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大事な場面を寝ぼけて過ごした主人公



どうしよう。



なんかこう、気がついたら色々終わってた。




ううん、起きてたんだよ。ちゃんと頑張って起きてたんだけど、なんかもう凄く眠くてね。睡眠不足って酔っ払いみたいなもので、記憶がモヤモヤしてるわけ。



……そうやってぼんやりしてたら、驚くべきことに大体三日くらい時間が過ぎていた。


普段ならまぁいいんだけど、国を揺るがすような大事件中に寝ぼけてたわけで、さすがにこう、ちょっと気まずいかなって。



今回もまた勇者と王子だけがえぐい傷つき方をしたんだけど、ウラニアがすぐによくわからん道具を作って対応したらしく、気がついたら二人共元気に働いていた。


第一王子に至っては治り切る前から事務的な事後処理に尽力していたらしいのでちょっと偉すぎる。



で、勇者は家を貰ってすぐリフォームし始めてご機嫌らしいので、今はその様子を見に来た所。私のサプライズプレゼントが私の知らない内に渡されてんだよね。助力をお姉様に頼むと色々大事な手順が飛びがちで面白い。




勇者と王子の活躍と傷に何か報いたいのを除けば、一応現状目立った被害報告は無く、今回もうまく乗り切れた筈。


……乗り切れた筈なんだけど、妙にウラニアが張り切りすぎてて心配だし、なぜかアネモネは唐突に求婚してくるので、勇者の力が必要だと感じ家に向かっている所なわけ。



勇者の力というか、ヤマトの会話力というか。私一人でツッコミをこなすのが大変過ぎるので手伝って欲しい。皆情緒どうなってる?




「どうして?この花束でもダメなのかしら?結婚しましょうよタリア」

「だから花の種類じゃないんだよね。それを気軽に受け取れないのはさ。王族が他国の重要人物と簡単に結婚出来るわけないんだよアネモネ」


「じゃあ私移住するわ。前から言ってたじゃない。タリアの家に移住するって」

「というかなんで急に今なの?割と忙しくて婚約系の政治のあれこれやってる暇がさぁ」

「うっ……!せ、政治……っ!」



また頭を抱えて離れた後、水筒みたいなろ過器で水を濾している。どうやら動揺したり苦手な話が出てきた時の現実逃避らしい。



よく政治話が苦手で他国の王族に結婚を申し込んだな。それも一大宗教の聖女が科学と魔術の王族に。


私が言うのもなんだけど、わりと下位の王女が他国の宗教の代表者と結婚って、まー面倒な政治話になるよ普通。



全然花の種類とか気にしてる場合じゃないと言うか、魔力素材で作った謎の黒い模造花束でプロポーズはそれはそれで別ベクトルでもダメというか、逆によし結婚しようってなる要素が無さ過ぎる。目的も謎だし、何か変な本でも読んでしまったのだろうか。



しかも何度断っても独自に反省して再挑戦してくる。どうしてそこで独自性を重んじてしまうんだアネモネ。そして毎回政治の壁に砕け散っている。



なんか聖女としての事務的なやりとりは意外と出来る筈なんだけど、空気の読み合いとか貴族同士のあれこれのありそうな政治は相当苦手なようだ。多分短めのマニュアル丸暗記で行けるのはなんとかなるんだろう。




「タリアさま、ボクちょっとまた病院の方とやりとりしてきます!」

「いやだから向こうも忙しいって言われたでしょうが。ウラニアもちょっと私と一緒にヤマトんち行こう。あの激務の後になんでそんな燃え尽きそうに張り切ってるんだ」


「あっ……」

「ん?」


「やっぱりボクってわざと無茶して頑張ったつもりになりたいんだ……結局それが一番心が楽だから……タリアさまはずっと分かってるんだ……」

「うわぁ!なんで急に病むの!?」



アネモネが元気になってきたらこれだ。



「でもだからこそボクがやるっす!」

「落差が怖い!何がだからなの!?逆にやばいよその明るさは!!」



闇堕ちの仕方も人それぞれだなぁって!


