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【問題に気づき始めた乱雑思考な勇者の視点】


【問題に気づき始めた乱雑思考な勇者の視点】



とにかく最優先はノームの復活だ。



過去の事情を知っている、前の勇者の仲間。自分の情報の価値が分かっていて、それを保険に再び魔石状の化石に戻ったゴブリンゾンビ。


裏や思惑があるのは分かりきっているし、そもそも人類に好意的というわけではない。その上でかなり強い。もしかしたら慎重になるべき事案なのかも知れないけれど、それでも情報の価値が大きすぎる。




既に敵対生物に侵入されていて、しかもそいつらは透明化を使えるという非常にマズい問題もある。


だが透明化魔法道具がある時点でその対処もゼロでは無い筈。一旦こっちは南の国と教会側に任せて役割分担したい。


何か強いドラゴンとか魔王を倒すのなら勇者パワーで協力しやすいが、見えない敵を探して倒すとなるとアネモネの百分の一も役立たないし、魔法関係の調査を俺がするのは無理がある。



だから、俺はノームに注力したい。



海の敵は何かあったら対処。そもそも海中じゃ戦えないし、敵がいる水中の調査も現状不可能なので、地上に攻めてきた時にしか出来ることが無い。




今はタリアという特別な存在の力でギリギリ被害を抑えているだけで、襲撃の規模は回を追うごとにインフレしつつある。あいつの力は本人含めて誰も正確には把握出来ていないのに、それが無ければ大勢の人が死んでいる。神頼みと大差無いのはマズいって。



俺も異世界チート勇者とはしゃいでいたが、敵がなんなのかも分からない災害を延々と防げみたいな状況では、強い戦士が何人居た所で本来なら被害を止めようが無い。


現に今のところ連戦連勝ではあるが、勝って嬉しいみたいな感想はやっぱり全然無い。前もそうだったが、『一旦なんとかなってホッとした』という感じがずっと続いている。


勝ったかどうかもよく分からないし、ざまぁしたい相手も居ないもんな。




──そして、過去の情報だけじゃない。数千年前の勇者がゴブリンを四大精霊扱いした事にもずっと引っかかっている。


ノームと名付ける時点で時代が怪しいが、四大精霊はかなり新しい分類で、何千年も前の人間のセンスとはとても思えない。不思議な翻訳が行われているとしてもおかしい。



遥か太古から四大元素の話はある。


だけど、それを元に四大精霊という枠組みをパラケラススが提唱したのは数百年前の話だ。数千年前の勇者が名付けるには新しすぎる。



ゲームや小説からの知識がメインだからどこまで正確かは自信が無いが、ゲームや小説オタクとしても、雑学オタクとしても、妖精の書がモチーフのものは無限に見てきた。何か勘違いしていたり新情報を見落としたりしていない限り、数千年前には四大精霊という枠組み自体が無い筈だ。




状況から推測するなら、そもそも『世界が違うんだから時間の流れが同期している理由も無い』という根本的な気付きがある。


もともと時間はどこでも一定の速度で流れているわけじゃない。速度や重力の影響だけでも処理落ちするんだから、ただ高い塔の上に登るだけでも時間はズレる。



少なくとも俺の世界の時間は相対的なアレであって、絶対的世界時間という仕組みでは無いんだ。



それが世界まで違うとなれば、まぁ確かに一致しなそうだなとは思う。



俺はこの世界でもう何年も過ごしたが、向こうは時間が経っていないオチも有り得るし、なんなら時間がまっすぐ流れているとは限らない。




元の世界に戻れるとしたら時間が経っていないタイプの方が浦島太郎よりはマシだけど……ただ、同期していない時間って考えると世界線って言葉が脳裏にチラつくんだよなぁ……。急に不安になる。



その世界線という言葉を浸透させた有名作タイプでも結構怖いが、SFホラー短編集パターンだったら最悪だ。世にも奇妙だったり、玩具を修理する傑作短編の中の一つだったり、クトゥルフ的なアレだったり、とにかく一度時間の同期からズレた人間の末路は大体やばい。俺です。うわ怖いよぉ。




時間の流れが正常じゃない世界はもう元の世界じゃない。普通の世界は普通に過ごしていないと維持できない。だから……、……いや?いや、ちょっと待てよ。普通の世界?


