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英雄ゴブリンの祭壇



海の問題をろくでもない方法で対応した後、昨夜は大量の海の幸の料理が出て、美味しさと気まずさでなんとも言えない気持ちになった。


王との会議よりは有意義だったに違いないが、マッチポンプで味方ですみたいにアピールした海の生物を、別の魚とは言えその夜に食うのはなかなかだよ。なかなか凄い。




「俺に家をくれたって事は、タリアも家での休養大事だと思ってんだろ?休むべきだ、ノーム復活の後で」


「言ってることがおかしいわけ。分からんかな?大変な仕事してこいって言いつつ休まなきゃ駄目だよって言ってる上司と同じなんだよそれはさぁ」




ゴブリンが指定してきた場所に向かう道中、合流してきたヤマトが立て続けに訳わからん事を言っている。なんか急に馬車の上に勇者と王子が乗ってきた。


なんかあったのか国王を絶賛しつつ休めだの働けだの鬱陶しい。



「やっぱり凄いよ、どんな情報にも全く動じてなかった。賢くて強くて格好良い老執事。なんで王なのかは謎だが完璧だよやっぱり」


「お前まじで見た目に騙されてるからな。動じないとかじゃなくて老化でビビっても心の反応が鈍いだけだから。見た目と姿勢がいいからなんか優雅にこなしてるように見えるだけの普通のジジイだから」


「タリアも見た目を気にしたほうがいいぞ。ボサボサ髪に白衣にジト目メガネは確かに最強だが、王っぽさは無い」


「お前このパーフェクト天才美少女にまだ文句あんのかよ!これ以上なにか着たら情報過多だろ!」




まず肩書きが強い時点でどうしてもそれに引っ張られちゃうからなぁ。人間は人間で、老人は老人なんだよ。いや老人にしてはだいぶ凄いけどさ。


王で執事でもちゃんと人間扱いして年齢的にそろそろ引退させてあげるべきだろ。私に王位を譲ってさ。執事は補佐のが絶対得意だろ。


というか王の肩書きに引っ張られるなら王女の私の肩書きは?全然引っ張られてなくないか皆。




「あとさぁ、もし俺の世界に魔力漏れてたらタリアに無効化して貰わないと駄目なんじゃねって話になったんだけど……どう?」


「どうとは!?急に何の話だよ。いやなんかアネモネも似たような事いってたけど、なんもかんも自分の国守ってからじゃないと他人の世界守ってる場合じゃ……」


「……」「……」



馬車内のアネモネとウラニアが凄い顔で私を見て必死に話を止めた。なになに?




……あ、そうか。そうだわ。自分の世界守ってからじゃないと他人の世界守ってる場合じゃないよな勇者も。


うわさすがに失言か。




「い、いや、ごめん。失言した。分かってると思うけど私は助けられるものは助けるぞ。それに優先順位とかも無い。だって私の選択は常に最適順位だからな」


「ああ、まぁそうか。ていうかアレだよな。そもそも俺と敵対するのも国の危機の筈だから結局勝手に手を打ってある流れになるんじゃないか?タリアっていうか賢者が」


「敵対!?お前裏切るのか!?私にサキュバス人形なんて量産させておいて!?」

「いやほら、裏切るっていうか俺はさすがに俺の世界のピンチ優先だから。例えば別の国が大ピンチになって、なんか別の勇者召喚もあって、どうしようもないからそれで対応しますってなった国が出た場合、俺はその国に被害が出ても勇者召喚を止める」


「ああー。うーん。それはそうというか、お前は……いや、うーーん……」




ちょっと難しいなこれ。自分の世界を守る側としての勇者か。しかしこいつ、自分の状態が分かってて言ってるのか?




「お前の力だって魔力なわけで、その覚悟はあんまり良くないと思う。この世界で門番やるなら自分の世界に帰れないじゃん。力を失って帰ったら門番出来ないし、お前の世界でお前が魔力使うのもダメなんだろ?」


「そりゃそうだ。もしそういう形になるなら俺はこの世界で門番として……」




不穏な間。


やめてほしい。怖いから。




「世界超越を見張るガーディアンって前も何か話題に上がんなかったすか」

「ウラニア、憶測は今やめておこう。皆も。変な連想してる人今ここに多いでしょ。やめとこうな」


「やっぱりこの星は破壊してタリア達の魔力も抹消してどこか静かな世界に行くしか無いのね」

「アネモネ、本当にダメだよ。過激な意見はダメ。……星の破壊って出来るの?」

「ちゃんと練習してるわ」



練習してるんだよね。ヤバすぎる。



「ヤマト、ぜっったい私がなんとかするから。な?分かるよな?」

「まぁノームの情報得てからだな全部。前の勇者がどうなったのかの答えも一発で分かる」



馬車の上から冷静な声が聞こえる。顔が見えないから余計に怖い。



「ノームさん賢者に殺意向けてそうで怖かったから内心ちょっと嫌なんだけども、そんなこと言ってられる状態では……?」

「無いよな」




休めとかいう話はどこ行ったんだよ。




###########################




「はえーよ!!後日って話ダッタろうが!こっちにも予定とかアルんだ!!!」



急に呼び出された案内ゴブリンが怒っている。



「私だって嫌だったんだ!でも途中で空に連れて行かれた」

「あのねタリア、私馬車移動も体力削られてるって聞いてたのそう言えば」

「空移動は命が削られるんだってば!?」



ぞろぞろとゴブリンの洞窟を進む私達。洞窟というか坑道かな?