なんか私が知らぬ間に対応したらしく、ウラニアにしか頼めないことを無理しない範囲で頼んでる筈なんだけど、どうもここしばらく頑張りすぎてたから調整が出来なくなってるようだ。



つまり、頼られないと凹むし、頼ったら燃え尽きるまで走り続けちゃうんだけど。どうしろっていうんだ。



やる気の調整って人生で一番難しいかも知れないので、とにかくしばらくこっちでなんとかしないと。


一応私の直属の部下的な位置だしな。そういうのはやらないとダメなんだが、ウラニアってば割と天才で凹んだ経験少ないっぽいから逆に脆いとこあるのかも知れない。分かるよ、なんせ私も天才だから。


謎の闇系女子二人に翻弄されながら歩く休日。意味が分からん。両手に花だけどどっちも栄養状態が悪いので手が塞がったまま急いで対応しないとダメ。




やっと目的の中古物件が見えてくると思わずホッとしてしまったよね。どっちかに突っ込んでくれヤマト。その間にもう片方をやる。



「あれ?今来ても室内入れないって俺言わなかったっけ?悪いがくつろぐのも見学も無理だぞ」

「言ってた気がする」




なんかよくわからん工事現場に近づくと、こちらに気付いたヤマトがやってくる。



「で?むしろそっちの進捗はどうなんだよタリア」

「なんの進捗?」



やばい全然記憶に無いぞ。ぼんやりしてる内に何か相談されていたのか。



「ほら、俺はノームが最優先だと思うって話。例のゴブリンゾンビ復活させて情報聞き出そうぜって」


「あー」



聞いたような気もする。でもたしかクソ眠い時に長話してきたっぽいんだよねこいつ。情報がーとか、世界線がーとか、訳の分からんことを延々と。ただでさえこいつの話ややこしいのに、寝ぼけてる人への長話は無理に決まってんだろ。




「ちなみに私は索敵と抹殺が最優先だと思うわ。というか思ったのでもう教会はやってるわ」


唐突に賢さと強さが戻るアネモネ。戦闘になるとすんごいんだから勇者信仰の聖女は。慣れてくると『勇ましい者を信仰する』という話に何もおかしなところが無い。


確かに優先度高い。危ない相手に侵入されてるのは分かったからね。絶対対策は欲しい。



「そういやアネモネが殆ど壊れてない状態の死骸を確保してくれたんだよね確か」

「結構最初の方に教会付近に落としておいたわ。あの時の歴史調査チームの人達がまた機密調査任務チームにされてる筈」



可哀想に。まぁあれだけ色々見て知ったから、そのままご協力願わざるを得ないんだけど。




「ボクの最優先は防衛力の強化だと思って、それ系の魔法装備とか色々独自の同人ルートで動いて貰ってるっす」


「偉い。同人ルートについてはともかく、そんだけ出来てなんで落ち込んじゃうんだよウラニア」

「前回既に出来てた筈だったんすよ……」




なんか唐突にそれぞれの最優先が出てきた。


実際のところどれも大事なので優先順位とか付けづらい。まだ動けてないのがノームさん案件と海って感じか。



海に明らかに人類への殺意を拗らせた危険な敵対生物が居るってのもマズいんだけど、でもどうにも出来ないしな、向こうもこっちも。


空が割れるまで聞いたことも無いようなトラブルだったから、逆に空が閉じたら海の底で停止してるかもだし。



となるとまぁ勇者の言う通りノームさんか。



「休息もしつつ話も動かそうぜ。やっぱり気になったままじゃ気持ちよく休めないしな」

「ウキウキ状態で気持ちよくゴーレム操りながらよく言えたなお前」

「人型ロボって最高だよ。こればっかりはジャンルの壁も超えていいんだ」

「それゴリラ型だろ」

「ぐああああああ!!」




どうやらどうしても聞きたくない言葉だったらしく、もがき苦しんで搭乗座席から落ちてきた。




「そうだった、例のノームさん。なんか賢者におかしな反応してたじゃん。もうアレ絶対私がそうだとバレたらやばいやつだったでしょ」


「人の夢を踏みにじったまま平気で話を続けるなよ!」

「人型ロボならウラニアに頼めよ。乗る必要も無い高性能な小型ロボ作ってくれるよ」

「俺は巨大で無骨なのに乗りたいの!いっそ高性能じゃなくたっていい」

「あっ」


「……やっぱりボクなんて本当は」

「ウラニア博士!!頼む!!重機として高性能なやつをさ!」

「だからこそ全然やるっす!」

「うわ何か怖いな!?大丈夫かこれ!?体育会系後輩が元気に闇堕ちしてるみたいなジャンル?」




おかしいな。やっぱり皆ちょっと疲れてるんだろうな。いやちょっとなわけないか。テンションとか精神とかバグっても仕方ない。


なぜか工事中だった大工さんとかも出てきてウラニアに色々重機の相談をしてる。効率化と小型化に圧倒的才能を見せる天才魔法道具作成者に、でっかくて安い重機の相談を。



まぁいいか。ちょうど息抜きになるかも知れないし。




「タリア」



アネモネが何か思いついたように立ち上がる。



「……花冠ではどうかしら?」

「そこじゃないんだ。そこじゃないんだってアネモネ」



そして金ピカの王冠に黒い花がびっしり張り付いたものを花冠とは言わない。どういう趣味なの?それ魔法素材で作ったの?