今、何か大前提から非常に大きな問題を感じたぞ。なんだ?




……俺の世界は、何の変哲も無い地味な世界だ。魔法もタイムトラベルも無い静かな世界。時間は絶えず連続していて、異世界と繋がる穴も無い。何も壊れていない普通の世界のはず。




……本当にそうか?




俺は異世界に転移した。その時点で異世界に繋がる穴はあるし……俺の世界でも魔法が発動していないか?魔法の無い世界じゃ無くなってないか?


いや、違う。俺の時だけじゃない。仮に前の勇者も俺の世界の住民だった場合、既に俺の世界は魔法のある非常識な世界になっていたんじゃないか?



なんだろう、何がダメとははっきり分からないが、何か名状しがたい不安がある。

異世界転移を『そういうもの』だと軽く認識していた事に、微かな焦りと愚かさを感じている。影響をもっと深く考えるべきだった。



俺の元の世界は、もう魔法の無い世界じゃない?


なんでだろう、それは絶対ダメな気がする。



……なぜ俺は、世界の壁を超えるような災害を目にしていながら、自分の世界の心配をしていなかったんだ?




いや、誘拐は問題だと思っていた。でもそういう単体の犯罪レベルの問題じゃなくないか。物資が盗まれるとか人が攫われるみたいなレベルじゃなく、多次元世界への穴が空いて世界の法則が歪みそうだけど、世界線とか宇宙のルールが壊れたりしてないよね?みたいなレベル。


イ、インフレがやばすぎる。



異世界勇者ヤマトではなく、元の世界の不二山斗という人間として調査し対応すべき問題を感じる。


勇者召喚の封印に皆が協力的で本当に良かった。下手したら俺はこの世界の人類と戦う側になっていたかも知れないぞこれ。というかその可能性はまだゼロではない。考えれば考えるほど放置出来ない要素に気付かされる




……異世界に転移や転生した時、まず真っ先に警戒し、対応しなければならない最強最悪のチートは『異世界干渉出来るという事実』そのものなんじゃないか?




「勇者さん、壁紙は白いやつならすぐ持ってこれますよ」

「あーどうも!じゃあ壁は全部白で」




大工さんの元気な声で、長考から我に返る。幼い頃から周囲には集中していないと言われる事も多かったが、本人としてはずっと脳内で雑音みたいに無数の考え事をし続けているんだよね。


無数に考えすぎて何考えてたか忘れるくらいに。




さて、こうなるとずっと寝ぼけてるタリアに早く元気になってもらって、すぐに色々相談を始めたい。



あいつはあれから一日経っても寝ぼけてふらふらしている。


多分本当なら数日間寝込む感じだったのかも知れないが、どうも長時間眠り続ける体力も無いようで、時折目覚めてふらふら歩き回ったり飯やトイレをすましてボーっとした後また寝るというのを繰り返している。一番病人っぽい。



今も多分宿でアネモネに引っ付かれながら朦朧としている筈だ。




「勇者さん、床の断熱材変えたほうがいいっすよこれ。昔の悪い流行りだわ」

「あ、じゃあお願いします。補助金の範囲内ですか?」

「窓と屋根裏もやるならもう一個別の補助金出るんでそっちまで検討したほうがいいかもっすねー」

「なるほどそういう。じゃあそれでお願いします」

「おっ即断即決!?」




俺も全然こんな事をしている場合ではない。



「浴槽希望とは珍しいっすね。割とこの地域特有の設備なんすけどよく知ってましたね」

「俺もちょうどそういう珍しい地域に住んでたんすよ元の世界で」

「移住してくる人だとねぇ、水場のリフォームは浴槽捨てて安くしたり他を広くってのが多くて」




こんな事をしている場合ではないが、貰ったものは有り難く受け取ったし、今ちょっと大工さん達がハイテンション状態なので、勇者の家のリフォームがお祭り状態になってしまった。