「一応言っておくが、本当はヒョロナガに知られたくない場所ダ。色々分かってるダロウな?」

「僕と王が長老に正式な書面を届けてあります」

「我ラは高値だろうとあまり鉱石をヒョロナガに渡しすぎるのも警戒シテルからな?」



なんかちょっとアレだな。案内ゴブリンが私をスルーして第一王子を選んでるんだよね。一番話の通じる相手として。いや確かに書類とか色々やってるのはそいつだからあってるんだけど、何かちょっとアレじゃない?



「なるほどそういうことか!」

「なんだ!?お前例の勇者ダロ!?何で割り込んできて納得シテル!?」


「鉱石もか!そうだよな、鉱石も可燃物も電波も邪魔が入る世界だから街の規模がボチボチ程度に抑えられてるんだな。いや何より農地だよな。魔物が居たら大規模農地が大変だよ。普通の獣や虫の害でも大変なのにゴブリンとかが荒らすわけじゃんやめろよお前ら。でも実際そのバランスが……」


「オイ!?何でオレに謎の話をする!?早口長文やめろ!!全然興味無イガ!?」




そういえばヤマトの言っていた日本はそこそこサイズの島国で、南の国と規模感的にはあまり変わらないのに人口は数倍以上あるっぽい。それも平地は私達の国のほうが圧倒的に多いのにだ。よっぽど街が密集してるんだろうな。


そんなとこに魔力が漏れて治療方法も分からないとかになったら確かに大惨事だろう。ヤマトは自動治療されてるから排出の問題だけで済んでいるが、加護の無い人間の体内に魔力が取り込まれ続けてあちこちが魔石化でもしたら……。



……。いやぁ……他所の国にすら手が回らないのに、他所の世界かぁ。ヤマトが別の世界で頑張り過ぎるから余計に言い訳しづらいしなぁ……。


というか治癒魔法も毒になりかねないから、今のところ本当に向こうに迷惑かけたら外科手術か私の無効化魔法しか手が無いのでは。ウラニアになんとか無効化魔法も道具化して貰わないと、私が異世界に飛ばされてしまうのでは。王になるどころか異世界の空気清浄機にされてしまう。




無限に続く無駄な雑談を聞き流しながら、途中何度か坑道の裏道みたいな偽装された地下道を通り抜け、かなり長い迷路のような場所を進み続けて、英雄の祭壇に到着する。ノームさんの墓とも言える。



前回の裁判ダンジョンと似ていて結構高度な施設っぽいのが不思議だ。そこの鉱石や魔石を占有しているようなもんだから素材は有り余っているんだろうけど。


厳かと言えなくもない広く大きな空間と黒基調の庭園みたいな謎建造物の中央には、これも魔石で出来た黒い骨が雑なカゴに適当に積まれている。ギャップよ。




「ちゃんとしとけって言われたケド、どれが何の骨か分かんなかっタ。案内の礼だと思っテ、まず先に英雄様を何か綺麗に並ベテ飾ってくれ」


「どこの現場も教育が雑なんだよなぁ……まぁここはさすがに私に任せてもらおうか。天才な上に割と医学的なことちゃんと頑張ってる偉大な美少女なので」




英雄の割には扱いが大雑把過ぎるけどゴブリンだし仕方ないのかな。むしろ細かい骨までちゃんと拾ってそうなのが奇跡なくらいか?


と思ったけど何か弱い磁力があるみたいに、持ち上げると少し引っ張られる感じがする。どれかがコアになってて紐づけられてるのかな?



最初から骨だけの化石状態とゾンビ状態に切り替えられる兵器みたいな作りっぽくてちょっと思う所もある。倫理観。ご先祖、倫理観が。




「ヒョロナガ、調査は何回くらいかかるんダ?」

「まだそれを調べるくらいの段階だよ」

「オレも有給は貰っテいるが、給料出るから仕事しなくて良いって訳でも無イんだ。むしろ皆休んでるから遅れがマズい。なるべく案内の回数は減らしテ欲しい」



世知辛い。ヤマトも頭を抱えて解釈違いダメージを受けている。


仕方ない、こっちも作業をサクサク進めよう。ウラニアにも協力して貰って化石パズルを速攻で組み立てていく。



「なぁ、実際に動いているのを見たカラ復活が不可能だとは思って無いンダガ、なんで何千年前の骨しかない英雄様の体が再生されるんダ?」


「だからそれをまず調べに来たんだよ。多分だけど、この魔石による化石はその過程で何かを記録するんだと思う。恐竜の化石とか分かるか?」


「分かル」


「分かるんだ!?あれも魔石化した骨に何かの装置の痕跡があった。ちょっと待ってろ……あ、これこれ。これじゃないか?」




偶然の流れではあるけど、骨のパズルを組み立てる過程を踏んだので異質なものが分かりやすかったかも。魔石の骨に紛れた別の魔石。機械っていうか何かを刻みつけた魔石だったんだな。