「ヤマトくーん!!大変だ!!!」



そして空から降ってくるカマドウマ馬車と、そこから飛び降りてくるイケメン王子。もう情緒が忙しすぎる。突然でっかい虫みたいな影が落ちてきたのであちこちから悲鳴が上がっていた。



どうも第一王子はあの馬車が大変お気に召したらしい。確かに速い上にジャンプ力が凄いからね。空も飛べる勇者や聖女に近づくなら便利だ。



「うわマリウス、まだ室内作業までにしとけって」

「もう大丈夫、あっという間に安定してきたんだ。ウラニア博士の医療道具のおかげで。何度お礼を言っても足りないです博士。ありがとうございます」

「あ、え、えひひ……」



イケメン王子に褒められて満更でも無さそうなウラニア。いいぞ王子。だがその嬉しそうな声は話の中身じゃなくて目前で起きてる二人の男の関係値によるものだから気をつけろ。



「いやそれどころじゃない。大変だよヤマトくん。緊急の招集だ」

「招集?国の中枢みたいな話?」

「違う、そっちの面倒事は僕が全部なんとかできる」



毎度お世話になっております。そういえば私も色々呼ばれてるが全部第一王子がなんとかしてくれている。最初は本人も私を中枢に連れ帰ろうとしてたっぽいのに、いつの間にか何も言わず気を利かせて間に入り、なんかこう色々対処してる。偉い。



どうやら第一から第三王女である元気なお姉様達が私に過保護を発揮しているようなのだが、その対処くらいにしか苦戦しないようだ。



何やらゴソゴソと書類を取り出すマリウス第一王子の姿はいよいよ中間管理職の風格が漂ってきている。大工も勇者らしいし、中間管理職も勇者でいいよ。活躍が全然表から見えないとこまでマリウス王子の不憫さそのままで、なんだか泣けてくる。



そして出てきたのは、見慣れない紙と書式。




「これを見てくれヤマトくん。何でも翻訳されて読めるんだよね?」

「多分。でも話がよく分からん。なんの書式だよこれ?」



複数の紙を並べてヤマトに見せる王子。



「……これは裁判所への召喚書式なんだ。僕とヤマトくんは起訴されたんだよ」

「起訴ぉ!?」



ざわつく群衆。


えっ嘘、あんだけ散々働きまわって傷も抱えた挙げ句起訴されたのこいつら?




「誰に!?なんで!?」

「起訴は二つ」

「二つも!?」



「一つは傷害及び英雄の遺骨の破損」

「……あ?ちょ、ちょっと待て、嘘でしょ!?」


「これは僕ら二人がゴブリン達に起訴された案件なんだ」

「この世界のゴブリンって起訴してくるの!?」

「いや僕も人生で初めて聞いたよ」



私も聞いたこと無い。多分あんまり居ないぞ、ゴブリンに起訴された勇者は。



「もう一つは、オークの獲物を不当に奪った盗難罪なんだ。どうもこれが先にあって、中央のオークが南のゴブリンに相談した結果合同で訴える事になったらしい」


「やばい、どこからどう突っ込んだらいいんだ?……というか獲物の盗難って、まさかタリアのことか?」


「それについては別の意味で詳しく確認した方が良さそうだね」




バカ、その流れで私の名前を出すな。オークに捕まってて勇者に助けられたのがバレちゃうだろ。


いかん隣でウラニアが凄い顔してる。




「というわけなんだヤマトくん。この書類は、彼らの裁判所であるダンジョンへの呼び出しなんだよ」

「裁判所ダンジョンってなんだよ!?くそっ!気になりすぎる!!」


「おいよせヤマト、私も変に巻き込まれそうだからお姉様達とそこの王子に上手いこと揉み消して貰え」


「巣穴ごと殲滅しますか勇者様?私一度ダンジョンの中を全部真空にしてみたいです」

「ダメダメダメ!急に何言ってんのアネモネ!?それこそ訴えられるべきだぞ!?」




うーん。絶対嫌だな。裁判。アネモネの案はさすがに過激すぎるけど、裁判所ダンジョンとかいう響きからしてアホそうなものに絶対近寄りたくない。



裁判であなたは正当なオークの獲物だったのですか?とか聞かれるのも想像するだけで嫌過ぎる。ダンジョンで捕まるのに正当とか不当とかあるんだ。


そこを問われるとそもそもダンジョンに入るのが不当な侵入行為かも知れないのでそこはかとなく不利も感じる。



うわ、絶対嫌だぞ。


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