貰ったんだよね。家を。そして手続き的なあれこれがまだ途中なのに、所有権はどれかの契約書で確定したって事らしくもう改築が始まっている。



……さすがに俺も魔法大工は観ておきたい。絶対気になるでしょ。



似た人類は割と似た生活をしているという説にだいぶガッカリさせられてきたが、ここぞという箇所で唐突にマジカルな道具が出てきたりするのに特別な価値を感じるようにもなってきた。人間界で密かに暮らす魔法使いがポロッと魔法道具使うのを見た感覚かも。



ハンマーや丸ノコなどはアネモネも散々使っていたようにほぼ同じものがあるし、マルチツール辺りから謎の魔法道具が増えていく。



電化製品があまり無い代わりに互換っぽい魔法道具があったり、児童向けの魔法使いみたいな便利魔法が使われてたりするわけだ。




「勇者さん、ゴーレム来ましたよ。乗りたいって言ってたやつ」

「うわありがとうございます!!」

「でも、魔力使わないようお医者さんに止められてるって聞きましたよ」

「しまった、もう広まってるのか!?内緒で!ちょっとだけ!!」

「仕方ないっすねぇ。メイン動力が高級魔石のやつなら多分……ちょっと別のが後から来るんでこのボロいのはダメって事で」

「どっちも乗ってみたい!」

「ダメって事で」




そしてどうしても試したかったのが重機だ。この世界の重機にはゴーレムタイプもある。分かるだろうか、この感動が。つまり魔導ロボ重機である。



アネモネが意味不明な解釈で大工ロボをゼロから作り上げたのかと思ったが、そうじゃない。ゴーレムがある時点で重機の歴史が違ったんだ。アネモネはそれを応用したからあんなに具体的に大工ロボだったわけだ。



俺の世界では外壁や屋根の塗装をする時に足場を組むだけで数十万円かかるわけだが、この世界の高所作業は様々なタイプのゴーレムで対応出来る。そもそも足場付きのゴーレムも居る。素晴らしい文化だよこれは。



建物くらい大きな人型ロボットを何に使うのか。答えは、何にでも使える。



手を地面につけて四つ足みたいな状態で移動するやつとかも居るので、どちらかといえば人型より猿型とかゴリラロボット系のような気もするが、そこはあえて目をつむり人型で押し通す。



「こいつは指から高圧洗浄出来ますよ」

「うおおおおおおお!!ロボットパワーウォッシュ!!!うおおおお!!!!」




こんな事をしている場合じゃない。場合じゃないんだが、許して。ゴーレム最高。高圧洗浄最高。




「そんなに気に入ったなら、今日からもう色々やっちゃいますか勇者さん?」

「やります。指導料払うんでやらせてください大工さん」


「まさかそんなに自分でやりたがるとは思わなかったけど、南の国で勇者が大工に興味を持つって、これまた宣伝チャンス過ぎて逃せないっすねぇ」




学問の国での肉体労働は評価が高かろうとやりたがる人は少ないらしい。



どうやら大工とか農業みたいな職の扱いも俺の世界と似てるみたいだ。必須職だから大いに有難がられるんだけど、かといって率先して人が集まる人気職になる事も無い。


警備兵もそういうのあるらしいし、まぁ難しいよな。誰だって楽に稼ぎたいし、どう考えても楽な仕事ではない。



そんな空気の中で聖女が『大工もまた勇者にふさわしい』みたいな表現をして大工ロボで敵を粉砕したので、若手が増えて欲しい親方達のテンションが高くなってるわけだ。継承者も足りないしシンプルに人手も足りないようだからな。



神聖な大工道具で殺戮するなって怒られなくて本当に良かった。まぁやらなきゃ大勢死んでたわけで、仮に何かムカついた人が居たとしても「大工道具使うくらいなら見殺しにすべきだった」とは言えないと思うが。