見た目で言えば妙に雑にカットされた黒い宝石だ。遠目だと小さな骨片みたいにも見えるやつ。



「お前よくこんだけの骨をそんな素早く組み立てられたナ。まだ若い坊主かと思ったのにやるじゃないカ。」


「おいお前、もしかしてこの美少女を見てお前もオスメスの区別がつかないっていうのか?ゴブリンやオークの目は退化してるのか?」


「で、それが復活させる道具なノカ?」

「聞けよ私の話を。待ってろ鑑定するから」




もしこの道具使えば復活するってだけならそんなに時間もかからないんだが、さすがにそこまで甘くは無い筈。


勇者もそうだが、これも何の対策も無い実装ならまず生物を兵器にした奴らが真っ先に殺されるだろうし。死者を弄んだ正当な復讐過ぎる。




「タリアさま、それ受信機でも無いんじゃないすか…?あれ?」



ウラニアもどうやら一目で違和感に気付いたようだ。鑑定するまでも無く予想と違う。


邪竜は謎の玉の装置から何かを受信して起動し、あれを止めたらまた骨に戻った。じゃあ受信機があるはずじゃん。それにエネルギーを送っている間だけ動くみたいな形なら復讐されるリスクもかなり抑えられる。



漠然と皆そう思ってたっぽくてウラニアの言葉に勇者や王子も首を傾げ、アネモネは話を聞いていない。何か骨をつついたり捻ったりしてる。ダメだよ遺骨を乱暴に扱うのは。



「タリア、この骨の配置は合ってるの?」

「え、多分。何かおかしい?」

「オイ、英雄様の骨を乱暴に扱うナ。何してんダお前?非常識なやつダナ?」



短剣を取り出し、ゴッゴッと叩きながらアネモネが聞いてくる。そして聖女がゴブリンに常識を問われている。




「私が骨ごと貫いた傷や、勇者様による骨折痕が見当たらないのよ」

「あっ!?」「たしかに!?」「お前ら英雄様に何やってんダ!?」




私や勇者やゴブリンの驚愕を無視して乱暴なチェックを続けるアネモネ。戦いが絡むとなんて頼りになるんだ。


なんかちょっと対抗心のような熱い感じがお腹の奥に出てきたぞ。私も鑑定をすぐに終わらせちゃおう。


ただ私の場合基本的に何やっても地味で動きも無いので、なんていうかこう、ぱっとしないが。格好良くなんかしたいよ私も。


でも……うーん?




「こっちもおかしいな?鑑定してるけど受信機でも起動装置でも無い。案内ゴブリンさん、これ他にまだ部品とか落ちてなかった?」

「分からン。多分無イと思うが、目に見えない極小サイズとかまでは気を払ってもいない」


「うーん……。いやさすがにそんな小さい筈が無い。変だな。やっぱりこれが受信機か何かなのかな。いっそウラニアが前に作ってたベルトに似てるんだが……?」


「ベルトって、勇者様に親切で作ったら騙されて悪用されたあのゴミベルトっすか?」

「それ」「ごめんってば」




まだ何か部品が必要なんじゃないか?封印から漏れる魔力量を絞るような、いわば変圧器だけがあっても意味が無さ過ぎる。変圧元も変圧先も無い。


鑑定できないような部分に何か隠されてるとか?




「どこかの骨の中に別の装置があって、それをこれで制御する……のか?じゃあ遠隔起動がおかしいし、どうしようこれ。魔力を通して試してみたいが、それで壊したら大変な事になるし、さすがに慎重に調べてからがいいかな?」


「なぁ、魔力の塊みたいなものって話じゃなかったか魔石って。それに魔力を流すかどうかなんて疑問抱く意味あんのか?」


「うーん」




別世界のヤマトにまで普通にツッコまれる。

珍しく神妙な顔をしたアネモネも謎解きに近寄ってくる。



「……待ってウラニアさん、タリア。ベルトって、まさか、封印?」

「大体そうっすね」「封印の封印みたいな話だったよな」

「タリア、それを置いて一旦下がって!」



不意にアネモネのシリアスが声が通り、思わず皆祭壇から遠ざかる。謎の装置置いてから下がれって言われたんだけど急に言われてビックリして持ってきちゃったが。




「封印なら、似てる」




緊迫した表情で周囲を確認しつつ私達の前に出るアネモネ。




「ここ、聖剣の封印に似てる」


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