。

 ただ交渉術や対話術の授業だけは壊滅的だった。僕に陽忍の才能はないらしい。

 それはともかく本日も忍術の授業がやってきた。


 戌亥(いぬい)訓練場に集まった、僕ら一年玄武(げんぶ)組の生徒の前で担任の竜胆(りんどう)先生が白い髭を撫でながら言う。

「これまでの一週間でお主らの実力はある程度分かった。そろそろ実戦形式の授業を始めようかの。お主ら上を見ろ」

 竜胆先生の指示に従い生徒達が空を見上げた、その時だった。

 地面が突如変形して僕らに襲いかかってきた。

「実に素直な奴らじゃな、忍びとしては物足りん」

 僕を除いた生徒達の周りを隆起した岩が隙間なく覆い、皆身動きが取れない状態となる。僕がこれを回避できたのは過剰なまでの臆病さと、上を向けと言われたら下を向きたくなる捻くれた性格故だろう。

 いや違う、僕以外にも一人回避できた奴がいる。

 傷代苅砥(きずしろかると)、烏の濡れ羽色の髪に病的な白い肌を持つ少年だ。

 彼は回避しただけでなく、即座に竜胆先生へ向かってその手に持つ鎌を振り翳した。

 いくら訓練用の刃が潰れた鎌だろうと、まともに喰らえば怪我では済まない程の勢いで発せられた攻撃は竜胆先生に当たることはなかった。

 岩の壁が竜胆先生の前に出現して傷代の攻撃を防いだのだ。

「ちっ」

 傷代は舌打ちをして僕に言った。

「風見、手伝え」

 唖然としていた僕は傷代の言葉を受け竜胆先生へ駆け出す。竜胆先生へ繰り出す忍者刀の一撃は当然、岩の壁に阻まれる。

 それだけではなく岩壁は僕らを飲み込もうと迫る。

 しかし僕にとって回避はお手のもの。岩を避けてまた忍者刀を振るう。

 同様に攻撃を避けた傷代も鎌を見舞う。即席の挟撃はまたしても竜胆先生の岩壁に防がれた。

 攻撃を防がれたら回避する。そしてまた攻撃。そんな事を僕と傷代は続ける。

 しかし何回かそれを繰り返す内に緊張の糸が切れる。

 足を滑らせた僕に岩が迫る。まずい、これは避けられない。

 その時だった、制服を後ろから引っ張られ僕は後方に飛ぶ。

 ギリギリで岩は僕の髪を掠めた。

「拙いけど、時間稼ぎ感謝するよ」

 振り向くと空色の髪に三白眼を持つ少年、鹿深珪晶(かふかけいしょう)が僕の制服を掴み言った。

「確かに捉えた筈じゃが、どうやって抜け出しおった?」

 竜胆先生の問いに鹿深が答える。

「こんな岩、時間さえあれば崩せるね」

 そして傷代も僕たちに合流して言う。

「二人は竜胆先生の気を引いてくれ、俺が仕留める」

 その時だった、竜胆先生の方から圧を感じる。

「面白い、儂も少し本気を出すか」

 いくつもの岩が浮き上がり、形を変えて、一箇所に集まる。

 現れたのは岩で構成された鎧竜と思しき骨格だった。

 岩の鎧竜は勢いよく球形の尻尾を振り翳すが、間一髪で僕たちは散り散りに回避する。

 しかし鎧竜は僕に狙いを定めてまた尾を振りかぶる。

 その刹那で僕の思考が加速する。怖い、だけど「人」じゃあ無ければやり過ぎることは無い。

 覚悟を決めて僕は左手を前方へ突き出す。直後に巨大な竜巻が鎧竜を包み込んだ。

 竜巻が消えると鎧竜はガラガラと音を立てて崩れ落ちた。

「やった」

 僕は言いながら地に膝をつく。

 薄れゆく意識の中で爽快感に浸る僕がいた。

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