第十四話 後日談
「玄冬会長、風見宙飛と決闘したんだって?」
生徒会室、風切栞瑚が委員会の経費資料に目を通しながら問いかける。
「あまり公にならない様に気を付けていたんだけどな。どこから聞きつけたんだい風切会計は?」
それを受けて書類にサインをしていた玄冬氷筍は苦笑して答える。
「僕の情報収集力を甘く見ないでもらいたいね。それで、実際闘ってみて彼はどうだった?」
「君がそんな風に質問してくるのは珍しいね。同じ五星風家としては気になるのかい?」
「それもあるけど、風見君とは又鬼ごっこで相まみえてね。実力はまだまだだったけど見込みはありそうだと思ってさ」
「そうだね...決闘の際にこの僕は一歩も動かないという枷を設けてね」
「嫌味な先輩だなぁ」
「そのぐらいしなければ勝負にもならないと思ったんだ。事実、それでも彼の攻撃は余裕で捌けた。...最後の一撃を除いてね。あの場の誰も気づいていなかったと思うけど、背後からのその攻撃はこの僕の足を僅かに動かした。ハンデは設けたが油断したつもりは無かったんだけど」
「へぇ、それはそれは」
「彼は強くなるだろうね。この僕もうかうかしていられないな」
そう言って氷筍は薄く笑んだ。
後日談と言うか、今回のオチ。
決闘を終えた翌朝、宙飛は教室へ入ると勿朽の姿を見つけた。
「おはよう、勿朽さん」
僕は自分の席に座り彼女へ挨拶をする。
「…風見君、おはよう」
ここ最近は何を話しかけても無視されていたので、返事をされたことに驚くと同時に嬉しくなる。
「ごめん、負けちゃったよ」
「別に、端から期待していないよ」
「でも、いつか勝ってみせるよ」
僕がそう言うと、勿朽はいつも通りの不機嫌な顔で、「好きにすれば」と言って顔を背けてしまった。
その後も勿朽の態度は素っ気なかったが露骨に避けられることは無くなった。
それを見ていた真神からは「良かったね、仲直り出来て」と言われた。心配してくれていたらしい。いい奴だな。
そんな感じで僕は学園生活を送る。変わった事といえば、忍術の授業をより意欲的に受ける様になり、放課後の自主練が日課になったことだ。偶に同室の真神、傷代、鹿深も訓練に付き合ってくれる。
だからと言って急に強くなったりはしない、道のりは遠い。