「そのまんま使うんじゃねぇって大工も居たっすよ」

「あ、やっぱ居たんだ」

「戦闘に使うには柄とか無防備すぎますからねぇ。ちゃんと用途に合わせてカスタマイズしろやってのは正直自分もちょっと思ったかも。あれじゃ衝撃逃げすぎて勿体無い」

「そっちかー」

「ネジ釘をたくさん踏んで叫ぶ魔物の画像は労災防止ポスターになりそうでした」

「片付け大事とか、必要な分だけ整理して持ち込もうとかね」




がっはっはっはと皆で笑う。全然こんな事をしている場合ではないんだが。



まぁでも今日はいいか。さすがに。家を貰って初めての楽しい休日だからな。家だよ、家。俺の家。しかも免税の。慌ただしい状態だったからここまで実感無かったけど、やっぱ自分の家ってちょっと嬉しいわ。


第一王女アオエデの思惑通りなのは少し気に入らないけども。




「勇者!ちょっと来なさい!!」

「げぇっ!?本人!」




気に入らないと思った瞬間に当人のでかいケンタウロス馬車が跳んできてしまった。普段使いの馬車がそれなのヤバいって。




「それ!タリアに内緒で読んで燃やしなさい!」

「どれ!?何の話!?」



第一王女アオエデさん、相変わらず会話のドッジボールが一方的過ぎる。



「他の者にも内緒にしなさい!特に聖女に!!」

「えっ、あの、それは無理じゃ……居ねぇ!返事は聞けよ!」



突然魔法の白い鳥が手紙を咥えて現れたのでうっかり受け取ってしまった。いかにも魔法の世界って感じが素晴らしくて、つい手が。そして顔を上げたらもうケンタウロス馬車はどこかに跳んでいた。




「……勇者様」

「はい」



そして現れるアネモネ。無理だよ、タリアの話を出してアネモネを出し抜くのは。



「一応。一応俺が先に読む。仮に手紙の奪い合いバトルになるとしても」

「……そうですね」



ダメだ、余計な刺激を与えると逆に先に手紙を奪われそうだ。すぐ見せそうな雰囲気で騙しながらとにかく中をすぐ確認しよう。



「えーっと……なんだこれ、図?」




『タリアちゃんは王になりたい > なぜ > さみしいから > なぜ王になるとさみしくない > 王 = 国の長 = 群れの長 = 家族の長の最大延長 ∴ 家族の居ないタリアちゃんは王になって国民という新たな家族が欲しい』




……あー、うわ、逆に分かりづらいし、そういう何かちょっと悲しい話聞きたくないが……何がダメなんだ?




『国民は上の立場の人間を人間として愛したりしない > 国民は上の立場の人間を身近だと認識しない > あの子の願いはあの子の心を破壊する > あの子も薄々分かっているが自分なら出来ると信じている』




うーん。うわぁ……、その、うーん……。




『既にタリアちゃんは王族ではなくタリアちゃんとして皆に愛されている > 関係性に王と国民という名前を与えたらそれは壊れてしまう > タリアちゃんも壊れてしまう』




うーん……言わんとすることは分かってきたが、完全に部外者の俺にどうしろと言うんだ。




『マリウス坊やを王にしなさい > 実態は私達姉妹の傀儡政権で良い > タリアちゃんはタリアちゃんとして幸せになるべき > 報酬は第一王女の権限で出来る全ての協力』




傀儡政権で良い、じゃねーんだ。今すぐ燃やそう、なんて危ない手紙を。


何考えてるんだ第一王女は。国が滅びるくらいじゃ済まないかも知れない大ピンチに王がどうとかやってる場合かよ?




「……勇者様」



そしてアネモネがこちらに手を差し伸ばす。手紙を渡せのポーズ。どうしよう。難しい選択肢だ。



秘密ってのは守れば守るほど評価が上がるが、自分の評価の為に誰かの損害を見殺しにするという側面もある。


どっちが正しいんだろうな今回は。



確かに一理はある。あいつがあの性格でなんで王座なんか欲しがるんだろうと不思議には思っていた。既に割と全部手に入れてるんだから、逆に自由に動けなくなるだけじゃないかと。



……タリアの原動力が家族を求める寂しさで、それが暴走しつつあると思うと、必死に体張って全員の命を守ろうとしているのも含めて分からないではない。




でも、第一王女が勝手にそう思い込んでるだけ説もあるからなぁ。あいつ本人にしか分からない部分だってあるだろ。鵜呑みには出来ないし、変なことして権力争いなんかに巻き込まれている暇もない。



うーーん。アネモネがこれを知ったら止めるのか協力するのか。難しいぞ。




「私が燃やしますねそれ」

「もう読んじゃってるんだよね!!」




無駄な長考だった。




「第一王女は完璧な解決策を見逃しています。いえ、分かっていて言いたくないのねきっと」


「えっ何?すごいぞアネモネ、教えてくれ」



正直面倒な事になったと思ったし、良く考えたらこの長文だとアネモネは途中で思考放棄するのではとか失礼なことを考えていたが、まさかこの一瞬で解決策まで見出しているとは。




「タリアが家族を手に入れるのに王とかぜんぜん関係無いわ」



……アネモネが素材を取り出して何やら作り始める。なんだろう、花束?どす黒いけど。



「結婚すればいいだけじゃない」



不意に手紙が浮き上がって、爆発する。燃やすどころか灰すら残らなかった。



「私と」




私と!?


光の無い目で微笑みながらじゃなかったら百合に興奮しなくもない宣言だった。怖い。

まさかその黒い花束ってプロポーズ用じゃないよな?


でも確かに、家族が欲しいって話でなんで結婚に全く触れず王に飛躍してるんだろうな。アネモネがこう言うって事は、俺の世界と結婚の概念がちょっと違うって話でも無いみたいだし。




「溺愛しすぎて嫁に行って欲しくないんだわ第一王女は。だからこんな回りくどい話に」

「あーーー」



なるほど。しょうもな。



「多分ですが、独りになってしまうタリアに母君か近しい誰かが『王族には国民という大きな家族も居る』みたいな話をしたんだと思います。『だから淋しくないよ』というつもりで」

「あー、ありそう」



なるほど。切ない。



「では行ってきますね」

「行ってきますね!?」




話の途中で姿が消えるアネモネ。


……第一王女も聖女も、わりと思い込みで迅速な行動する似たタイプじゃないか?


言っちゃ悪いが、色々強くて何でも出来てしまうのが余計にタチ悪いのも似てるような。




「あのー、勇者様、緊急案件なら工事は出来るとこから進めときますぜ?」

「いや魔法リフォームと比べたら全然どうでもいい話だったんで続きしましょう」

「そんなことあります!?第一王女様と聖女様っすよ!?」

「ぜーんぜんどうでもいいです」



なんとも言えない気持ちで家に戻り大工さん達と合流し、リフォームを再開する。




……嫌だなぁ、本人が居ないのに一方的に事情を知るの。と思って、ふとタリアの能力に思いが及ぶ。あいつは常にその状態なわけだ。


なるほど、一方的な知人。一方的な愛情。決して同レベルに知っては貰えない孤独か。そして王になれば少なくとも一方的ではない関係が生まれはする。



でもタリアの生き方はタリアが考えて決めることだし、マリウスもさほど王になりたくは無さそうだから、全然放置でいいわ。親戚のお節介おばちゃんによって、ちょっとだけアイツの動機を知ったかも程度の話だこれ。




確かに過去の辛さと寂しさで心のどこかが壊れてしまっているパターンもあるのかも知れないが、別に世の中はそういうのが何も無い心身ともに元気な人だけで構成されているわけじゃない。案外そんなもの。案外普通だ。



体や心に傷があったっていいだろ。無いほうがそりゃいいけど、あったらダメってのはおかしい。だから腫れ物みたいな特別扱いはしない。何を知っても俺が自分の目で見たままのタリアとして扱うだけ。




その動機で良い事をするやつには善行に報いたいし、悪い事をするやつは悪行を止める。ただそれだけ。


実際に心の中を完全に理解なんて出来ないんだから、行動に対し行動で返すしかない。




色々あって色々な傷を抱えながら頑張ってる普通のやつ。それを普通に応援し普通の範囲で協力するだけ。それでいいだろ一旦は。


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